増税後の回復から見る、今打つ手とは?

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消費税増税の影響を97年と比較し振り返る

■ 心配するほど大きくなかった?消費冷え込み

「増税分を含め物価が上昇するものの賃金は上がらず、消費の冷え込みが懸念される」と、4月の消費増税後に心配されていた消費の冷え込みは、業態によっても異なりますが心配するほど大きくなかったというのが大方の現在の市場の見方のようです。とはいえ、前年比で見れば、どの業種も4月度は落ち込んでおり、高額商品を扱う業態や百貨店等は落ち込みが比較的大きく、日用必需品を扱う業態や食品関係は小幅にとどまったといういうのが実態です。私もまわりの人たちに聞きまくりましたが、ほとんどの感想が「思ったほど増税の影響は感じない」というものでした。

そして意外だったのが、4月以降一品あたり単価が結構上がっているという傾向。増税や物価上昇以上にあがっており、食品スーパーやドラッグストア、専門店、百貨店でもその傾向があり、冷え込みのあった部門をカバーしています。

■ 振り返ってみる駆け込み需要と1997年増税時

右の図は経済産業省が出している、商業動態統計調査より、増税前の駆け込み需要と、増税後の消費冷え込み傾向をグラフで示したものです。(現時点では、2014年5月・6月の結果は発表されておりません)

駆け込み需要については、3月に一気にきている傾向が見られ、4月には消費が冷え込んでいます。見事に前回の1997年の増税時と、同じような傾向になっています。

そして、1997年は、4月に大きく冷え込んだ後5月に一旦回復。6月にはまた冷え込んでいます。これは消費冷え込みに対して、消費税還元セールなどを4~5月に当時バンバン行い、消費回復を図りましたので、その影響かと思います。その後1997年は、この後なかなか回復せず、3年程度低迷を続けました。

今年に関しては、無理なセールやイベントを開催することなく、5月も堅調に回復しており、そのまま回復するという読みが多いですが・・

経済産業省からはまだデータが出ておりませんのでどのような傾向になっているのかは見えておりませんが、5月・6月のデータは各企業にはあるかと思います。1997年と同じように6月度に冷え込む可能性があり、実際にはいかがでしたでしょうか。

安心して何も対策を打たないと、1997年と同じように6月度に冷え込む可能性もありますので、動向を見守りたいと思います。

スーパーマーケットの回復傾向は本物か?

■ 5月度の回復は本物か?

右の図は、スーパーマーケットにおける3月~5月の前年対比を部門別に表したものです。増税後のもっとも注目すべきデータです。
全体ベースで5月度には、101.9%と前年を早くも上回り、既存店で見ても、前年100%と回復しています。食品は駆け込みの影響は元々小さく、グロサリーでも回復は2か月程度との予想通りの結果となっています。

■ 安心できない食品系の回復

では、「やれやれ思ったほどの冷え込みはなかった」と安心して良いでしょうか?
私はこの慢心が一番いけないと思ってます。というのは、回復数値を良く見てみると、生鮮系・惣菜系の売上が全体を押し上げてることが分かります。これは生鮮食品の相場高によるところが大きく、消費者の積極的な購買結果によるものではないということです。そして、おそらくどの企業もそうですが、客数が増えての回復ではなく、一品単価向上によるところが大きいからです。

この傾向を消費者側に立って考えると・・
収入は増えていないのに、生活必需品は増税と値上りで高くても購入しなければならない。ということは、貯金を切り崩すか、他のものの購入を控えるしかないということになります。
まだ増税して3か月ですから、世の中の雰囲気もあり、何となくお金を使っていますが、貯金が減ることやお金が足りないことに気付いてきたら、嗜好品を中心に買い控えが発生するのは間違いない傾向と予想できます。

ホームセンターの回復はどのくらいかかる?

■ 駆け込み需要の影響をもろに受ける

右の図はホームセンターにおける3~5月の前年対比を東西に分けてカテゴリ別に表したものです。全体ベースで4月度で東日本が94%、西日本が91%と駆け込み需要の影響をもろに受けていますが、5月度にはゆるやかですが回復基調になってきました。

食品に比べ、ホームセンターは駆け込み需要も大きいので、この傾向は予想通りといえば予想通りの結果です。
東日本は駆け込み需要が大きく、回復も西日本に比べて早いのが目立ちます。これは東日本の景気の雰囲気と東北地方の需要高がけん引していると思います。

■ 好調な DIY・園芸・サービス業務

駆け込み需要の影響の少ない食品をあまり扱わないホームセンターにとって、駆け込み需要の恩恵は大きいですが、消費冷え込みの影響も大きいことが表からも分かります。カテゴリ別に見てみると、電気・家庭用品においては、回復の元気さがまだまだ見られず、前年並みになるには、まだかかりそうです。しかし、DIY・園芸・は、増税直後から対前年比プラスで、全体の回復に寄与しています。園芸はまだしも、DIYと4月のサービス業務の好調は、私も想定できなかったうれしい傾向です。

スーパーマーケットでも申しあげましたが、消費は回復傾向にあるものの、消費者の立場からすれば、今後そんなにお金を使えない状況になっていくと思います。したがって、嗜好品を中心に買い控えが発生すると思います。よって、ホームセンターでは日用必需品を中心に、魅力ある商品を少々高額でも品揃えをすれば、回復にけん引すると思います。間違っても高額の嗜好品をこの時期に厚く品揃えするなどという行為は、しないようにしてもらいたいものです。(97年もそんな商品は売れてませんよ)

今打つべき手はこれだ!

■ ”目的買い”にシフト、”衝動買い”は減る傾向

世の中は、増税後早くも回復基調との見方を強めていますが、私は決して甘くみない方がいいと思っています。先述したように、今は雰囲気と増税と値上りによる回復傾向であり、これが継続するとは思いづらいからです。一品単価が向上しての回復にはとても危険を感じます。

客数が増えた、買上点数が増えたという回復であれば、市場拡大傾向であるので安心ですが、今は明快にそうではありません。消費者の所得ベースが増えない限り、貯蓄を切り崩すほか消費を継続的に増やすことはできないことを考えると、消費者は生活習慣を維持するために、日常必需品を購入することはするにしても、嗜好品については購入頻度や購入量を減らす可能性が極めて高い。

よって、傾向的には買い物のしかたは”目的買い”にシフトされ、”衝動買い”は減ることになり、買上点数が減る傾向になると予想できます。

■ 慢心せず、客数増のアクションをすべき

ゆえに、今のうちにとっておきたいアクションは、”客数アップ” お客様を増やすということです。世の中の増税後の回復を見つめていても決していい方向には向かいませんので、今こそ客数アっプのための、販促企画や、マーケティングをしかけ、来店したお客様との関係を深めることをすべきです。

  • 非認知顧客を  → 認知顧客へ
  • 認知顧客を   → 来店顧客へ
  • 来店顧客を   → リピート顧客へ
  • リピート顧客を → ロイヤル顧客へ
  • 休眠顧客を   → 来店顧客へ
  • アンチ顧客を  → 来店顧客へ

上記のようなアクション。当たり前とよく言われますが、この当たり前のアクションができていないところがほとんどです。なぜなら、当たり前過ぎてそう単純ではないからです。しかし、この行動ができている企業は、今の時代でも客数が増えている強い企業であることを私は実感しています。

■ 本当に良いものをおススメし、背中を押してさしあげる

また傾向として、目的買いをしようとする消費者は決して安いものに走るのではなく、多少高くてもよいものを、長く使えるものをという方向にあるため、食品でいえば無添加食品や国産品、より美味しいものといったものを買われると思います。よって、本当に良いものを心からおススメし、そっとお客様の背中を押すといった購入動機を与えることがこの時期特に必要です。

しかし、いくら背中を上手にそっと押しても、今は必要でないものはなかなか消費者は購入しない状況にありますので、嗜好品ではなく、日常必需品においての上記アクションをすることが良いと思います。

今回の経験を2015年10月の増税時にいかせ!

■ 今一度、売場クリニック・パトロールの実施を

今回の傾向も1997年と比較的似た傾向で推移していることが分かりました。次回の増税予定は2015年の10月に10%への消費税増税です。ぜひ次回の増税に今回の経験をいかしてもらいたいものです。

駆け込み需要がはじまった時期は、ほとんどが3月であったことや、3月はまとめ買いができる商品を訴求して、品切れをおこさないようにすること、4月は品揃えや陳列・発注を控える商品等が何であるか分かったと思います。ぜひ今一度こうしておけば良かったという反省をしていただき、次回の増税時には同じことをくり返さないようにしていただきたいものです。

そして、今売場が時流や消費傾向にあっているか?売場パトロールや売場クリニックを実施して、改善を急いでいただくべきだと思います。

■ データ分析のうえ、次回のために確実に保存を

一流アスリートは、勝利をおさめた時も、敗戦した時も、その原因を徹底分析して、その部分を鍛え直し、次の試合に挑みます。己を知り、そして敵を知ることで強くなり、好結果が生まれるといいます。

ぜひ小売業のみなさまも、今回の増税における傾向をデータ分析し、「こうしとけば良かった」 ということを洗い出し、次回の増税時のためにその内容をデータ保存しておいてください。間違いなく役に立つ情報になると思います。

 

今回は、『増税後の今打つ手とは』というテーマで書かせていただきました。

今回の増税前、増税後の傾向は貴重なデータであると思います。同じ轍を踏まないためにも、じっくりデータ分析し、売場クリニックやパトロールを実施いただき、次回の増税にいかしてもらいたいと思います。

というか、増税に限らず・・

特売だって、販促企画だって、同じ轍を踏んで不良在庫やチャンスロスを起こしてる店舗をこれまで、めちゃめちゃ見てきました(汗)。せっかくの経験やデータ・・ もったいない話です。

ぜひ、今回を機に『こうすればよかった分析』を日常化していただければと思います。

 2014/7/7