大胆予想!TPPで小売業はどう変わる?

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風が吹けば桶屋が ・・・ TPPが始まったら?

■ TPPが始まれば ”惣菜” が儲かる?

”風が吹けば桶屋が儲かる”という言葉がありますが、TPPが始まったら何が儲かるのでしょう?

冷静沈着に考えれば膨大な資本力を持つ各業種のトップシェア企業が、参加11ヵ国中で市場を奪い、ますます市場を独占して儲かるというのが本当でしょうが、本メルマガは小売業様向けですので、小売業の中でどうなるかをこれから考えてみたいと思います。

TPP合意によって日本が輸入している2328品目の農林水産物のうち、1885品目の関税が撤廃され、輸入食品に関しては80%が安く輸入できることになります。畜産・青果・果物・水産・米・ワイン等々、味や安全性は別として、これらが安く入るわけですから、そのあたりの商品は売価がそのままであれば確実に儲かります。しかし、必ず薄利多売戦略に出る企業が出ますので、それに対抗したり、巻き込まれると、儲からないどころか厳しい価格競争となってしまいます。

では、何が儲かるのか?

ずばり加工食品が儲かります。ほとんどの原材料が安く入り、TPPにより国産原材料(米など)も競争で安くなるでしょうから、比較的差別化しやすい自家惣菜等の加工食品は、あまり売価を下げなければ荒利率が上がります。例えば”メガハンバーグ”とか他社にはない差別化商品も安く作れます。また、若い人を中心に敬遠されている鮮魚なども調理して料理にしてあれば売れるようになるでしょう。よって・・

”TPP始まる” → デフレが止まらない → 給料上がらない → 働く主婦増える → ますます忙しい →
食事を時短 → 惣菜が売れる → TPPで原材料安い → 売上・荒利上がる → ”惣菜が儲かる”

まあ冗談みたいな流れですが、一説で実現性が0.8%といわれる”風が吹けばより桶屋が儲かる”よりは、”惣菜が儲かる”の方が率が高いですよ(笑)

ぜひ、不採算部門を縮小して、惣菜関連を拡充していただきたいと思います。

■ 商品だけじゃなくTPPで外資系企業そのものが上陸?

関税は元々価格差を守るために設定されたものです。自国の産業を育て守るために、関税で競争力を和らげるというのはこれまで当たり前の世界でした。しかし、TPPの開始でこの常識はなくなり、輸入商材を使った安さを武器にした外資系スーパー等が次々上陸し、シェアを伸ばす可能性も十分あると考えられます。

それまでに各社は、TPPによる変化に対して何で立ち向かうかを決めておくべきでしょう(続きはこのあと最終章で)

今回は、いよいよ合意に至ったTPPが小売業に与える影響について、様々な角度から書いていきます。

大胆予想!畜産物はこうなる

■ 牛肉

牛肉の関税は現在38.5%です。それがTPPで、1年目で27.5%に なり16年目に9%になります。米国産牛肉の平均価格が約700円/1kgですから、現在は約270円の関税、1年目193円、16年目63円です。30%値入の売価計算で、単純に1kgあたり1年目で110円、16年目で295円お客様は安く購入できる計算です。
国内の食肉牛肉を大きく分類すると・・

  • 和  牛 : 黒毛和種、褐色和種、日本短角種、無角和種の4つのみ
  • 交雑種 : ホルスタインの雌と黒毛和種の雄。別名「F1」
  • 国産牛 : ホルスタインの雄
  • 輸入牛 : アメリカ・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドからの輸入雑種が主力

TPPにより、現在の国内の競争同様に国を越えた競争が激化するのは間違いありません。
輸入牛の場合、あきらかに見た目も味も違うため、松坂牛をはじめとする世界的にも評価の高い”和牛”は値崩れすることなく勝ち残ると予想します。交雑種もブランドがあるので国内では善戦すると考えられます。しかし、”国産牛”は価格で相当苦戦するものと予想できます。国の補助金等の政策で大きく変わると思いますが、生産者は自力で戦っていかないといけない状況になるのは必至です。よって小売業にとっては、高級な牛肉か、安価な牛肉か、という2極化してしまう可能性があり、お客様やマスコミの動向、為替変動に品揃えが大きく左右されることになると思います。

■ 豚肉

特にTPPの影響を大きく受けるのが豚肉となるでしょう。加工向けの豚肉は、現在の1kg当たり482円の関税が125円になり、10年目以降は50円になります。おまけに一定の輸入量を超えたときのセーフガードも将来撤廃されることになりました。ソーセージ等の加工原料の場合、差別化は極めて難しく、安い輸入品に国産豚肉は対抗できない可能性が高いと予想します。

また、豚肉は牛肉と違い、国産と輸入品の差があまりありません。カナダ産やデンマーク産などは赤身と油のバランスがいいし、見た目や味もほとんど変わりません。そのあたりも今回の影響が高い要因になります。安全性を”国産”表記でうたうことで、どこまで対抗できるかがキーとなると思います。

上記の通り、安い輸入牛が入ってきても、高級な”和牛”への影響はほとんどないと考えられます。一方、価格で勝負している一般的な国産牛や豚肉については、影響が大きいと予想できます。豚肉価格は低価格帯を中心に大幅な下落が予想されており、為替相場にもよりますが、国産豚肉・国産牛は厳しい戦いが予想され、他店との競合、品揃えにおいても慎重に対応する必要がありそうです。

大胆予想!農産物はこうなる

■ 農産物

”TPP 野菜関税全て撤廃! 一部の品目除き即時に”

このような新聞記事が出て、ほとんど全ての野菜の関税がTPPで撤廃されることになりました。これは、野菜の関税はもともと低いうえ、鮮度や検疫上の理由から、農産物の関税が撤廃されてもすぐに輸入が増えることはないという理由からの農林水産省の判断だそうです。

農産物に関しては、基本的に国内の農家にとってマイナスと大方見られていますが、実際にはどこまでマイナスかは読めませんし、私はポジティブに国産よりも安い海外の農産物が大量に入ってきたからといって、生野菜のような鮮度と安全性が重視されるものに、消費者が何でも安ければ買うかといえば、買わないと予想します。

■ レモンとチェリーの事例から学ぶもの

随分古い事例ですが、昔アメリカからとことん安いレモンとチェリーが輸入されたことがありました。

レモンに関しては、価格で圧倒したアメリカ産に、国産レモン農家は太刀打ちできず、国産レモンは壊滅。ほぼ国産レモンをつくる農家は消滅しました。(現在は品質のいい国産レモンは存在しています)

一方チェリーに関しては、レモン同様安価なアメリカンチェリーを展開しましたが、ご存じのように国産さくらんぼに比べ、見た目も味も劣るため、国産さくらんぼには全く影響が無かったどころか、山形県の有名なさくらんぼの価値は、うなぎ登りに上がり、国産さくらんぼ農家はアメリカンチェリーに圧勝し潤いました。

このように安いものが大量に輸入されるからといって、国産にマイナスばかりではないですし、昔と違い今は食の安全もかなり重視されています。逆境に見られがちなTPPですが、克服しプラスにもっていく農家や小売業もたくさん現れると予想しますので、ぜひ今から戦略・戦術を考えていきたいものです。

■ 惣菜や加工品、飲食店のメリットは大きいが・・

一方で惣菜や加工品、飲食店などの外食産業は、TPPにより安く手に入る輸入品を使って調理するケースは増えてくると思います。また、豚肉やお米等は国産品までもTPPの影響で値下がりする可能性もあります。こうなるとコストが抑えられ、荒利が確保できるわけですから、惣菜や加工品、飲食店などには大きなメリットになります。

しかし、コストが下がった分、どこかがまた販売価格を下げて安売りしてくると、また価格競争が勃発し、デフレ傾向に傾きます。そして、単価が下がる分売上そのものも下がり、荒利も下がって本末転倒になりかねません。できれば・・

原材料が下がる → 各社利益を上げる → 従業員の給料が上がる → 消費者が高額の国産品を買う

というすばらしい循環に入り、日本の食糧自給率が上がり、経済が活性化することを願いたいです。

消費者目線(主婦たち)のTPP

■ 主婦たちの期待

またまた主婦たちにインタビューしてみました。「TPPについての期待」というテーマで・・

  • 回転すしやハンバーガーとか外食チェーンがまた安くなるらしいよ
  • 家でごはん作るより、TPPのおかげで外食や惣菜買った方が安くなるんでしょ
  • アメリカンビーフやOGビーフとかは、国産牛肉より安くなるんでしょ
  • TPPで、いろいろ安くなるのは家計にとってありがたい
  • TPPで安全性の低い輸入品がいっぱい入ってくるの嫌だよね
  • 牛丼200円になるんじゃない?
  • 私は中国産は絶対買わない ← この方TPP分かってないです(汗)

まあこのように大方は価格が安くなることへの期待でした。

TPPの影響は消費者にとってどういう形ででるか?今は不透明です。だから、その消費者の前面に立つ小売業の役割は重要です。おそらく、とてつもなく影響の出る商品類や価格帯というのが徐々に浮き彫りになってくると思います。

どの家庭がどう買うか?
どの価格帯に敏感に反応するか?
どの商品類に敏感に反応するか?

これらを徹底的に消費者目線で分析をして、価格・品揃えに反映させ、品質を維持・アピールしていかないとTPPに飲み込まれてしまうと思います。

■ 身の毛もよだつ怖い話・・

TPPで食の安全が失われるのを懸念していた主婦が一言・・

安いからと言って、子供たちにそんな輸入品の何が入ってるか分からない調理品を食べさせるわけにはいかない!だけど、旦那のごはんはそれでいいかも(笑) 安く済むならお財布助かるしね!

「怖すぎる~」と私が言ったら、返ってきた答えが「稼ぎの少ない旦那が悪い」ですって・・

理屈と行動が怖すぎます・・(苦笑)

小売業にとってTPPはいいことか?

■ TPPの利用価値あり

小売業の多くは仕入原価が安くなるので、TPPに賛成が多いような気がします。

TPPで原価が下がった分、利益に転換したいと期待する小売業がほとんどでしょうが、それに反し顧客確保のために値下げに踏み切るところはきっと出てくるでしょう。そしてそれにつられて皆が価格競争をしだすと、また体力勝負になります。小売業全般のためにも、各家庭のためにも、日本の食糧自給率のためにも、日本経済のためにも、皆がそうならないことを期待したいと思っています。

我が国は、過去に発生した食品表示偽装事件や消費期限切れ改ざん事件等により、食の安全に対する関心も高いです。それだけに「価格」という選択肢だけが、消費行動を司るかというと決してそうではないです。ということは、さくらんぼのように、品質や味で輸入品を圧倒することや、そのようなマーケティングは有効であり、売上や利益に跳ね返る可能性は十分あるということは言うまでもありません。

TPPは決まったことです。それに対しては各社受け入れるしかないし、それをネガティブにとらえるかポジティブにとらえるかだけの違いです。ポジティブにとらえ、これを機に飛躍する小売業がきっと出てくる思います。

■ 小売業は何で勝負するか迫られる

TPPにより小売業のビジネススタイルはまた変化すると思います。価格か品質か2極化がさらに進むでしょう。これからTPPが国内で批准されるまでまだ数年かかり、各社様子見の状態であるとは思いますが、

  • 安さで勝負
  • 安全性や高級感で勝負

どちらで勝負にでるか迫られることになり、中途半端なところはなかなか消費者に支持されなくなる可能性があります。TPPの影響は少なからず必ず小売業を直撃します。その流にのるか?変化しないか?で企業の運命は決まってくると言っても過言ではないと思います。

今からでも自社のお客様の消費動向をみる準備を始めても決して早すぎることはないと思います。

 

今回は『大胆予想!TPPで小売業はどう変わる?』というテーマで書かせていただきました。

私は個人的にTPPに賛成も反対もありません。前述したように決まってしまったことは受け入れるしかないし、それをネガティブにとらえるか、ポジティブにとらえるかだけです。私は性格上、これまで長年携わってきた小売業にとってTPPをポジティブにとらえ、利用価値ありというところで最後までいたいと思っています。

しかし、きっと結果はTPPを機に”強いところはより強く” ”弱いところは消えていく”ということになると思います。TPP戦略に近道はありません。その一方失望もなく希望があると思います。自分たちの関心事(売上・荒利を上げる等)ではなく、お客様の関心事(安全性・お買い得感・満足感)に寄り添って、お客様の動向等、今から変化の準備をいただきたいと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 2015/11/30