必見!小売業が軽減税率を活かす方法

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小売業と軽減税率 

決定!軽減税率の適用対象と行方

■ どうなるかと思ってましたが・・

消費税率10%と同時に導入する、注目の”軽減税率の適用対象”が 「酒類と外食を除く飲食料品」 と決まりました。ここに至るまでにはいろんな憶測が飛び交っていて、本メルマガでもその憶測をネタに面白おかしく書こうと思った矢先の決定でした。例えば、もし生鮮食品は据え置き8%、加工食品は10%になったら、マグロの刺身は生鮮で8%、刺身の盛合せは加工品で10%か?ならば単品の刺身を3パック1,000円にすれば8%か?とか、例えば、飲料が8%に据え置きだったら「カレーは俺にとって飲み物だ」とか言い出す奴いるぞとか(笑)

しかし、今回の決定は加工品を含む飲食料品全般に適用されることになったので、どの商品が軽減対象なのかは小売業にとっても、お客様にとっても分かりやすいです。SMでいえば、酒以外の飲食料品は税率8%と判断ができますので、無理くりの8%商品や「カレーは飲み物やー」等の変なことを言い出す人もいないと予想できます。(外食系はテイクアウト問題等で大変そうですが・・)

今回の決定について全くの私見ですが、今の資本主義社会では、何にしろ個人消費が景気の命運を握っていると思いますので、過去に8%に増税した時の消費低迷を考えれば、今回の決定はポジティブに受け止められます。ただ、軽減税率で結局得をするのは低所得者層ではなく、多額の買い物をする高額所得者層ですから、各企業のお客様ターゲット層によっては、影響は避けられないのかもしれません。

■ 日本は最高水準の食品に対する税率


低所得者層にとっての現在の日本の構造は、健康保険・年金は毎年確実に上がる、消費税も上がる、給料は上がらないという厳しい環境となるため、多くの方は収入を全て消費に回さなければならず、「お金を使わない」のではなく「使えない」状況にあります。ここは8%据え置きと言わず、本来の軽減税率の意味合い(贅沢品にだけ税金をかける)に立ちかえって、食品は0%になることが、お客様にとっても小売業にとっても経済安定のためにも理想であったと思います。今回の決定で鳥瞰的に見たら、消費は低迷、小売業全体の売上は下がることは残念ながら簡単に予想できます。

右の図のように日本はG7諸国と比較すると、最高食品税率となります。人が生きていくのに不可欠な食品に、これだけの税金を課す先進国はなく、この引き下げと、公共料金、日用品、医薬品といった生活必需品への対象品目への拡大が実現すれば、小売業にとって大きな波がやってくると思います。

そもそも今回の軽減税率は、消費税の標準税率を10%に上げるのに、食品の税率を”据え置く”というもので、 ”軽減”ではないですよね?本来の軽減税率の意味にぜひ立ち返っていただきたいものです。そして、この軽減税率は欧州を参考にした税制と思いますが、現在その参考とする欧州諸国で経済が好調なところがどこもないこともとても気になるところです。

今回は先般決定した”軽減税率の適用対象”が、どう小売業に影響を及ぼすか?そしてどう賢く対応していくか?について書いていきます。

小売業にとって有利なのか不利なのか?

■ 外食産業は不利、食品を扱う小売業はラッキー?

小売業全体で見ると売上は下がると前述しましたが、今回8%据え置きの「酒類と外食を除く飲食料品」を扱う小売業は例外です。むしろ超ラッキーかもしれません。公共料金をはじめ、医薬品、日用雑貨、外食等は軒並み増税となるわけですから、このチャンスを生かさない手はありません。一方、外食産業は明快に不利です。当然企業努力で値上げをせず据え置きに出るところが多いと予想はできるものの、これだけマスコミで騒がれれば、大した価格差はないはずなのに、外食の多い人は税負担増、家で食べる人は軽減という「外食したら損」というイメージはしばらくついてまわるでしょう。

また税率が8%で外税本体表示ですと、多くの人は瞬時に税額がいくらなのか分らないですが、10%になったら一発で判断できるようになります。例えば外食でコース料理4,980円の場合、8%だといくら税金がかかるか訳わからないですが、10%ですと498円と一発で分かります。なんか税金500円も取られる嫌な感じしませんか?この税額がいくらか分かるイメージはあまり消費にプラスに働くことはないでしょう。そういう意味でも外食産業を含め軽減税率対象外の商品にとっては辛い状況が待っていそうです。

■ やっぱり”惣菜” が儲かる?

前号のメルマガで ”TPPが始まれば ”惣菜” が儲かる?” という記事を書かせていただきましたが、軽減税率でもまたまた惣菜が儲かります。TPPのケースは原材料が安くなり、荒利が増えることにより儲かる流れでしたが、軽減税率の場合は売上が増える流れにより惣菜が儲かります。

”軽減税率始まる” → 食品以外の税率上がる → 使えるお金が減る → 食品が得に感じる
→ 外食控える → 持ち帰りを多用する → 外食持ち帰りより惣菜の方が安い → 惣菜が売れる
→ 惣菜の売上上昇 → ”惣菜が儲かる”

また冗談みたいな流れを書かせていただきましたが、あながち外れてないと思います。もし税率10%の日用雑貨等が不採算部門であれば縮小を検討して、惣菜関連の商品開発強化、売場拡充を検討する価値は十分あると思います。この方法に限らず、小売業のみなさまは今回の軽減税率の導入をよい機会ととらえ、このチャンスを逃さないようにすべきです。

勘弁してほしいインボイス方式

■ インボイス方式の導入決定

軽減税率の導入決定とともにインボイスの導入(平成33年度~)が決定しました。
インボイスとは?簡単に言うと取引伝票において明細行レベルで、数量・単価・税率・税額・合計金額などが明記されたもののことです。

現在は帳簿上の売上に税率を乗じた税額から、帳簿上の仕入に税率を乗じた税額を減算して、納税額を算出する方法をとっていると思いますが、軽減税率導入4年後には、事業者は、取引において明細レベルで税率と税額を記載するインボイスの発行が義務付けられます。税率が複数になると、標準税率の売上を軽減税率の売上といって、不正をする業者が頻発しかねないため、欧州等で実績のある「インボイス方式」を取らざるを得なくなるのは仕方ないことかもしれません。

一応、平成32年度までは経過措置を取るとしていますが、平成33年度以降小売業者は、消費税額を各明細レベルでのインボイスを元に税額算出し、納税額を決定するように変更しなければなりません。

■ 売上・利益を呼ばないシステム変更を余儀なく・・

このインボイス方式は、税を徴収する側にとっては、不正が起こりにくい、税金を正確に取れるというメリットがありますが、企業側にとってはシステム変更・入れ替えや事務作業の煩雑化で、大きな時間とコストが発生するというデメリットが予想されます。

例えば、発注時の納品伝票等は明細レベルでの処理ではなく、伝票合計や支払段階レベルでの税額処理になっているところも多いと思います。税率が違う商品が混在した場合の伝票処理やレイアウト等を古いシステムは当然考えていませんので、このような自社開発をされている企業の情報システム担当の方は、考えただけでもゾッとするのではないでしょうか?なんとか税率が異なるものは、伝票を分ける等の処理でしのぎ、システム変更を少なくすること等で、どこまで凌げるかも疑問が残ります。

インボイスは法律なので対応しなければなりませんが、これにコストをかけても売上も利益も生みません。それどころか各企業が必至で確保している利益を圧迫(納税額は増え事務コストは上がる)します。私が定説しているまさに ”IT消費” そのもので、本当に勘弁してもらいたいものです。次の章では、そうならないための賢いシステム変更の方法について書いていきたいと思います。

賢いシステム変更の方法とは?

■ 利用できるなら利用すべき補助制度

前述したように、軽減税率やインボイスに対応することは必須です。そんな単なるコスト増に対し、国が軽減税率対策予算(予備費・補正予算案)を閣議決定しました。どの企業に当てはまるか(中小企業のみ?)は、まだはっきりしてないですが、利用できる企業は絶対に利用すべきです。(以下、中小企業庁HPより)

1.小売事業者等に対するレジの導入・システム改修等支援(予備費996億円)

● 複数税率対応レジの導入等支援 (複数税率対応レジを持たない者に限る)

  • 対象者: 複数税率に対応して区分経理等を行う必要が ある小売事業者等
  • 補助率:原則 2/3 (3万円未満のレジ購入の場合 3/4補助)
  • 補助上限:1台あたり20万円(商品マスターの設定が必要な場合には40万円)

● 受発注システムの改修等支援

  • 対象者 :軽減税率制度の導入に伴い電子的に受発注を行うシステムの改修等を行う必要がある小売事業 者、卸売事業者等
  • 補助率:原則 2/3
  • 補助上限: 1000万円(小売事業者)、150万円(卸売事業者等)

2.中小企業団体等の小売業者への周知や対応サポート体制の整備(補正予算案170億円)

● 制度の周知及び対応の促進、相談窓口の設置、講習会の実施、巡回指導・専門家派遣等

上記の詳しい情報は中小企業庁のホームページ(財務サポート → 税制)を参照してください。

■ 決してIT消費はせず、IT投資すること

今回の軽減税率では、当初はマイナンバーカードをレジで読ませ、購入履歴を記録して、還付金額を算出するなんて話もあり、どれだけ小売業はシステム変更にコストがかかるかと思ってましたが、そこから思うと変更領域は縮小されたかと思います。しかし、先述したように今回のシステム変更にコストをかけても、売上も利益も残念ながら全く生みません。今回も・・・

  • POSレジ対応
  • 経理システム対応
  • 受発注システム対応
  • 値札の付け替え
  • 商品マスターのメンテナンス

等のシステム変更や現場作業が発生します。ただ単にこれだけに対応したら、最小限の投資で済むかもしれませんが”IT消費”いわゆるコストが出ていくだけで、利益圧迫(販管費増)に終わります。

過去に経験した ”消費税対応” ”2000年対応” ”総額表示対応”を振り返ると、ただ単にコストをかけた”IT消費企業”と、それを機に効果を上げた”IT投資企業” に大きな差が出たことを思い出します。後者のように、どうせシステム投資するなら、日頃抱えている問題解決や競争力をつけるため、生産性アップやコストダウンのために、この機会に改善していこうとシステム拡張やシステム導入をされ、見事に投資効果を出した企業を今回も見習うべきです。

今後はますますソフトウエアが企業の勝敗を左右するようになると思います。これまでもITが企業の利益を生んできたのも事実です。ITを活用できている企業とできていない企業とで今後ますます差が広がると小売業界でも予測できます。この軽減税率をきっかけに、ぜひ補助金をうまく活用した上で ”IT投資” するように戦略的に計画されることをお勧めします。

消費者目線(主婦たち)の軽減税率

■ 主婦たちの声

今回も主婦たちにインタビューしてみました。「軽減税率の対象品決定について」というテーマで・・

  • 外食は10%!もともと外食は控えていたけれど、さらに少なくなりそう
  • 軽減されるの結局食品だけだから、ガソリンから何から結局また負担が増えるから、もー無理
  • 8%でも家計が苦しいのに、食品だけの軽減ってどういうこと?って感じ
  • 毎日の生活に欠かせない食品に軽減税率が適用されることは良かった
  • 本当に外食は持ち帰ると安くなるの?
  • 店内で食べると880円。持ち帰ると864円。結局持ち帰る容器代とかで取られるんじゃない?
  • お酒は10%だから、旦那のお酒はあんまり買いたくない
  • 税率が違うのは分かりにくい
  • ぜいたく品以外は軽減税率適用が本当じゃないの?

このように値段が上がること(税額アップ)への不満が大半でした。

そりゃそうですよね。収入が増えずに支出が単に増えるって話ですからね。増税直後は、悲しいかなまた消費者は値段とマスコミの報道に敏感に反応してしまうでしょうね・・

■ みょうに納得させられた話・・

「外食をさらに控える」と言っていた主婦が一言・・

「でも、女子会とランチはやめな~い♪ 家族との外食は控えるけどね」
「また身勝手な話やん・・」と私が言ったら、返ってきた答えは・・
「これまでどれだけ家庭のために自分を犠牲にしてきたと思ってんの、それに家族だと4人分の10%。ランチや女子会は1人分の10%だからいいの」ですって・・

確かに・・ 間違ってないですm(_ _)m

 

今回は『小売業が軽減税率を活かす方法』というテーマで書かせていただきました。

今回の軽減税率は、特に食品を取り扱う小売業にとっては大きなチャンスです。軽減税率に伴う作業やシステム変更等の負担は与儀なくされますが、競争力をつけるいい機会です。また、日頃業務改善や問題解決を実施しようとしていても、なかなか踏み出せなかった場合はいい機会であると思います。

今のままのやり方を続けても、残念ながらほとんどの企業が競争社会に飲み込まれ、下降していくことがごく普通ではないでしょうか?今回は一歩踏み出す、ひとつ階段を上るいい機会です。この逆境?を克服し「あの軽減税率をきっかけに当社も変われた」と後から言えるようになっていただければと心から思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 2016/1/5