2017年の小売業はこうなる

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当たり前が年々変化していく

■ 同じことをしていても、よい結果は生まれない

世の中は猛スピードでどんどん変化しています。

例えば、今コンビニで毎日飛ぶように売れている「お茶や水」。ほんの20年前までは、家でつくればタダ同然のものをお金を払って買うなど考えられませんでした。また、コンビニの定番中の定番のおにぎりも、家で母親が握るのが当たり前で、買うというは発想はありませんでした。元旦営業や深夜営業もしかり、元旦はどこも営業せず、スーパーマーケットや百貨店も1月3日まで営業していないのが当たり前でした。(ちょうど20年前にGMSでは、ダイエーさんが初めて元旦営業を実施)

他にも、車には必ず積んであった地図。今はほとんど積んでないのではないでしょうか。まさか、車が流調にしゃべって道案内してくれるなんて想像もしてませんでした。

その他、老人介護は家でお嫁さんが介護するのが当たり前。おばあちゃんを老人ホームに入れた日には、「なんという鬼嫁!」「おばあちゃんかわいそう・・」と、親戚筋やご近所から非難轟々! 人間性まで疑われること間違いなし。だから何が何でも家で介護するのが当たり前の時代でした。

このように身近なことの変化を考えれば、今後、消費者に近い小売業界も大きく変化していくでしょう。それは、価格、品質レベル、品揃え、IT、決済、店舗作業、物流、顧客サービス、販売形態、集客にいたるまで変化していくのは間違いありません。しかし、残念なことにその変化に対応しよう、変化しなければ!と行動する人(考える人は山ほどいますが)は実に少ないです。ほとんどの人がただただ流されるだけ。世の中も、消費者も、変化すること激変することは分かっているはずなのに、保守的な人、変わりたくない人、過去の成功にしがみつく人が実に多いです。同じことを繰りかえして、今と違う良い結果を生むことなどないというのに・・

今回は、こんな時代の変化や対応が必要であろうことを見ながら、「2017年はこうなる」という大胆なテーマで、あらゆる進化・改革の元年となりそうな2017年の変化を予想していこうと思います。

消費者の変化はこうなる

■ デフレは続き、激しい競争は今年も続く

日本の小売業は、世界一のサービスを誇ると言われています。それは間違いないと思います。我が国は、ものあまりの時代になり、消費者の立場が俄然強くなった都合で、サービスや価格競争が過激になり、元旦営業をはじめ、24時間営業や宅配サービス、返品保証、あらゆる無償サービスなど、企業への負担や従業員への負担が増々大きくなっています。

一部大手企業ではこの問題を取り上げ、元旦営業等をやめる動きもありますが、サービス競争や価格競争は、2017年も拍車がかかると予想します。

そんな厳しい状況の中、消費者側の変化はこの先も続いていきます。国の財政赤字による国民の負担は2017年も引き続き増え、さらに企業の人件費抑制は続き、手取り収入は上がらない人が多いと予想できるため、財布のひもは決して緩まない。また、中国の経済状態やマスコミの報道により、不安をあおられ消費よりも貯蓄に回す発想の消費者が多いと予想します。そうなれば当然、より安く必要なものだけを購入するという消費活動になるため、デフレ傾向は続いてしまうと考えられます。しかし、小売業側としては、安易に値下げ合戦に参画するだけでは、知恵もなければ体力も奪われるため、ここは知恵が必要です。いかにして消費者に満足を提供するか、いかにお客様を感動させるかがポイントなってきます。お客様が望む一歩先のサービスや商品、それらを工夫して提供する企業が増える!そんな年になりそうです。

■ どんどん相反していくお客様層

団塊世代の方々が70代になっていく、いわゆる2017年問題が今年です。高齢者社会も近づいていますので、お年寄りに向けたサービスがひとつの重要なファクターとなります。高齢者をターゲットとしている小売業は、高齢者向けサービスを今後どうしていくかを問われる年になります。高齢者への配慮なくしては語れないのが2017年です。

高齢者にとっては、時代が進んでいくにつれ、セルフレジや電子チラシ、オムニチャネル等、より一層店内での買い物がしにくくなっていきます。そんな高齢者の方に向けた小売業の課題としては、歩きやすい、買い回りしやすい店内であったり、見やすい値札やPOP、高齢者に適した品揃え、様々な代行サービスを提供していかなければなりません。

それとは反対に、本格的消費者の層が2017年を皮切りに徐々に切り替わっていき、ネット世代のデジタルな人々が本格的消費する年齢になります。その人達の需要や消費意欲、クレームに至るまで、これまでとはあきらかに内容も対応方法も変化していきます。よって、この層の消費者には、ネットサービスの強化やセルフ化の強化、組織の在り方にいたるまで重要なファクターになってきます。

ターゲットの年齢層が狭い業態は別として、上記のような相反するお客様層への対応の軸を企業としては固めていかなければなりません。変化をせずに今のままを続けると、お客様から見れば「買い回りしにくい」お店となってしまいます。

ネットショッピングの進化

■ 脅威の即日配送(1時間での配送)が現実化

2017年も、ネットショッピングの需要は、ますます伸びるのは間違いありません。ネット世代の人たちが、生産人口の大半を占めるようになるうえ、アナログの高齢者の一部もネットを使うようにならざるえを得ない。また、配送もますます便利になり、Amazonプライムに代表される即日納品や数時間での配送が当たりまえになってくる。

ちなみにAmazonプライムは、対象商品や対象エリアであれば、注文から2時間以内に指定場所に届きます。さらにプライムナウというサービスであれば、対象エリアでのお買い物が1時間以内に届くという脅威のサービスです。この対象商品や対象エリアが今後広がっていくのは間違いありません。(現在、東京都・神奈川県・千葉県・大阪府・兵庫県の各一部で、対象アイテムは15000アイテム以上)

通販でその日に届くなど、一昔前では考えられないことでしたが、1時間以内なんて出前なみのサービスが当たり前になりつつあります。

さらにさらに、Amazonは「爆即配送」を研究しており、現在開発中の「Amazonプライムエア」は、ドローンが自動操縦で荷物を届けてくれるサービスらしいです。なんと注文から商品到着までに30分という目標を立てていて、日本にも導入するとの噂も出ています。

■ リアル店舗 vs ネット から 融合へ

上記のようにネットショッピングが今後も伸びるため、これまでリアル店舗しか持たなかった企業が、ネット商品販売やネットスーパーを展開しはじめます。そして逆にネット商品販売しかしていなかった企業が、リアル店舗を持つ(リアル店舗の強さを実感)という形が、2017年オムニチャネル普及の影響で出ると思われます。そして、リアル店舗とネットとの連携をとるといった戦略をとる小売業が結構出ると思われます。

即時配送やリアル店舗でのネット融合と・・ 消費者にとっては、どこでも買い物ができるというのは便利で、時間の短縮にも繋がるため、満足度向上になるとは思いますが、ここまでくると過剰サービス過ぎて、どこまでが受け入れられるかは、リアル店舗最強派(笑)の私としては、じっくりと様子を見ていきたいと思います。

いずれにしろ、2017年以降、ネットがどれだけ成長しようと、リアル店舗にはかなわないでしょう。ネット企業がリアル店舗に参画しはじめたのが、(とても分かりやすい)その証拠です。よって、どんなにネットが伸びても、リアル店舗が無くなることもありません。ただし、この世の中や消費者の変化に対応し、成長しなければ、リアル店舗の中でも弱者となってしまい、ネットやリアル店舗の強者に、あっさり喰われてしまいます。

チェックアウトの進化

■ セミセルフレジの普及

レジに並ぶ、会計待ちをする、これは消費者にとって全くもって無駄な時間。セルフレジが普及しはじめたものの、なかなか繁忙時間は解決せず、利用者もまだまだ増えていない気がします。そこで、大手企業が導入し始めたのが「セミセルフレジ」。これはスキャニングと会計を完全に分離させ、チェッカースタッフがスキャニングや袋詰めを行い、その間にお客様が会計だけ行っていただくという、レジ待ち時間短縮、つり銭間違い解消、パート従業員の人手不足解消といった効果が期待されるレジシステムです。このシステムは2017年には多くの企業が導入することが予想されます。

さらに、カード決済やスマホ等で決済するスマートペイメントが普及すれば、レジ精算は画期的に早くなります。現金で決済しないこれら手段は、年々増加しており、2017年も現金決済は減っていくと思われます。

そう思えば、私も先日ゴルフ旅行に行ったのですが、高速道路料金はETC、ゴルフ料金はカード決済、宿泊代金は事前ネット決済と、私自身も、ほとんど現金で払うことがなくなりました。これも、現金で支払うのが当たり前の20年前からしたら、想像もつかない、考えられない変化です。

■ さらに進化するチェックアウトシステム

ここへきて一括精算や、ノンチェックと言われるチェックアウト方式が出てきました。2017年は、その元年になる予感です。

ローソンとパナソニックが実証実験をしている、精算と袋詰めを自動化したセルフレジ「レジロボ」がその代表格。将来的には、商品のRFIDを使いバーコードスキャンも不要にする計画らしいです。 このシステムは、お客様自身が商品スキャンをし、専用バスケットに入れて専用レジに置くだけで、自動的に精算して袋詰めするというもの。レジ業務の生産性向上は半端ないものになります。

また、アメリカのAmazon.comは、今年の早い段階でコンビニのリアル店舗事業に進出すると発表しました。
これまで培ったノウハウをリアル店舗にそのまま使うとのこと。

すでに社員向けに開設したそのコンビニ店舗で社員を対象にした実験を始めており、今年の早い段階で一般消費者向けに総菜や生鮮品もそろえた「アマゾン・ゴー」という屋号で出店するとのことです。

さらに驚くことに、その店舗ではセンサーやカメラを駆使して、お客様が手に取ったり、棚に戻したりした商品と、その数量を人工知能で自動認識し、お客様はチェックアウトせずに、そのまま商品を持って店を出れるそうです。まるで万引き犯のようですが、決済はアマゾンで設定されている口座から自動引き落としされるとのこと。ついに、スキャンもせず、お金も払わず、店に来て好きな商品をそのまま持って帰るという考えられない世の中が目の前まできているようです。

IT化の向かう方向

■ コスト削減、生産性向上、顧客満足度向上

前述のようにハード系は、生産性を向上させるレジや、AI機能を駆使したチェックアウト等の進化、今後は品出しや陳列を自動化するロボット等も登場し、単純作業は人から機械へと、どんどん効率化されると思います。

ではソフト系はどうでしょうか?

当然、世の流れに沿い、コスト削減系(ロスを代表とする、ムダ、ムリ、ムラの排除)、生産性向上系(発注、棚割、品揃え等の自動化)、顧客満足度向上系(差別化による顧客のファン化、顧客生涯価値の引き上げ)が主軸となり、アプリケーションが進化していくでしょう。正直、これらは2000年以前から言われてきたことではありますが、爆発的な成果は上がっていないところも多いようです。

その原因として考えられるのが、データの信頼性です。オペレーションの質や、継ぎはぎで作ったベースのシステムのデータが正確に瞬時に蓄積されず、せっかく作ったシステムでうまく効果が出ない。分析するデータも偏ったり、信頼性がないために使いものにならないという現象です。ただでさえ、答えのない、正解のないデータ分析で、データが信頼できなければどうにもならないですし、自動化をしても心配がつきものです。

■ 基礎固めが重要

自動化にしろ、データ分析にしろ、大手が取り組む人工知能(以下 AI)にしろ、基礎となるデータに信頼性がなければ話になりません。そして、その発生する基礎データをリアルに瞬時に取り込む必要があるのは基本中の基本です。勉強でも、スポーツでも、本当に結果を出す人は基礎の繰り返しであったり、基本の大切さを深く理解しています。基礎ができてない人がテクニックに走り、うまくいかないことは、この理解が足りないことにつきます。

このようにIT化に関しても、上記現象になっている企業が多くあると感じます。基礎データの蓄積、そして基本オペレーションが徹底できていないのに、自動化やID-POS分析、AIというテクニック(トレンド)に走って、投資対効果がでないという2000年以降の問題の真因は、ここにあると確信しています。

2017年は変化の年。さらなるコスト削減、生産性向上、顧客満足度向上は、変化の対応として必須となります。それらを実現するためには、基礎・基本がとても重要となりますので、そこを深く理解し、IT化にも取り組むことをする企業が2017年は増えると思います。そして間違いなく、その基礎固めができた企業が数年後には強者となるでしょう。

ここ十数年のIT化の傾向を見れば、AIやオムニチャネルに代表される最新技術系のIT化は、現段階では投資額も大きく、リスクも高いため、パイオニアと言われる体力のある大手企業に任せて様子を見ることが、まだ基礎・基本が確立できていない企業にとっては、得策だと思います。そして、その技術が確立し、投資額も低くなり始めた段階で導入する方がより安全です。今はその投資対効果を大きく出すために、基本・基礎固めがポイントではないでしょうか。

 

今回は『2017年の小売業はこうなる』というテーマで書かせていただきました。

小売業は業態の垣根を越えて、激しい競争が勃発しています。そんな中、小売業の2017年は ”今後どう生き残るか” がテーマではなく、 ”どう変化に対応し、どう生まれ変わるか?” がテーマであると思います。変化に対して、そして、生まれ変わるために、今どう準備をするか?それが問われる年になるでしょう。正解はありませんが、変化を予測して準備に取り組む行動を起こせる企業が、数年後消費者の心をつかむでしょう。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

2017/1/6