小売業の基幹システム再構築のツボ

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小売業の基幹システムを再構築するためには、現状業務や既存システムの背景の理解をし、新システムの目的や範囲の決定が重要になります。小売業の基幹システムを再構築するためのツボを解説いたします。

小売業の基幹システム再構築の背景を理解する

小売業の基幹システムで再構築が迫られる背景は様々です。「システム再構築」と一言で言っても、これらの見直しの背景によって進め方や考え方が大きく変わってきます。以下、主な背景の種類について挙げます。

保守切れ

一言で保守切れと言っても、ハードウェアの保守(サーバやストレージ装置)、ミドルウェア(データベースソフト等)、アプリケーション(基幹システムのソフト)など、様々な種類に分けられます。どれが保守切れを迎えるかにより、期限の延長が可能か、どの領域の仕組みを見直すかが変わってきます。例えば、ハードウェア保守切れであれば第三者保守(機器のメーカー以外のベンダーによるサポート)により、延長できる可能性があります。また、アプリケーションの保守切れではベンダーにより延長が不可能な場合があり、その際にはシステム全体再構築に発展することもあります。

法制度の対応

最近だと軽減税率があり、基幹システムのメイン部分の商品マスターの機能や運用において大きな影響がありました。今後もインボイス制度への対応が想定され、基幹システムの機能によっては改修や再構築を迫られるリスクがあります。

システム責任者の引退・世代交代・脱属人化

小売業でのシステム化が普及したのは1980年代後半~1990年代前半。POSレジやEOS(電子発注システム)が各社で採用され始めました。その時に若手としてシステム化を進めた人材が現在では60代となり、引退のタイミングを迎えています。特定の人に頼った仕組みから、組織で運用できる仕組みへ転換をせまられる企業が多くなっています。

さらなるシステム活用のため

デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉が取りざたされています。世の中全体のシステム化・デジタル化の進展に伴い、企業経営においてもシステムを活用して、経営改善をしたいというニーズが高まっています。小売業では自動発注による店舗発注業務の効率化、流通BMSの導入による仕入業務の効率化・データ分析による数値の可視化などが主なテーマとして挙げられます。

その他

上記に挙げた背景以外にも様々な背景が挙げられます。企業合併により複数企業のシステム管理が必要になったケース、店舗数増加・企業の成長により現在の仕組みの限界、株式公開や監査法人の指摘や不正事件により内部統制が急務となった、等です。

基幹システム再構築の目的を決定する

基幹システム再構築において、まずは何から手を付けるか?その答えは「目的を明確にする」です。目的の不明確な再構築プロジェクトは、最終的には「なんのための再構築だったの?」と言われてしまい、本末転倒の結果となってしまいます。

目的と背景は似ていますが、場合によっては異なります。上記背景のうち、「保守切れ」「法制度への対応」「引退」についてはあくまでシステム的な理由であり、再構築のきっかけにすぎません。

目的を決める場合、部門により異なる思惑を理解する必要があります。一般的に、それぞれの部門では以下のような再構築についての観点があります。※あくまで一般的な例ですので、すべての小売業に当てはまるわけではありません。

経営陣

世の中の動向や、同業他社事例に対して敏感です。ITを使って経営改善・改革を行いたいという要望があります。また店舗・部門ごとの分析機能を最も使用するユーザーでもあるため、分析機能についての要望が多いです。一方、細かなシステム機能や業務内容の問題点については把握していないことが多いです。

商品部

商品マスター・特売関連のユーザー。そのため、商品マスターメンテナンスや特売運用関連の問題点について要望を持っています。また、販売計画や品揃え決定のための分析システムのユーザー部門でもあり、それに関連した要望が出ることがあります。経営陣と違い、商品の単品や分類ごとの分析機能に興味があります。

店舗運営部

近年はセミセルフレジの導入や採用難などで店舗の人員が少なくなっている中、少ない人数でも効率的に店舗運用できる仕組みに対して興味があります。例えば自動発注での発注を効率化や、操作しやすい店舗端末での商品作業効率化について要望等が挙げられます。

経理部門

取引先からの仕入情報や支払いという重要な業務について、より効率的に進められるかについて興味があります。また、企業独特の業務処理を行っていることが他部門よりも多いため、現状の業務がシステム再構築後にも行えるかどうか、懸念を多く持つ部署です。

システム部門

日々基幹システムを運用する部門として、システムが使い続けられるか、つまり「継続性」については第一と考えます。一方でユーザー部門の要望や経営陣の進めたい方向性とは認識のギャップがあるケースが多いです。

このように、部門ごとに、要望や方向性はかなり違います。再構築の目的について、経営陣だけが先行して決めていくと現場の使い勝手の面で支障がでる可能性がありますし、店舗は楽になってもそれ以上に商品部の負荷が増えては問題です。また、基幹システム再構築は多額のコストと労力がかかりますので、経営陣から見ると、「システムが使い続けるため」という理由だけで決裁を行うことは難しいです。一方で、それらの背景を疎かにすると、システムを使い続けることに支障が出て、発注・販売などの最低限の業務がこなせなくなってしまいます。

そのため、経営陣・システム部門・店舗運営部門・商品部門・その他経理部門などのそれぞれの要望を整理し、社内の決定プロセスにおいて決定することが求められます。経営陣が主導して目的を決めていくことが多いですが、多くの関係者ができるだけ全社的な視点を持ち、相互に立場を理解してシステム再構築にあたることが重要です。

 

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小売業の基幹システムの再構築の範囲を明確にする

小売業の基幹システムには、商品マスター・実績管理/分析・発注(EDI含む)・店舗等様々な領域があります。目的に照らし合わせて再構築の範囲を決定するのですが、基幹システムは相互につながっているシステムなので、部分的な入替えでは効果が限定的であるケースがあります。例えば、店舗効率化を実現するために自動発注の導入をするためには、自動発注機能を追加するだけでなくEDI化を進めて仕入データの精度を上げることが求められます。各種経営数値の可視化のためには、店舗のオペレーションを標準化して店舗から上がってくる廃棄・移動・返品等の数値の精度を上げることが求められます。本質的な解決をするためには、より幅広い範囲での再構築が求められることが多いです。

また、機能の深さ(それぞれの範囲におけるシステム要件)はどこまで現状の仕組みを踏襲すべきか、については判断が分かれるところです。すべて現行のシステムに合わせていてはコストや革新性の面で問題がありますし、現状の業務を全く無視して新システムを入れていては運用面で大きな問題が出る可能性があります。

これについては近視眼的に判断せず、結果的に目的が実現できるのであれば異なる方法を受け入れるべきだと思います。一方で新システムの仕様に合わせると著しく効率性が落ちる、不可能である、という場合はやむをえないです。いずれにしても費用対効果で判断をすべきです。

小売業の基幹システムの再構築のツボ まとめ

小売業の基幹システムは立場の異なる様々な関係者が利用するため、再構築においては様々な思惑が錯綜しがちです。再構築において、「そもそもなぜ再構築すべきなのか」の背景理解を正しく行った上で、「何のために変えるのか」である目的、「何を変えるのか」である範囲を明確にしていきます。いずれも組織として利用する仕組みなので組織の思惑を幅広く理解し、決定していくことが求められます。それが最終的には再構築プロジェクトの成功につながっていきます。

 

2020/11/27