小売業販売管理システム再構築を良いものにする進め方は?

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我が国の小売業販売管理システムは、他業界と同様に小売企業内部にIT人材が少ないことが理由でシステム・ベンダー企業に依存しているのが現実です。したがって、小売業販売管理システムの再構築に際しても諸外国と異なり、社内IT人材主導による進め方は困難であると断ぜざるを得ないのです。このような現実を踏まえつつウォーターフォール型開発とアジャイル型開発の適用度を比較して、小売業販売管理システム再構築にはどちらの進め方が良いかを解説します。

小売業販売管理システム再構築の進め方に関する選択肢

DXレポートには経営・事業戦略上の足かせ、高コスト構造の原因となっているレガシーシステムをわが国の8割の企業が抱えていると述べています。小売業販売管理システムも同様にレガシーシステム化しており「2025年の壁」が立ちはだかり、放置すればデジタル競争の敗者になることが危惧されます。したがって、前世代小売業販売管理システムを再構築するという経営判断がなされるのですが、この際に進め方を間違えると失敗し、事業継続を危うくすることになりかねません。

わが国の小売企業は、一部の例外を除いてシステム開発を外部システム・ベンダーに委ねてきました。この際に採用される開発技法は、委託契約の内容を理解しやすいことを理由に主に稼働システムの完成形を合意しながら次の段階に進んでいくウォーターフォール型開発でしたが、完成する小売業販売管理システムが稼働時点の市場で有効に機能する確約が持てないようになってきています。そうなると、小売業販売管理システムの開発技法も、試行錯誤と修正、つまりはトライアル&エラーを短期間で繰り返しながら構築をするアジャイル型開発を選択肢に入れざるを得なくなります。

小売業販売管理システム再構築の進め方に関する留意点

小売業販売管理システム再構築の進め方において、ウォーターフォール型開発を選択する場合の留意点の解説をします。

まず、良くも悪くもウォーターフォール型開発は要件定義化開発とも言い表すように、要件定義や外部設計(基本設計)局面でのみ仕様の作成と確定をする事が特徴であり、別な言い方をすれば要件定義や外部設計の局面で確定した仕様は、それ以降の内部設計(詳細設計)、開発、テスト、移行、稼働の局面で仕様の変更は原則行わないのです。テストや移行の局面で初めて実物を確認するエンドユーザーからの要望により仕様を変更する場合には、多大な工数と費用が追加で必要になり、これに伴い納期遅延が発生します。故に、要件定義や外部設計の局面では、具体的な画面と操作の模擬体験を行いながら仕様の確定と合意をして、仕様確定後に変更が生じないように留意します。次に、ウォーターフォール型開発は大規模プロジェクトであっても緻密な計画を立てることが出来るので、予算の作成と人員配置が比較的容易に行え、スケジュールの立案と進捗確認と言ったスケジュール管理をしやすいのですが、このために必要なWBSや定義書、設計書といったドキュメントが大量に必要であり、作成作業に時間を要するので、効率よく作成すると同時に手戻りがないように留意する必要もあるでしょう。

別の選択肢としてアジャイル型開発を選んだ場合の留意点を解説します。

経済産業省がとりまとめた報告書、『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』の中で、ビジネス・モデルの変化に迅速に追従できるように、頻繁に更新する事が求められる機能については、システムがモジュール化された機能に分割つまりマイクロサービス化する事によって細分化し、アジャイル開発方法により段階的に刷新するアプローチも考えられると言っています。すなわち、ウォーターフォール開発とは異なり、小規模なシステムのソフトウェア開発つまり1つの機能を単位として、「大まかな計画作成、設計、開発、テスト、リリース」と言った開発工程を小さなサイクル繰り返して開発を進めていく手法です。この小さな開発の繰り返しを「イテレーション(反復)」と呼び、イテレーションは1から4週間毎に短期で行うことが一般的です。なので、まずアジャイル開発では大まかな計画が時には思い付きで開発が進行することがあるため、途中の変更を容認しているとはいえ最初に方針を決めて定期的に補正することに留意しなければなりません。

次に、アジャイル開発ではウォーターフォール開発のような多くのドキュメントは不要ですが、チーム・メンバーの意思疎通に必要であれば、ドキュメントを作成して共有します。3つ目は、チーム単位で必要なスキルが明確になるので、チーム・メンバー個人に知識やスキルの不足が有れば、他のチーム・メンバーで補う必要があります。4つ目は、ある意味で最も重要なことではありますが、アジャイル開発では大まかな計画に基づいた設計を途中で変更することを容認している、別の表現をすれば、要求仕様が不明確な状態で小刻みな開発を繰り返すことで具体化していくので、ユーザー企業にアジャイル開発に対する理解が低い場合には、ベンダー企業に任せればよいとの誤解を生じさせかねず、契約が請負契約であれ準委任契約であれ、責任のなすりつけ合いになり、結果的に開発がうまく進まないことに留意する必要があります。

 

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小売業販売管理システム再構築の完成後の進め方

小売業販売管理システムの再構築に際して採用する進め方は、ウォーターフォール型もしくはアジャイル型のどちらかで行いますが、疎かになりがちであるのが完成後の対応です。

2020年初頭に発生したコロナ禍は、蒸気機関による産業革命、電気普及と高度経済成長以上に社会構造の急激かつ大変革をもたらすと言われています。つまり、デジタル技術の躍進に伴って社会に劇的な変化が起こり、小売業でもビジネス・モデル変革が起きるでしょうし、また既にステイ・ホーム等の行動はあらゆる産業に影響を及ぼし、小売業でもデジタル小売が劇的に伸長するといったことが起きています。今日の新型コロナのパンデミックは、ヨーロッパにおいて14世紀に発生したペストのパンデミックが封建制から中央集権制に誘導し中世から近代に変わった様な社会基盤そのものが変革する可能性が高いのです。もちろん、このような状況においては正解が無いので、経営者が大いにチャレンジ精神を発揮し、見えないリスクを自ら負い、小売業販売管理システムの改修をトライアル&エラーでPDCAを高速で回し続けて正解に近づく努力を続けることになります。

このような世情と環境においては、小売業販売管理システムをアジャイル型開発で対応する方が良いのです。故に、小売業販売管理システムの再構築の際には、完成後の改善がアジャイル型開発をしやすい様に作成しておくことが必要でしょう。

小売業販売管理システム再構築の進め方まとめ

小売業販売管理システムの再構築に際しての進め方は、初期には大規模な開発になるので、予算やスケジュールが比較的明確になるウォーターフォール型開発を採用し、完成後のアジャイル型開発に対応しやすいようにシステム単位を細かく分割した設計を行い、完成後はアジャイル型開発でトライアル&エラーを短期間で繰り返し、PDCAを高速で回し続けながらビジネス・プロセスを変革することになります。この際に重要な点は、ウォーターフォール型開発時は定義された要件に基づく事前見積と確定納期と言う旧来型の請負契約で良いのですが、完成後のアジャイル型開発時は費用も納期も要件の変化に影響を受ける準委任契約でシステム・ベンダー企業と契約することを企業トップ自らが承認しなければなりません。

2020/12/04