消費税増税の危機を甘くみるな!

KEYWORD :
小売業と軽減税率 

本当の”消費増税対策”はできていますか?

■ やらなければならない”消費税対応”

以前のメルマガ(13年9月号)で、取り上げたように消費税増税による方針決定や作業・準備は大変かと思いますが、着々と進んでいるのではないでしょうか?

価格表示方法、価格政策、取引運用、システムの変更・改修、商品マスターメンテナンス(総額→本体価格)、棚札、POP貼り換え、増税に関するお客様対応含め社内教育・・などなど。私の知っている小売業でも着々と準備を進めており、4月1日に向け順調にことは進んでいます。

■ ”本当の”消費増税対策は実は意外に進んでいない

しかし、上記のような消費税対応はやらなければ商売ができないため、期限を決めて着実に進めていきますが、消費税増税にともなう、駆け込み需要対策や買い控え対策、消費低迷対策といった実は最も大切な”消費税増税対策”は、意外に進んでいない企業が多いように見受けられます。事務的対応よりも業績に直結する対策は、一番大切でやらなければならないことは分かっているのに(特に経営層は)何故できないのでしょうか?

消費税対応でいっぱいいっぱいで、それどころではないという現場の声が聞こえてきますが、”消費増税対策”ができない一番の理由は、やらなくても商売ができなくなるわけではない為、後回しにされ、優先順位が下がっていることが大きく起因していると思います。

対策しなければ、公共料金や通信費とは違い小売業の売上減は確実と思われます。そんな本質的に最も大切な”消費増税対策”について、どう対策すべきかを今回は考えてみたいと思います。

過去の増税時はどうだったか振り返る

■ 1989年の消費税3%導入時

89年といえばバブル崩壊前の超好景気の時期です。この時期の消費者心理は「消費税が導入される前に買わないと損する」というものでした。よって、恐ろしほどの駆け込み需要が発生しました(自動車や住宅)。

量販店小売業では、ブランドものの高額商品や家具や衣料品が売れまくり、酒屋さんではダース単位のビール、焼酎のマグナムボトルが飛ぶように売れました。そして、3月にはこれら駆け込み需要の影響でスーパーマーケットでも最高売上を計上する店舗が多かったと記憶しています。これら小売業の駆け込み需要の影響で宅配運送会社も出荷トラックがなくなるという騒ぎになるほどでした。

そして、消費税導入後の消費低迷はもちろん0ではなかったですが、1か月もたたないうちにマーケットは回復しており、まさに好景気の中の消費税導入は小売業にとってもプラス要素の多いものになった89年の消費税導入結果でした。

■ 1997年の3%→5%への増税時

一方、97年といえば小売業の大型倒産や金融機関の経営破綻がおこり、消費税増税によって消費悪化に一段と拍車がかかった不景気を代表するような年でした。

この時期の消費者心理は「所得も上がらないのに消費税が上がったらこの先どうなるんだろう」というものでした。よって、将来の不安が大きく、消費が影を落とす結果となってしまいました。駆け込み需要としては、自動車や住宅は、もともとの購入検討者が購入を決定するトリガーとなったため結構売れましたが、量販店小売業においては、お酒・水・トイレットペーパー・洗剤・下着肌着などの需要はあったものの、89年ほどのフィーバーぶりはなく、思ったほど盛り上がらなかったこの時期でした。

深刻だったのは増税後の消費低迷です。駆け込み需要が思ったほどでなかったため、我慢しきれず利益を下げてでも増税前にセールに出たところが多く、それがさらに冷え込む原因を作りました。そして、増税後は大手を中心に消費税還元セールを実施したため、中小小売業は売上や利益を落としてでもの事前セールに出たせいもあり、その継続を余儀なくされ、その後の低迷はさらに続き、夏ごろまで大きく前年割れをおこした中小小売業が多かったと記憶しています。

また、数か月でマーケット回復した89年とは違い、97年のマーケットは回復に3年以上かかったと言われています。97年は消費増税に合わせて同時に減税も政府は実施し、国民負担は0として消費冷え込み対策をうち、増税に踏み切ったにも関わらず結果は散々でした。

消費増税は3%ではなく、実は60%アップ?

■ 増税は3%アップ?それとも60%アップ?

世間では消費税が5%→8%となり、消費税が3%上がると言われています。そしてみなさんも3%上がるという認識をお持ちではないでしょうか?間違いではありませんが、こういう見方もできませんか?

5%が8%になるということは、消費税そのものの上昇率は (8-5)÷5=60% となり、消費者が支払う消費税部分は1.6倍にもなります。15年の消費税10%時で考えれば2倍になります。

■ 家計消費は減少する見通し

消費者はご存じのとおり企業と違って売上がないため、預かる消費税(入ってくる消費税)がありません。ということは消費税は一方通行の払うだけであり、負担がまともに1.6倍になります。仮に20万円の消費税を支払っていた消費者は、4月から単純に32万円支払うことになります。

それに加え、復興増税や扶養手当の負担増、そして、アベノミクス+消費税増税による物価上昇ですから、家計の購買力は間違いなく減少すると思います。また、4月以降物価が上がるのは目に見えてますから、どの程度物価上昇するかに注目していきたいと思います。

消費者増税の影響をもろに受ける小売業

■ 国民の負担は大幅に増える

97年の国民負担0の増税とは違い、今回の増税は国民負担は明確に増えます。ある調査によると、復興増税、扶養手当て等の負担増をあわせて、年収500万円世帯で年間30万円以上、800万円世帯で40万円以上の負担増になると言われています。収入が増えない世帯が多い中で、貯金を切り崩してもこれまでの生活水準を維持し続ける世帯がどれだけあるでしょうか?ほとんどの世帯は、購買を控える、節約するという手段に出ると思われます。

■ 節約が難しい公共料金や通信費

消費税が増えるから、電気やガス、水道を節約しようと考えるでしょうか?先述のように消費者は、消費税は3%しか増えない感覚でいるので、一旦は考える方もいるかもしれませんが、考えていない、または、節約意識を継続することは難しいと思います。そうなると公共料金の消費税は単純に1.6倍の負担増になります。また、携帯料金やインターネットのプロバイダ料金は月額固定が多く、これも単純に1.6倍に増え、節約の方法すらありません。家賃や駐車場にも消費税をかけている家主さんも多く、これも節約の方法はありません。では、実質使えるお金が減った消費者は、いったいどこを節約するのでしょうか?

■ 消費増税は消費にマイナス

これまで話してきたように、今回の増税は過去の傾向からみても、想定される予測でも、私は消費には必ずマイナスであると思っています。しかも、節約するところは、現金を払う局面や衝動買いといった部分にシフトしてくると考えます。おそらく日々のお買い物やちょっと贅沢な買い物、趣味趣向あたりの消費を節約の対象にしてくるのではないでしょうか?

例えば、これまで月間21000円のお買い物をしてくださるお客様がいたとします。消費増税後、21600円のお買い物をしてくだされば問題はないのですが、公共料金や通信費は上がり、収入が増えなければ、逆に20000円になってしまわないか?という懸念が今回の増税には生まれます。そうなったら、実質税引売上は、18519円・消費税1481円となり、売上は2481円減り、預かり消費税は481円増えるという非常に厳しい状況になります。

小売業にとって今回は試練の状況です。供給過多の店舗数、円安による原材料高、建設コストの上昇、そこに増税に伴う支払い増と売上減、もはや戦略的にビジネスをすすめなければ生き残れない状況です。

増税や消費低迷に負けない戦略

■ ピンチはチャンス

このような試練の状況の中、何もしなければ生き残れないわけですから、買い控えや増税に負けない戦略、すなわち真の”消費税増税対策”がとても重要になります。よって今回の消費税増税は、なかなか変われない売場やサービスを改革し、やれなかった集客を実施する絶好のチャンスといえるのではないでしょうか?

やらなければいけない消費税対応(棚札の貼りかえやマスター変更等)は、あくまで支度であり準備です。それを終えてホッとするのではなく、価格・品質・品揃えをターゲットとするお客様の立場にたって真剣に考え、今こそサービス強化や販促、集客に力をいれ、戦略を練る時ではないでしょうか?

■ 駆け込み需要対策は?

過去に習い今回は、「増税で値上がりする前に買ったほうがお得」という販促手法より、「増税前にこの商品を買っておけば、保存も効くし場所もとらないからお得です」といったような、コストパフォーマンスと実用性をアピールした販促の方が効果的だと考えられます。

洗剤類やシャンプー類などの家庭用品や、醤油・米・酒類等の常温食品等々、保存が効き、定期的に買う、保管場所をとらないという点で共通する商品群に、おすすめする理由をPOPに書いて3月初旬くらいから実施すれば効果は上がると思います(過去の駆け込み需要は3月中旬にはじまっている)。また、この時期に、決してチャンスロスだけは起こさないように注意したいものです。

■ 消費低迷時期に対する対策は?

駆け込み需要で売れた商品や高額商品は冷え込むのは明快ですし、逆風が吹くのは固いと思います。少なくとも1か月くらいはそれら商品は売れ行きが落ちるわけですから、フェイス数や陳列量は考えるべきです。まして、いつものような発注をすることは頭のいい手法ではありません。消費増税後もお客様の購買意欲がわく商品をどこまで品揃えでき、サービスを準備し、販促・集客(とにかく客数を増やす)ができるかがポイントです。

そして、消費が冷え込んだ時の戦略の基本である「お客様の背中をそっと押してあげる」を実施するために、商品開発の意図や製造元の想いを十分理解して、お客様にどう表現して伝えることができるかも重要なポイントです。また、安易な安売りに走らないことも消費増税後の対策として重要になります。利益の高い商品を集客力と企画・販売力でカバーし、マーケット回復を待ちたいものです。

今回は消費税増税対策について私なりの考えを書かせていただきました。

いずれにしろ消費増税の対応に追われ、駆け込み需要・買い控え対策をうたなければ、間違いなく大変な目にあうと思います。例えば、前年の3月に売れた商品は今年は(駆け込み需要で)前年対比以上に売れるでしょうし、前年の4月~5月に売れた商品は今年は(買い控えで)前年割れするのが普通ですよね?過去に習えば、どうなるかは予想ができます。その対策をするかしないかで大きな差が生まれ、明暗が分かれることになるでしょう。

 2014/2/27