スーパー・小売業の利益率を改善する方法|商品の専門家が担う人時生産性とマーチャンダイジング改革
食品スーパーマーケットをはじめとする小売業は、長らく「売上拡大=利益確保」という成長モデルで発展してきました。
既存店の売場面積を拡張し、品揃えを増やしてビッグストア化する。
その後、商圏内の空白地に出店を重ね、総売場面積を拡大する――このモデルは、値入率を厳密に管理しなくても粗利益を確保できる時代には有効でした。
しかし現在は、以下の要因により、「売上を追うだけでは利益が残らない」構造に完全に移行しています。
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EC小売業の台頭
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人口減少と商圏の成熟
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オーバーストア状態による競争激化
特売による売上維持は、以下を招き、結果として営業利益が下振れする負のスパイラルに陥りがちです。
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粗利率の低下
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特売対応作業の増加
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オペレーションコスト上昇
この状況から脱却するためには、売上高中心の管理から、営業利益率と人時生産性を軸とした経営管理への転換が不可欠です。
本記事では、値下げを行いながらも営業利益を向上させる考え方と実践方法について、私自身の現場経験を踏まえて解説します。
小売業・スーパーの利益率の現状

【部門別利益と平均利益率】
チェーンストアで最も一般的な業績指標は、以下です。
多くの企業では、店別・部門別にこれらを算出し、前年実績や計画との差異を管理しています。
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売上高(営業収入)
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粗利益高・粗利益率
売上は、以下に分解して分析されます。
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客数 × 客単価
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客単価=買上点数 × 平均単価
粗利益率は、以下のの影響を受けます。
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初期値入率
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売価変更率(値引・廃棄)
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棚卸ロス率
つまり、粗利益率を改善する方法は限られており、構造的な制約が大きいのが実情です。
部門別粗利益率の一例(参考)
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食品スーパーマーケット中堅チェーンストア
青果24%/水産26%/精肉25%/惣菜35%/日配20%/ドライ21%/フローズン21%/酒類14%/パン19%/卵14% -
食品スーパーマーケットチェーンストア
青果32%/水産31%/精肉32%/惣菜30%/日配30%/ドライ35%/フローズン34%/酒類29%/パン27%/卵34% -
地方食品スーパーマーケットチェーンストア
青果26%/水産29%/精肉17%/惣菜15%/日配25%/ドライ26%/酒類20%/パン21% -
DS型食品スーパーマーケットチェーンストア
青果8%/水産18%/精肉14%/惣菜24%/日配20%/ドライ18%/フローズン21%/酒類12%/パン20%/卵12%
業態や加工形態の違いがあるため単純比較はできませんが、業界全体の営業利益率が1〜2%に収れんしていることを踏まえると、利益を左右しているのは粗利益率そのものではなく、オペレーションコスト=販管費であることが分かります。
本来、粗利益から販管費を差し引いた「営業利益」を部門別に把握しなければ、以下の意思決定はできません。
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どの部門が本当に儲かっているのか
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改善すべき業務は何か
店別・部門別の営業利益把握は、最低でも月次で行うべきだと考えています。
なぜスーパーの利益率は低いのか

【原価・物流・店内オペレーションの構造問題】
小売業では、営業利益率がそのまま収益力を表す指標になります。
統計データを見ても、スーパーの営業利益率は製造業と比べて著しく低い水準です。
その理由は明確です。
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NB商品中心で、付加価値の主導権はメーカー側
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価格競争が激しく、値入率を上げにくい
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鮮度維持のため、値引・廃棄を一定程度許容せざるを得ない
結果として、「低値入率を前提に運営する産業構造」になっています。
さらに重要なのが、拠点間物流と店内物流の非効率性です。
DCやTCを設けても、以下が多ければ、全体最適にはなりません。
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小ロット配送
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店間移動
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返品処理
特に利益率を大きく左右するのは、バックヤードから売場に至る「店内物流」です。
作業動線、陳列方法、補充頻度を徹底的に観察・改善し、それに合わせて拠点間物流を設計し直さなければ、利益率の改善は実現しません。
利益率を引き上げる方法

【バーチカルマーチャンダイジングと販管費改革】
ここで重要な役割を果たすのが、バイヤーやマーチャンダイザーといった「商品の専門家」です。
仕入原価が上昇する局面では、単なる値上げ対応では競争優位は築けません。
そこで必要になるのが、バーチカルマーチャンダイジングの発想です。
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製造現場への踏み込み
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物流工程の再設計
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新たな取引形態の構築
これにより、用途と品質を見直した「新しい低価格」を創造できます。
最終的な到達点はPB開発ですが、短期的には難易度が高いのも事実です。
そこで現実的な打ち手となるのが、人時生産性向上による販管費削減です。
粗利益率が下がっても、販管費率を下げれば営業利益は増やせます。
物流やオペレーションを「現場任せ」にせず、商品部門と運営部門が一体となって取り組むことが不可欠です。
事例:利益率の高いスーパーマーケット

かつて流通専門紙で紹介された神奈川県のスーパーマーケットは、販管費率12%、経常利益率7%超という驚異的な数値を維持していました。
この企業はESLP(Everyday Same Low Price)を徹底し、特売に頼らず売上を伸ばしています。
その根幹にあるのは、以下の思想です。
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人件費削減ではなく、人時生産性最大化
大型ワンフロア店舗、高天井、IT・マテハン活用により、「少ない労働時間で大きな成果を生む」仕組みを構築しています。
【参考】小売業がロス率・売変率を下げて、利益率を向上させる4つの方法
まとめ:売上は目的ではなく手段
売上を追求すること自体が悪いわけではありません。しかし、売上は目的ではなく、あくまで利益を生むための手段です。
完全作業をローコストで実現し、魅力的な商品が過不足なく、探しやすく陳列されていれば、売上は結果として「ついてくる」。
小売業の利益率を引き上げる本当の主役は、数字と現場をつなぐ「商品の専門家」なのです。
株式会社テスクは、創業以来、流通業に特化し、小売業向け基幹システムの導入支援・運用支援に関する豊富な実績と経験によって蓄積された十分なノウハウを持っています。
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よろしければ、そちらもご覧ください。
著者:株式会社テスク
愛知県名古屋市に本社を構え、1974年から流通業向け業務システムの構築に特化してきたシステムベンダーです。小売業向け基幹システム「CHAINS」は400社以上、卸売業向け販売管理システムは200社以上の企業様に導入されており、これまでに蓄積したノウハウを活かして、流通業の業務改善や経営課題の解決を支援しています。
