ロスを減らして利益を向上させる方法

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ロスは利益を圧迫する”悪しき犯人”

■ 経常利益率と不明ロス率は同等なのに・・

我が国の小売業におけるロスはいったいどのくらいあるのでしょうか?あるデータと当社の経験値を含めた、食品スーパーマーケットにおけるロス値は各々右の図のようになります。

経常利益率1~2%に対して、不明ロス(管理ミスや内部不正、万引き等の外的要因)が同等の1.1%あります。また売変ロス率(見切り、廃棄等)も3.8%と利益を大幅に上回る数値です。このようにロスは利益を直接圧迫する”悪しき犯人”です。なのに、その場しのぎの対策しかしていない企業が多いように見受けられるのは、気のせいでしょうか?

 

ロスを部門責任にしている限りダメな理由

 ■ ロスを減らすために、担当者が行動することは?

見切り・廃棄率が高い、不明ロス率が高い、そんな時どんな対応をしているのでしょうか?「売変率が高い」「廃棄が多すぎる」「ロスをなんとかしろ」。こんなことを言われた担当者は、どんな対応をするでしょうか?ほとんどの担当者は、叱られるのが嫌だから”発注を減らす” ”生産量を減らす”という行動に出ます。需要にあった生産数・量、値ごろ感、鮮度パトロール強化、売切る販促企画という、すべき行動には、私の経験上なかなか出てくれません。しかも発注や生産を減らす行為は、何故か売れ筋商品から実施しますので、ロス率は減りますが、チャンスロスを起こし、売上全体が下がるという本末転倒の結果を招きます。

 ■ ロス対策は立派な”経営課題”であり、目的は ”利益向上”

上記はロスを部門の責任にして、なかなかロス問題が解決しない典型です。先述したように、ロスは利益を圧迫する”悪しき犯人”です。利益を上げることは企業の重大課題ではないでしょうか?ロス率を仮に1%減らせられれば、利益は倍増、200億円の売上の企業であれば、2億円の効果があります。よって、ロス対策は経営課題であり、目的は利益の向上にあるはずです。となれば、発生都度に思いつきで部門に指示しているのは大問題。経営課題として、ロスが発生しないしくみづくりと、発生都度の対応ではなく、ロスの少ない体質への方向転換を図ることが重要になります。

5つのロスの原因と対策

■ ロスを5種類に分類し原因と対策を考える

 

上記のように、ロスの発覚タイミングは、販売時と棚卸時の大きく2つに分かれます。

  • 販売時の 売変ロス、チャンスロスは ・・・ 売上高を減らす要素
  • 棚卸時の 不明ロスは ・・・ 売上原価を押し上げる要素

となり、利益を圧迫することがよく分かります。逆に対策を講じれば、利益に貢献することも明白です。

■ 発覚してからのロス対策では手遅れ

また、不明ロスは発覚タイミングが棚卸時と遅く、発覚してからの対応では手遅れです。また、不明ロスの原因は大半が顧客による万引き等の外的要因と思われがちですが、半数は内部の問題という調査結果も出ています。

内部不正の問題は、警告・通達するだけでも大きな予防効果があることが実証されています。また、管理ミスも情報システムの見直しで皆無に近い形まで減らせます。

発覚してからの対応では、デメリットも損失も大きいので事前の対策が重要であることが分かります。

 

これからのロス対策の考え方とは?

■ ロス対応からロス対策へ、これからは予防の時代に

ロスの各々の原因は?と尋ねると、きちんと答えはみなさん返ってきます。しかし、その対応はというと、その場しのぎの対応をしているケースが多く見受けられます。これはなぜか?ロスの結果数字を見てから対応を考える”対処療法”になってしまっているからです。だから永遠この対応をくり返すことになる。

ロスは必然と考え、根本原因を徹底的に追及して、予防策を打ち、未然に防ぐことがこれからのロス対策になります。経営課題である、利益を向上させる『ロス対策』は予防の時代に入りました。

■ 予防例1: 売変ロス編 ~惣菜の製造計画の見直し

惣菜の製造は、主婦のパートさんの多い時間帯(朝10時から15時くらい)に集中的に製造するケースが多いです。これは売り手側の理屈であり、需要に合わせた製造とはとても言えないと思います。また惣菜は時間が立てば、鮮度・味ともに落ち、結果ロス率(見切り・廃棄)は上がり、リピート率は低下します。

このケースは ”売り手側の理屈で製造をしている” ここに根本原因があります。

この対策は、シフトに合わせる製造から、需要に合わせた製造手法に変更することが効果的です。パートさんのシフトを、時給改善をしてでも必要な時間にシフトするように切替、絶えず売場の状況を監視しながら的確に製造を指示することで、見切り・廃棄の予防ができ、ロス率低減に直結しますし、鮮度の高い状態で販売ができますので、リピート率の向上も見込まれます。

■ 予防例2: 売変ロス編 ~見切りタイミングの改善

惣菜など、閉店間際に値引きシール(%引き、円引き)を貼るケースが多いと思います。当たり前のような行為ですが、ロス率(見切り・廃棄)が高い根本原因を探ってみると、お客様が少なくなった時間に、いくら半額にしても、お客様の絶対数が少ないため、手にとってもらえる確率が少ない。また、鮮度も味も落ちているので、リピートにもつながらないことが想定できます。それ以上に、定番価格で買ってくださっている日中のお客様に申し訳ない行為でもあります。

このケースは、見切りのタイミング(お客様が減る時間帯に実施)に根本原因があります。

どのみち半額で最後に販売するならば、見切りタイミングを早め、お客様の多くいる時間帯に10%引きで5個販売しても同じことという発想で、値引き販売を実施します。これだけで廃棄率が下がり、リピート率が増え、売上向上のうえに、ロス率の改善まで見込めます。

いずれにしろ、売変ロス対策は”売切る力をつける”ことも重要課題です。見切りのタイミングに限らず、提案型のPOPの作成や、接客・接遇による販売で、売変ロスを極めて少ない状態にできるはずです。

■ 予防例3: 管理ロス編 ~IT化とルール化、そして重要性の教育

棚卸の数え間違いや入力ミス、伝票の漏れや入力ミスといった人的ミスは、人がかかわる限りついてまわります。ここを予防できれば不明ロスのうち管理ロス部分を改善できます。

EDI化、POR化、売変伝票の自動化等によるIT化と、棚卸の重要性の教育、ルール化、運用マニュアルの整備、チェックのしくみ構築でかなりのレベルで予防できます。

■ 予防例4: 社内不正ロス編 ~通達だけでも効果

社内不正の大半は、商品盗難、虚偽の返金、商品券等の盗難です。ある調査では、この3つで86%を占めるという調査結果もでています。

このケースの根本原因は、不正をしてもバレない環境と社員がバレないと思っているところです。

この予防は、もちろん厳密な在庫管理システムや、レジ監視システム、カメラ監視システムではありますが、「これらをやったら発覚するしくみが導入されている」ということを、全従業員に通達するだけで大きく改善されます。これは、バレないと思っているから犯行を犯すのであって、バレると分かったら行動すら起こさないということです。コストもほとんどかからない即実践できる予防策です。

 

 

今回は、『ロスを減らして利益を向上させる』というテーマで書かせていただきました。

ロスは利益を圧迫する要素であることは間違いありません。しかし、0にすることも不可能です(0ということはチャンスロスが出ている)。このロスを必然と考え、部門問題から経営課題へ、発生してからの対策や対処ではなく、未然に予防へと移行することが、極めて重要なロス対策ではないでしょうか。

 2013/10/25