小売業におけるサプライチェーンの光と影

小売業におけるサプライチェーンの光と影

サプライチェーンマネジメントとは、流通プロセス(もの、お金、情報の流れ)において、消費者に価値を生まない全てのムダを除き、消費者および企業がWin-Winになる企業間の最適化への共同取組みのことを言います。

そもそも日本発の素晴らしきしくみである「トヨタのカンバン方式」が、その元祖ではないかと私は思いますが、なかなか我が国では、コミュニケーションやパートナーシップが下手だからか・・ユニクロさんやニトリさんといった1社で全体最適化を実現しているケースを除き、なかなか企業間でのサプライチェーンは、上手くいっていないのが現状ではないでしょうか。

 

また取組みとしては素晴らしいサプライチェーンマネジメントも、実は万能ではありません。

チェーン(連鎖)することにより、パンデミックや国の方針等、何かの有事で一か所が停滞してしまうと、全てが止まってしまうというリスクもありますし、正直企業間となると、実際は上手く稼働しないという闇の部分も存在します。

 

今回は、そんなサプライチェーンマネジメントの光と影の部分を見ていきたいと思います。

サプライチェーンマネジメントによる光輝く小売業の未来

サプライチェーンマネジメントによる光輝く小売業の未来

小売業におけるサプライチェーンマネジメントは、30年以上前から小売業で提唱されているECRQRのこと。

30年前私は、日本は世界的に物価高の国であったため、サプライチェーンマネジメントを実施することによって、流通間の無駄をなくして、消費者に安くものを提供することで、お客様を増やし、薄利多売で利益を出すという方法が時代に合った考え方だと推奨していました。

 

しかし、現在では大きく世の中は変わっており、小売業は、薄利多売で利益を出すことは難しく、価値を提供することで利益をあげることを考えないといけません。

なぜなら、円は国際的に弱くなり、国内需要は減り続け、物価が世界的に安い国になったからです。

 

この現状には、実は多くのチャンスが潜んでいると思っています。

なぜなら、商品やサービスが提供元から消費者の手に渡るまでのプロセスを戦略的に最適化できれば、国内のみならず世界的にもコストが抑えられ、競争力がついて利益も上がります。

そして、高品質の日本の商品やサービスが世界でもてはやされることになります。まさに未来へのJAPAN小売業の光となると私は考えます。

本当に需要予測は、サプライチェーンマネジメントの肝なのか?

ちまたでは、サプライチェーンの肝や鍵は「需要予測」と言われています。

需要予測が正確にできなければ、逆に在庫コストやロスの問題が出てしまうということだと思いますが、こんなことは誰でも言える当たり前のことだと私は思います。

 

そもそも私は、需要予測などAIを使おうが何をしようが、人間がやるよりはマシになっても、正確に精密になることはないと思っています。なぜなら、所詮過去の情報を元に未来を予想するからです。

いいですか!たった18頭の競馬ですら、専門家やAIが予想しても当たらないのに、何万アイテムの小売業の需要予測なんて当たるわけがないと思いませんか?()

 

だから、そもそも需要を当てようとするところにパワーを使っていることが本末転倒であり、本質からズレています。

 

どうせパワーを使うなら、仕入れたものをきっちり売り切る方にパワーを注いだ方がいいです。

需要が外れたなら、強引に当てに行く方に力を注ぐのです。

つまり、過剰在庫を適正在庫に変えるのです。そして、需要予測は完璧ではなく、原則当たらないものと受け入れ、ロスが出ないように行動し、結果として目的に近づけるのです。

 

つまり、需要予測はあくまで手段であって、目的でもなければ本質からかなり遠いものです。よって、肝でもなければ鍵でもないと思います。

少なくともサプライチェーンマネジメントの目的は、無駄なコストをなくして、消費者に価値を届け、関連する企業も利益を上げ、全体でしっかり納税して、日本をよくすることです(^^)/

サプライチェーンマネジメントのメリット

サプライチェーンマネジメントのメリット

サプライチェーンマネジメントのメリットは、流通プロセスにおける無駄をなくし、消費者に欲しいものを欲しいだけ、欲しい価格で欲しいときに提供できるという可能性があることです。

これは消費者側にも販売者側にもメリットのあるWinwinの構築で素晴らしいことです。

 

しかし、現在販売側の値上げラッシュはすごいです。値上げと言葉を聞かない日はないくらいの値上げラッシュ。

原材料の高騰やエネルギー関係の高騰があるから仕方ないのかもしれませんが、今なら!今がチャンスと値上げしているところも多いと推測します。これは完全に流通側起点の販売側目線の発想です。

 

そもそも、ものの値が上がるということは、貨幣価値が下がっているということです。

しかも日本の景気がよくて物価が上がっているのではなく、海外からの仕入がものすごく高騰しているから物価が上がっています。

この現状から、もし消費者の収入が実質あがってないと考えると、消費者目線側は値段が下がってくれた方がありがたいはずです。つまり、それは消費者が納得できる価値を販売側は提供していないことになります。

このことを肝に銘じないと、この先の未来を俯瞰してみたときに大変なことになることを理解しないといけません。間違っても今がチャンスと値上げをし、売上が上がってラッキーとなってはいけないのです。

 

消費者はあくまで価値のあるところに、今後ますますお金を使います。仕方ない値上げに間違っても満足はしていません。

もし、今後を勝ち抜きたいなら、消費者に価値を与え、消費者の満足する商品やサービスを提供しなければなりません。

 

そこに欠かせないのが、サプライチェーンマネジメントであり、最大のメリットであると思います。

サプライチェーンマネジメントで効率化の闇と影と弱点

サプライチェーンマネジメントで効率化の闇と影と弱点

サプライチェーンマネジメントの闇は、ズバリ!『品切れと過剰在庫』です。

品切れを起こせば売上が止まり、在庫が過剰になればコストがかさみます。これは消費者側にも販売者側にとってもWinwinどころかLoseloseです。だから、需要予測が重要というロジックになると思いますが、先述したように、そもそも需要予測は簡単には当たりません。

 

この利益減に直結する『品切れと過剰在庫』は、自社内でも発生させると怒鳴られるのに、企業間となると「欠品したら取引先に迷惑をかける」「ベンダーとしての価値が下がる」「ベンダーを他に変えられてしまう」と、ベンダー側は、在庫を確保したくなる要素であふれています。そりゃ在庫を切らすわけにはいかないから、多めに確保してしまいます。

特に量販店小売業においては、このベンダーの数も半端ではありませんので、サプライチェーンで効率化と言っても現実多くの現場の担当は、この闇に包まれています。

 

また、サプライチェーンマネジメントは、取引先間のコミュニケーションが重要と言いますが、そもそも、多くの人は全体を俯瞰することができず『今しかみてない、自社しかみてない、自分のことしか考えない』というのが現実です。そんな中、相手が悪いとか相手が対応してくれないと非難をしても何も変わらなければ、サプライチェーンマネジメントは実現もしません。

 

その実現のためには、企業間で全体生産性を上げ効率化をする方法を、どうしたら良いか深く考え、知恵をしぼり、コミュニケーションというよりも仕組みをつくらないといけません。

 

売り手と買い手が、各々の利益のために、キツネとタヌキの化かし合いや、角を突き立てるのではなく、お互いが消費者のために力を合わせるということが、今の日本の小売業には求められると思います。全体最適化を図り、世界的にも価値の高い商品やサービスを提供し、利益を大幅に上げれば、日本は絶対世界でいけると思います。

 

ちなみに私は、心の底からリベートや返品という制度は、全てやめることが一番のサプライチェーンマネジメント効果であると思っています。

なぜなら、消費者に全く価値を生まない流通過程だけでの行為だからです。また、商談の数を大幅に減らすことも効果は大きいです。商習慣だけでも流通過程の無駄はまだまだたくさんあります。

 

量販店小売業においては、なおさら取引先の数は膨大となり、商談だけでもどれだけの時間を有するか、決めごとがどれだけあるか?

一生懸命知恵なく値下げを要求したところで、取引先も必ずどこかで帳尻を合わせてくることは明白です(多くは次の新商品の価格に乗る)

そりゃそうしないと自社は利益が上がらずつぶれてしまいますから。これらの無駄な動きも、大きな闇であり影であり、弱点ですね・・

まとめ

今回は、「 小売業におけるサプライチェーンの光と影 」というタイトルで、書かせていただきました。

 

小売業におけるサプライチェーンマネジメントは、需要減、競争激化、顧客満足度のハードルが上がってきている現代社会において不可欠なしくみです。

商品やサービスの供給と需要ができる限り一致し、効率的な行動や運営が求められます。

 

サプライチェーンマネジメントは、消費者や小売業をはじめとする販売者側にとっても多くの利点をもたらす一方、企業間における闇や弱点も存在します。

小売業はこれらの問題を乗り越え、Winwinのサプライチェーン戦略を構築していくことが、商売人として日本を立て直す鍵であると思います。

 

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