今から使える!スーパーマーケットだけの差別化戦略

今から使える!スーパーマーケットだけの差別化戦略

同業のみならず、他業態とも苛烈な競争に苛まれてきたスーパーマーケットは、企業淘汰が進んでいますが、他業種や他業態に比べて寡占化は進んではいません。

寡占化が進まない理由の一つは生鮮三品の売上が総売り上げの半分前後を占めている実情と、卸市場を通した商品の流通にあるのです。

 

ところが一方で大手スーパーマーケットなどは『市場取引』から離れた『場外取引』もしくは『生産者との直取引』に変化して、生鮮三品の価格の引き下げと供給の安定を実現しようとしています。

つまり、スーパーマーケットでは生鮮三品にもディスカウントの波が立ち始めているのです。

 

では、『人・もの・金』が潤沢ではない中小スーパーマーケット・チェーンは、退場せざるを得ないのでしょうか。そんなことは有りません。

流通方式の変革によらずに価格を引き下げ、価格以外の商品力強化によって競合店舗との差別化を成し遂げれば、競合店舗に対して強みを発揮し、有効な手を打てるのです。

そもそもスーパーマーケットの差別化とは?戦略とは?

『差別化』の具体的内容は後述しますが、差別化とは競争優位に立って競合する相手に勝つもしくは負けないといった説があります。

そして、スーパーマーケット業界では差別化の同義語として専門化もしくは差異化と言ったワードを使うことがあります。

 

つまり、スーパーマーケットの差別化とは、スーパーマーケットが消費者にアピールする基本的なポイントを他店より先鋭化して、価値があると認められるのが重要と考えます。

スーパーマーケット・チェーンの4つの基本戦略『鮮度』『価格』『品揃え』『サービス』において違いを認識して頂くのが重要でしょう。

 

また、マーケティングの世界では『戦略』『戦術』『戦闘』『突撃』が使われます。

『戦術』以下は比較的容易に模倣されるのですが『戦略』には長い期間を要するので真似されにくい、つまりは競争優位な時間が長期に渡ります。

 

大衆の日常の食生活を支えるスーパーマーケットは、小手先の騙し討ちを採用することなく、店舗対店舗という小局的な戦術や戦闘を展開しつつも、企業対企業と言った大局的な視点に立った競合他店との戦略的な差別化に邁進する必要があります。

スーパーマーケットこそ店舗の差別化で顧客を魅了できる

食料品をメインの扱い商品にしているスーパーマーケットにとって、4つの基本戦略に優先順位を付けると『価格』『品揃え』『鮮度』『サービス』であると考えます。

一部の特殊な地域や非日常のニーズを満たす目的の食品小売業に『デパ地下』や『高級スーパー』が有ります。

筆者はこの業態を積極的に肯定しますが、大衆の日常のニーズは満たしません。

大衆の日常の視点で言えば、先ずは安く無ければ支持されず、競合店への優位性は出せないのです。さらに、『価格』以外の項目で差異を消費者に認識して頂くのは容易ではなく、『価格』は誰の目にも即時に明らかになる点で、アピール度合いは最も高いのです。

 

但し、短期特価では消費者に見透かされるのみならず、競合店にも真似され、より強力な低価格提供で劣勢になる場合があります。

この現象を回避するには、企業単位の取り組みが欠かせません。キーワードは『ローコスト・オペレーション』です。

 

残念乍ら、低コストで営業を継続する方法に奇手奇策は無く、作業システムの改善やTC、DC、PCと言ったセンター活用、そして徹底したトレードオフを実現するPB商品比率の上昇を常態化して、新しい企業風土を作り上げた『変革』を達成しなければなりません。

次いで『品揃え』に関しては『ワンストップ&ショートタイム・ショッピング』を積極的に支援する戦略であると言えます。

 

大衆の日常の買い物の提供の王様であった商店街は業種店の集まりでした。

これに対して新業態であったスーパーマーケットは、大衆の日常の食卓に欠かせない存在としての地位を業種店から奪取して主役に躍り出たのでした。これの主な勝因が『ワンストップ&ショートタイム・ショッピング』でした。

昭和の回顧録として見られがちですが、昭和も令和も一人当たり購買点数は10点前後であり、令和の繁盛店とそうでない店舗の違いは、消費者志向の変化に合わせた品揃えの有無だと言われています。昨今のキーメッセージで言えば内食から中食への変化対応でしょう。

 

この中食対応への取り組みも、店舗に責任を押し付けるのではなく、企業として真正面からの取り組み、つまりPCのフル活用が戦略的な差別化として生きるのです。「美味しい主菜や副菜」を作る技術は高度なので、多くの店舗を展開するチェーンストア全店舗に技術を持つ人材を配置するのは不可能です。

 

自宅で簡単に温めるなどの手を加えればプロの味になるようにPCで加工した惣菜や冷凍食品を各店舗で販売するようにします。

揚げたてのコロッケも家に持って帰った時には冷めているのですから、店内加工の作り立てというキャッチコピーは消費者には今や見透かされています。

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スーパーマーケットだけの差別化の方法

生鮮食品を扱うチェーンストアであるスーパーマーケットならではの『鮮度』戦略は、捉え方によって施策に大きな違いが出ます。

もちろん新鮮であることは重要な要素ですが、品揃えの鮮度つまり『旬』の食材が売り場に展開されていなければなりません。

 

大半の来店客は店頭の陳列商品を見て、記憶のフィルターを通じて購買商品を選択するという一連の意思決定プロセスで購買品を決めるので、家庭の食卓で季節感を満喫できる演出を支援してくれるスーパーマーケットが選ばれます。

 

とは言え、既存の流通を利用していては競争優位に立てないので、自社で流通“機能”を持つことができれば、真似されにくい『旬』と『鮮』の売り場づくりができると考えます。また、ここで言う“機能”とは“コーディネートする”と同義語と理解しても良いでしょう。簡単にいえば流通とは製・配・販の工程全般を言いますが、各工程に時間とコストのムダがあるので、スーパーマーケットが短時間化を実施すれば、鮮度戦略の新たな取り組みが見えてくると考えます。

 

『サービス』に関しては、改めて『ドミナント・エリア』の形成を考え直しても良いのではないでしょうか。来店動機の筆頭は、過去も現在も、そしておそらく未来も『近くて便利』という、どこかのコンビニのキャッチコピーに他ならないのです。つまり、スーパーマーケットの顧客サービスにとって“近い”ことが最良であると言っても過言ではないでしょう。

 

『サービス』について、昨今は疎かにされているように見受けますが、『セルフサービス』という最も優れた販売方式で差別化する方法もあります。

つまり、競合他社より『セルフサービス』が良くなるとは、プリパッケージはもちろん、POPやエンド陳列、売場や棚配置そして棚割、見やすさと買い易さを演出する歩きやすい通路やコーディネートの改良が『ショートタイム・ショッピング』と来店して出会えた、旬な商品を購買するという『ウォンツ』の提供で優位に立つのです。

事例を通じて理解するスーパーマーケットだけの差別化

これまで述べてきたスーパーマーケットの差別化について、事例と比較すると妥当性が確認できます。

約200店舗の上場スーパーマーケット・チェーンの中期計画として有価証券報告書に掲示しているY社の重点施策の取り組みには、生産性の向上やEDLP、デリカ・生鮮センターの更なる活用とSPAへの踏み込み、生鮮の強化、独自商品開発、物流効率化が謳われています。

 

つまり、『価格』『品揃え』『鮮度』『サービス』の差別化による競争優位の姿勢がうかがえます。

益々激しくなるスーパーマーケットにおける業界内や業界垣根を超えた競争から抜け出すための取り組みが避けえないのは明確なのです。

 

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