検証・オムニチャネル~いま、スーパーマーケットが考えるべき戦略とは

検証・オムニチャネル~いま、スーパーマーケットが考えるべき戦略とは

「オムニチャネル」というワードを初めて耳にしたのは、かれこれ10年ぐらい前でしょうか。

当時、大々的にオムニチャネル戦略を打ち出していたセブンアンドアイホールディングスをビジネス誌がこぞって取り上げ、特集を組んでいたことを記憶しています。

 

当時叫ばれていた「オムニチャネル」は10年後の現在、どうなったのか検証をしてみました。

オムニチャネルとは?

そもそも、オムニチャネル(Omnichannel)とは何なのか?

簡単に言えば、リアル(実店舗)やネット(インターネット通販)に関わりなく、企業と顧客との様々なタッチポイントやチャネルを連携させて、一貫した顧客体験を提供していこうとする販売戦略です。

 

21世紀の初め、店舗販売、カタログ通販や折込み通販、テレビショッピングなどと並んでインターネット販売が隆盛し、ひとつの商品を販売するチャネルが多様化していくようなことが言われました。これが、マルチチャネル(Multichannel)。

 

時代が進み、次第に生活者のインターネットへの接触が増え、逆にマスメディアへの接触が減少。

ネット通販のAmazonや楽天などが次第に販売チャネルとして規模拡大する中、さらに拍車をかけたのがスマートフォンの登場でした。

それまでは、インターネットでの商品購入やYahoo!オークションなどもすべてパソコンの利用がベースでしたが、常に携帯できるデバイス スマートフォンの登場でインターネット購入(販売)の舞台がPCからスマホに移ったのですね。

 

そうすると、それまで唱えられていたマルチチャネル(多チャンネル)の販売戦略をオムニチャネル(総チャネル)に進化させなければならなくなりました。

リアル(実店舗、各種媒体)とネット(インターネット販売)を統合して顧客とのコミュニケーションを考えようということになったのです。

 

最近では、O2OOnline to Offline)に置き換えられることの多いオムニチャネルですが、O2Oがあくまでオンラインからオフラインの店舗に誘導することに重きを置いた考え方なのに対し、オムニチャネルはひとりの顧客に対する多層的で、かつ総合的なコンタクトであるといえます。

仮想スーパーマーケット<テスク>のオムニチャネル

仮想スーパーマーケット<テスク>のオムニチャネル

突然ですが、北からの寒気の影響で雪がちらつく寒い日、秋田のきりたんぽ鍋が食べたくなったとします。

朝の電車通勤時に、スマホアプリのAmazonできりたんぽ鍋セットをサーチしていると、いくつか美味しそうな写真が添付されている鍋セットが見つかりました。

どれも翌日のお届けが無く、どの店で注文してもどうやら最低1週間はかかるようです。

 

カートに入れるかどうか思案していると、スーパー<テスク>の会員向けのプッシュ通知がスマホに飛んできました。

スーパー<テスク>は、勤め帰りに食料品の買い物によく立ち寄る食品スーパーです。

プッシュ通知のタイトルは、「★本日より全国鍋紀行スタート!★全国各地の人気のお鍋のメニューがお近くのテスクで」。

プッシュ通知を長押しすると、添付の画像が拡大し、美味しそうな「海鮮寄せ鍋」らしき写真が表示されました。

 

もしやと思い、<テスク>アプリの専用コーナー「全国鍋紀行」に入り検索してみると、地域別のメニュー紹介に秋田のきりたんぽ鍋が確かにありました。

2人前、4人前のセットが扱われています。当日受け取りはさすがに無理なようですが、予約注文すれば翌日受け取りは可能のようです。

食材も比内地鶏を使っているし、ポイントのセリも秋田の地物、スープも秋田の老舗から取り寄せているらしい。そして、受取日時を翌日の19時に指定して2人前の鍋セットを選んで購入。支払いは、アプリと連携しているポイント機能付き電子マネーカードの<テスク>マネーで事前決済をしました。

 

そして、受け取りの当日、指定時間の3時間前に、スーパー<テスク>から注文商品のリマインドメールが着信。受け取りの時間や場所の確認連絡文の下に、「美味しい鍋に、特別な日本酒はいかが?」とのタイトル。

URLリンクをタップすると、<テスク>アプリのおすすめ商品コーナーに遷移。確かにあまり店頭では見られない珍しい原酒や純米吟醸酒が紹介されていて、端麗・芳醇・旨口など風味の説明のほかに詳細な商品紹介があり、ご丁寧にも蔵元の写真や関連SNSまで掲載されています。

 

試しに、ひとつの酒の蔵元のSNSをタップすると、インスタグラムが立ち上がり、蔵元を推すフォロワーたちがいろいろな料理とともにお酒の旨さを動画で紹介しています。

鍋にもぴったり合うようです。どれもそれなりの値段はするものの、お鍋をさらに美味しくいただくために、受け取りの店舗で吟味して買うことを決心します。

 

そして勤め帰りにスーパー<テスク>に入店。入り口に設置されているデジタルサイネージの画面に<テスク>アプリの画面をかざして来店ポイントを獲得すると、またプッシュ通知が飛んできました。

「★今日使える、あなたにおすすめのクーポン★」とのタイトル。クーポンは単品の値引きではなく、ボーナスポイントが付くタイプ。

プレミアムな日本酒にも使えるようで、レジですぐに使えるように「あとで使う」ボタンをタップして目的のきりたんぽ鍋セットを受け取りに行きました。

 

鍋セットの代金はキャッシュレスで精算済みなので、酒コーナーで選んだ日本酒だけセルフレジで、アプリの電子マネー決済機能で精算。レジから出力されたレシートを受け取って確認してみると、確かにボーナスポイントが3倍付いているし、スマホアプリの履歴にも同じポイント数が表示されています。

また、アプリのポップアップ画面に表示された「お知らせ」を確認すると、来月までにあと2万円分お買い物すれば、次のステージにランクに上がり、さらにポイントが貯まりやすくなるようです。ポイントも相当貯まってきたので、すべて電子マネーに変換チャージして、次の買い物で使うつもりです。

スマホアプリは、オムニチャネルのキーデバイス

スマホアプリは、オムニチャネルのキーデバイス

少し長くなりましたが、上に紹介した買い物体験記は、架空の食品スーパー<テスク>を舞台にした創作。

しかし、空想ではありません。顧客管理システムやポイントカード、電子マネーサービス、ショップメディア、POSSNSとの連携など、弊社のアプリ導入企業様では同じことを既に一部を実現されているか、実現に向けたプロジェクトが進行中です。

 

そして、すでにお気づきかもしれませんが、スーパー<テスク>での買い物体験=カスタマー・ジャーニーは、スマホアプリが軸となっています。

およそ10年前、オムニチャネル(総チャネル)で構想されていたことが、生活者のキーデバイスとなったスマートフォン、そしてその中で機能するアプリがほぼ実現しています。

 

いまや生活者は、マス媒体や紙媒体、店頭媒体、そして仕事以外でのパソコンへの接触時間は短く、スマホに接触する時間の方が圧倒的に長いことは事実。

購買行動AIDMA(又はAISAS)のすべてをスマートフォンで済ませられるほど、生活者の中ではその存在が大きくなっています。

 

それゆえ顧客へのタッチポイントも必ずしも均等に考える必要はありません。

そして、これから10年後も恐らく生活者のキーデバイスがスマホであることに変わりはないでしょう。

自社・自店の価値の見直し、そしてより良い買い物体験の提供

自社・自店の価値の見直し、そしてより良い買い物体験の提供

生活者のキーデバイスがスマホであり続けるなら、顧客リレーションの中心に据えてオムニチャネル戦略を再構成する必要があります。

顧客情報と商品情報、在庫情報、物流システムを継ぎ目なくデータ連携させること、各種のタッチポイントを繋ぐことは重要な作業ではありますが、技術的に困難な課題ではなくなっています。

むしろ、これからの課題は、スマホアプリで「どんな顧客に・どんなタイミングで・どんなメッセージ」を送れば、期待したアクションをしてくれるのか、をよく検討することの方が重要です。

 

そのためには、まず自社・自店の顧客がどのような価値を期待し、その期待に対し何が提供できるのかを明確にする必要があります。

そして次に、顧客にとってより快適に、楽しく、お得に、お買い物をしていただく体験とはどんなものか、それを実現するには何が必要かを考えることが重要です。

まとめ

今回は、オムニチャネル戦略のアップデートを考えてみました。この10年でスマホとアプリの進化は目覚ましく、生活者とのタッチポイントとしての有用性は絶大なものになりました。

10年前は、大手チェーンだけが考えるべき販売戦略だったかもしれませんが、スマホの普及、アプリの進化、SNSの隆盛、そして生活者のメディア接触態度の変化を受けて、オムニチャネルがかなり身近になってきていることを皆さまも実感されているのではないでしょうか。

 

小売業、特にリアル店舗への来店頻度の高い食品スーパーマーケット業態においても、スマホアプリを軸にオムニチャネルに本格的に取り組まなければならなくなってきています。

そこに、チェーン規模の大小、地域の差はありません。

本稿が貴社の販売戦略の見直し、オムニチャネルへの取り組みのきっかけにしていただければ幸いです。

 

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