売れてしまう!スーパーマーケットのレイアウトの工夫と改善事例とは?
スーパーマーケットの店舗は正面左側に入り口があり、まずは青果売り場に新鮮な野菜や果物が陳列されていて、朝採れ青果のフレッシュな香りが顧客の購買意欲を刺激します。壁側の冷蔵ショーケースや季節を演出する陳列が動線を誘導し、正面には鮮魚コーナーの冷蔵ケースに生きの良いお刺身や切り身が所せましと美味しさをアピールします。
突き当りを右折した鮮魚コーナーに隣接した、ゴールデンラインの精肉が今夜のメイン料理になった豊かな食卓をイメージさせ、精肉コーナーの先の総菜コーナーが脇役を提案します。
そして、明日の朝食用の和日配の豆腐や洋日配の乳製品が、朝の鋭気を養う食材として鎮座します。
このように、什器や陳列棚が設置されたスーパーマーケットのレイアウトは、おおもね決まっているのですが、理由はアメリカのディスプレイ・テクニックを学び、日本の売場に取り入れた先人の経験法則に乗っ取っているからです。
しかし、我が国スーパーマーケットの完成形ができてから50年が経ち、生活者のライフスタイルが大きく変化しているにもかかわらず、設計やデザインは、おおむね同じなのです。
「そのようなことはない。色々工夫と改善を行ったのだが、結果的に元に戻っているのだ。」との声も聞こえますが、本質をはき違えた実験が堂々巡りの繰り返しになって、効果的な解決策が見つかっていないと考察します。
スーパーマーケットへの基幹システム提供を通じて得た、非常に多くの事例を観察し考察を繰り返した知見から、レイアウトの有効な取り組み方法を解説します。
目次
買いにくい商品別レイアウト(青果、精肉、鮮魚、総菜、日配)の理由は?
コロナ禍の影響で短くなった滞店時間はコロナ後も長くはならず、生活者は「ショートタイムショッピング」を欲しています。
しかし、未だに店内で「ごゆっくりお買い回りください。」と放送している昭和的な意識がスーパーマーケットに携わる方々から払拭されていません。
「ショートタイムショッピング」への消費者欲求は、コロナに影響を受けた短期的な社会現象ではなく、最近の10年間で女性の就業比率が50%から80%近くまでになっている現状を鑑みても、不可逆的であると断ぜざるを得ません。
短い滞店時間(10-20分程度)で必要な品が視認でき、買い忘れがなく安心して買い物ができる売り場を提供しなければ生活者の支持を失います。
序章に記述したアメリカの売り場分類や配置は、来店客の行動研究により導かれた成果ですが、我が国においては見た目の模倣でしかなく精神を理解していないように見えます。
精神は「売る立場」ではなく、「選別し、利用もしくは消費する立場」でなければならないのに、素材が主役時代の、製造者や生産場所と密接に繋がる仕入先を軸とした商品分類を変えられないでいるスーパーマーケットは、売り場レイアウトも製造者や生産場所に基づく部門や商品分類に影響され、青果もカット商品が主役になった本来のあるべき分類、つまり、用途別分類に切り替えなければならない時に来ています。
この『用途別』とは、T(タイム=時)、P(プレイス=場所)、O(オケージョン=動機)、S(スタイル=生活基準)を生活者視点に据えて、売り場レイアウトと商品分類を改善して、買い物をする側が便利なようにしなければなりません。
旧来の売り場レイアウトは、生活者にとって買い難い売り場になっているとの意識変化が必要です。
しかし、現実には改善の障害がいくつかあり、最たるものが発注作業です。
つまり、発注対象商品は発注先の発注受入曜日やリードタイムに従わねばならず、因って発注先を意識した陳列せざるを得ないのです。
また、長年の固定化した売り場レイアウトは陳列場所を熟知した“高賃金熟練作業者”が重宝され、配置転換を阻害し、翻って売り場レイアウトの大胆な変更に対する熟練作業者の抵抗と、抵抗を抑えて強行した時の一時的な作業効率の低下の危惧が売り場レイアウトの変更を躊躇させるのです。
この打開策の一つは、発注に際して発注先を意識しなくても良い陳列場所であり、システム化すべきは陳列場所の知識が不要な『自動発注』であり、熟練を要求しない品出し・陳列の単純作業を実現する陳列支援です。
来店動機の促進に効果的なレイアウトの工夫
従来のスーパーマーケットシェアをネットスーパーや通販が侵食している昨今は、新たな競争相手に対する対抗措置も取らねばなりませんが、先ずはシェア浸食の阻止を講じなければなりません。
つまり、来店客の離反を防止して固定化(固定客)し、並行して来店頻度を増やすのです。
円安がもたらす食品をはじめとした食料品の値上がりは、スーパーマーケットの対応可能レベルをはるかに超えているので、好むと好まざるとにかかわらず店頭商品を値上せざるを得ません。
しかし、一部大企業を除いて賃金を上げられない中小企業の労働者は購買点数の現象という対処で乗り切ろうとしています。
一時的な物価高騰が落ち着くと商品単価上昇は落ち着きますが、落ちた一人当り買上点数は戻ません。
一人当り買上点数減少の売上押し下げ圧力を打開する主な方法は、固定客の離反防止と月当たり来店回数増加と言った来店頻度の上昇、言い替えれば、来店動機の刺激です。
これを達成するには、スーパーマーケットの基本オペレーションである『品質、価格、品揃え、サービス』であるのを忘れてはなりません。
もう少し噛み砕けば、生活者が必要とする品質(デパート並みである必要はない)の、大衆(生活者の8割)が許容できる価格で、日常買っている商品が途切れなく、いちいち係の人に陳列場所や優劣を聞かなくても手に取って吟味して購買できる売り場での提供なのです。
この際に重要なのは、お目当ての商品が売り場のどこにあるかの凡その見当をつけて見渡せる場所まで行けて、目指すカテゴリーの有無を視認でき、品目の比較検討がし易いレイアウトと陳列に他なりません。
つまり、組織戦略や数値戦略に則した部門体系の反映や、先の発注作業の容易さを提供するような売り場レイアウトや陳列ではなく、日常の食事や生活を満たすための用途が瞬時に判別できる売り場にします。
例えば、「良く売れています。」と大きなPOPを付けるより、ゴンドラエンドの様なゴールデン・ラインに縦に大量陳列すれば目立つので、売れているのが一目瞭然です。商品や売場に語ってもらえば良いのです。
言うまでもなく『ディスカウンティング』つまり、安売り哲学は揺ぎないのですが、既存商品の安売り一本槍では来店客の買い物が義務的なものになり、「心弾むお買い物」を提供できません。
スーパーマーケットは、定番商品をお値打ち価格で品切れせずに営業を継続しなければなりません。
同時に、自店がターゲットにする客層に喜ばれる商品を開発し、シーズナル売り場における試売を行った後に定番化して価格や陳列場所を決定していきます。
一時的に多量の売上が見込める商品(シーズナル品)は常時陳列する発想を止めて、シーズナル売り場は常設するも12週間前後で商品を入れ替えれば、ピーク時に一気に販売して終息後は売場からの撤去が容易になります。
過剰な在庫を持たなくても良いばかりではなく、来店顧客にエキサイティングな売り場レイアウトイメージを与えます。
ワン・ウェイ・コントロールが客動線を誘導する理由
先に述べたように、コロナ禍で短くなった滞店時間が生活者トレンドであり、ショートタイムショッピングを実現できる店舗が選択されます。
一般的に来店客の多くは、結果的に購買商品の半数は来店前に決めているのですが、残りの半数は買い回り時に決めています。
一連の行動を10分程度で完了させるには、売場の回遊を許すのではなく、一筆書きの客動線へ誘導するのが適切です。
そのために売り場で実現すべきがワン・ウェイ・コントロールです。
ワン・ウェイ・コントロールには第一から第四磁石までの売り場づくりが欠かせません。
店舗正面を除く壁側3面に沿った動線を基本に必要なカテゴリー売り場へはゴンドラエンドで誘導すると言った工夫が役立ちます。
これにより漏れなく店内の買い回りができるので、来店前に購買を決めていた商品や目に商品が飛び込んできます。
効果的なバーチカル陳列と係の店員に聞かずとも商品の魅力が理解できる店内POPで購買を決定する商品が購買されるので、買上点数の減少に歯止めがかかり、来店動機を一層刺激するのです。
ショートタイムショッピングになってしまう商品別レイアウト改善事例とは
大衆の日常(年間60日の特別の日では無く、300日の普段の日)を支えるスーパーマーケットでは、短時間で必要な品を買える売り場のレイアウトでなければならず、それには、欲しい商品の陳列場所が瞬時にわかるようにするための要件として大衆の日常に相応しくない商品(死に筋商品)を扱ってはならないのです。
そして、品目ごとの違いが明確になっているのみならず、重複しない品揃えが来店客の購買決定を容易にします。
生産や原材料の分類に引きずられた売り場レイアウトから脱却するには、例えば発注作業を自動化すれば、生活者視点に則すのが容易になります。
また、比較選択する商品が一か所にまとまって陳列されていて探さなくても、良いディスプレイを実現するのです。
ラインロビングを伸ばすも品種品群アイテム数を減らす、絶え間ない努力を続けなければなりません。
その上で、購買をする側のTPOSに則した棚陳列がワン・ウェイ・コントロールされて客動線が主通路に沿えば、ショートタイムショッピングになってしまうのです。
これら一連の対策が顧客満足度を向上し、店舗の顧客支持が高まり、物価高騰により減った買上点数が増加して、好業績をもたらします。
【参考】小売業・スーパーのオペレーション効率化は商品部が担う
【参考】お客様に満足されるスーパーの共通点とは?売上につながる店舗づくりの工夫
【まとめ】売れてしまう!スーパーマーケットのレイアウトの工夫と改善事例とは?
「売れてしまう!スーパーマーケットのレイアウトの工夫と改善事例とは?」というタイトルで執筆させていただきましたが、いかがだったでしょうか?
テスクは、大衆生活者の日常をサポートする売り場レイアウトの作成を支援する小売業向け基幹システム『CHAINS Z』やローコストオペレーションを商談にも生かせるバイヤー向け商談管理システム『商談.net』『リベート管理システム』の提供で、スーパーマーケットの「売れてしまう」売り場レイアウト創りを支援します。
ご興味がありましたら、製品ページや製品ガイドブックなどをご覧ください。
著者:株式会社テスク
愛知県名古屋市に本社を構え、1974年から流通業向け業務システムの構築に特化してきたシステムベンダーです。小売業向け基幹システム「CHAINS」は400社以上、卸売業向け販売管理システムは200社以上の企業様に導入されており、これまでに蓄積したノウハウを活かして、流通業の業務改善や経営課題の解決を支援しています。