小売業の人手不足問題|深刻化する人手不足を解消する環境改革とは?

ここのところスーパーマーケットやドラッグストアなどの現場から、人手が足りないという声が上がってきています。
これにはいくつかの原因が重なりあっていると想定できますが、いずれにしても一時的な現象ではなさそうで、業界の構造や地域社会の変化、国の制度変更(特に社会保険の扶養範囲や労働基準法等)も密接に関わっている深い問題になってきたと思われます。
そこで今回は、量販店小売業(特にスーパーマーケットやドラッグストア)における人手不足の現状とその背景、そして今後の方向性や対応方法について考察し、書いていきます。
小売業の人手不足の理由:深刻な実態

量販店小売業界での人手不足問題は、小さな現象のレベルではありません。もはや経営そのものを揺るがす大きな問題となりつつあります。
我が国の少子高齢化や若い人の働き方に対する価値観の変化による人件費の高騰に加えて、エネルギー問題による水道光熱費や燃料費、資材の値上げや社会保障費も年々上がっています。
そこにさらに最低賃金の大幅上昇によるパート人件費の底上げも重なり、採用・教育・定着の面で厳しい現実に直面しています。
以降に、現在の小売業における人手不足をとりまく環境と抱える問題を記載します。
若者の価値観の変化
近年の若者は、コスパ、タイパに代表されるように、なるべく効率的に効果的に省力化して働く方向に価値観が偏っていると推測されます。
私はインターンシップを担当していることもあり、大学3年生との接触が多く、過去数十名の学生に「給料が良ければ、土日や夜遅くの勤務は受け入れる?」とインタビューしたことがありますが、なんと誰一人「はい」と答えた人がいませんでした。
むしろ「絶対に嫌です」という回答がほとんどです…(苦笑)
これらの若者も社会に出て働きはじめ、自立したら考えや価値観が変わるかもしれませんが、お金よりも自分の時間とか、人手不足による“今はどこにでも就職できる”という学生側の余裕でしょうか、自分達のもっている働くことの価値観は、土日祝は休み、残業はなし、朝はゆっくり、夜早く、自分の時間が確保できる楽な仕事という価値観が多いと感じます。
働いて!働いて!働いて…
出世して、バンバン稼いで、いい車乗って、家建てて!みたいな昭和の価値観は見受けられません(笑)
小売業全体の傾向とデータ
私が何社かの小売業経営者や担当者に聞いた結果と、厚生労働省の調査も合わせると、量販店小売業の正社員不足は、半数以上の企業(感覚的には70%くらい)が実感として持っているようです。
また、全労働者人口に対する小売業の労働人口構成比も僅かですが毎年減少傾向にあるようです。
そして、地方では若者の人口が減少、都市部では他業種との人材の奪い合いが激化していて、パートやアルバイトの確保は簡単な」状況ではありません。
さらに、量販店小売業は長時間の立ち仕事や重い荷物の取り扱いといった体への負担も大きく、定着率の低さにつながっているようです。
ドラッグストア業界の傾向
ドラッグストア業界は、今現在も国内店舗数は増加傾向にあります。
スーパーマーケットに比べ、1店舗あたりの人員は少なくて済むものの、薬剤師や登録販売者という国家資格や公的資格を保有している人材の確保が必要です。
特に登録販売者の3年以内離職率が一般職種に比べると離職率40%以上と高めのようで、採用・定着には苦労している企業が多いようです。
スーパーマーケット業界の傾向
スーパーマーケット業界は、店舗におけるアルバイト・パート比率は70%を超えます。
もともと本社を除いては、正社員は少なめです。今は多くの企業が改善されているものの、スーパーマーケットは、依然として働きづらさや低賃金、続かない人が多いといったイメージが要因となり、採用が厳しく人手不足は加速気味です。
特に早朝や夜間の品出し担当、土日祝日のピーク時間帯のレジ担当は、慢性的に人員不足が顕著です。
なぜ小売業で人手不足が加速しているのか?~ 4つの理由

以下の4つが要因になっているのではないでしょうか?
労働条件と業務負担
前述の学生インタビューのように、早朝や夜間の勤務、土日出勤、ピーク時の残業など、自由で柔軟な働き方が求められる今の求人市場からすると、どうしても敬遠されてしまうようです。
また、重い荷物の取り扱いや、品出し・陳列の細かい作業など、体力的・精神的な負荷が求職者を少なくし、離職率の高さになっていると考えられます。
他社他業種との人員確保競争激化
飲食業やサービス業、物流関係でも人手不足は深刻化しています。
時給が同じくらいであれば、仕事内容が楽な方へ、休んでも代わりがきいて、休みやすく働きやすいところに人材は流れます。
昭和世代の私からすれば「何を甘いこと言うとるんや!」「若いうちの失敗や経験が未来の自分を創る!」と言いたいところですが、そんなこと言ったら誰も来なくなってしまいまので(汗)今の若者の価値観を受け入れざるを得ない状況です。
少子高齢化、そして地域人口格差
少子高齢化による労働力人口の減少は全国的な問題ですが、特に地方では若者の人口が少なく、採用基盤そのものが縮小しています。
地域に残る高齢者層は働く意欲があっても体力的な問題があり、量販店小売業の重い荷物の取り扱いや長時間労働が難しいケースもあります。
IT化やDX化のシステム化の遅れ
部分最適で、セルフレジや自動発注システム等は、導入が進みつつありますが、店舗作業のほとんどは依然として人による作業です。
全体最適を目指し、DX化を一気に進めたいところですが、例えばスーパーマーケットであれば、鮮魚・精肉・青果、惣菜部門は高いスキルが求められ、IT化や短期育成も難しいため、人材不足が深刻化してしまいます。
小売業の今後の人手不足対策

現在の人手不足の中で、スーパーマーケットやドラッグストアが生き残るためには、どうしたら良いでしょうか?
以下に対策案を記載します。
AIやロボットの導入・投資
人手のかかっている事務作業や属人的作業はAIで大幅改善できる可能性があります。またいくつかの店舗作業もIT化ロボット化できると思います。
実現すれば少ない人員で運用が可能になる可能性が非常に高いです。
また、人手不足を解決しようと賃金を上げたり、福利厚生を充実させたりする必要もなくなります。
そして、採用や教育や定着といった多くのコストがかかるものまで軽減できます。何よりも多くの従業員が多忙から解放されるということは、みなに余裕ができます。余裕ができると思考も接客も良いものになります。
つまり、全体で見れば投資はすぐに回収できる可能性が高く、多くの問題が同時に解決できるということです。
参考:小売業での生成AI活用法 ~生成AIが変える未来の小売業業務とは?
業務改革と効率化のためのIT投資
例えば、現在常識的に実施しているメーカーやベンダーとの商談も、やめてしまえばいいと思います。
目先のリベートや値引きに左右されるのではなく、年間で値入や荒利何%とかいうコミッションで、商談そのものをほぼ無くしてしまい、その分バイヤーはお客様の満足度のために時間を使うようにすると、明らかに結果が変わると思います。
このような常識をぶっ壊して業務改善できる業務は、思い切って次々とやる時期に来たと思います。惣菜の調理時間短縮策など、他業種を見習えば小売業には改善できる常識的業務が山ほどあると思います。
IT化に関しても、セルフレジの導入はもちろん、AIによる需要予測や自動発注システムの導入、不良在庫や廃棄商品のデジタル化などにより、従業員の時間を接客や販売促進といった付加価値業務に振り向けられる環境を作れば、やりがいも充実感も増し、定着率も上がります。
つまり、人手不足問題は解決し、従業員、そしてお客様満足度は向上するということです。
柔軟で魅力的な働き方の提供
上記が実現すれば、短時間勤務や固定シフト、週末のみ勤務など、多様な働き方を可能にすることができると思います。
また、重い荷物は若者に指示が出るしくみとか、重労働を軽減するためのカートや昇降機の導入、作業動線の改善など、体への負担を減らす工夫も重要になります。
このように常識をぶっ壊しながら、お客様や従業員に価値を生まないものは、徹底排除!断捨離していくことが今後の人手不足解消の対策であると考えます。
未来に向けた人手不足を解消する小売業の姿

今後、労働人口はさらに減少し、採用競争は一層厳しくなると予想します。
また、ネットショッピングはさらにあらゆるカテゴリに参入してくるでしょう。
そんな中で量販店小売業が勝ち残るためには「地域密着」と「働きやすさ」「いつもお客様を気にかける」を実現する店舗運営で高付加価値であることが必須であると感じます。
地域密着
地域のみなさまに感謝し、価値を提供することに全力を傾け、ネットショッピングや他の店舗とは比べものにならないくらいの突き抜けた地域密着が必要かと思います。
そのためには、お客様を気にかけ、お客様を知り、お客様が求めている価値を届ける必要があります。
人にしかできないこと以外は、ITやAIに任せて、接客やお客様価値の創造に企業の力を注げば、突き抜けた地域密着は必ず実現できます。
働きやすさ
地域の高齢者や主婦層に向けた「生活リズムに合わせた働き方提案」やIT化で少人数運用等の実現も重要ですが、従業員がお客様の役に立ち、価値が提供できると、お客様から感謝される環境が出来上がります。
人は役に立てると幸せホルモンがドバドバ出ますので、これは間違いなくやりがいに繋がります。
やりがいほど働きやすい環境はありません。
従業員満足度
人手不足は経営上の大きな問題ですが、それをきっかけに業務改革を進めれば、間違いなく生産性の向上や従業員満足度の改善につながります。
お客様や現場の声を真摯に聞き収集し、労働環境をやりがいのある方向へ改善していくことが、スーパーマーケットやドラッグストアの人手不足の解消に繋がり、持続可能な成長にも繋がります。
まとめ
今回は、「小売業の人手不足問題」というタイトルで、書かせていただきました。
スーパーマーケットとドラッグストア業界では、人手不足という構造的問題が続いています。
しかし、未来を見据えたIT化投資と働きやすさへの改善は、現場の負担軽減だけでなくサービスの質向上や業績向上という経営の成長にも直結します。
人にしかできないこと以外は、AIやITに任せて、お客様が何に喜び、何を求めているか?どう価値を提供していくか?というところへ仕事をシフトし、やりがいのある職場、付加価値の高い企業へと成長できると思っています。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
著者:株式会社テスク
愛知県名古屋市に本社を構え、1974年から流通業向け業務システムの構築に特化してきたシステムベンダーです。小売業向け基幹システム「CHAINS」は400社以上、卸売業向け販売管理システムは200社以上の企業様に導入されており、これまでに蓄積したノウハウを活かして、流通業の業務改善や経営課題の解決を支援しています。
