小売業が”2025年の崖”から’2030年SDGs(持続可能な開発目標)’で、DXを実現するために

小売業が”2025年の崖”から’2030年SDGs(持続可能な開発目標)’で、DXを実現するために

小売業を取り巻く環境は、この先も刻々と変化を続けるでしょう。

人口減少、競争激化で需要が先細りするのは周知の事実ですし、自動化の波による社会の変化、ネット環境の5Gによる進化等により、これまで以上に、考案・構築したビジネスモデルの寿命は極端に短くなっていくと予想できます。

 

そして、軽減税率やインボイス対応をはじめとする法改正や、働き方改革による人材確保・人件費の変化により、コスト面は増大していく上に、今後はますますお客様が自分の判断で店や商品を選ぶ傾向にあるため、思考力と資金をかけて、選ばれる店づくり、選ばれる品揃えをしなくてはなりません。

 

このように多くの小売業は、今のまま何も変化しなければ、売上は減少方向、コストは増大方向といった環境変化の波に飲み込まれ、淘汰されてしまう可能性があります。それを回避するためには、各社自分達がどこへ舵を切るのか?どのように乗り切るか?のシナリオを考え、前に進まなければなりません。

ではどう舵を切るのか?

そのシナリオ通りに舵を切り、前に進むのに最も有効な方法は、ITの活用です。少ないコストで多くの売上・利益を生むには欠かせない技術ですし、ムダ・ムリ・ムラといったお客様に価値を生まない仕事から、リーズナブルな提供価格の実現、接客サービス、満足度向上といった、売上・利益を生む仕事に多くの人がシフトできる唯一の方法であると思います。

 

そして、そのシナリオ作りにも、戦略にも、合理化にも、”完成度の高い基幹システムがベースとして必要不可欠なことは言うまでもありません。

しかし、その前に大きく立ちはだかる問題があるのです。

 

それが、経産省から報告されている2025年の崖」問題です。経産省そのものは、最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性や国力低下という全体を懸念しているのであって、個々の企業のことを心配しているのではありませんが、多くの企業が2025年に向けて問題が発生する可能性を秘めています。

小売業も例外ではありません。

 

今回は、「2025年の崖」問題を飛び越え、小売業がDX(Digital Transformation:デジタル・トランスフォーメーション)を取り巻く変化に対応する、今からできるDXについて考えていきたいと思います。

小売業がDXに向かうべき方向性とは?

自社がDXに向かうべき方向性は明確にしなければなりません。2025年の崖を考えるよりも先に、企業はまず自社が目指す”あるべき姿”を明確にしなければなりません。

経営陣からスタッフにいたるまで、どこに舵を切り、どこに向かうかが明確でなければ、環境の変化や立ちはだかる2025年の崖を飛び越えることも、よじ登ることもできず、スタッフはどこに力を発揮すればいいのか判断がつかないでしょう。

 

みなさんの会社はDXに向かうべき方向(自社のあるべき姿)は、はっきりイメージできてますでしょうか?

図のように、自社のあるべき姿と現状の差。赤い矢印の部分が、現状足りない部分であり、向かうべき方向に対する取り組むべき課題(改革やアクション)です。

この部分を具体化し、計画・行動・分析・反省を繰り返し続けなければ、自社のあるべき姿に到達することは決してありません。

 

では、あるべき姿に必要不可欠なものは何でしょうか。この課題に対してどのように取り組めばいいのでしょうか?

 

 

それにはDXに向かっていく時代、ITを活用した合理化・戦略化が必要不可欠です。

なぜなら、今後も人の確保が難しい小売業界では、人を確保するのではなく、”人が少なくても回るしくみづくり”を構築すべきであると考えるからです。そうなれば、自ずと大半をITに頼らなくてはならなくなります。

なぜなら、これらの課題全て人の力だけでできますか?そして、それができる優秀な人材を集めることができますか?ということになるからです。

 

この先小売業には、競争激化の波がさらに押し寄せます。お客様はますます、数多くあるネットショップやお店、商品の中から、自分の好みを選ばなくてはなりません。

お客様に選ばれる店作りには、お客様のニーズをいかに取り込み、その半歩先に商品やサービスを揃えるか、そして新たなお客様をどのように開拓するか?今後の生き残りをかけ、これらをいかに少ないコストで、多くの効果を出すかが重要な鍵となるのではないでしょうか。

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経済産業省が提唱する ”2025年の崖”とは?

”2025年の崖”とは何でしょう。経済産業省が発表した「DXレポート」によると、多くの経営者が、将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して、新たなビジネス・モデルを創出・柔軟に改変するDXの必要性について提唱しています。しかし実際には多くの問題があります。

 

  • 既存システムが、事業部門ごとに構築されて、全社横断的なデータ活用ができなかったり、過剰なカスタマイズがなされているなどにより、複雑化・ブラックボックス化が課題となっている。
  • 経営者がDXを望んでも、データ活用のためにブラックボックス化のような既存システムの問題をまず解決しなければならない上に、業務自体の見直しも求められる中(=経営改革そのもの)、現場サイドの抵抗も大きく、いかにこれらを実行するかが課題となっている。

 

 

この2つの課題を克服できない場合、DXが実現できないだけではなく、2025年以降国全体で見れば、最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性があるとしています。

経済産業省は、この事態を称して2025年の崖」と呼んでいます。

 

私の解釈でこれを、平たく言うと、「自社のあるべき姿に向けて、人が少なくても回るしくみを各社作らないとこの先競争力を失い苦しくなる一方であるが、複雑怪奇にしてしまった基幹業務システムでは、構築困難な上に、このままでは経営そのものが崖っぷちに追い込まれるか、崖から転落してしまう可能性がある。

それにより国としても2025年以降経済損失も出る上、国際競争力も失い国力も弱まってしまう。」ということではないでしょうか。

小売業のDXにふりかかる”2025年の崖”問題

では、複雑怪奇になり、ブラックボックス化した基幹業務システムを放置した場合どうなるのでしょうか?

もちろん、これまで蓄積したデータを最大限活用できるようなDXは実現することができなくなる上、そのメンテナンスを行う人材も今後不足し、高額な保守費用の割には満足いく対応が得られなくなるでしょう。

そして結果として、多くの不安と大きな負債を抱えることになるのではないでしょうか。

 

こうしてみると、国ではなく、自社から見た「2025年の崖」は、経営そのものが崖っぷちに立たされる可能性のある重要な問題です。はたして経営陣の方々は、このことに気づいているのでしょうか?

せっかくなので小売業のDX「2025年の崖」をきっかけにして、自ら考えてみてはいかがでしょうか?

・大切なお客様に与える影響は何があるか?
・自社はどうなっていくのか?
・関連する企業に与える影響は?

 

 

 

社会全体の価値観に振り回されることなく、まずは自社の状況をよく把握し、理解したうえで対策を講じることのできる絶好のチャンスがやってきたと私は思います。

小売業 DXが進まない理由とは?

前述したように、今後小売業が競争の波に打ち勝ち、収益の確保、競争力強化をするためには、新たなビジネス・モデルを創出し、柔軟に対応するためのDXが効果的です。

DXはそもそも、「われわれ人間の生活に何らかの影響を与え、進化し続けるテクノロジーであり、その結果、人々の生活をより良い方向に変化させる」という概念なので、世間的には、AI、ロボット、クラウド、IoT、ビッグデータ、フィンテック、VRなどの最新技術を使った集合体として認識されてしまいがちですが、私はその全ての土台となるのが基幹システムであり、DXの心臓部にあたるシステムであると思っています。

ここがしっかりしていなければ、DXも何もありません。基礎や土台のしっかりしていない家に、どんどん増築すれば弊害が出ることは誰でも分かること。

耐震補強もせずに増築したら危険なのは明白ですよね。

 

しかし、多くの企業が基幹システムは別物と考えるために、目先の最新技術に飛びつき導入し、上手く稼働しない、効果が上がらないという問題にぶち当たります。

そもそもの基幹システムのデータ入力の遅さや、正確性の問題、複雑怪奇なブラックボックスとの連携には無理があるから当然の結果ですよね。

 

結局、DXが進まない実現できない、そして、経済産業省が警鐘をならしている、2025年以降最大12兆円/年の経済損失が生じると言っているのは、基幹システム(いわゆる土台となる心臓部のシステム)が、複雑化・ブラックボックス化して手に負えなくなる。

 

そして、それにより国内の技術者もDXに踏み込めず、日本は国際競争力を失い、大きな損失を出すと言っていると思います。

小売業DX実現の妨げ ~ブラックボックス化は巨大なブラックホール~

基幹システムの複雑化・ブラックボックス化は、システムの内部構造が分からないために、トラブルが発生すれば多大な時間がかかり、お客様に価値を生まない仕事、すなわち利益にも売上にもならない仕事に、多くの人が引き込まれ、業務そのものを止めてしまう危険性すらある、質量が巨大なブラックホールのようなものです。

ある情報システム担当者は、基幹システムのブラックボックス化に大きな危機感を持っているようで 何も起きないことを願うだけ という、非常に危ない発言をしていました。

健康管理や車のメンテナンスと同じように、事前に予防をしておけば、結果として大きな時間や費用をかけることもなく、病気や事故が防げるように、システムも同様、トラブルが発生したり、2025年をこのまま迎えるよりも、今から準備・予防をしておけばトータル的な時間や費用は、断然少なく済むのは明白です。

 

では、なぜやらないのでしょうか?

まず、経営者の方々はブラックボックスが招く悲劇を認識していない。または、聞いても耳の痛い話で、かつ理解しにくいために、問題定義そのものをしていない(情シスで解決してくれ)ということがあげられます。

そしてもう一つは、問題を分かっていても現場の人は勝手に、できないと判断していること。

 

なぜできないと判断するのか?

そこには多くの言い訳や、できない理由が存在します。最も本質的で重大な問題であるにも関わらず、「何も起きないことを願うだけ」に代表されるように、現場の人達も見て見ぬふりをするしかないのかもしれません。

 

しかし、これだけ環境や時代が変わっている現状で、旧態依然とした入力システムや基幹システムを、できない理由をあげ、見ないふりをするのは致命的です。

できない理由を正当化しても何も結果は変わらないし、問題も解決しない。

自社が向かうあるべき姿に向けて変化をしていかなければ危険な状態であることも分かっているはずですから、ここは勇気を持って、ぜひ立ち上がっていただきたいと思います。

小売業DXを実現するために、今後のIT化の鍵となるもの

小売業DX実現のためには基礎や土台、そして本質が重要となります。

前述のように、AI、ロボット、クラウド、IoT、ビッグデータ、フィンテック、VRなどの最新技術の目新しい目先の機能に興味や目がいくことは悪いことではないですが、自社のあるべき姿や本質から遠ざかること、そもそもベースとなるデータが正確に・鮮度高く・効率的に入手できなければ、それらDXは実現できないことを十分理解しておかなければいけません。

 

以下は一つの案であり、私の持論なので賛否両論あると思いますがが記載させていただきます。

 

 

これまでと真逆の方法で実践してはどうか?と考えました。これまでのシステム導入の多くのやり方である”パッケージを業務に合わせる”。すなわち業務パッケージをベースにフィット&ギャップを実施し、業務にシステムをカスタマイズして合わせる方法。

そうではなく、その真逆の方法である”業務をパッケージに合わせる”という方法の方が、経営に健全ではないかと私は考えています。もちろん完成度の高い業務パッケージが世の中に存在することが大前提です。

 

そう、現場の仕事の仕方をパッケージに思い切って合わせるのです。無茶を言うなと言われそうですが・・

そうすることのメリットはもの凄く多くあります。

 

例えば、ブラックボックス化や属人化からは解放されますし、他社で効率化を図れた業務改革もそのまま使えたりします。当然導入コストも廉価となり、バージョンアップや新機能の追加も心配なくスピーディに導入できます。また、他に良きパッケージが見つかれば乗り換えて、また業務を合わせるだけで、業務改革や働き方改革も可能になるという考え方もできます。

そもそも、システムを独自のものにするから、複雑怪奇になり、ブラックボックスとなるのです。

 

独自化すべきなのは、基幹システムではなく、お客様サービスや自社の向く方向であると考えます。多額な投資をして、パッケージを業務に合わせてカスタマイズすることではないように思います。

基幹システムは、各社同じパッケージを使っても、カスタマイズをゴリゴリ繰り返して各社バラバラなシステムが多い現状に対し、お店に入ると品揃えも価格もそんなに各社差を感じないのは、私にとってある意味不思議な現象です。

 

このように、基幹システムは各社独自化されているのに、商品の価格や品質、品揃えやサービスは、どこへ行ってもあまり変わらない???

真逆のような気がしているのは私だけでしょうか?

小売業が”2025年の崖”から’SDGs(持続可能な開発目標)で、DXを実現するために まとめ

今回は『小売業が”2025年の崖”から’SDGs(持続可能な開発目標)で、、DXを実現するために』というテーマで書かせていただきました。

今回は詳しい説明を省きましたが、2025年の崖を越えたら、みなさまもご承知の通りSDGs(持続可能な開発目標)という​2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標(17のゴール)が設定・構成されており、日本小売業界も業界全体で取り組もうとしています。

 

2025年も2030年もいずれにしましても、今後は間違いなく、少ないコストで多くの売上・利益を生むであろうDXの導入は欠かせない技術ですし、ムダ・ムリ・ムラといったお客様に価値を生まない仕事から、

リーズナブルな提供価格の実現、接客サービス、満足度向上といった仕事に多くの人がシフトできるようにすることが重要であると考えます。

小売業がDXを実現するための先進的な諸活動は、基幹業務システムの充実がなければ実現できません。

 

そして、そのシステム導入の成功には、完成度の高い業務パッケージと、目的意識の高いベストパートナー企業を選定することが最大のポイントではないでしょうか。

結果は確かにやってみないと分かりませんが、思い切った変革を実施し、サービスや品揃え、顧客満足度と言った方向に独自性を発揮することができれば、他社との差別化ができ、小売業はDXを実現し、2025年の崖は飛び越えられる可能性があると私は思います。

 

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