小売業基幹システム 属人化の背景とは?その影響と解決策も解説

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多くの小売業において直面している基幹システムの属人化。このブログではその内容や背景を掘り下げ、何が具体的に問題なのか、どのような解決策の方向性があるのか、について説明します。属人化問題を抱えている小売業の経営者の皆様、もしくは現在問題にはなっていないが不安がある小売業の皆様、是非ご一読ください。

小売業の基幹システムの属人化の背景とは?

基幹システム属人化とは、システム運用または追加開発が人に属している状態、つまり、誰かに依存している状態です。「システムベンダー側の個人(SE)に依存している場合」と「社内のシステム部の個人に依存している場合」があります。

経産省のDXレポートにも属人化がもたらす複雑化・ブラックボックス化により2025年以降年間12兆円の損失を生み出す、と警鐘が鳴らされています。(参照:経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html)

小売業の企業でも多くの企業で基幹システムの属人化が問題となっています。どのような背景や原因で起きてしまっているのでしょうか?

日本では1950年代に生まれたスーパーマーケットは、1970年代に成長期を迎えます。その後、1990年代にPOSシステム導入が本格的になります。販売側だけでなく仕入側もデジタル化が進みます。JCA手順を使用した電子発注システムです。その時、システム導入を進めた社内外の人材は、多くは頭の柔らかい20代~30代の若手でした。それから30年。多くは引退年齢を迎えたり、引退年齢までカウントダウンという状況です。

また、1990年代当時はパッケージシステムが未整備でした。小売業界のパッケージの先駆け的なテスクのCHAINSがIBMと共同開発で販売されたのは1988年。他社の多くのパッケージも初代バージョンでした。そのため、パッケージをベースに導入を進めるというよりはパッケージを部品の1つとして使いながら、自社のシステムをくみ上げる、というようなシステムの組み方でした。システム活用に熱心な企業ほど、カスタマイズが深かったのです。

ドキュメントや書き方も標準化が不十分でした。今でこそ標準化ドキュメントを残すことがシステム業界では常識ですが、当時はシステムに対する期待値が低かったため、システムは動けばOK、ドキュメントは二の次、というような状況でした。そのようにブラックボックス化したシステムは、より人への依存度が高まってしまいました。

システムベンダー側の事情もあります。パッケージベンダーはある程度の規模のパッケージへの投資が年間で求められ、それができる企業とそうでない企業に分かれてきています。パッケージベンダーと個別開発ベンダーの二極化が起きているのです。個別開発ベンダーは個人や少人数のハウスベンダーが多く、売上も多くないため1社に対する依存が高い状態です。そのため1社から仕事がなくなってしまうと影響が大きいので、何とかシステムを継続させようとします。アプリケーションの保守期限などを設けず、ユーザーもベンダーも相互に依存関係が高まってしまいます。これが基幹システムの属人化を招く要因ともなるのです。

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小売業の基幹システムの問題点と、法制度変更への対応

実は基幹システム属人化はデメリットばかりではありません。優秀な職人が作るオーダーメイドスーツのようにその企業にぴったりのシステムを作ることができます。特に社内の人材にそれらを委ねることができれば、いいものを安くシステム構築することができます。

それでは何が問題なのでしょうか?

基幹システムは定義によって機能が異なりますが、広義では「商品マスター」・「発注」・「実績管理」・「仕入買掛支払」・「EDI」・「分析」・「店舗」あたりが当てはまります。

つまり企業のほとんどの社員・パートナーの業務が密接に関わるシステムです。それを1人ないし数名の方に委ねた状態です。

その方がいくら企業に長く務めたとしても40年。システムの責任を任され始める年齢からは30年です。20年を超えたあたりから、その「人」がいなくなった後のことが問題になる、属人化問題が起きます。

引退年齢よりも前に、病気・家庭の事情・キャリアアップ等により離職をするリスクも付きまといいます。小売業は会社間で運営業態が近く、導入するシステムが近い小売業ではつぶしが効いてしまいます。システム運用費用を下げることができる金の卵は他社にとっても金の卵なのです。明日にでも「実は話がありまして、…」という話があるかもしれません。属人化していた基幹システムを、その「人」なしで運用しようとした場合、さまざまな問題があります。

まず、システム不具合への対応です。

属人化すると不具合の原因がわからなくなり、場合によっては解決ができない状況になります。そのため繰り返し不具合が起き、せいぜい「こういうときに起きるから、この運用はやらないように注意する」くらいしか対応ができなくなります。

次に、システム活用の面で問題が起こります。

属人化したシステムへは改修や追加・他システムとの連携開発ができなくなります。近年、デジタルトランスフォーメーション・AI・IoTなどの言葉が話題となっていますが、それらの活用どころではなくなります。「システムを何とか運用する」ことはできても「システムを活用して事業を改善する」ことはできないのです。

小売業のシステム活用の中で重要な仕組みの一つに自動発注があります。うまく運用ができれば店舗の発注工数を削減できたり、発注の精度を高めてチャンスロスや廃棄ロスを抑えることができたりする非常に効果の出やすい仕組みです。自動発注はその計算の材料とするデータは基幹システムから得ているため、基幹システムに問題がある状態で、外付けの自動発注の仕組みをポンと入れただけでは、うまく計算できない可能性があります。今や多くの企業でも導入が進んでいます。導入していない小売業の周りの企業では活用が進んでいる状態は、爆撃機に対して竹やりで立ち向かうことに近い状況とも言えます。

法律や制度変更への対応時も問題です。

2019年の軽減税率対応での記憶も新しいかと思います。2021年には総額表示変更・上場企業中心の新収益基準対応がありました。今後は2023年10月にはインボイス対応が予定されており、請求や支払いの流れの変更が予想されます。これらは軽微なシステム改修で済む可能性もあれば、データベース変更を伴う大規模なシステム改修になる可能性もあります。個々の企業のシステムの状況を踏まえた法律や制度改正ではないからです。また、法律は全て細かく規定されているわけではなく、過去の法律や制度変更への対応を見ていると、導入直前になり大手小売業が対応方針を打ち出し、それに対しての政府や監督省庁の承認(黙認も)があり、他社が追随して既成事実になるという、非常に日本的ともいえる決まり方をしています。そのため制度変更では短期間で対応が求められます。限られたマンパワーに委ねられた属人化した基幹システムでは対応していくことが難しいのです。

日常の保守においても問題です。

システム運用を依存している「人」にも日常生活があります。夜は寝ますし、ご飯は食べますし、家族の重要なイベントもあります。健康のためにプールに入ることもあるかもしれません。その間にシステムトラブルが起きたら大問題です。小売業のシステムトラブルで致命的なトラブルはPOS集配信関連と発注関連です。そのうち多くは緊急性が求められ、トラブル時の影響は甚大です。さらに、以前に比べてシステム適用範囲が広くなり、対応しないといけない時間帯はほぼ24時間になっています。いくらトラブル対応マニュアルを残していたとしても、そのマニュアルに記載のないパターンのトラブルも起こりえます。そのようなトラブル場合はその人しか対応ができません。一人に依存することは保守・トラブル対応においても危険なのです。

このように属人化は多くの問題点があります。

基幹システムの属人化の解決策

それでは属人化を解消するための解決策にはどのようなものがあるのでしょうか?

属人化に直面している企業が取り組んでいることとして真っ先にあげられることは「後継者を入れる」「後継者を育成する」ということです。もちろん当然必要ですし、有効な策だとは思いますが、それだけでは根本的な解決にはなりません。若い後継者を入れても、彼・彼女に頼ることになってしまったら、同じように属人化が問題になってしまうからです。

それらを解決するキーワードは「パッケージ利用」「クラウド利用」「連携性」です。

パッケージ利用

時代と共にパッケージの完成度は高まっています。以前のように部品として使う、ということではなく、パッケージをベースに導入しても問題なく運用できるレベルに高まっています。さらに、上記で述べた法律・制度変更時の対応もパッケージバージョンアップで行っていき、問題も起きません。

クラウド利用

サーバを自社で管理せず、ベンダーが提供するサーバ利用することで、ベンダーの責任のもとで24時間365日の保守を実施することがでます。システム担当者はある程度日々の保守対応から解放されるようになります。

連携性

今後、AI・IoTなとを活用したデジタルトランスフォーメーションを行うには、連携性が重要です。どのベンダーのどの仕組みが新たな時代のスタンダードとなるのかは、誰にも予想できません。mixiやgreeが全盛だった時代、Facebookが取って代わることを誰が予想したでしょうか?

名も知れない企業の、名も知れないサービスを、5年後10年後には使っている可能性が大いにあります。その時に、基幹システムに様々なシステムとの連携性があるか、が非常に重要なのです。

まとめ

ここまでの内容はいかがだったでしょうか。小売業では他の業種に比べて一気にシステム化が進み、当時の導入担当者が引退年齢を迎える昨今、多くの企業で問題になっています。基幹システムの継続性・拡張性・保守性などに幅広く影響をもたらします。解決の方策は拡張性のあるクラウドパッケージベースの導入を行い、担当者の負担を軽くするところから始まります。

最後の解決策の部分をもう少し詳しく知りたい、という方はテスクお役立ち資料「小売業DX入門ガイド」をダウンロードしてみてください。属人化の壁を乗り越えてシステム活用の道を開くための方策がたくさん書かれています。こちらも是非ご覧ください。

長文、お読みいただきありがとうございました。

2021/5/24