基幹システムと顧客管理の活用方法とは?1to1マーケティング時代へ

基幹システムと顧客管理の活用方法とは?1to1マーケティング時代へ

我が国の小売業界も、大量生産・大量消費を前提とした顔の見えない不特定多数に向けたマスマーケティングの時代から、顧客を識別し、個別の顧客にむけた1to1マーケティングを指向する時代に突入しています。

江戸時代の大福帳の昔から、商取引を記録し、顧客の名簿を作成するといった習慣は馴染みのあるものですが、従来の顧客管理といえば、比較的高額な商品を取り扱う専門店や百貨店等で行われ、自店に多大な利益をもたらす少数の顧客について、継続して来店を促すように維持・管理を行うものでした。

 

しかし今日では、専門店や百貨店などにとどまらず、多くの小売業に顧客管理の重要性が浸透しています。

 

その背景には大きく3つの要因が考えられます。

  1. 情報通信インフラの整備により スマホ・インターネット等の企業と顧客のチャネルが増え、情報収集が容易となり、情報処理技術が進展して扱える顧客数が増大していること。
  2. 新規に顧客を獲得することの困難さや、コストの高さから顧客維持の重要性が高まっていること。
  3. 市場の成熟に伴い、商品の価値が 商品そのものの機能から顧客にとっての個人的な”意味”や”価値”にシフトしているため、顧客起点の商品政策が重要となっていること。

 

これらの要因から自社の経営戦略に顧客との良好な関係性を構築・管理していくCRM(顧客関係性マネジメント:カスタマーリレーショナルマネジメントの略)を取り入れる企業が増えています。

CRMを展開し自社の収益向上につなげていくために、まず考えなければならないのは、対象となる顧客は誰かというターゲット顧客の絞り込みです。

 

顧客の識別とロイヤルマーケティング

顧客管理で重要なターゲット顧客を絞り込むために、自店を利用している顧客をどのように識別したらよいでしょうか。

「顧客はみな同じではない」として、ロイヤルマーケティングを提唱したブライアン.P.ウルフによる、顧客プロフィールを以下にご紹介します。

 

 1.ルーシー・ロイヤル:上得意顧客

 2.ラッセル・レギュラー:常連顧客

 3.スチュアート・スプリット:複数店を掛け持ち利用する顧客

 4.シェリー・チェリー:バーゲンハンター(チェリーピッカー)

 5.キャロル・コンビニエンス:偶然立ち寄った間に合わせ買いの顧客

 

これらは購入額、粗利益率、来店期間、累計粗利益等の指標がいずれも高い順に分類したプロフィールです。

多少の誤差はあるかもしれませんが、ルーシー・ロイヤル、すなわち上位2・3割の上得意顧客の層で75%の売上高を稼ぎ出すと言われています。これがロイヤルマーケティングの考え方です。

 

この5人に対し、均一価格で販売し、均一に対応することは、平等であっても公平とは言えないでしょう。

各ランクの顧客を、よりランクの高い層へプッシュするとともに、自社の利益への貢献度が高い顧客にはより手厚く、低い顧客へはそれなりに扱うことこそが真の平等といえます。

 

新規顧客獲得に対して、既存顧客からの継続・追加と離脱によるロスの防止の方が はるかに容易で収益性が高いということは、日々顧客と向き合われている小売業の皆様には感覚的に理解されやすいと思います。

もし、御社の販促活動が従来のチラシ・特売に終始し、結果的にシェリー・チェリーにばかり販促費を傾注している状態であるとしたら、もったいないことではないでしょうか。

 

ところで、基幹システムでは個客識別の指標である売上・粗利などのデータを常時蓄積しており、随時取り出すことが可能です。信頼性の高い情報が個客識別のうえでの大前提となります。

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基幹システムを利用した顧客管理の進め方

それでは自社の顧客を識別し、顧客管理の導入は具体的にどのように  実施していったらよいでしょうか。

顧客管理を始めるためには以下の手順をお勧めします。

会員データの収集

自店への新規会員募集などで収集する会員名簿データ(生年月日・住所・メールアドレス等)をデータベース化したものです。この段階でも、誕生日のクーポンや地域限定の催事に合わせた販促が実施できます。

 

弊社提供のスマホアプリ集客ツール「Safri」(サフリ)なども、ご活用いただけるツールです。

購買データの収集

POS等に代表される売上情報、粗利情報です。

ご紹介しております通り、基幹システムで随時取得・蓄積しているデータです。

 

商品コードからどの部門の商品か、どの曜日・時間帯に購入しているかといった情報もご確認いただけます。

顧客分析

顧客コード等の会員情報を購買データと一体的に組み合わせ管理できれば、顧客動向分析を開始することができます。

新装開店の店舗、顧客管理導入時点では、まずはデシル分析から開始するとよいでしょう。

デシル分析とは購入金額の多い順に会員を10に分割してグループ分けします。そのグループごとに売上構成比や粗利率等を確認していきます。

 

上位グループには売上に応じた割引やクーポンの送付、下位グループには「お得」をアピールする福袋やまとめ売りなどの販促が効果をもたらすかもしれません。

デシル分析が軌道にのり、購買履歴が蓄積されるようになるとRFM分析(最新購買日、購買頻度、累計購買金額での分析)で顧客と自店との関係性や状態を明らかにします。

 

RFM分析ができるようになると、先述した所謂”ルーシー・ロイヤル”(顧客プロフィールの上位顧客)が明確になるので、いよいよターゲット顧客に向けた戦略が打てるようになります。

分析を実施する際、基幹システムで抽出する単品の売上や粗利情報に 商品の部門を紐づけることで、顧客管理も部門単位で実施することが可能となり、よりきめ細かく個客にフィットした対応に繋がることでしょう。

小売業の顧客管理の注意点

小売業の場合、取り扱う商品の特性によって個客の購買行動・顧客の性質がかわってくるため、顧客管理の密度や顧客への施策も分けて考える必要があります。

最寄品

日常の食料品や日用雑貨など、職場や住居の近くで手間をかけずに購入する商品です。

最寄品店では、日々の買い物で繰り返しご利用いただくことにメリットを感じるような施策が重要です。

 

来店頻度を上げるスタンプラリー、購入額に応じた値引きなどの価格プロモーション、購入額などのランクに合わせた宅配サービスや取り置き・取り寄せなどの利便性の供与も有効です。

顧客管理の会員情報密度としては、デモグラフィック(人口統計的)なもので開始することができます。

買回品

洋服や時計などの身の回り品など、いくつかの店舗で比較しながら購入する商品です。

買い回り品店では、顧客ごとに商品の好みやサイズ等が分かれるため、これらの管理が重要となります。

 

商品の好みやサイズなどもデータベース化して顧客への提案などに活用し、特に上位顧客の好みやサイズ等は自店の品揃えなどの商品政策にも反映させる必要があります。

顧客管理の会員情報密度としては、最寄り品店よりも詳細なものが必要となります。

専門品

こだわりのある家具や宝飾品や自動車など、じっくり時間をかけて購入する高額の商品です。

専門品店では、比較的少数の顧客に、商品に向けたこだわりの深さなどにこたえる施策が重要となります。

 

顧客の好みも細かくデータベース化し、購買履歴などから次回購入向けの新商品の情報、販売後の商品の活用法の提供といったコンサルティングも有効です。

顧客管理の会員情報密度としては、サイコグラフィック(ライフスタイルなど心理学的属性)な要素も必要となります。

基幹システムの活用方法

顧客管理やCRMの活用は全社的な経営戦略として、一丸となって取り組むべき課題です。

当然のことながら、ご紹介してきたような顧客管理にはコストがかかります。

 

御社の貴重な経営資源の振り分け先を決定するためには、部門の粗利率といった収益性も考慮する必要があります。

顧客管理は自社の業態との適性や必要性を勘案した上で、段階ごとに実施することが重要です。

そもそも顧客情報が収集しにくい、現金精算が多い、商品特性としてリピートが少ないといった顧客管理に適さない場合もあります。

 

弊社提供の基幹システムでは、部門分析において、客数・客単価という視点でのマネジメント情報を提供しています。客単価の高い部門、客数の多少といった点からも、顧客管理の有効な部門の発見にお役立ていただきたいものです。

基幹システムで顧客管理の実施可能性について予めシミュレーションし、全社的に実施するか否か、どの店舗・部門・売り場に適しているのか、まずは対応範囲を判断することが重要です。

 

この部門ではRFM分析をしっかり実施し、この部門ではデシル分析の段階までにするといった顧客管理導入の深度を決める材料としても、基幹システムから得られる情報をご活用いただきたいと思います。

そして顧客管理導入後も、顧客管理による様々な施策の成否をはかる材料として、売上・粗利等の成果を基幹システムの単品分析・部門分析等で随時確認していただけますので、確認の結果によっては施策の追加や軌道修正、場合によっては中止するなど、素早く対応を取る事も可能となります。

 

これらの顧客情報を活用する、たゆまぬアクションが成功へと導いていくことでしょう。

基幹システムは、このように顧客管理における諸施策のPDCAにお役立ていただけるものと確信しております。

【まとめ】基幹システムと顧客管理の活用方法とは?1to1マーケティング時代へ

基幹システムと顧客管理の活用方法、小売業も1to1マーケティングの時代に入っていくお話をさせていただきました。いかがでしたでしょうか?

新型コロナウイルスの蔓延により、小売業界も大規模な変革を余儀なくされています。

 

ステイ・ホーム、リモートワークの定着により、食品、日用雑貨など生活必需品が売上を伸ばした一方、部屋着を除くアパレルや紳士服については売上が激減し、再編を迫られる企業も存在しています。

目まぐるしい社会の変化、新しい生活スタイルを受け入れたお客様はどう変化しているのかを理解し、自社の売上や粗利改善に繋げていくための活動が求められます。

 

そのような時に最適な手段のひとつとして挙げられるのがCRM(顧客関係管理)です。

お客様と良好な関係性を維持し、その時々の状態に適切にアプローチするために、基幹システムとともに顧客管理を活用していきましょう。