食品スーパーマーケットの在庫処分問題をDXでどう解決するか?

食品スーパーマーケットの在庫処分問題をDXでどう解決するか?

コロナ禍の3年半は世間もビジネスも大変ではありましたが、コロナが教えてくれたこともいくつもあったのではないでしょうか。

たとえば「出張までしなくても仕事はできる」「毎日会社に行かなくても仕事はまわせる」「これまでの商談の仕方は問題だらけだった」というようなこと。これらは大きな気づきとなり、企業の体質改善にもなったと思います。

 

一方、コロナ禍において「コロナだから仕方ない」「コロナ禍だから無理、できない、やりようがない」とコロナを要因に思考停止してしまい、行動できなかった企業は少しずつ衰退していったように思います。

これらの思考停止はコロナ禍に限りません。目の前の抱えている問題や課題を他責にして、問題に蓋をしていれば、アフターコロナでも同様に衰退方向に進むことになるでしょう。

 

今回は、多くのスーパーマーケットがコロナ禍でも気づかず改善できず、蓋をしてきてしまった「在庫処分問題」の問題の本質と、その解決策にDXを含め斬りこんでいきたいと思います。

在庫処分はそもそも問題か?

スーパーマーケット側の立場としては、在庫処分は実は深い問題なのですが、一部?いや多くのお客様側の立場にたってみれば、商品が安く買えるという大きなメリットがあります。

たとえば、惣菜の在庫処分などが典型的で、私は個人的に好きではないし、値引き前に買っているお客様を馬鹿にしている気がしておすすめしませんが、閉店前の値引き・割引シールでの販売方法です。

夕方になると、シールを貼るのを待ち構えるお客様までいらっしゃいます。全く同じものが安く買えるのだから、待つのも当然ですし、圧倒的価格メリットがあります。

このように、在庫処分はお客様にとって、問題ではなくメリットになっているので、ついついスーパーマーケット側も問題とせず、蓋をしてきてしまったのではないでしょうか?

 

立場をひっくり返して考えれば、スーパーマーケットにおいても、在庫処分品を買い付ける、仕入れるのであればものによってはメリットになることもあります。

そもそも、在庫処分品を仕入れて安く提供することで成功しているビジネスモデルは山ほどあります(製造ロットと受注に合わなかった端数の商品や、市場の売れ残った鮮魚や野菜等もいわば在庫処分品です)。

この成功ビジネスモデルは、お客様との関係性においても、見事にWINWINの構造になっています。

 

これまで食品の廃棄はさすがに問題ととらえてきたものの、フードバンクの利用などでさらに問題として薄れてきており、在庫処分はあまり問題として扱われていない、そもそも重大な問題とされてない状況であるのかもしれません。

品質の落ちた在庫処分品は大きな問題を起こす!?

しかし、よく考えてみてください。売れ残りそうなものを安く売るという行為には、ものによっては飛んでもないデメリットに変わってしまう可能性があります。

例えば、出来立てのお惣菜と時間が経過したお惣菜、どちらが美味しいでしょうか?

多くの惣菜は出来立ての方が圧倒的に美味しいはずです。

売れ残った惣菜を廃棄するよりは値引きしてでも打った方がマシ、安くなってお客様が喜んでくれていると自分を正当化する方が多くいらっしゃいますが、よく考えたら、売上・荒利を下げて、美味しくなくなったものを販売していることになります。

 

なんと!ダブルで価値を下げている・・ そう考えたらゾッとしませんか?

 

この構造はスーパーマーケット側においてlose、お客様側winの関係です。

もし美味しくないと思われてしまったら、お客様満足度は下がり、今後リピートもしない、悪い口コミも立つlose/loseです。

 

だから、私なら値引きシールに「鮮度が落ちているから値下げしております」「最高に美味しい状態の出来立てホヤホヤも今度は食べてね!」って書きますけどね!(笑)

 

今の時代、値段を下げるという行為は一番安易な知恵のない方法だと私は思っています。

夕方に値引をするくらいだったら、出来立てホヤホヤを最初から10%安くしてお値打ち感を出し、早めに売り切った方が、トータルの売上は上がると思いますし、あそこの惣菜はお値打ちで美味しいと評判が立つのではないでしょうか。

美味しいという価値をつけて、高付加価値を生む方がWIN/WINであると思います。

なぜ在庫処分品は発生するのか?

スーパーマーケットの取り扱いアイテムの多くは食品です。

食品には賞味期限や消費期限が設けられており、期限が近づけば値引き、過ぎれば廃棄となります。また季節商品などは、季節が過ぎると賞味期限が残っていても売れなくなります。ではなぜそうなるか?

 

それはいたって単純で、需要予測が外れるからです。

 

そもそも何万アイテムもある商品の需要予測をすることには無理があります。

担当を分けたところで数千アイテムあります。たった18頭のうちの12着を当てる競馬の予想ですら当たらないのに()、そんな何万アイテムの予想など正直当たるわけない!そんなの無理!ということは分かると思います。

 

しかし、上司はロスを出すと叱ります。叱られると現場の担当者は思考する前に目先に目が向くので、発注を減らしはじめます。しかも決まって売れ筋の発注の多い商品の発注数を減らします。

すると今度はチャンスロスが発生し、本当のロスは減らず、売上だけが下がります。本末転倒ですよね(汗)

 

だったら、今はITテクノロジーやAIで需要予測だ!となりますが、それこそ競馬の予想と一緒で、過去のデータをいくらひっかき回しても未来のことは中々当たりません。(人がやるよりはかなりマシですが・・)

 

本質的な問題はそこにあると思います。

そう!問題は目先の適切な在庫管理ができてないことでも、需要予測が外れることでもなく、そもそも当たらないものを当てようとしていることです。

 

だからこそ、当てよう当てようと躍起にならず、需要予測はAIやシステムを使って外れる頻度を少しでも減らして、人間は在庫処分になる前に値下げをせずに売り切る力、在庫回転率を上げる力をつけることをした方が、需要予測を当てることよりよほど難易度が低く、在庫処分品の発生をかなり抑えることができると考えます。

 

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DXでできることと、その本質

DX(デジタルトランスフォーメーション)って何?とネットで調べると・・

何や難しい言葉でいろいろ解説されています。

それを簡潔に私なりに要約すると・・

「ITを使って生産性向上や体質改善をし、競争力・収益力のある企業になること」

と私は解釈しています。

 

まあ言ってみれば、これまでもIT業界がお客様に貢献しようと取り組んできたことです。

しかし、ここへ来てチャットGPTをはじめとするAIの進化と、5GによるIoTの可能性でDXによってできることの幅が大きく広がってきたと思います。

 

Office365とチャットGPTは結びつくのは確実ですので、例えば「ファミリー向けの新商品のアイデアと企画書を作って!」と言えば、瞬殺でパワーポイントの企画書が作成される日もそう遠くはないと思います。

本ブログのテーマである「在庫処分品」についても「在庫処分品を極力出さないための改善案と企画書作って!」といえば、あっという間にパワーポイントの企画書をAIは作成してくるでしょう。

 

ものすごい時代が来るな!感じたかもしれませんが、そもそも仕事にAIやロボットが入ってきたら、もはや人間が敵う相手ではありません。ものすごい時代は確実にやってきます。

(江戸時代から見たら現代はものすごい時代どころか恐ろしい時代ですからね!)

大谷翔平投手もチャップマン投手も人間界最速のボールを投げますが、ロボットなら簡単に200マイルのボールを投げるでしょうし、動物界最速のチーターだって、車やバイクの速度に結局のところ勝てません。

 

頭脳にしても、一般の人間が確か1013乗程度の処理能力に対し、あのアインシュタインが確か1016乗を処理できる脳の能力と言われていたと記憶していますが、今後のAIなら、そんなレベルではなく、まだまだ増設可能な領域を持っています。

 

だから、今後DXテクノロジーを使って生産性向上や競争力をつける企業が勝ち組になることは間違いないと容易に想像できます。

 

しかし、問題は生産性が上がっても残った人間がDXに奔走させられては意味がないということです。

その良い例が、みなさんの身近な生産性向上をさせてくれた電子メールやLINEといった生産性ツール。

それをみなさん手にしたと思いますが、その生産性が上がったことで多忙から解放されたでしょうか?自分が提供できる価値が上がったでしょうか?

よーく観察してみると、生産性がせっかく上がっても、欲しくもない不要なメールの管理や整理、今までなら来なかった情報への対応。チンコン♪チンコン♪なるLINEのメッセージに手を止められて、集中力と没頭力と自分の仕事の生産性を落とし、提供できる価値が向上しているどころか、さらに多忙になっています。

 

本来生産性が上がったり、便利になったら、本質に基づいたことに時間を使うべきですが、悲しいかなそこへ行きつく人は少ないです。

 

今回のブログのテーマに当てはめてみても、仮にDXで需要予測ができて、在庫処分品が減り始めても、まだ予想が当たらないとパラメータをどう変更したらよいかとこねくり回して考えたり、需要予測の問題はどこだ!と探しているようでは何にもなりません。

 

問題の本質は需要予測が当たらないことではありません。お店で提供している商品やサービスにお客様が満足していない、喜んでもらえてないところです。

DXで生産性は確実に上がります。

そこをさらに上げようと考えるのではなく、問題の本質を改善し、企業の体質を改善するために人や時間を投入することがDXの本質であると思います。

【まとめ】食品スーパーマーケットの在庫処分問題をDXでどう解決するか?

今回は、「 食品スーパーマーケットの在庫処分問題をDXでどう解決するか? 」というタイトルで、書かせていただきました。

 

在庫処分問題はフードロスとしても社会問題になっています。しかしスーパーマーケットにおける問題としては目先の一つの問題に過ぎないと思います。

本質的な問題は、提供している商品やサービスがお客様に喜んでいただけていないというところであると思います。

 

今後はITテクノロジーを使って生産性向上や競争力をつける企業が勝ち組になることは間違いないと思います。

そのDXが得意とするところはITテクノロジーであり、各々の社員が得意とするところは、人それぞれが持っている得意分野です。

それを理解し、企業が目指すあるべき姿に対して、上手くポートフォリオを組めたところが真の勝ち組になるのではないでしょうか。

 

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