プライベートブランド(PB)商品はなぜ安いのか?スーパーが取り組むべきPB理解を深める

プライベートブランド(PB)商品はなぜ安いのか?スーパーが取り組むべきPB理解を深める

PBは、ご存じの通りチェーンストアにとって低コストであり高付加価値なのですが同時に高リスクなのです。

だからリスクがコントロールできているPBは高付加価値を少し下げれば値下げが可能であり、コストを下げる値下げも可能です。

つまり、PBとは商品の販売に要する大半のコストを小売業サイドがコントロールできると言っても過言ではないのです。

 

コストを制すれば全てを制していると言ってもよいのであり、市場の人気を独り占めしているユ○○○やニ○○と言った企業の様に、過去の慣習に捕らわれずにリーディング・カンパニーにもなれるのです。

両社の共通点は高品質でありながら他社を圧倒する低価格の商品を扱っているところであり、全てがPBであるのを読者はもとより生活者全般が知っているので高い支持を得ているのです。

 

本解説で、PBが「なぜ安いのか?」事例を通じて、スーパーマーケットなどのチェーンストアで取り組むべき課題=PBの理解を深めていただけます。

 

PB=圧倒的な安さと良識ある品質

チェーンストアの発展は「安い」というキーワードを抜きに語ることができないですが、日本の商業者として商業が成立した初期から「安い」を追求したのは近江商人でしょう。

生産を行わない彼らは「薄利多売」をモットーに、単なる安売りをしていたわけではありません。

 

その時代の社会体制では、自給自足が奨励されていて、商人は体制破壊者と見なされかねなかったので、訪問する各地で地場産業の発展も考慮しながら商いをしていました。

つまり、消費地のニーズを生産地に伝えて、時には原材料の調達や生産手段と資金の貸付、生産物の保管や輸送を担っていたそうです。

 

このような行為は生産コストを下げ、これを薄利で売るのですから安くなるのもうなずけます。

PBと言えばアメリカの小売業が発明・発展させた取り組みであると理解されているのですが、日本の小売業や商社の原点と言ってもよい近江商人が数百年も前にPBと同様の商いを行っていたのを日本人は誇って良いのです。

 

“プライベートブランド(PB)が「なぜ安いのか?」を解説する本記事の冒頭に近江商人を紹介したのは、近江商人の精神にPBの模範があるからです。

近江商人の本分は「三方良し(売り手良し買い手良し世間良し)」なので、誰かの利益をかすめ取る商売では無く、当事者全てが幸福になる様に商いをしていました。

そもそもPBは、チェーンストア等製品製造を行わない企業が、ナショナルブランド(NB:以下同様)のカバーしていない商品分野で新たに製造と流通の体制を作って開発した商品です。

 

言い換えれば、チェーンストアが企画から製造まで主導する商品です。

品質は消費者にとって必要なレベルを満たしているつまり良識ある品質でありながら、過去に商店街等でよく見かけた「有名メーカー希望小売価格2割引」と言ったケチな価格ではなく、圧倒的な安さで提供するのです。

 

PBはどうして安いコストでできるのか

PBはNBと生産・流通過程、つまりコスト構造に大きな違いはないのです。違いは掛け方に特徴があります。

使用する原材料や成分は、事前に十分な吟味を行います。海外を含めた原産地や産出方法を始め産出業者と輸送手段とロジスティック企業を調べつくします。

この各段階から不要な部分を取り除きます。

 

その後の製造業者の選定や通関手続き、船便等の手配と保険契約の締結、日本への通関後の輸送方法や保管倉庫の手配等、凡そ考え得る全ての段階における期間と費用を把握して、各工程を任せる事業者に依頼します。

どこまでをどの事業者に委ねるかのさじ加減はチェーンストアの担当マーチャンダイザーが決めることになります。

販売計画の立案と実行を司っているチェーンストアは、前記の各工程へのコストの掛け方を最小にでき得るのです。

 

また、NBはあらゆる広告媒体を使って大量の資金を投入して宣伝をします。

一方で、PBは一部コンビニが販売している商品を除いて大規模な広告・宣伝はせず、店頭において圧倒的な価格差を主にアピールして販促を行うので、販促部分でもコストを低くコントロールしているのです。

 

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PBとはプロデュース

孫子の兵法に「彼を知り己を知れば百戦殆からず(挑む対象に関するあらゆる情報を集めて理解し、自身の実力を良く知っていれば、何度戦っても負けない)」との一説が有るのを多くの読者はご存じだと思います。

PBに関する詳細な情報を得ているだけではうまくいかず、自社チェーンストアの品揃えの中核を担わせて良い結果をもたらすようにしなければなりません。

良い結果をもたらすとはプロデュースと表現されます。

このプロデュースとは、品質や機能を「トレードオフ」つまり、NBが持っている消費者にとって必要でない部分を削いで、類似NB商品の3分の1程度の売価を目指す行為です。

 

具体的にいえば、NBの無いもしくはあっても不必要な機能が多くて高価格である商品分野に、チェーンストアが企画して、最適な生産や輸送を担える事業者を選定して依頼し監督し続けます。

店舗への陳列や販促活動の指示をして、状況に応じて適時適切なプロモーション活動を行い、あらゆる販促手段を講じても利益が出ない時には迅速に売場からの撤収と処分を決定するのです。

 

この一連工程を1店舗で行い観察して分析して判断したうえで修正余地が有れば修正して3店舗で行い、10店舗に拡大してノウハウを蓄積した後に全店舗へ展開するといった経緯を経ます。

その上で平均以下の売上しか上げない店舗を抽出して問題の観察・分析・判断をして更なる好結果を得るようにします。

こうすれば「彼を知り己を知」るので「百戦殆からず」つまり百戦錬磨となるのです。

 

PBがもたらす安さ以外のメリット

PBは原価や売価の安さ以外にも多くのメリットを持っています。

例えば、競合他社が扱えない独自品なので理不尽な価格競争に巻き込まれません。

生活者のニーズを販売者として直接受け止める結果がNBにはない高付加価値商品の開発に繋がります。

 

また、お取引先であるメーカーは受注した製品すべてを納品するので、保管や残りの処分を負担する必要もないので喜ばれます。

お取引先は指定された納入価格が安くても、余剰人員や設備の稼働率を上げることにより安定的な収益の確保を期待できます。

 

PB商品開発を注力するためのバイヤー働き方改革の必要性

PB商品の注目度が増すなか、小売業の企業もPB商品の新開発に注力したいでしょう。

しかしながら、PB商品を取り扱うバイヤーは、業務が非常に忙しいのが現状です。

 

お取引先様との過剰な商談、契約書やカタログなど膨大な資料、市場調査、買い付けなど…業務を改革しなければ、PB商品に注力を注げません。

手前みそではありますが、バイヤーの商談を改革する「商談.net」は、散乱しているバイヤー業務を一本化してバイヤーを支援します。

 

物価上昇、円安などあらゆる社会変化が激しくなっています。PB商品の注目度はまだまだ続く可能性もあります。

中長期的な目線でバイヤーの働く環境を整え、売上・利益を確保していくことが本来の目的ではないでしょうか。

【まとめ】プライベートブランド(PB)商品はなぜ安いのか?スーパーが取り組むべきPB理解を深める

チェーンストア企業のPBに対する考え方の温度差は相当あるようです。

中には名ばかりのPB実はSB(ストアブランド)である「なんちゃってPB」で満足しているトップマネジメント層がいらっしゃるし、「生鮮食品は究極のPBだ。」と嘯(うそぶ)いて関心を寄せない経営者も見受けます。

この経営判断の誤りを象徴的に表すのがアフリカ経済への見方ではないかと考えます。

 

日本の企業マネジメント層へ、アフリカへのビジネスの取り組みについてアンケートを取ると、アフリカ市場の問題点を列挙し、高リスク市場への投資を価値のないもしくは無謀な意思決定との回答が多くあるようです。

確かに一部の地域では内乱や隣国との軍事衝突などで治安が悪い地域がある事実は否定できません。

しかし、ご存じの様にアフリカは広大なので、治安が悪い地域は一部と言っても良いでしょう。

 

つまり、同じような意思決定は『脱亜入欧』(アジア諸国への興味や関係強化を脱し、欧米列強の一員となるべきを目指したスローガン)の旗印の下で、アジアに見向きもしたかった報いが中国やインドに追い越され、韓国やASEAN諸国にも追い越されそうになっています。

パンデミックや地政学的リスクが世界的な生産と物流に甚大な影響を与える現代に会って、ヨーロッパやアジアのみならずアフリカも選択肢に入れた戦略を組む時期なのでしょう。

 

同様に、チェーンストは大手や中小の規模を問わず、NBや名ばかりのPBによる品揃えから脱却して、本格的なPBのみの品揃えを目指す時期ではないでしょうか。

過去は「誰があるいはどこで作ったか。」を意識して生活者はNBを主とした買い物をしていましたが、既に「誰からあるいはどこで買うか。」にシフトチェンジしています。

 

チェーンストア等の小売店が品質と価格に自信をもってコミットするPBを優先的に買い物する生活者が増えている今こそPBの品揃えを拡大する好機と考えます。