スーパーマーケットにおける教育目的とエンゲージメントを考える

スーパーマーケットにおける教育目的とエンゲージメントを考える

スーパーマーケットは教育を通じて、経営サイドが期待する習得すべき知識やスキルをスタッフに理解させると共に、各スタッフがチャレンジすべき学習内容を理解します。
そして、受動的態度を回避し能動的な取り組みへの変革を通して、本部や店舗の標準レベルが維持向上し、企業全体の生産性が向上するに応じて販売力が上昇し、その後に売上と利益が前年比や目標比を達成するようになります。

ところが一方では、闇雲に外部機関の教育に多大な支出を払っても期待効果が得られないケースも散見します。教育費を使わなければスタートラインにも立てませんが、使い方を熟慮しなければ無駄になるとの認識も必要なのです。

 

本解説では、スーパーマーケット企業で実施するスタッフへの教育において、実施するカリキュラムとその重点項目に関して、半世紀の研鑽と数百社に及ぶスーパーマーケットへの導入実績を持つテスク知見の一部を記述します。
『キーワードは“自己実現”でした。』

企業経営の社会貢献を教えるとスタッフのエンゲージメントが高まる

企業経営の社会貢献を教えるとスタッフのエンゲージメントが高まる

 

一般的には“教育”とは座学つまり“Off JT”をイメージしますが、単なる知識だけでは現場への適用に繋がらず用語の意味を知っているに過ぎない人材になってしまい、現場に活用されなくなりかねません。
つまり、教育には経験と知識とビジョンがバランスよく配されていなければならないと言われています。特にビジョンが疎かになる傾向があり、ビジョンの教育が疎かになるとスタッフのエンゲージメントが低くなります。
スタッフのエンゲージメントが低いと、企業との絆が弱くなり離職率が高まるのです。

 

スタッフのエンゲージメントが高いと、会社と社員との間が高い信頼で繋がり、会社への愛着や誇りをスタッフが持つようになります。
つまり、所属する企業のロマン・ビジョン・ミッションを通じた企業経営の社会貢献を教えるとロマン・ビジョン・ミッションに共感したエンゲージメントの高いスタッフを生み出します。
エンゲージメントの高いスタッフは強い貢献意欲を発揮して、効果的な販売促進を考案して業績向上に貢献するのです。

ただし、ロマン・ビジョン・ミッションを経営者やベテラン社員が講師になり講義形式で知識として教えるだけではなく、スタッフ同士が会話を通じての共有が必要なのです。教育に関しては後述するようにWebセミナー等のオンライン環境での実施がスタンダードになっている昨今でも、ロマン・ビジョン・ミッションの教育は、講師や上司からのカウンセリングや同じ部門を担当するスタッフ同士のリアルな面談を行わなければ効果が薄くなると理解すべきです。

 

一方で、スタッフのエンゲージメントが高いと業績向上への貢献意欲を発揮するので、高いモチベーションと自発的行動により目標や課業の達成に積極的に取り組んだ高い生産性を発揮します。
各自の目標や課業の達成が企業目標を達成し、戦略の実現を支えるので、スタッフの誇りを満たして自己実現の認識も高めます。この様な相思相愛状態は、深刻な事態に陥っている“離職率”の低下に繋がります。

 

教育は長い期間と多大な費用を要する企業戦略ですので、折角育てた「優秀な人財」が流出すれば企業サイドの損失は計り知れない額になります。
スタッフが企業に求める教育内容に「ロマン・ビジョン・ミッション」は出てこないので、エンゲージメントを高める教育が疎かになっている事例を散見します。
顕在化していないからと軽く扱うという愚挙を回避し、潜在化している教育内容こそ最重要であると認識して取り組む必要があるのです。

知識偏重を脱して店舗の運営効率を高めるOJTとは

スーパーマーケットにおける教育とは、組織的運営に必要な部署に、当該業務を担える者を必要な時に適材適所で配置できるようにスキルを持ったスタッフを常に維持しておくことです。
『当該業務が担える者』とは別の言い方をすると『必要な部署のスキルが身についている者』になります。
この「身につく」の“つく”は漢字で書くと「付く」が正しいのですが、「着く」と書く場合も有ります。“着”とは着たり脱いだりできる衣服の場合に使われる感じで在り、スキルに関しては脱げてしまっては困るのです。

 

つまり、知識と同様にスキルも「身に付けて」消えないレベルに到達させるのですが、消えなくするためにはセミナーにより教えた後の『経験』が大事だと言われます。
そのために行う教育が『配置転換(略して“配転”)』であり計画的に多くの部署における経験を積んでもらいOJT(On the Job Training)手法で育成するのです。

 

スーパーマーケットの組織開発として大事な打ち手のOJTは、各部署を1.5年から2年で回して多くの経験を経験させます。
多くの経験を積めば、店舗は勿論のこと本部の運営効率向上にも貢献して、チェーンストアとしてのスーパーマーケットの効率性と成長性を強力に支援します。

 

知識は「脱げ易い」のですが、学んだ内容を実体験すると長期間身に付いているのみならず、キャリアアップを伴った『自己実現』の達成を後押しします。
また、経験に失敗は付き物ですから、失敗から多くを学んで成功すれば、失敗はスキルアップの単なる通過点に過ぎなくなります。
そして、知識やスキルを教える立場になった時の経験に裏付けされた知識は、教えられる側に強い影響力を持つので、組織全体の運営効率を高めます。

Webセミナーや動画システム教材は研修を改善する

Webセミナーや動画システム教材は研修を改善する

研修センターやホテル等の会場を借りて実施する教育の方が効果的であると言った意見が有ります。
ホテル等の借り物でも会場費や旅費と移動時間、人件費に多額の費用を要し、ましてや自前の研修センターを作るとなるとコストは巨額になります。

 

一方では費用を掛けた方が必死になって効果を出そうとするのでカリキュラムが進化するという意見も有ります。
この様な意見はもっともな部分が有る気もしますが、ITが進化した現状においては、Webや動画システムも積極的に利用するのを避けるのは得策ではないように思います。
Webセミナーは、決められた時刻に動画を視聴するので、講義形式の集合教育をTeamsZoomを活用してオンライン化したものです。

 

Webセミナーは、双方向機能を残した学習なので、チャットなどで講師と受講者がリアルタイムにコミュニケーションを取りながら学べます。
さらに、日頃接点のない受講者同士の情報交換促進効果もあるので、深い学習レベルの達成やアイデアの発掘効果も有ります。
メリットとして、開催場所に制約を受けず、費用や関係者の拘束時間の削減ができ、講義の均質化が担保され、簡単な作業で修正や改善を経たテキスト等を一斉に配布可能であり、受講者の学習態度や表情に応じて講義内容が容易に変更可能が列挙できます。

 

しかし、デメリットは、オンライン会議ツールや特にスーパーマーケット店舗には少ない静かな場所等の環境構築が必要であるのは当然として、オンライン状況やシステムの不具合で運営が影響を受けることです。
つまり、集合型研修と同じ方法が通用せず、コミュニケーションが比較的困難であると共に、実技の履修には不向きであるのを否めません。さらに、受講者がモチベーションを維持するのが困難ともいわれます。

 

eラーニングは、動画システムで録画されたコンテンツを、時間や場所は受講者都合にあわせて視聴できます。
ビデオやCDの教材教育をパソコンなどのIT機器とeラーニングソフトウェアを活用してオンライン化したものです。

 

メリットとしては、eラーニングの中には数分から十数分といった短時間単位でも学習が可能なので、多忙なスーパーマーケットのスタッフでも履修が容易ですし、講義講師の違いに因るレベルの違いが無く、適時適切にテキストが更新されれば、最新の内容を受講でき、受講者の受講状況が開催者側で容易に把握できることです。さらに、繰り返し受講し直すのも比較的容易です。

しかし、デメリットもWebセミナーと同様に、環境構築やシステム不具合による運営への支障、モチベーションの維持が難しいなどが有ります。

【参考】スーパーマーケットは情報を必要なものに絞り込め!収集と活用これからの姿

【参考】小売業のグローバルはニセモノか?本物か?

まとめ

スーパーマーケットの教育には、「ロマン・ビジョン・ミッション」が企業の社会貢献であることを理解させなければ効果が半減すると解説し、座学のみに頼るのではなく、“配転”という経験でスキルを身に付ける重要性も解説しました。

そして、集合教育も欠くべからざる方法であるのを否定はしませんが、同時にWebセミナーやeラーニングを有効活用しなければ費用対効果が向上しません。

 

スーパーマーケットの教育とは、直接的には店舗運営の生産性向上を期待しますが、間接的にはスタッフのキャリアアップの結果としての『自己実現』をもたらします。

自己実現を達成したスタッフの高いエンゲージメントは、高いスキルで組織全体の高効率組織運営に貢献するでしょう。

株式会社テスクは、小売業向け基幹システム「CHAINS」バイヤー向け商談システム「商談.net」スーパーマーケット向けスマホアプリ「Safri」を提供しておりますので、

業務効率や人手不足にお困りの企業様はぜひご覧ください。