ネットに負けない実店舗の戦略を考える

KEYWORD :

変化していく消費者の買い物スタイル

■ 買い物スタイルの時流の変化に、対応を余儀なくされるリアル店舗

ここ数年で小売業をとりまく環境はスマートデバイスの普及により激変しました。これまでの店舗へ行ってショッピングを楽しみながら購入するというスタイルから、いつでもどこからでも(24時間、会社からでも、電車からでも、自宅からでも・・)買い物ができる便利を通り越したなくてはならない時代になりました。その時流が示す通り、ネット通販(以降ネット店舗)市場規模は毎年2ケタ成長を続け、調査会社の調べでは2014年度は15.9兆円規模になるという報告があります。それに対して、百貨店をはじめとする実店舗(以降リアル店舗)の売上は年々減少傾向にあり、巻き返しをはかるべく、リアル店舗は様々な対応をし始めました。

■ 受け止めなければならない”ショールーミング”や”口コミでの商品評価”

ネットでお買い物される消費者の例

  1. メールやネット上で商品を見つけ、商品の詳細を確認
  2. 商品レビューやツイッターの口コミを参照し、購入意思を決定
  3. その後店舗に行って、色・柄・サイズを実物で確認(その場で買わない)
  4. その帰り道や自宅からネットで、最安値を探しオーダー
  5. 数日後に自宅で商品を受け取る

上記3の行為、いわゆるショールーミングは、リアル店舗にとって店舗を”ショールーム”として利用されるだけで、実際の売上には全くつながらないので、たまったものではありません。

しかし、この流れはネット社会の現実です。受け止める他ありません。また、販売側が心を込めておすすめしている内容よりも、嘘か本当か分からないネット上の口コミを信用して、購入を決定していることがほとんどであることも同様に受け止めなければなりません。ネットで買い物する人のほとんどは、商品レビューや口コミ、商品評価(5つ星の5段階評価)を参考にしています。

■ 巻き返しをはかるリアル店舗

上記のような、消費者の変化や時流の変化に、リアル店舗は様々な対応をしはじめました。今回は生き残りをかけ、大手や地域のリアル店舗がどう対抗し、どう勝ち抜いていくか?を考えていきたいと思います。

リアル店舗がネットに勝つための方法は?

■ 今現在はリアル店舗の圧倒的売上構成比

本年のネット通販の売上が16兆円に迫ると前述しましたが、実際のところリアル店舗の売上に比べ、ネット店舗の売上はまだ1/10以下です。どうこう言ってもリアル店舗の方が圧倒しています。

米国では、ネット店舗の売上構成比が10%になろうとしていますので、日本においてもこのネットの売上が上昇していく傾向は、止められないと思います。

■ ネット店舗 vs リアル店舗 各々の強みは?

では急進してきているネット店舗にリアル店舗はどう対抗すれば良いのでしょうか?まずは、消費者目線で各々の強みを右の図のように整理してみました。やはりネットの強みは、いつでもどこででも買物ができることや、価格が簡単に比較できるため、より安価に購入ができる点、圧倒的な品揃えや、先に購入した人の意見や評価を参考にできる点です。

一方リアル店舗の強みは、ショッピングを楽しめることや、店員さんの気持のよいサービスをうけられること、そして、何より直接商品に触れて実際に見ることができる点です。

しかし、先述のようにショールーミングをすれば見る・触れる・楽しむことはできてしまいます。よって、リアル店舗の本当の強みは、直接店員がする接遇やサービスです。そこを強化してお客様との関係を深めることができればネット店舗に対抗できる強い力になることは間違いありません。ただ、量販店小売業においては、接客を少なくしてセルフサービスをすることによって安さで勝負してきた経緯がありますので、この対応をどうとらえるかは大きなポイントです。

また、ネット店舗は競合相手が全国いや全世界のネット店舗になりますから、価格競争は絶え間なく激しく続くきます。そして顧客との関係を深めることは簡単ではありません。一方リアル店舗の価格競争は、商圏内となりますし、付加価値でも十分勝負できますので、価格だけで動く消費者ではなく、価格以上の価値を求めるお客様をターゲットに集客ならびにサービスを徹底すれば、きっとよい結果が出せると思います。逆にお客様との関係を深めることができなければ、ネット店舗に完敗することになるでしょう。

大手が取り組む O2O という考え方

■ O2O(オーツーオー)とは?

O2Oとは、ネットとリアル店舗を融合して、マーケティングを実施することをいいます。オンライン(O)と(TO)オフライン(O)を効果的に融合して消費者の購買につなげるといった概念です。

例えば、ネットやメールで割引クーポンを消費者に発行してリアル店舗に誘導するとか、ネット上のSNSビッグデータから消費者動向分析を実施して、対応する顧客情報を抽出し、リアル店舗への集客やよりサービスのよい接客につなげるといったようなアクションです。

■ 事例1 : リアル店舗に行くだけでポイントがもらえるサービス

楽天には、スマホ利用者がリアル店舗に行くだけでポイントがもらえるというサービスがあります。消費者は提携している店舗でアプリを起動するだけで、何も買わなくてもポイントがもらえるというしくみです。このしくみは、”楽天チェック”というサービスで、スマホ利用者は店舗周辺でポイントがもらえる提携店をスマホの画面上で確認して入店。店内の指定の場所へ行くと自動的に「楽天ポイント」がもらえるといった具合です。

■ 事例2 : ”手ぶら”  ”顔パス” といったスマホを使った新しいサービス

“手ぶら”というサービスは、スマホ利用者がアプリで気に入った商品の”取り置き”を指定しておいて、スマホを持って来店すると、無線で来店を検知し、もともと登録してある情報(クレジット等)を使って自動決済します。そして店員から取り置き商品を受け取ってお買いものが完了するという、まさに手ぶら(スマホは持ってないといけないが・・)で購買が完了するという新しいサービスです。

”顔パス”というサービスは、スマホ利用者が専用アプリであらかじめ顔写真やクレジットカード情報を登録しておくと、店舗を訪れた際にアプリを起動することで、無線で来店を店員のタブレットに通知するというしくみです。直接接客することで、決済が売場で行えるので、レジに並ぶ必要もなくなるし、配送依頼の記入等もなくなるといったサービスです。

このようなO2Oのサービスは注目されながら、現在では大手小売業を中心に広がりつつあります。リアル店舗がネット店舗に対抗するというよりも、ネットを活用、融合してうまく来店を促すという試みです。

注目の”オムニチャネル”の実力はいかに?

■ オムニチャネルとは?

オムニチャネルの意味は、Omuni(全て、全・・、総・・)とChannel(経路、道筋)と、全ての経路とか、全道筋という意味をもっています。ですから、リアル店舗、ネット店舗(モール、自社サイト、通販サイト等)をはじめ、DMやテレビ・ラジオ通販、カタログ通販等々、全ての消費者と小売業の販売経路・流通経路といった接点を連携・統合して、どこからでも商品を購入できる環境を実現することがオムニチャネルの考え方です。

このオムニチャネルという考え方は、リアル店舗にとっAmazonや楽天への対抗手段として大きな注目を集めています。

■ 例えばこんなサービス

例えば、お客様が欲する商品が店頭在庫にない場合、その場で自社サイトにアクセスし、在庫と商品イメージ・納期等を確認して販売できる。そして、商品は自宅配送や店頭受取りも可能な上、これまでネットオーダー商品の煩わしい返品も、店頭で返品対応できるといった、お客様の都合でチャネルを連携・融合したサービスを提供します。

また、これまでは、店頭で購入したデータは店頭のみ。ネットで購入したデータはネットのみ。というデータ管理が、当たり前でしたが、オムニチャネルでは、お客様が店頭で『以前サイトからネットで購入したものと同じもの』と要求されても、お客様にお応えできるデータの統合が実現できているため、サービスの向上にもつながります。

■ 大きなコストをかける価値があるのか?

このオムニチャネルは、サービスの向上・集客という面での効果を狙っているのですが、比較的大きなコストと大きなしくみの構築が必要となります。そこまで効果があるかどうか?この考え方が長続きするか?という懸念も大きいので、大手の企業にしかなかなか踏み込めないでしょう。

最短・低コストでのしくみで最大の効果を上げたい私としては(このメルマガを読んでくださる読者の方も同じと思います)このオムニチャネルやO2Oは、大手の企業に任せておいて、もっと低コストで効果の上がる方法を考えて実践する方がいいと思っています。 詳細は、後述・・

中堅小売業がネットにも大手にも勝つ差別化戦略とは?

■ 独自のサービス・商品の展開

リアル店舗の強み(ネット店舗にはない)は、直接店員がお客様にできる接遇やサービスです。いかにお客様との関係を深めるかが、ネット店舗に勝つための必須条件であると私は考えます。その関係を深めるために、独自のサービスや独自の商品を展開し、本当にお客様の役に立つことができれば、その価値を求めお客様は必ず来店すると思います。

そのためには、お客様を知ることが重要なのは当然ですが、ターゲットとするお客様を明確にして、特化していかなければ難しいと思います。ターゲットは広げれば広げるほど、お客様との関係を深めることは難しくなっていきます。大手の量販店小売業は、店舗規模や立地から、なかなかターゲットを絞り込むことが難しいと思いますので、オムニチャネルやO2Oという方法で多くの集客をする方にシフトしていくのでしょう。

■ ターゲットに対して、価格・品質・品揃え・サービスを徹底

一方地域密着型のローカル小売業などの中堅小売業は、ターゲットのお客様に対して、そのお客様が何を考え、何を求め、何に感動するかを徹底的に考え、お客様が納得する価格・品質・品揃えでの商品構成・売場を提供することが勝つための基本行動(戦略)です。当たり前だと言われそうですが、この当たり前ができていない売場や商品構成をよく見かけます。言い換えれば誰をターゲットに商品展開しているんだろうと思う売場の方がむしろ多い気がします。

ターゲットとするお客様のセグメントは、年代や性別・家族構成、半径何kmの方等・・企業によって違うと思いますが、これからの時代、時間帯や平日・休日でもターゲット層を意識する必要があると思います。すなわち、曜日や時間帯によって、売場や商品構成、そしてサービス・接遇を変えていくということです。

■ 売場改善や集客は、これまでの3~5倍のパワーが必要

勝つためには、相当な努力とパワーが必要です。今までと同じことをしていて何とかなる時代はとうの昔に終わりました。私はリアル店舗がお客様との関係を深め、ネット店舗や大手企業に勝つためには、ターゲットを意識した売場改善や集客活動をこれまでの3~5倍のヒト、モノ、カネを投入しないといけないと思っています。

他社との競争に勝つこととは、勝つまで仮説→検証→実行いわゆるPDCAをくり返すことだと思っています。

現在、ID付POSレシートデータの登場で、お客様をセグメントして分析していこうとする小売業が増えてきました。お客様を刺激しないと売れない時代ですので、商品管理だけでは時流に乗れず、取り残される可能性があることを危惧しての流れでしょう。ID付POSデータ分析やビッグデータの分析は、おそらく多くの小売業がこれから実施していくと思います。しかし、それらを実施しただけでは他と同じになってしまいます。ゆえに3~5倍のパワーを惜しみなくお客様に降り注ぐ事が必要であると私は考えます。また、他者との競争に勝つまでPDCAをくり返すことのできる企業は少ないと思いますので、その事を愚直に実行することでネット店舗にも大手企業にも圧勝できると確信しています。

 

今回は、『ネットに負けない実店舗の戦略を考える』というテーマで書かせていただきました。

やはり実店舗は、直接お客様と接することができるので、ネットにはできない、「お客様との関係を深める」ことができることが大きな強みです。そのためには、お客様を知ることがとても重要です。

もはやこれからの時代は、完全に”店で売る”という発想から、”ターゲットのお客様にどう来店いただき、どう買っていただくか” ”ターゲットのお客様にどう喜んでいただくか” という発想に切り替えなくては、取り残されてしまう時代がきてしまったと言えるのではないでしょうか?

 2014/5/23