お客様に必要とされる店舗を考える

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お客様に必要とされるには?

■ ダーウィンの進化論そのまま

小売業も例外なく、時代の変化によって繁盛する業態は変わっています。1960年代は何でも揃う百貨店が大繁盛。70年代は百貨店より価格の安い駅前立地のGMSが大繁盛。80年代は車社会になり郊外のGMSが繁盛し、そして90年代は郊外の大型ショッピングセンターやディスカウントショップが繁盛しました。2000年代に入るとカテゴリーをしぼった専門店が繁盛し、2010年代に入るとスーパーセンターやネットショップが大繁盛です。

ここ50年間の小売業を振り返ると、上記のようにお客様の生活習慣の変化にマッチした小売業が繁盛して、勝ち残ってきました。ダーウィンの進化論 『唯一生き残れるのは、最も強い者や 最も賢い者ではなく、変化に対応できる者である』という名言そのままです。これが何を表しているか?自社を強くしようと、自分目線で自分達の売上や利益を考え、しくみづくりや商売をしているといずれ時代に飲み込まれる。しかし、お客様の変化を見ながら、お客様の変化に対応したニーズを満たすことに敏感に商売を展開することができれば生き残るという表れではないでしょうか?(単純な構造で、お客様に必要とされなければ淘汰されるということ)

■ お客様の今の欲望を知る必要性

資本主義社会は、人間の限りない欲望による消費で回っています。消費者は今の欲望が満たされても、またそれ以上の欲望を求め、それを満たしたいという思いを繰り返し、次々新たな欲望が生まれます。おそらくどこまで行っても満足するところはないでしょう。これで幸せなのか?なんか間違っているんでは?と思ってしまいますが、資本主義社会が生んだこれも宿命なのかもしれません。

現代ビジネスの本質は、この消費者の欲望にいかに応えるかです。小売業に関してもそれは例外ではありません。変化する消費者の欲望を満たすためには、消費者がどんな欲望(すなわちニーズ)があるかを知らなければなりません。そして、その欲望を顕在化させ行動させる広告や販促を実施し、そのニーズに応える商品やサービスを提供し続けなければなりません。

ターゲットとなるお客様が、どんな商品やサービスを求めているか?また商品やサービス以外にどんな欲望(何を思い、何に感動し、何に喜ぶのか?)を持っているかを知る必要性があります。

ひとつの例で(生活必需品)で考えてみましょう・・

お客様は、家にものが無くなった時点で買い物の必要性を感じます。次に考えるのが買い物にかけられる時間です。そして次に考えるのが、良いものをより安くとか、便利さだったりではないでしょうか?この「時間」「利便性」「価格」「品質」「品揃え」「サービス」といったことに対して欲望をお客様は持ってます。

中でも今の世の中、時間の欲望は購買プロセスのかなりのウエイトを占めています。2010年代に入り、スーパーセンターやネットショップが繁盛するのは、この「時間」の欲望に応えられているところと「価格」の欲望に店側が強く反応して対応しているからではないでしょうか?お客様の購入すべき必要な商品が定まっている場合、「時間」「利便性」「価格」「品質」「品揃え」「サービス」のどこかに比重をおいて店舗選びをしています。

今回は小売業における歴史的市場変化をベースに、いろんな角度からお客様のニーズを考え、今の時代にお客様に必要とされる店舗の本質に迫っていきたいと思います。

お客様の欲望を満たす

■ 時間の欲望を満たす

上記に、”時間の欲望は購買プロセスのかなりのウエイトを占める”と書きましたが、その理由は何でしょうか?

ある調査によると、生活必需品の量販店小売業への日常の買い物割合は、妻が90%を占めるとありました。このデータによれば、女性客が大半を占めることになります。現代社会の女性は、「炊事」「洗濯」「掃除」「育児」「仕事」「買い物」ととにかく忙しく、平日は特に時間がありません。そんな時間のない中、買い物をするわけですから、自分が許す時間の範囲(時間の欲望)でしか買い物はしないことは明白です。

よって、行くのに時間がかかる遠い店や、駐車場から売場が遠い店、やたら売場が広い店やフロアが分かれている店、レジに並ぶ店は、あきらかに選択されにくくなります。

時間が優先される傾向は、極端な例かもしれませんが、CVSを考えれば明白で・・

CVSで一番売れるソフトドリンク(500mlペットボトル)類は、SMやDrgsで購入すれば、78円~98円なのに、140円~150円するCVSで購入する人が多くいます。CVSで次に売れる弁当やおにぎりやおでんは、家で作ればかなり安上がりのはず。それでもCVSで買うのは時間の欲望を満たす利便性以外他なりません。パッと行って、さっと買える利便性は、SMやHCはさすがにかないません。まして、大型商業施設、GMS、大型ホームセンターといった広大な店舗は、全然時間がない場合や買物に時間を割きたくない人にとってはいくら安くても選択されない可能性が極めて高くなります。ほぼ定価販売で小さなCVSでもお客様が多く来るのは、「時間」「利便性」に比重がある人が現代に多くなってきた証拠です。相変わらず顧客利便性思考のCVSには学ばせてもらえる部分が多いです。

■ +利便性の欲望を満たす

買い物の中心である働く主婦を考えると、頻繁に購入を繰り返す商品(生鮮食品を中心とした食品)と、プラス頻繁ではないが買わなければならない商品(在庫切れ商品や衣類や住関連)の複数を同時購入することが一回の買い物のケースとしては多いです。

その場合、お客様はどう考えるか?

もし忙しい主婦であれば、最も重要視されるのは「今からどれくらいの時間で買い物を済ませるか」ということではないでしょうか?買い物以外に緊急で重要なこと(家事や育児や仕事)が山ほどあるため、時間がとにかくありません・・

このケースでは、どんな店が選択されやすいかというと、購買頻度の高い商品(生鮮食品や回転率の高い生活必需品)の品揃えが充実し、家や会社から近く、駐車場から売場がさほどなく、さっさと買えて、なるべく安いお店を想定して選ぶことになります。いわゆる、ワンストップショッピング、ショートタイムショッピングを求めます。

食品スーパーがネバフッドショッピングセンター(NSC)展開してDrgsやHC併設するのも、ホームセンターがスーパーセンター(SUC)展開して生鮮品を扱うのも、時代に合わせ上記のニーズに対応するためであり、今繁盛している証でもあります。

この先も、お客様が利便性を求めることにキリはないでしょう。資本主義だけに限らず、利便性を求めることは人間の性であり、本質である気がします。そして、利便性に対するお客様の欲望は永遠に続き、それに応え続けるのはかなりしんどいことですが、応えられる店が生き残っていくと思います。

来店方法の変化後に向かう方向は?

■ 女性ひとりで車で買い物する時代

最近SMやNSCに行って(特に平日)感じることがあります。

「なんでこんなに軽自動車が多いんだ!?」

駐車場には、びっくりするくらい軽自動車が多く止まっています。ほとんどが女性単独または母親と子供連れのお客様です。

東京や大阪の大都市ではこんな現象はないのでしょうが、大都市以外の日本の大半で(特に地方)この現象は起きていると想定できます。

20~30年くらい前、平日は主婦の大半が自転車で買い物をしてた気がします。そして休日お父さんが車でGMSに家族を連れて行っていたような覚えがあります。ここ10年くらいで主婦の来店方法がかなり変わったと思います。主婦の車所有率が相当高くなっており、車であちこち自由に買い物できるような時代になったのです。

ここで軽自動車とスーパーの買い物にまつわる仰天話を1つ・・ (人から聞いた話なので事実かどうかは別です)

ホテル経営をされている方から聞いたのですが、

日中の来店手段が・・ 男女2台別々の車で来る客がちょくちょくいるとか(1台は軽自動車(汗))
そして、お客様の忘れ物の第1位が・・ スーパーでの買い物品が冷蔵庫に残ってる(忘れてる)

だそうです(驚愕でした) ~どんなホテルか等々は想像にお任せしますm(_ _)m

■ 車社会にさらに求められるものは?

女性(特に主婦)の車の所有率が増え、買い物への行動方法が変わったため、小売業に与える影響も相当大きくありました。パート(仕事)へも車で通勤し、帰り道に買い物を済ませるという行動も多いようで、休日にお父さんがGMSに買い物に連れて行くパターンが減ってしまい、車を持った主婦は、「まだかー」とか、うるさいお父さんに邪魔されることなく、お父さんのいない間に自分の好きな店に車で行って、予算が許せば買い物をするようになりました。

よって、少々高くても近いからという理由で行っていたお店や、品質や品揃えの悪い店、接客やサービスの悪い店等には当然いかなくなりました。自分で予算が許せば、自分で好きな店に行って買い物ができる。この欲望を満たしたのが、専門店チェーン(しまむらさんやユニクロさん等)やDrgsであり、女性の車所有率の上昇とともに、平日の売上を伸ばし成長しています。

今後、さらに所有率が上がる車社会に求められるものは、「止めやすく広い駐車場」と思うでしょうが・・
最近の主婦は運転が上手なうえ、軽自動車で駐車しやすく、衝突防止機能のある車や自動運転の車が出てきたので、そこではなく・・

車を持つことで ”時間の欲望”を満たし時間短縮でき、簡単に駐車できるようになった、次の欲望は・・

よいものを他より安く、気持ちよく買いたい という方向に間違いなく向かいます。

結局、価格というかコストパフォーマンスの良いところへ流れていくのは仕方ないこと。そして圧倒的な価格差がない限り、きれいで接客やサービスの良いところが選ばれるでしょう。

これから求められるマーケティング

■ POSデータでの商品分析の限界

これまで書いてきたように、小売業ビジネスの本質は、お客様のニーズにいかに応えるかと、お客様の変化にどう対応するかです。お客様がどんなニーズ(欲望)があるかを知らなければなりません。そして、そのニーズを顕在化させ、お客様に行動いただく広告や販促を実施し、そのニーズに応える商品やサービスを提供し続けなればなりません。

それをどうやって知り、どう分析するのか?

単なるPOSデータからの商品分析だけで、お客様のニーズや変化に気づけるでしょうか?

それは、かなり困難なことです。

例えば、今、来ていただいてるお客様は、何故ネットショップではなく、競合店ではなく、自店で買ってくださっているのか?それがお分かりでしょうか?想定はできるものの、何故他店ではなく自店で買っているのか事実は知らないのではないでしょうか?しかし、そこが自社の強みであり、差別化のポイントになります。一番マーケティングでターゲット層に伝えなくてはならないところです。しかし、残念ながらPOSデータの商品分析からこのことはけっして読み取れないです。

■ マーケティング変革、パラダイムシフトの時

では、今や選択枠がどんどん広がり、店を選びたい放題のお客様のニーズや変化をどうやって知るのか?

顧客データ付のPOSジャーナルデータやビッグデータの分析はそれを知る可能性を大いに秘めています。しかも近年では技術の進歩により、それらを低価格で実現することができるようになってきました。

具体的には、スマートフォンの普及、twitterやfacebook等のSNS普及、電子マネーやカード決済、ネット上のクチコミデータ等々、個人の購買情報や消費行動がデータとして蓄積されてきているので、お客様のニーズや行動の変化をデータから分析することが可能になってきました。

これらが可能になって効率的なマーケティングを実施する企業が出てきたら、POSデータをベースとした商品分析によるマーケティングだけでは、今後競争力を失ってしまうことになるでしょう。

小売業のマーケティングは、かつての店舗そのものや看板、チラシなどを使って、安さや便利さ新鮮さを売りにして、幅広いターゲットにアピールするマスマーケティングから、お客様や地域をセグメント(細分化)して、ターゲット層を絞るマーケティングや店づくりにシフトしていかざるを得なくなると思います。”マス”から”個”へ、そして、”モノ”から”ヒト”へのマーケティングへの変革、パラダイムシフトの時がやってきたと思います。

 

今回は『お客様に必要とされる店舗を考える』というテーマで書かせていただきました。

これまで小売業は、歴史的にいろんな形で競争力をつけてきました。中でもチェーンストア理論は他を圧倒し、その企業を拡大してきましたが、チェーンストア理論を小売業がこぞって実施した結果、今ではチェーンストア理論は基本ではあるものの、それだけでは差別化が難しく、競争には勝てなくなってきた気がします。皆が同じことをすれば、最終的には価格のたたき合いになり、体力のある企業が勝つという構図です。そんな中、これから勝ち残るのは、まだ小売業全般が出来ていない”個への対応”や”セグメントした地域への対応”をした店舗づくり、商品サービス提供に他なりません。チェーンストア理論には反する”個”の対応かもしれませんが、チェーンストア理論にこの”個”マーケティングをプラスして実践した企業が、お客様に必要とされる店舗を作り上げることができるのではないでしょうか?

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

2016/6/29