来ないお客様はなぜ来ないのか?

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なぜ来ないかを解明してみる

■ お客様は、あなたの店に価値を感じているか?

今回は「来ないお客様はなぜ我が店に来ないのか?」というテーマです。このテーマは20年くらい前、ある小売業のトップの方に「どーして来ない客は、ウチ来ないんだろう?」と問われたことがあり、「それが分かれば手がいくらでも打てる!」という当時の言葉を思い出し、今でもこの内容は通用すると思いテーマにしてみました。

当時(20年前)は、このテーマに対し「想像はいくらでもできますが、結局のところ聞いてみないと分からないのでは?」という結論にいたり、それこそ、私自身”暮らしの調査員”になり、ご家庭を一軒一軒訪問して、アンケートをとったり、身近な知人何人かにインタビューして理由を探ってました。

なんと短絡的な対応でしょう(苦笑)

今回はこんな短絡的ではなく、もう少し本質論から迫り、違う形で考えてみたいと思います。

そもそも自社がターゲットにしているお客様の中で、当店に来ない人を分類してみると・・

  • 一度も来たことのない人
  • 来たことはあるけど今は来ない人

の2つに分かれます。

更なる展開を分かりやすくするために、当店に来てくださるお客様数を計算式で、まずは表してみます。

 来るお客様数 = ターゲット客 × 価値認知率(価値を感じている率) × 行動者率(行動し来店する率)

裏返して、来ないお客様を計算式で表してみます。

 来ないお客様数 = ターゲット客 × 非認知率(価値、存在) × 非行動者率(行きたいと思わない率)

この計算式と先ほどの分類で想定できることは、”一度も来たことない人”には、存在が知られてないか、当店の価値を認識してもらってないということになります。そして、”来たことはあるが今は来ない人”に関しては、価値を落としてしまったり、価値がないと思われているということになります。もし、その価値を何らかの方法で現在でも両者にお伝えし続けているのであれば、今度は行動したいと思わない価値しか伝えられていないということになります。

よって、

なぜ来ないか? = 行きたくなる価値を伝えられていない

ということになります。

■ ないものを創造する力

日本の量販店小売業は、これまでの「米国の真似や成功事例の真似」という成功の歴史から、「自らの価値の創造」と、「その価値をお客様に伝えること」があまり得意とは言えないのではないでしょうか?

各社がみな同じように成功事例の真似をすると、当然競争が激化して、次の手は・・

  • 品揃えを広げる
  • 特売で価格を下げ、安さをアピールする
  • 販管費を抑え、EDLPにシフトする
  • 価格で苦しくなると品質を上げて、高付加価値商品を開発する
  • 宅配やネットショップ、接客等、サービスの強化を始める

といった具合の価値の創造にだいたい走り始める傾向にあります。

そして、その価値を伝える方法と言えば、大きな店構えと看板、そしてCMやチラシくらい。

このように、これまでは他社が成功を収めた、既に ”あるもの” を学び真似をし、それが正しいとしてきました。

しかし、これからの時代は、これまで誰もやったことがない、経験も実績もない ”ないもの” を創造する力がなければ、お客様は徐々に集まらなくなってしまうと私は思います。

全国で142万店舗ある小売店の中から、わざわざ選んで来てくださっている現在のお客様が、既存の大切なお客様です。そのお客様はなぜ他店ではなく、自店に来てくださるのか?その理由をご存じでしょうか?本質的な理由は、お金を払う価値がそのお店にあるからです。

その価値が何であるかは絶対に知る必要があります。そこが自社の強みでもありますので、そこから今”ないもの”を創造していくことがこれからは求められます。

今回はその価値を見出し、そこから”ないもの”を創造し、差別化に成功した事例をベースに書いていきます。

お客様が押し寄せる 事例1

■ 美味しいものに徹底する独自の方法

他にはない独特の店づくりで、大行列の青果・果物の専門店があります。関東を中心に中部地区まで、大手GMSのショッピングモール内に出店し大盛況の青果・果物専門店です。

このお店の特長は、取扱い部門が、青果・果物・菓子・グロサリーにしぼっていること。一見小さなスーパーマーケット(以下SM)の様にも見えますが、精肉・鮮魚・惣菜といったSMで当たり前の部門は取り扱っていません。ゆえに、勝負している青果・果物・菓子・グロサリーは、通常のSMを圧倒する価格であり、品質です。何が圧倒かというと・・

青果・果物は・・

  • 安さ ・・ かなり安い(定番価格でも約10%は他のSMより安く、夕方になると更に30~50%くらいは安い)
  • 新鮮さ ・・ 独自の仕入方法で鮮度が格段に違う(収穫から陳列まで、他のSMより2~3日早く販売)
  • 美味しさ ・・ 旬なものを当日完売する(旬なものしか取り扱わず、その日に売り切る)

 

菓子・グロサリーは・・

  • 珍しさ ・・ 他社にはない商品(全国の地元で人気の逸品・お宝商品)
  • 美味しい ・・ 商品に物語がある(メーカー・工場に自ら足を運び、品質に間違いのないものを選ぶ)

■ どこにもない陳列法( “ないもの” の創造)

今が旬で採れたての野菜だけを、どこよりも早く店頭に陳列し、その日のうちに売り切る。お客様から見れば、「この店の野菜は他と全然違う!すごく美味しい!その上安い!」となり、お客様自身にとっての価値が明快に腹落ちするため、自ずとお客様は、この店に行く行動を起します。

さらに、このお店の商品陳列も、どこにもない一風変わった陳列の仕方があります。通常平台に陳列する青果や果物を、フックにつるして陳列しているのです。そんな什器はどこにもないため、どうしているのかというと・・ なんと、自社のスタッフがDIYで手作りしているとのこと。

この陳列は、お客様から見たら、色鮮やかな、新鮮な野菜や果物が目線につるしてあるため、収穫するように手に取ることができ、買い物に楽しさが加わり、思わず手にとってしまうという訳です。この陳列方法は、あきらかに通常陳列よりも売上が上がると思います。

この青果・果物の専門店は、これまでどこもやったことがない ”ないもの” で、お客様に価値を提供し、満足と、そして感動を伝えていると思います。とても勉強になる企業です。

お客様が押し寄せる 事例2

■ コンビニ? スーパーマーケット? ファミレス?

北陸地方に大手CVSを押しのけて、客数・客単価で他を圧倒する地域密着型のCVSがあります。お店はCVSではありますが、セブンイレブンやファミリーマートといった、みなさんが想像されるものとは全く違う、これまでCVSには ”ないもの” を、視点を変えて創造しています。

その特長は、まずCVSでありながら、店舗の半分は惣菜売場です。しかも、その惣菜の大半は なんと”できたて惣菜”で、その数ざっと30~40種類。しかも、その惣菜を店の奥というかレジ横というか、店内にある大きな鉄板でジュージューと音を立てながら、美味しそうないいにおいを香らせ、お客様の食欲を誘っています。そして、その惣菜メニューの多くは、当日に仕入れた新鮮な地元の食材をメインに使い、美味しさを追究しているとのことです。

もうひとつの特長は、惣菜や弁当をその場で食べられるイートインコーナー。最近のCVSにもイートインコーナーはありますが、それらとは規模が全く違います。イートインコーナーというよりも、私はファミレスという印象をもちました。

■ 徹底的にお客様を喜ばせる考え方

そのイートインコーナーで食べられる、ランチやディナーのバイキングの充実感もすごいです。そして、システムもとても変わっています。細かいことは書きませんが、価格はランチ1円/1gとか、ディナー1.2円/1gとか、若干分かりにくい上、良く分からない価格設定ですが、なんだか楽しくて、精算してみると意外に安いです。なんかわくわく感があり、そして美味しいので、いつもCVSで弁当を買って駐車場で車の中で食べるという、いつもさみしーい感じの私にとって、私の地元にも出店して欲しいお店と思いました(笑)

その他、食品売場も一風変わった商品が多かった印象です。地元の採れたて青果はもちろんのこと、私が見たことのないおそらく地元の商品がいくつか・・ 聞くところによると、地元の人が泣いて喜ぶ、子供の頃学校給食に出たものや、昔懐かし商品、そして、全国を飛び回って仕入れる絶品が数多くを占めるということです。

私の知人のバイヤーも言ってましたが、食品メーカーへは絶対足を運ぶべき、営業のトークで仕入れるものを決めては絶対ダメ。食品工場へ直接行けば、そのメーカーは美味しいものを作るところか、儲けるためにやっているかが一発で分かるとのことでした。こちらのご担当もそのことをよく知っているのでしょう。

これらの考え方は、お客様がどうしたら喜ぶだろう?ということがこのCVSの本質であると読み取れます。

この店は、これまでの成功事例や他社でやっている当たり前のことや真似ではなく、お客様を喜ばせるという本質に基づいて、自ら考え創造することで、地域のお客様の心をがっちりつかんで離さないと私は思います。

今後勝ち残るマーケティング手法

■ ロジカルマーケティングは敵だらけ

2つの事例はいかがだったでしょうか?2つの事例とも”ないもの”を創造して、独自の店づくりをしているという共通点と、決して単なる価格勝負(激安ではない)をしていないという共通点がありました。そして決定的なもう一つの共通点は、冒頭に書いた計算式の”価値を感じる” ”行動したくなる” といった部分で、お客様の”感情”にフォーカスして、マーケティングができているところにあると私は思います。

冒頭で来ないお客様はなぜ来ないのか?は、お客様が価値を感じていなかったり、店に行こうという行動を起こす気になれなかったりと私は分析しました。それに対して、これまで多くのお店がやってきたマーケティングは、特売で価格を下げること等のお客様が理解しやすいロジカルな部分で、「他店より安い」という価値だったり、「安いから今のうちに行っておこう」という行動促進でした。別に悪いわけでも、間違っているわけでもありませんが、このような「値引き・割引」等のロジカルマーケティング手法には、決定的な弱点があります。

それは・・

簡単に他社に真似をされてしまう

ということです。

そして価格での価値創造に限って言えば、競争が勃発し、最終的には体力のある大企業が圧倒的に有利であるということです。体力のある大企業は、このロジカルマーケティングでガンガン攻めればいいと思いますが、そうでない企業は、このスパイラルに巻き込まれると、とても苦しい状況が続いてしまうのは言うまでもありません。

■ 感情に訴えるエモーションマーケティング

価値を伝える、行動を起こしてもらうには分かりやすいけれども、敵だらけのロジカルマーケティングに対し、これからの時代に有効なのが、お客様の感情に訴えるエモーションマーケティングです。これは、論理的に理屈で言ったら説明がつかなかったり、理解できなかったりするけれども、感情に訴えることによって、お客様が価値を感じる、感情に訴えかけることによって、お客様が行動するというマーケティング方法です。

文字で表現しても分かりにくいですが、上記の2つのお店の事例は典型的です。他にない独自の商品や独自のしくみでお客様の感情に訴え、その感動を得たお客様は黙っておれず、知人や友人にお店の良さや商品の良さの話をする。そんなことをしても自分自身に値引きや割引等のメリットがあるわけでもないのに、次々にお客様を口コミで勧誘してくれるのです。

何一つ得がないのに、知人や友人を勧誘してくださる、これはどういうことなんでしょう?

それは、一緒に美味しさや楽しさや面白さを共有できる。そして相手から感謝してもらえる。この感情への見返りがあるから、とても気分がいいのではないかと私は思うんです。理屈や思考で理解しているのではなく、とても感覚的な部分であり、潜在意識の部分なので、我々理屈好き・ロジカル好きな男性には分かりにくいとは思いますが、感情が豊かで感性の強い女性には、理解できるのではないでしょうか?

このエモーションマーケティングは、今後の集客やリピートにおいてとても重要になります。

このように論理的に数字で推し量ることはできないエモーションマーケティングですが、現在のモノ余り、どこ行っても同じようなサービスという状況や、これからのAIやロボットの時代の、集客やロイヤルカスタマ作り、リピート促進には、絶対にかかせないマーケティング手法になると私は確信しています。

 

 

今回は『来ないお客様はなぜ来ないのか?』というテーマで書かせていただきました。

とても厳しい言い方ですが、来ないお客様は、やはり「行く理由がないから」「行く価値がないから」というのが本音であると私は分析します。それに対しこれまで多くの企業は、他社がやってる見様見真似で、値引きや品ぞろえの改善を行い、良い品が安いという論理をお客様に価値として伝えるということを繰り返してきました。これでは他社も同じことをしてくるので、”やってもやってもスパイラル”に陥るのは当然です。このスパイラルに陥ると、どんどん厳しい競争的市場環境に目を奪われてしまい、いつも来店くださるお客様の感情をないがしろにしてしまうという危険な状態に陥る可能性がとても高いです。今後繁盛する小売業は、このスパイラルから抜け出し、今 ”ないもの” を創造し、お客様の感情に訴えかけられるエモーションマーケティング実践できる企業であると私は思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

2017/12/27