お客様心理を考えると、2020年小売業はこう変わる

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2020年代の繁盛店はどんな店舗か予想

■ 時流にそって繁盛店は変化

みなさんご承知の通り、時代や時流によって、店舗が流行る理由は変化してきています。60年代は何でも揃う百貨店が大繁盛。70年代は百貨店より価格の安い、駅前立地のGMSが大繁盛。80年代は車社会になり郊外のGMSが繁盛し、そして90年代は、郊外の大型ショッピングセンターやディスカウントショップが繁盛しました。2000年代に入ると、カテゴリーをしぼった専門店が繁盛し、2010年代に入るとネットショップが大繁盛です。

見事に時代や時流を反映した傾向になっています。90年代以降は競争が激しくなったため、同じ業態でも、立地条件や駐車場の広さ、品揃え、価格、品質といったところで、流行る店舗と流行らない店舗の差が出始め、淘汰されはじめました。2000年代にはさらに上位への専有化が進み、企業買収が行われ小売業の企業数が30%近く減りました。そして現在でも淘汰・上位専有化は続いており、独自サービスの展開や集客に力を入れているところが繁盛してきています。(価格・品質・品揃えは良いことが当然の時代になった。)

■ これから流行る店舗の傾向は?

では、2010年代後半と2020年代はいったいどんな店舗が流行るのでしょうか?

時代・時流を予想すると、今後人口が減少し、需要減は避けられないと思います。単純に計算すると2020年代には今10個売れてるものが8~9個しか売れない時代に、2050年代には今4個売れてるものが3個しか売れない時代になります。考えただけでも恐ろしいです。そして人口は地方から減り始め、都市に人口は偏り始めると思われます。団塊世代の方や若者の車離れも発生すると思います。よって、ネット需要は、ネットになじみのあるユーザー層が60代にまでなってくることも重なり、ネット上の競合は激しいもののネットショップの需要そのものは増えていくことは間違いないと思います。

リアル店舗に関しては、大手が現在展開してるように、便利さを追求したコンビニ感覚のスーパーマーケットのような都市部の小型店の需要は増えると思います。そして、さらに専有化が進み競合が激しくなるため、この先最も重要になってくるのは、駐車場等の広さや何でも揃う大型化というよりも・・

「お客様の心理や行動を理解した店舗・売場づくり・提供サービス」 というもの。

これからの繁盛店の条件は、お客様に与える印象や雰囲気、これがきっと勝敗を左右します。そのためには、お客様の心理・行動を理解し、喜んでいただける『真のサービス』が提供できることが絶対条件です。

今回のメルマガでは、お客様の心理や行動の変化にフォーカスして、繁盛店になりうる戦略について考えてみたいと思います。

経営課題にも変化  ”改善” から ”提供”へ

■ 効率一辺倒の”改善”の時代も終わり?

企業は「利益を上げることが使命!」間違いなくそうです。しかし、利益を上げるために効率を追求してもお客様が来ないとどうにもなりません。需要が減ってくるこれからは、これまでのような「生産性の向上」「在庫回転率アップ」「ロス削減」そして「利益アップ」というような、お客様の都合より企業側の都合だけを優先していては、おそらく支持される店舗にはならないと思います(ネットよりも圧倒的に安い価格ならともかく・・)。

今の時代、利益を上げることは、企業の目的ではなく、”存続するための条件”という位置づけになってきたようにも思えます。

経営課題の方向性も効率化一辺倒の”改善”だけではなく、お客様の心理・行動を理解し”与える”こと、すなわち”提供”することに、経営課題をシフトする企業が増えてきました。

■ 喜びや幸せを提供するところが増えてきた

では、どうお客様に提供していくのか?

商売の基本は、お客様にいかに喜んでいただき、幸せを提供できるかです。例えば、昔は直立不動で「いらっしゃいませ」という礼儀正しい接客をするところが多かったですが、最近はあまり見かけなくなりました。これはあの挨拶に喜ぶ人がどれだけいるかということを考えれば理解できます。最近では、「いらっしゃいませ」ではなく、「こんにちは」と挨拶するところが増えており、これはコミュニケーションをとる手段の一つです。「いらっしゃいませ」に対し、「はい来ました」と答える人はいないですが、「こんにちは」という挨拶には自然に答えられるからではないでしょうか。

また、挨拶の頭に「あっ!」をつけるだけで絶大な効果があります。「あっ!こんにちは」と言われたら、受けた方は歓迎されたと感じます。お客様は来店してくれたことを喜んでくれると嬉しくなるため、気分よく買い物ができ、買上点数も来店頻度もあがるというわけです。馴染みのお客様には特に効果がありますよ。

脳科学や心理学から、今後の展開を考える

■ 買物よりも実は妄想して幸せを感じている

ある研究者の論文で、女性の消費者にとって、実際リアルに買物をする行為より、妄想する方が楽しく、幸せを感じるというものがありました。例えば、洋服を買う時に「この洋服を着てパーティに出席する」とか、「好きな人とデートする」とかを妄想することが、買物行為そのものよりも断然楽しく幸せを感じるというものです。我々男性にはありませんが、買うだけ買ってタグのついたままの洋服がクローゼットにたくさんあるという女性が多いといいます。それは妄想を楽しんで買ったはいいが、そのシチュエーションが来ないから着る機会がないという現象ではないでしょうか(汗)。

これらを象徴するように、最近ではネット上で”エア買い”という行為をする人が増えているそうです。”エア買い”とは、ネット上で妄想しながら買物カゴにどんどん商品を入れていき、十分楽しんだら、最後に買物カゴの中身を空にするという、買物と妄想を楽しむ、まさに”エア買い”です。このような時流、脳の構造・心理を考えると、店舗で幸せを妄想させるような演出ができれば、お客様を喜ばせ幸せにできることになりますね。リアル店舗で”エア買い”は難しいでしょうから(笑)

■ スーパーでの買物を「日課」と思わせるな

私の独自調査による50名程度の聞き取りデータですが、主婦のみなさんに「ご自身にとって日頃のスーパーマーケットでの買物って何ですか?」と聞いたところ、一番多かった回答が「日課」とか「ごはんの支度」といった、やらないと仕方ないからしているといった回答。少数意見で「家族の健康管理」とか「楽しみ」といった素晴らしい回答をされた方もいらっしゃいましたが、基本的にはスーパーで買物や妄想を楽しんでいるとはとても思えない回答が多かったです。

これも買物に関するある論文からですが、お金を支払うという行為は、脳の痛みを感じる部分を活性化させるという研究結果があるそうです。この研究結果に合わせて、日課で仕方なく買物する率の高いスーパーマーケットでは、財布の紐をしめる方が多いのも脳科学的にはしかたない現象のようです。

また、別の論文では、嬉しい、幸せと感じると浪費しやすくなり、不幸を感じると浪費しないという研究結果もありました。この内容からすれば「日課」では、なかなか幸せを感じないため浪費しませんが、家族の健康を考えて良いものを買うという思考なら幸せを感じるし、美味しいものを食べてもらおうと思うと幸せを感じるということになり、浪費しやすくなるということになります。 よって、これからはお客様に「日課」とか「ごはんの支度」と思わせない、店舗・売場づくり・サービスの提供ができる企業が変化に対応できる強い企業になるのではないでしょうか?

今年の流行から、今後の展開を考える

■ 2014年のヒット商品を見る

日経トレンディが選ぶ 『2014年ヒット商品』 が発表されました。

1位 アナと雪の女王
2位 妖怪ウォッチ
3位 ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター

1位と3位が「魔法使い」、2位が「妖怪」と・・(汗) 現実とかけ離れたものがベスト3を独占しました。ちなみに、過去の消費税の導入や税率アップのタイミングには「ちびまる子ちゃん」「ポケモン」がヒットしています。これは偶然でしょうか?

そして今年の総評を聞くと・・

  • “大人×子供” “非日常”がキーワード。「子どもを狙った商品を大人に買わせたのが今年の特徴」
  • 今年のヒット商品は”費用対効果” ”少しいいもの”といったように、消費者はより価値を求めた
  • 今年のヒット商品の大半は、女性・子供向け商品。(ちなみに20年前はお父さん向け商品がほとんど)

これらのヒット商品の傾向は、2014年(消費増税やアベノミクス)を先読みした、メーカーの巧みな戦略と、それに乗った消費者心理の現れであると私は思います。

■ 2015年のヒット商品予測と小売業のとる対策は?

消費者が購入を決定するのに大きな要素の一つに”安心”があります。購入決定前には「買って大丈夫か」「もっといいものがあるのでは?」という不安心理が働き、それが払拭されると購入を決定します。中でも一番安心するのが、”お客様の声” や”みんなが買ってる”という人と同じことをすれば安心という心理。だからブームに反応するし、たくさん売れたものにはみんなが飛びつきます。ネット通販はそのあたりを、口コミや売れ筋ランキングという形で、実にうまくしくみを作っています。また、今の時代、メーカーの戦略やメーカーの売れ筋だけで小売業は勝負できなくなってきます。そこで勝負するなら、とことん価格を安くするしかないでしょう。これからはますますPBや自社で育てる売れ筋商品が絶対に必要なので、小売業でもメーカーのような巧みな戦略をたてなくてはなりません。メーカーのように時代を先読みしたり、マスコミを使ったりする必要はありませんが、せめて自社に来られるお客様が何を考え、何に最も反応し、何に困り、何に喜びや幸せを感じるかを真剣に考え、店づくり、売場づくり、売れ筋商品づくり、そしてサービスを提供していくべきと思います。

ちなみに来年2015年のヒット予測では、1位に食品への新表示解禁により、野菜や鮮魚といった日常で口にする食品にも「睡眠に良い」「肌・目に良い」といった効き目が訴求される「グルメ“健康”系フーズ」が選出されています。

IT投資の方向にも変化が・・

■ 価格勝負のIT対応から、顧客心理へ

前述した経営課題の方向性の変化に正比例するかのように、IT投資の方向性にも変化が表れています。これまでIT化の方向性は、どちらかと言えば、コスト削減系(ロス削減、在庫削減、生産性向上等)一辺倒でしたが、ここ最近では、ID顧客分析や販促効果測定といったお客様心理に近づくところへの投資や検討が増えてきています。

この現象は、これまで価格に重点をおいて「良いものをより安く」、メーカー戦略にのり、売れ筋商品を探し、安く提供するという戦略をしてきましたが、今後を考えると価格はネットが競合となり、どんどん苦しくなることが分かってきたため、接客やサービス・価値の提供に重点をシフトしてくる企業が増えてきたことが背景にあります。

IT投資の方向性が、これまでの業務改善、生産性向上から、ID-POSデータによる顧客心理分析や提供サービスの効果測定に傾いてきている理由はここにあるのではないでしょうか。

今回は『お客様心理を考えると、2020年小売業はこう変わる』というテーマで勝手な意見を書かせていただきました。

これまでの50年間の小売業を見ると、時代の変化に対応してきた小売業が勝ち残っているように、今後も間違いなくその傾向にあると思います。ダーウィンの進化論 『唯一生き残れるのは、最も強い者や 最も賢い者ではなく、変化に対応できる者である』という名言そのままです。

今後は残念ながら需要は減ってきますし、競争は当然激しくなるでしょう。

安いものを求めて買物をする人は今後も大勢いると思いますが、そういうお客様はどんどんネットに流れますし、他に安い店ができたら簡単に他の店に行ってしまいます。ということは、永遠に安さを追求するために薄利での激しい戦いに挑む体力勝負となります。そうなった場合、最終的には体力のある大企業が勝つでしょう。

人間はみんな、幸せと喜びを求めて日々生活しています。 これからの時代の繁盛する店は、”お客様を喜ばせ幸せにする” それができるお店になっていくと思います。

 2014/11/27