小売業の基幹システム クラウド化する企業が増えてきたその背景は?

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基幹システムの見直しにあたり、次期システムはクラウドへの移行を希望する小売業が増加しています。2000年代までは、自社の業務にあわせてシステムを構築し、自社のマシンルームにサーバーを設置し、専任の電算部員を複数人確保し、自社で電算要員を育成し、、、という企業が大半でした。しかしながら、2010年代に入ると、グループウェア、文書管理、ネットワークやパソコンの運用管理などの重要度が比較的低い領域から、クラウドサービスを活用する動きが増え始め、2020年の今となっては基幹システムまでクラウドサービスを活用するのが主流になりつつあります。当ブログでは、小売業が基幹システムにおいてまでもクラウド化を志向するその背景について解説します。

小売業が基幹システムのクラウド化を志向する背景は? ~ 1. 低コスト・短納期を志向

どんな業界であろうとも、どんな企業であろうとも、湯水のごとくIT投資をする企業は皆無で、IT導入にあたってコストはもっとも重視されるポイントの1つです。とはいえ、小売業は商品を1つ売って数円の利益を稼ぎ、仕入においてもバイヤーがしっかり条件交渉をしてから仕入を決めるという業態であるということもあり、コストを重視する企業が特に多いのが特徴です。ITベンダー、特に大手ベンダーは、IT投資に積極的で、投資額も大きく、毎年継続的に投資が続く、金融業などの業界に注力する会社が多く、小売業に力を入れている大手ITベンダーはそれほど多くはないというのも、そんな業界特有の事情があるとも言われています。そのような特徴のある小売業は、基幹システムの導入においても低コスト導入を志向されます。より少ない投資で、より大きな効果を出し、大きな投資対効果を得たいのは当然のことです。

とはいえ、ITベンダー側も赤字を出してサービスを提供できるわけもありません。小売業様から選んでいただき、納得して投資をしてもらうために、少ない原価で基幹システム導入を実現できるように工夫します。最も手っ取り早い方法が、初期コストの大半を占めるSE工数を圧縮する方法です。そして、SE工数を圧縮するのに最も有効な手段は、小売業の自社固有の業務に合わせてたくさんの追加開発・改修を行うアプローチ(たくさんの機能を設計し、プログラミングし、テストする)ではなく、すでにパッケージシステムに標準搭載されている機能や、運用想定に合わせて小売業の自社の業務や社内ルールを変えてもらうことを前提としたアプローチとなります。パッケージ標準機能では、どうしても業務が回らなくなるケースや、小売業が同業他社と差別化できるストロングポイント(消費者に店を選んでもらえている、低原価で仕入れができている、低コストでオペレーションできている、など)を消してしまう可能性があるケースは、パッケージのカスタマイズやアドオンも提案に含めますが、なんとなく過去のやり方を踏襲するだけ・どうしてそのような業務の流れになっているかが今となっては不明で特に意味が感じられない運用などは、パッケージ標準運用に合わせて変えていただくことになります。そうすることで原価を圧縮できて提供価格を抑えることができ、小売業も低コストで基幹システムを導入できるようになります。小売業は低コストでシステムを導入することができるようになり、ITベンダーもプログラム開発などのSE工数を圧縮することで少ないエンジニアでサービスが提供できるため、両者ともにハッピーな状態となれます。

さらには、投資対効果を求めてIT投資することを決めた以上は、少しでも早くシステムを稼働させて効果を出したいと思うもの。コストは安く、プロジェクト期間は短く、リスクは低く、、、はいつの時代も企業が求めるものです。コストと同様に、納期についてもパッケージの標準機能を有効活用してSE工数を減らすことができれば、プログラムの開発期間・テスト期間を圧縮することができますので、プロジェクトスケジュールも短期化できます。チェーンストア化が進み、業務の標準化がなされている小売業であればあるほど、例外処理も少なく、プログラムの追加開発や改修は少なくて済みます。そして、標準化が進んだ企業であればあるほど、パッケージ標準導入をしやすく、プロジェクト期間も短縮しやすく、初期投資も少なくすぐに動かせるクラウドサービスが導入しやすいので、クラウドサービスを志向することになります。

小売業界の同業他社がクラウドサービスを採用して基幹システムの入れ替えプロジェクトに成功していることを耳にし、目にすると、自社でも取り組みたいと思う企業が増えるため、ますますクラウド化の流れが加速しているものと思われます。ということで、低コスト・短納期志向の小売業が、チェーンストア化を進めて業務の標準化に取り組んできた結果、自社の業務に必ずしも合わせなくともパッケージの想定する運用に業務を合わせてもいいという企業が増えてきていることが、基幹システムにおいてもクラウド利用を志向する企業が増えている理由の1つと言えるでしょう。

小売業が基幹システムのクラウド化を志向する背景は? ~ 2.IT要員が確保できない

システムエンジニアの採用に苦労している小売業、とても多いと思います。日本では全国的にシステムエンジニア・プログラマーは不足しており、ITベンダーも採用には苦労していますし、どの業種も苦労されています。その中でも、特に小売業は業界全体の平均年収も少なく、休日も必ずしも平日とは限らず、お盆休み・年末年始など多くの人が休みたい時期が実は書き入れ時、、、という業種であることも手伝い、著名な大手小売業であろうとも採用に苦労されているように見受けらます。地方のスーパーマーケットともなると、そもそも地方に在住するIT技術に優れたエンジニアの絶対数が都市部よりも少なくなりますので、ますます採用環境は厳しいものがあると言えます。

一定水準以上のスキルレベルを有するシステムエンジニアの給与水準は、一般的な小売業の従業員によりも高く、優れたエンジニアであればあるほど、その差は大きくなるので、特別な給与制度を設けて処遇しないと採用しにくい環境にあるといえます。また、常に基幹システムの再構築やPOSシステムの刷新などの大きなプロジェクトがあるわけではありませんので、優れたシステムエンジニアを好条件で処遇したとしても大きなプロジェクトがない時にはコスト高の従業員に見えてしまうものと思われます。さらには、優秀なエンジニアであればあるほど、安定稼働したシステムの運用管理業務は嫌う傾向にあり、難しくやりがいのあるプロジェクトがないと離職してしまう傾向にあります。

また、好条件で処遇している優れていると思われるエンジニアが、必ずしも小売業の業務に精通しているとは限りません。技術力も高く、小売業の業務にも精通し、プロジェクトメンバーを巻き込み・説得し・プロジェクトマネジメントしていくことができるエンジニアは採用し、やりがいのあるプロジェクトを提供し続けるのは並大抵のことではなく、一部の大手小売業を除き、中堅中小の小売業にとっては優れたエンジニアを常に雇用し続けるのはハードルが高いようにも思われます。

エンジニアではない人を採用し、内製でスキル養成をして人を育てていくやり方もあり、以前はそれが主流でした。今でも小売業の情報システム部には、たたき上げの優秀な情報システム部員の皆さんがたくさんいらっしゃいます。しかし、将来を見据えるとどうでしょう?終身雇用は崩壊しつつあり、技術動向も変化が激しく、雇用の流動性も高まって転職への敷居も低くなってきている今、内製で自社要員を育成していくのも難しい環境となってきています。

となると、基幹システム再構築などの数年に一度の大きな導入プロジェクトとなるときだけ、専門のITベンダーに依頼をし、稼働後の運用管理についても社外に委託するほうが、中長期的にメリットがあるということになり、基幹システムのような重要システムであろうともクラウドサービスを有効活用して外部に委託したほうが、手っ取り早く悩みを解消できるため、これもクラウド志向の小売業が増えている理由の1つと言えると考えられます。

 

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小売業が基幹システムのクラウド化を志向する背景は? ~ 3.情報システム部にとっても負担少ない

クラウドサービスを利用しておけば、定期的にバージョンアップが提供されて新しいソフトウェアを利用することができるため、いちいち稟議書を書いて経営層に説明をしなくとも済みます。

サーバーだけではなく、WindowsなどのOS、データベースソフトやセキュリティソフトなどのミドルウェア、Webで稼働するシステムであれば各最新ブラウザへの対応など、ただ同じソフトウェアを利用し続けたいだけなのに、現状を維持するためにやむなく費用をかけざるを得ない領域はどうしても出てきます。しかも、使っているサーバーやミドルウェアの種類によっては高額となることもあります。これをITの専門外である経営層に理解してもらうのは情報システム部長にとってはとても骨の折れる、嫌な仕事です。クラウドサービスを利用しておけば月額料金の中で最新のソフトウェアのバージョンが提供されるため、現状維持のための大きな一時費用のための稟議書を書く必要がなくなります。これは情報システム責任者にとって大きなメリットです。

さらには、急な事業拡大への対応においてもクラウドサービスならばサーバー資源増強は月額利用料の増加だけで簡単に対応できますし、テクノロジーやソフトウェアの開発技法の進化にともない徐々に陳腐化していく既存システムの機能についてもクラウドサービスならば新し機能や見た目や操作性のリフレッシュなどが定期的に行われるため、投資対効果が分かりにくい機能の微修正についても苦労して稟議書を書く必要がなくなります。

人の採用・育成に苦労し、世代交代にも悩む情報システム部門にとっては、クラウドサービスの利用はメリットが大きいため、次期基幹システムの導入にあたってはクラウドサービス前提で検討し、RFP(提案依頼書)を出すことも理解できます。

テスクでは、初期バージョンのリリースから33年経ち、毎年数千万円の研究開発費を投入してバージョンアップし続けている、量販型チェーンストア向けのCHAINSⅢ+クラウドサービスを提供しています。その導入事例を、一部だけではありますが(社名公表の許可をいただけているお客様のみ)掲載しています。

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