小売業は今が生産性を上げるチャンス!その業種と意味とは?
新型コロナウイルスの影響で、業績が良くなった小売業も、苦しくなった小売業も、業界の今後は先行きが不透明とか言ってますが、私がこれまで生きてきて、先行きが透明だったことなど過去に一度もありません(笑)
「いつのときも未来は不透明で、どうなるか分からないです。しかし、その未来を予想するのも、切り開くのも自分達であり、変化し続けなければ取り残されることは明白です。そう小売業は変化対応業なんですから!その変化対応業(小売業)に、今与えられている課題の大きなひとつは、間違いなく”生産性の向上”であると私は思います。今回は、なかなか上がっていかない小売業の生産性にスポットを当てて、いつものように、自論を書いていきたいと思います。
小売業の生産性は低い
日本の小売業は、世界の主要国と比較し一人当たりの労働生産性(以降”生産性”)が低いと言われます。中小企業が多い、国土が狭い、おもてなしに代表される過剰サービス、過剰品質…まあ当然なのかもしれませんが、その生産性の低い日本の様々な業種の中でも、当社がフォーカスする小売業の生産性も決して高くなく、私の印象では、真ん中より少し低めです。その中でも量販店小売業(業態にもよりますが)は、さらに生産性が低いです。これには様々な要因・原因・真因が隠れていますが、業界の固定観念や思い込みで、日々当たり前のように業務をこなしており、なぜ生産性が低いかをあまり考えない、効率が悪いともあまり感じないから、行動も起きず改善されず、生産性は何年たっても低いと言われる。キツイ見方ですが、そういったところではないでしょうか?
私がずっと提言しているように、小売業の多くは…
- コスト意識が低い(原単価は必要以上に気にするも、コストは気にしない)
- 仕事の手戻りが多い(多くの仕事で、出来上がってからダメ出し、やり直す)
- 見切り・廃棄ロスが多い(毎日毎日出している)
- 人手に頼り過ぎている
- 本質を考えれば、同じことを繰り返す必要もないのに繰り返している(商談やリベート等)
- 小売業に限らないが、取引を維持するために、接待や贈り物にコストをかける
- 製造業があれだけ効率化のお手本なのに、見向きもしない
- 未だに書類にハンコ(笑)、FAXでやりとり(笑) ※行政への嫌味じゃないですよ
等々…
上記の詳細は、本編でいくつかは解説していきますが、これだけ世の中が変化し、ITやテクノロジーが進化し、人口減や国力低下で需要が落ちているのに、売上だ!荒利だ!って・・ 結構ヤバいと思いませんか(汗)
■小売業の多くは生産性向上以外に気を取られた
この30年で生産性は2倍の差!
例えば、リアル店舗の小売業は、店舗が増えれば、それに比例して人による労働力も増える”労働集約型企業”の典型であるため、資本集約型企業(情報通信や電気・ガス・水道等)とは違い、会社規模が大きくなっても、生産性が飛躍的に向上することはありません。しかし、それをもう40年以上前に、画期的に小売業生産性を高め、かつ規模拡大によるサービスの低下も防いだ手法がありました。それが”チェーンストア理論”であると私は思っています。この画期的理論以来、残念ながら小売業の生産性を全体的に上げるものは出てきていないと思います。
もちろん部分的に生産性を高めたものは多くあります。POSレジやEOS発注などがそれらに当たります。それももう30年以上前のこと、それから今まで何してたの?と思うくらい、消費税増税だ、2000年問題だ、個人情報保護だ、環境問題だ、食品表示法だ、新型コロナ対策だと… 生産性の向上は、ないがしろにされ、コストのかかる(いわゆる生産性を落とす)ことばかりをしてきました。
一方その間にしっかり、amazonやSPA業態(ユニクロさんやニトリさん)などはその本質を見抜き、圧倒的に生産性を向上させることでビジネスをのばしてきました。
ちなみに、SPA業態と、SMやCVSの生産性平均値には約2倍の差があります。ユニクロさんの生産性の半分しかSM・CVSはありません。経常利益率にいたっては、それこそもっと差は広がってしまうのです。
小売業の生産性が上がらない理由
生産性向上の必要性すら考えていない現場?
これからの日本は、高齢化・少子化による人口減、またGDPも下降傾向にあるため、全体需要は減少の方向にあります。それを考えたら、小売業は、圧倒的トップを取る戦略以外では、売上やシェアを伸ばすという発想は、世の中に逆行するため厳しくなりますし、売上をつくる、荒利を上げるといった、そこだけを追いかける時代はもうとっくに終わっていると思います。もちろん、革新的な商品やサービスを生み出す必要もありますが、今後は“生産性の向上”を経営課題の中心にあげるべきだと私は思います。
小売業経営者のほとんどの方は、そこに気づいていますが、これが現場におりればおりるほど、その必要性は理解されていません。それが証拠に、経営者の方に、一人当たりの労働生産性を尋ねれば、「うちは500万円」とか「当社は1000万円超えている」とかすぐに答えられるのに対し、経営層以外の人はほとんど答えられません。
ゆえに、コスト意識は極めて薄く、工夫すらあまりせず、疑問も感じず日々同じことを繰り返しています。ということは、ボトムアップで声が上がってくることは、ほぼほぼありませんので、トップダウンでしくみとしてやらない限り、生産性の向上は実現しないということになります。
生産性が上がらない中、小売業を取り巻く環境はどんどん変化するため、そのたび現場の仕事は増え、サービス残業しないと回らなく(利益を確保できなく)なります。サービス残業を今の時代にやっていたら従業員の不満は爆発的に溜ります。だから、定着率も悪くなり、前向きにモチベーション高く仕事ができないという悪循環に陥ってしまうと考えられます。
このようにコスト意識が浸透していないことが、小売業の生産性が上がらない理由のひとつです。
何に?誰に?コストがかかっているのか知らない
小売業においてモチベーションが高めの、店長もバイヤーさんも、売上や原価や荒利は、しっかり意識しますが、コストはあまり意識しないケースが多いと感じます。店舗で、どの売り場でコストがかかり、どの売場で利益が上がっているか?どのカテゴリが利益が高く、利益が低いか?どの作業にどのくらいのコストがかかっているか?
聞けば「知ってますよ」とお答えになると思いますが、行動はそうなってないケースがよく見られます。
まあそういうケースは多いので、いくらでもあげられますが、典型的なのが全く利益の薄い特売に、給与の一番高い店長が汗をかきながら、一心不乱に売り場づくりや、品出しをやっている。もうその時点で労働生産性はガタ落ちですが、下のものからは店長なのに「品出しまでやってくれて素晴らしい!」とか言われご満悦で、すごく仕事をした気になり、実は生産性を大きく落としていることに気づかない。そして「疲れたー」とか言って、タバコを吸ったり、缶コーヒーを飲んで休憩している(苦笑)。そのような行動から判断できるのは、どこにコストがかかり、どこで儲かっているかを意識していない=知らないということの正真正銘証しになります。
これからは、せめて高い給与をもらってる人は、コスト意識を高め、生産性が向上するための仕事に思いきりシフトしていくべきだと思いますし、そうすることでみなさんの給与も会社の利益も、お客様への利益還元もできると思います。
小売業の生産性が低い理由
旧態依然とした上司?
全くの私の偏見の可能性も高いですが、小売業の上司の方は、完璧主義者が多い気がします。そもそも、完璧を求められたら部下は辛いです。みなさんだって、奥さんや彼女、旦那や彼氏に、完璧な(夫・彼氏・妻・彼女)を求められたら、しんどいですよね?まだ身内は「アホか!できるかぁ!」と言い返せますが、上司にはまあ言い返せませんので、部下はこの状況が続くと死にます(苦笑)
上司が求める完璧など、その上司もできてない”理想”であるうえ、そもそもその上司より実力が下だから部下なのであって、完璧などできるわけがありません。それなのにやれ報連相ができてない、なんだこの販促企画は!とか、売価が違うと叱る。店へ行けば、菓子の棚が乱れてる! トイレがきたない!少しゴミが落ちているだけで叱る。もちろん間違ってはいませんが、完璧な作業を求めればコストが上がることは認識すべきではないでしょうか?
ちなみに、小売業で働く人は、掃除屋ではないので、コストをかけてでもピカピカにする必要もなければ、ゴミひとつ落ちていないようにする必要はないと思います。もし、そうしたいならディズニーランドのように掃除だけのスタッフを配置すべきだし、掃除屋に頼めばいいです。しかし、コストはもちろん上がり、生産性は落ちます。
店舗においては、一定レベルのクリーンネスは必要ですから、やらなくて言い訳でなく、マニュアル通り、時間が来たらしっかりやるということでいいわけで、あら捜しや問題ばかりに目がいき「汚い!」というなら、上司が自分から拾えばすぐ済むし、全体のコストも下がるのではないでしょうか?このような上司は、本質を捉えることができていないと思います。いつもいつもピカピカの売り場にしたら、利益は増えるのでしょうか?従業員の満足度は上がるのでしょうか?モチベーション高く働くのでしょうか?お客様がバンバン増えるのでしょうか?その上司がいつも言ってる「売上・荒利上げろ!」の売上すら上がらない、本質からズレた叱り方だと思いますし、一番生産性を悪くしてるのは、その人ではないでしょうか・・(苦笑)
上司の仕事の本質は?
では、上司の仕事の本質は何なのでしょうか?
私は“部下の生産性を上げること”と言い続けています。
私も部長になったばかりの頃は、部下の悪いところや問題点を見つけて、指摘・改善するという手法をとってしましたが、部長になって2年後に、この目先の問題解決が、新たな問題を生んでしまい部下が迷子になることに「はっ」と気づき、この本質にたどり着きました。そして、会社が目指す方向・理念に向かうように導くようにオペレーションを改善しました。そこから部下は生き生きと自ら考え、自ら行動するようになりました。
そう、上司の仕事の本質は、部下の得手不得手を見抜き、適材適所にポートフォリオを組み、最大限生産性が上がるように導き、それを支援することだと私は思います。例えば、野球でも足の遅い人を一番バッターにして、盗塁死することを叱り倒しても、結局いい結果は出ないと思いますが、違うでしょうか?
小売業は生産性を上げる余地がたくさんある業種
最も生産性を落とすのは仕事の手戻り
日本の生産性、そして、小売業の労働生産性が低いのはここまで書いてきたように事実であり、散々がんばって生産性を向上させ、段々打つ手すら無くなってきている製造業とは違い、上げる余地がものすごくあると私は思います。特に小売業の店舗のコストは異常に高く、ITと、そのテクノロジー(今後は5GやIoT)で大幅に改善できると確信しています。
なぜなら、固定観念と思い込みで、常識と信じて仕事を続けており、他の産業では当たり前とされていることが、全然できていないからです。 例えば、製造業では当たり前とする流れ作業は、小売業では意外と実施されず、効率の悪い一括作業が実施されています。 また、多くの作業(例えばチラシの作成や季節の棚替え・売場づくりなど)が、ほぼほぼ完成してから、上司判断や評価をしてもらうことが当たり前で、仕事の手戻りとか、完成後のやり直しが旧態依然として行われている。
仕事の手戻りは、最も生産性を落とす仕事のやり方であるのに…
もっと前段階で、判断し評価すれば、手戻りは大幅に減り、生産性は向上します。
そして、前述したように利益の上がらない作業を、コストの高い人材が行うなど、全く他では考えられないことをしています。 これだけサプライチェーンが叫ばれ、消費者に価値を生まない作業にコストをかけない方向にいっているのにもかかわらずです。返品だ、リベートだ、景品だ、接待だ、とコストをかけ、さらに商談に時間をかけてコストを使い・・ 生産性など上がるわけがないと思います。
もう仕事を増やすのはやめよう!
このように、小売業はムダ・ムリがとても多いので、改善したらものすごく生産性を上げるチャンスがあります。
新型コロナでいろんな気づきがあったのではないでしょうか? ムダに行かないくても、商談ができるとか・・
しかし、悲しいのは、あくまでコロナの安全を担保するためであり、現在小売業としての課題である業務改革や生産性向上ではない。 だから、オンラインで商談ができ、交通費がかからないだの、場所をとらないだの、今まで以上に商談の回数が増やせると言っています。 もっと本質を見るべきであり、商談は「お互いの利害関係の一致」が本質なんですから、商談そのものを「何回もやらなくてもいいことに気づいてぇ!」と言いたいです・・
ただでさえ、ムダ・ムリが多いのに、コロナでzoomで!
と、まだムダをつみあげるようなことをしています。
やめましょうよ・・
どうITやテクノロジーを使って、人間にしかできないエモーションな接客や提案に優秀な人材の時間を確保するかを考えるべきであると思います。そして、小売業は、もう売るという発想は止めるべきです。
そして、どう儲けるかの発想もやめるべきだと私は思います。どうお客様に価値を与えて、お役に立てるかを考えるべきです。 問屋・ベンダーとの商談に時間をかけるなら、店へ行ってお客様の声をひろい、そこを分析する時間にあてた方がよほど生産性はあがります。 一生懸命目先の値段をベンダーにさげさせても、俯瞰してみれば結局他で取り返されていることに気づくべきですし、強者のベンダーなら倍返しされているのがオチです。
そして、山のように出てくる目先の問題に、ひとつひとつ答えていては、多忙どころか問題が問題を生み、ますます問題は増えます。そして、スタッフの仕事がまわらなくなるのは目に見えています。もっと腰を据えて、じっくり本質を見るべきです。現在なぜ自社があるべき姿ではないのか?そのあるべき姿と現状のギャップが問題であり、その問題の本質を改善することができれば、目先の問題も、霧が晴れるように、さーっと消えていくはずです。
また、必ず何かを新たに仕事を増やすときは、何かを止める。ただ単純に仕事を足し算すると、どんどん増え、コストは増します。そもそも目的はコストを減らすことなので、間引きするものやめるもの、仕事の断捨離が絶対に必要なので最後に付け加えておきたいと思います。
小売業は今が生産性を上げるチャンス
今回は『小売業は今が生産性を上げるチャンス!その意味とは?』 というテーマで書かせていただきました。
書いてる途中で、随分エキサイトしてしまい、過激な表現もあったと思いますが、お許しくださいm(_ _)m
それもこれも、本当に生産性を向上させられると思えることが、小売業には数多くあり、旧態依然としたやり方やオペレーション、マネジメントがとても多くあり、改善できれば、生産性が上がると思うからです。
当社のITビジネスやテクノロジーは、生産性が上がらない等の旧態依然とした業界の仕事の仕方を、効率的に改善していくために必要不可欠なものだと思っています。それだけに、投資も大きいですが、私たちが担う役割もとても大きいと考えています。だから日々働き方改革を考え、そのベースとなる製品をリリース・ご提案しています。(ちなみに当社の商談の生産性を上げるために開発した「商談.net」は、新型コロナ騒動の前から販売している商品です。)
今後小売業は、ITやテクノロジーに投資をして、新しい付加価値を生まないといけないと思います。 旧態依然と アナログで今までのことを続けるのは、とても危険です(人件費と手戻り、ムダムラムリの原因)。 どの業種も現在ITやテクノロジーに投資をしています。 他社や他業界を見ていただければ分かると思います。どんどん効率化し、生産性向上に舵を切っています。
ひとりあたりの生産性をどう上げるか ?その意味とは、消費税増税で、コロナで、インボイスでと、後手後手に回るのではなく、積極的に製品デモや他社事例を見ることをおススメしたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
2020/12/17