基幹システムで稼働するEDIとは?

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現行の流通業基幹システムでは、EDIが外部システムとして稼働しているケースがありますが、本来は基幹業務の仕入や売上に関連する発注や受注が主たる対象範囲のため、狭義のEDIであるデータ交換方法のみを外部システムとして稼働させた方が有効です。

EDIとはElectronic Data Interchangeの略称で、直訳すれば「電子的なデータの交換」ですが、初期のEDIは単なるデータ送信だったものが、今や対象企業全体の最適化を実現する重要なツールになっています。こちらでは、EDIの開発経緯で発展史を振り返り、方式で現状を確認し、未来像で将来的な発展型を考えていきます。

基幹システムにおけるEDIの開発経緯

EDIの前身であるEOSは、1970年代に米国で研究され標準化されました。

日本の小売業では、1970年代に急速に発展した日本型スーパーストア(GMSと表現することもあるが、ペガサスクラブの表現とします)においてコンピュータの導入が進み、当時は電話サービス事業を独占していた日本電信電話公社(通称:電電公社、現在のNTT)が1971年の第1次通信解放により企業内のデータ通信を解放したので、店舗から本部への発注データ送付がコンピュータ化されたのです。その後、1982年の第2次通信解放により制約付きの企業間データ通信が可能になるまで、本部からお取引先へのデータ送信としては利用されていませんでした。

しかし、納品伝票の発行がコンピュータ化されるケースが増え、小売企業ごとに指定伝票が指定され始め、お取引先は得意先(主に小売業者)ごとにプログラムの作成とプリンターへの伝票付け替えを強いられ作業負荷が大きくなり標準化ニーズが高まったのです。

そこで、1974年に百貨店統一伝票(統一伝票A様式)、1975年にチェーンストア統一伝票(統一伝票B様式)が制定され、お取引先の伝票発行業務が軽減されると同時に、自社伝票を指定していた小売業者は無論のこと、力関係で自社伝票を指定できなかった小売業者も受取伝票が統一され伝票扱い作業が効率化されました。

さらには、多くのお取引先の伝票が同じなので見間違いなどが減少し、正確性も増し、後のEDIによる業務の効率化にも繋がったのです。その頃になると、小売業のチェーンストア化が進化し、店舗数が増加すると共に、店舗規模が大規模化したので伝票の発行枚数も膨大になり、発注兼仕入伝票を受け取ったり、音声電話やFAXで受注を受けたりすることがお取引先では対応困難になったのです。

そこで、流通業界が打開策を検討していたところに第2次通信解放が発表され、日本チェーンストア協会(Japan Chain-store Association:略称JCA)が中心となって通信手順の標準化(通称:JCA手順)を行いました。

そして、1982年には通商産業省(現:経済産業省)によりJ手順として流通業界標準通信手順が制定されました。通信手順が標準化されたことにより、一定のコンピュータシステム作成能力がある小売企業やお取引先がJCA手順に準拠したEOS(Electoronic Ordering System)を利用し、オンライン発注が急速に普及しました。

後には、手順の統一に続いてデータフォーマットの標準化を行って、EOSの導入ハードルが益々低くなりました。受発注の効率化のみならず、小売業の仕入照合、買掛、支払照合を可能にしたのが、ターンアラウンド用統一伝票(1984年)です。

発注が、仕入データや買掛データ、更には支払データとして利用できるので、基幹システムでEDI(EOS)を運用していました。これら、JCA手順、標準データフォーマット、ターンアラウンド用統一伝票が、「EOSの3点セット」として小売業に拡大し、現EDIの基本になっています。

このように、中堅規模以上の小売企業がEOSを導入していきましたが、中小小売企業には投資負荷が大きくEOS導入のハードルは高かったのです。しかし、1985年の新電気通信事業法の制定でVAN(Value Added Network:付加価値通信網)事業が自由化され、業界VANや地域VANサービス事業者が表れて、中小小売企業の投資負荷が軽減されてEOSが普及したのでした。そして1991年のJCA-H手順や1996年のJEDICOS(Japan EDI for Commerce System)が制定されましたが、これらは普及するには至りませんでした。メッセージフォーマットが統一化されておらず、低速通信速度の制約でデータ表現に限界があり、JCA手順に対応する通信回線や通信機器の供給が停止されたため、根本的な見直しが必要になり、次世代EDIのニーズが高まりました。

 

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基幹システムで稼働するEDIの方式

JCA手順の継続利用に赤信号が点いたので、次世代の標準EDIが検討されました。

そこで、日本チェーンストア協会と日本スーパーマーケット協会が2005年に合同情報システム委員会を開催し、通信方式、メッセージ種類、データ項目の意味、利用コード等を標準化することで合意しました。2007年にはEDI業務の効率化、コストダウン、関連業務の効率化、変化への柔軟な対応を期待して標準EDI「流通ビジネスメッセージ標準」(通称:流通BMS)が制定されました。詳細は「一般財団法人 流通システム開発センター」の刊行している資料に委ねますが、制定された内容と現時点の基幹システムで稼働するEDIの方式を解説します。

通信基盤はインターネットを利用して、通信手順は、ebXML MSやAS2そして、JX手順(SOPA-RPC)を推奨して通信インフラとし、EDIメッセージの標準形式を4つに分けて制定しています。

(1)データ表現形式は、JCA手順時の固定形式では標準化に対する重大な制約があったので可変長とし、XMLを採用しました。

(2)コードは、商品コードと企業/事業所コードに分けます。

商品コードは、JANやITF(Inter-leaved Two of Five:標準物流商品コード)を包含するGTIN(Global Trade Item Number:国際標準の取引用商品コード)を、企業/事業所コードはGLN(Global Location Number:国際標準の企業/事業所コード)を使います。

(3)データ項目は、JCA手順では、共通コードがあれば不要な名称が送受信情報に含まれていたので、各種区分とコードの意味を決めました。

(4)取引業務プロセス(メッセージ種)は、発注、出荷、受領、返品、請求、支払から着手し、商品マスター、集計表作成(生鮮分野)、値札作成(アパレル分野)、在庫補充勧告を作成し、続いて発注訂正、返品受領、支払案内に対応するよう制定しています。

しかしながら、流通BMSはファイル転送を前提としたEDIですので、当然、送り手(小売企業)と受け手(お取引先)には相応のシステムが必要になります。VANサービスを利用してシステム構築の負担軽減を図る選択肢もありますが不利益な面があるので、お取引先の負担軽減のためにはブラウザを利用したweb-EDIを小売企業が提供する方法が有効です。

基幹システムEDIの未来像

今後、EDIは、どの様に変化するでしょうか。

キーワードとして「リアルタイム」と「全体最適」があります。

まず、「リアルタイム」について解説します。そもそもEDIは、相互の業務処理速度を上げる電子的な情報の交換ですが、今やコンピュータのバッチ処理を経た情報は、鮮度が劣化して使い物にならない場合があります。

つまり、EDIの交換対象メッセージは、発生の都度利用可能にすることが流通業界の要請となりつつあります。具体的に言えば、商品マスター情報は、メーカーが発生源であり卸売事業者に連絡します。

これを、流通BMSを通じて小売企業に送出されるのですが、早くて数日、遅ければ数週間後になることがあります。消費者に注目されて需要が高まっているにも関わらず、自店の店頭に無いどころか、商品マスター未登録を理由として発注すらできない事態が散見されます。そのためには、DXレポートにも解説されているように、社会インフラとしてのビッグデータ的な商品マスターが必要になり、登録者も訂正者も利用者も全ての人が一つの商品マスターを利用するか、少なくともリアルタイムで連携された状態にある商品マスターを利用することがEDIの未来像であると考えます。

現行でも、公的機関である「一般財団法人 流通システム開発センター」がインフラとしての商品マスターを目指し、JICFS/IFDBサービスを提供していますが、性格上止むを得ないもののリアルタイムと言える代物ではないため、本ブログで言う未来像ではありません。

 

次に、「全体最適」を解説します。

EDIは、小売業界が主体となって発注から納品検収、そして請求支払の効率化を図ってきましたが、製造業、卸売業、小売業が個別の最適化を追求してきた経緯があるため、効率化可能な要素が限界に近づいています。さらなる付加価値を創造するためのモデルは、米国VICS(Voluntary Interindustry Commerce Standards)Association:自主的な業界間商取引基準委員会が提唱したCPFR(Collaborative Planning, Forecasting and Replenishment:製造業、商社や卸売業、小売業が共同でマーチャンダイジングを計画し、予測に立脚した商品補充)であると推察します。

従来は各企業が需要を予測し、生産や販売そして在庫の各計画を立案して商品を展開していた行為を共同で行い、事前契約に沿ったリスクとリターンも共同で負担する事により消費者へのサービスレベルを向上しつつ多くの付加価値を得ることを目指しています。

基幹システムで稼働するEDIとは?~まとめ~

企業内のデータ通信から始まったEDIは、企業内作業の効率化からスタートし、統一伝票により小売業者と卸売業者の作業軽減が図られ、JCA手順の制定により発注から納品検収作業が高速化され、流通BMSにより発注から支払いまでの効率化が推進されました。そして、効率追求から発展してスピードアップと効果の享受を目指して、リアルタイムと関連する者の全体最適が実現するCPFRの構築が基幹システムにおけるEDIの位置づけとして欠くべからざる行動であると言えます。

 

2021/02/04