スーパーの基幹システムで考えるリードタイムの適正期間とは?
リードタイムとは製造・物流業でよく使われる「着手から完了までの時間」を指します。
製造業ですと、「製品の企画(あるいは発注)」「材料の調達」「加工」「組み立て」「検品」そして「完成品の配送(納品)」に至るまでの全工程にかかる時間を指します。
これとは別に、「顧客が製品を発注してから手元にとどくまでの時間」を指すことがあります。
今回は小売業に関連する後者の「顧客が製品を発注してから手元にとどくまでの時間」の適正期間についてどのように考えるべきかをスーパーの基幹システムを中心にお話します。
リードタイムの身近な例
登場人物
鈴木さん:スーパーテスクの新人バイヤー。店舗から移動してきたばかり。ただいま勉強中。
坂井さん:中堅バイヤー。鈴木さんの教育係。
鈴木さんが抱える課題
スーパーテスクでは店舗業務と本部業務どちらの立場からも物事を考えられるように人事異動で店舗から本部へまた逆への移動が数年に1度行われます。
鈴木さんは店舗業務を行っていましたが4月からバイヤー業務を行うことになり、中堅バイヤーの坂井さんの下で勉強中です。この度、基幹システムで稼働している自動発注を担当部門でおこなうにあたり、システム部からリードタイムが妥当か見直ししをしてくださいと言われています。
坂井さん、基幹システムで動いている自動発注を担当部門でも導入することになったのですが、リードタイムについて妥当か見直しをしてくれと言われたのですがどう見直せばいいのか困っていまして相談に乗ってもらえませんか?
いいですよ。鈴木さんはそもそもリードタイムについてどんなものか理解できていますか?
えーと、リードタイムは発注から納品までの期間を指します…。
そうね。ただ妥当か考えるにはもっと身近な例で考えると何が課題かわかりやすくなるかもしれないわね。
たとえば、ネット通販で、農家から直接桃をお取り寄せして「注文してから5日後にお届けします」と言われた場合、注文してから商品が手元にとどくまでの期間も「リードタイム」ですよね。
買う人にとってはこの5日間が短ければ短いほど嬉しいですよね。
そうですね、当日配送と書いてあると同じ商品を売っているネット店舗でも多少高くてもそちらを選ぶ場合がありますね。
ただ、当日配送と書いてあっても欠品していたら注文はできないわよね。
店の立場で考えると、当日配送を行うためには店に必ず商品がある必要がありますね。常に在庫があるには多少過剰でも在庫を多く持っておかないと…。
でも例に挙げた桃だと長い期間保存ができないから、売れるかどうかわからないものをたくさん在庫しておくわけにはいかないわよね。
あ、そうか。農家でも収穫できる分だけしか出荷できないから、どれだけ出荷できるかを想定して注文を受け付ける必要がありますね。
リードタイムは短いほうがいいのか?
ネット通販の例を出したことで鈴木さんもリードタイムのイメージがつかめたようです。次の話はリードタイムの具体例の話になったようです。
先ほどの桃の例は供給者が農家、需要者がネット購入者だけだからシンプルだけど、スーパーの場合はメーカー・卸業者・スーパー・お客様と間に入る会社や人が増えるから
どれだけ発注するかを「売上」と、「発注をしてから納品されるまでの期間」を加味して予測する必要があるわよね。
うっ。そうなんですよ。スーパーでの発注になると、商品保管場所も限られていますし、たくさん発注すると賞味期限までに売れなくて廃棄になってしまうこともあるので、
きちんと売上予測したうえで発注しないといけないですよね。
そうね。不要な在庫保持せず、でもお客様に欠品なく提供するには発注精度をあげる必要があるわね。
発注精度はリードタイムができるだけ短いほうが発注精度は高くなるわ。
あと、新しいものを早くお客様に提供できるといことは顧客満足度の向上にもつながるわね。
毎日発注毎日納品とかですか?
確かにスーパーだと日単位が一番短いけど、私が知っているなかだとコンビニエンスストアが一番短いわね。
米飯の発注だと1日3便運用を行っているところもあったと聞いているわ。
これは弁当をピーク時の朝・昼・夜にあわせて発注を行うことで、欠品をすくなくし機会ロスをなくできるわね。
1回あたりの発注量がすくなくなれば過剰在庫も不要になるし廃棄リスクも少なくなるわよね。
あ、じゃあリードタイムは短いほうがいいんですね!
そうともいえないのよ。
え!!!
スーパーのリードタイムと顧客満足度について
鈴木さんはリードタイムが短いほうがいいという結論になりそうでしたが、坂井さんからストップがかかりました。新鮮なものが早く提供ができ、廃棄などのロスも減ってよくなりそうですが、なぜそうとも言えないのでしょうか。
鈴木くんちょっとまって。リードタイムが一番短い例の例としてあげたけど、かならずしもスーパーに当てはまるわけではないわ。
これは商品アイテム数がすくないコンビニだからできることで、商品アイテム数が何万とあるスーパーマーケットでなかなか難しいわよね。
なぜですか?
例えば、店舗にいたときに検品出荷業務大変じゃなかった?
出荷業務はなれるまでは大変でした。僕力がないから牛乳の品出しが大変で…。
そうね。牛乳は毎日多く売れるし重いから大変よね。
でも1品あたりの出荷数が少なくても、1日に必要な商品が毎日何万品と納品されて棚に並べることを想像してみて。
毎日全商品を並べるなんて無理ですよ~(涙)
そうよね。たとえ発注が自動化しても、検品・納品・陳列頻度が多いとお店の人の負荷が大きくなるわよね。あと、賞味期限がバラバラになるのもリスクね。
あ、そうか。
日配品だと賞味期限ができるだけ長いものを選んでお客様が購入される傾向があるから賞味期限が短いものが残って廃棄になって困っていました。
短いから良いというものでもないですね。
あと、取引先から店舗まで配送する必要があるから配送コストのことも考えると、できるだけリードタイムが長いほうがいいわね。
発注頻度が多くなると配送費や陳列作業のコストもあがるからそこも考えないといけないんですね。
スーパーはコンビニエンスストアやインターネット販売と違って、できるだけ安く提供することがお客様満足度につながると考えるのがいいわね。
だから基幹システムの発注では適切なリードタイムの見直しが必要になってくるのよ。
自動発注だと人の目が入らないから物量が適切になるリードタイムの考慮が必要なんですね。
どんな観点で考えればいいか困っていたのですが全体業務を想像しながら、かつお客様満足度も考えてリードタイムを見直します。
ありがとうございます。
そうね。最近は賞味期限が長い商品もでてきているから、
そういう情報も踏まえて見直しが必要な時期にきているかもしれないわね。
スーパーの基幹システムで考えるリードタイムの観点
鈴木さんは坂井さんからヒントをもらえたので基幹システムの自動発注に伴ったリードタイムの見直し糸口が見えてきたようです。
基幹システムで物流スケジュールを設定する場合、リードタイムが短くなるのが良いと考えがちですが、発注頻度がおおくなれば配送費や出荷作業など見づらいコストがかかるものです。
それらを総合的に考えて見直しする必要があります。自動発注の場合はリードタイムだけでなく、1回あたりの発注数なども含めて見直していくのもよいでしょう。
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