小売業のサブスクリプションサービス未来予想図

小売業のサブスクリプションサービス未来予想図

商品やサービスを一定期間、一定料金で提供するサブスクリプションサービス。

いわゆる「サブスク」があらゆる業界で広がっています。

小売業においても、コロナ禍で巣籠もり需要が膨らみ、これまで当たり前だった買物スタイル(店に行く→商品を選ぶ→レジに並ぶ→お金を払う→エコバックに詰める→家まで持ち帰る)の面倒くささに気付いたことで、ネット利用が広がり、さらにサブスク利用に拍車をかけたと思います。

なんせamazonとか大手ネットショップ企業が”定期便”をやたら推してきますからね。

 

消費者は、サブスクを利用すると買い物をしている感覚(買ってる、お金払ってる)がなくなります。

そして、すでにサブスクサービスが開始されている車やアクセサリ、洋服等は購入ではなくレンタルとなるので、もはや買い物をしておらず、自己所有しなくなっています。

 

某自動車メーカーが「車を売る会社から、サービスを提供する会社へ」と舵を切るとの発言もうなずけます。

今回はそんなサブスクが小売業にどんな形で進出し、そして、どんな未来になるかをいつものように大胆予想してみたいと思います。

多様化するサブスクリクションサービス

ますは、現在すでに各業界で消費者向けに開始されているサブスクを見てみましょう。多くは月額固定で料金を支払うことでそのサービスや商品を利用できるというものです。

  • 音楽配信サービス(Amazon Music、Apple Music、LINE MUSIC等)
  • 本、雑誌サービス(楽天マガジン、dマガジン等)
  • 映画、ドラマ配信サービス(AmazonPrimeVideo、Netflix、Hulu、U-Next等)
  • 家具、家電のレンタルサービス
  • 洋服、ファッションのレンタルサービス(プロのコーディネイトによるもの等)
  • おもちゃのレンタルサービス
  • 食材の提供サービス
  • ミネラルウォーターの提供サービス

 

このほか、自動車、ゲーム、花、冷凍総菜、電動歯ブラシ…面白いところでは、レンタルオフィス、恋愛まであるようです。

恋愛までもが…と思いますが、恋が成就するまでの工程を面倒くさいと思う人には、結果としてライフタイムバリュー(生涯価値)を生み出し、フラれて落ち込むこともなく、お金もかなり浮くかもですね(笑)

 

では、消費者からみたサブスクのメリットは何でしょうか?

  • 使い放題や〇〇放題がある。 …恋愛サブスクだと怖いですが(笑)
  • コストパフォーマンスが良い。
  • 必要なくなったら解約すれば、やめられるし、物理的にもかさばらない。
  • 購入せず、とりあえず試す等のリスクヘッジが可能になる。

 

もちろんデメリットもあります。

  • お値打ちだからと多くのサービスに加入すると結構お金がかかる。 …私です(苦笑)
  • 解約すると、当たり前ですが存在が消え、使えなくなってしまう。

 

ということで、当社のようなIT業界でも、SaaS等のクラウドビジネスが主流になりつつありますし、小売業も例外ではなく、多くの業態でサブスクが既に広がってきていますし、今後広がっていくと予想されます。

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小売業でのサブスクリプションサービス

冒頭で書いたように、これまでの買い物のスタイルは

店に行く → 商品を選ぶ → レジに並ぶ → お金を払う → エコバックに詰める → 家まで持ち帰る

 

という、よく考えてみると多くの工程があります。バイヤーさんをはじめ、小売業のみなさんは、提供する商品単価や客単価にはすごく注目するものの、この工程に存在する交通費や移動時間、袋詰めやレジ待ち等、様々な消費者の手間には意外と注目しません。

実はそれらは消費者にとっては全てコストです。

 

ネット通販利用したことで、消費者はこれらのコストダウンを肌で感じてしまいました。

リアル店舗での重たいものの売上減や雨の日の客数減は、これらの影響が大きいと分析します。

それに付け加えサブスクは、商品を購入しなくても良いというオマケつきなので、飛びつく消費者が多くなるのもうなずけます。

 

また、衣料品のサブスクに関しては小売業側にも別の効果が期待でき、winwinの関係が築けます。

消費者側は自分に似合った洋服が毎回クリーニングされた状態で安価に提供され、ファッションも楽しめる上に、家の中も着ない洋服であふれなくなります。

小売業側は、従来からの課題である売れ残り問題の緩和が期待できます。50%off、70%offと散々値下げした結果、その作業のコストや値下げによる利益減が発生、結局最後は大量に廃棄するから、さらに利益を圧迫します。

 

サブスクで衣料品を提供することで、それらの廃棄量は確実に減少させられます。

さらに値下げ作業にかかるコストも減少させられます。

それを象徴するかのように、現在ではブランドの洋服を月額1万円で月に3着までレンタルしてくれるサービスや、プロのコーディネータがお客様に合った洋服をセレクトし送ってくれるサービスなど、winwinの関係が築けるサブスクが続々と登場しています。

他にも家具や家電小売業も相次いでサブスクに参入しています。転勤族や一人暮らしで家具や家電を一定期間だけ利用する人の需要にこたえ、自社の売れ残り廃棄対策にも期待をしているようです。

 

量販店小売業に関しては会員制というサブスクが現在はある程度で、まだ本格化していない模様です。

おそらく将来的には、月額支払えば、毎日2品好きな総菜を持って帰れるとか、将来本格的なIoTの時代には、自動補充サービスのサブスクが登場し、自宅の冷蔵庫やストック棚がインターネットとつながり、冷蔵庫が自動発注をし、いつも適正で最適な在庫を確保できます!なんてサービスも出てきそうです。

 

現在ネットショップでは配送までの時間がネックになっていますが、米国ではAmazonGOやダークストア(倉庫店舗)が増え、数年後には30分以内の配送も可能になりつつあるので、サービスレベルはどんどん向上するでしょう。

小売業に対し、わがままが度を超す消費者

小売業のみなさまは、どんどん消費者はわがままになっていると感じているのではないでしょうか?

現在のリアル店舗は、考えられないくらい綺麗だし、接客サービスのレベルも高いし、商品価格は安いし、品質も安心できるものばかり、そしてもちろん品揃えも充実しています。

これ以上何をすれば?となるから、巷では、ブランド力だったり、独自のサービスだったり、顧客CX(顧客体験)が重要視されると騒がれます。

しかし、消費者は本当にそれを望んでいるのでしょうか?私は気づきました。実は消費者はそれを望んでいるわけでも感動が欲しいわけではないということを・・

では何を望んでいるのでしょうか?

 

「当たり前のこと(自分が当たり前と思っていること)を当たり前にやってくれ」です。

 

他社がある商品を飛んでもなく安く98円で売っていたら、その消費者にとっては98円が当たり前の価格になっていきます。

飛んでもない感動するサービスを受けたら、最初はたしかに感動するものの、3回も受けたら当たり前になります。

今後ネット通販でも、30分配送を実現したら、それも当たり前とされるでしょう。様々なサービスも商品も美味しさも、みんな同様の現象です。

これが、消費者がどんどんわがままになっていく正体です。

 

ちなみに、我が家にはスマートスピーカーがあり「アレクサ」に頼めば、天気やカップ麺の出来上がりアラーム、株価やコロナ情報等、いろいろなことをサポートしてくれます。

そして、音楽もかけてくれます。古い世代の私はいつもアーティストの名前や曲名をアレクサに言ってリクエストしますが、どんどんわがまま世代のうちの子は「アレクサ!元気の出る曲かけて!」等のわがままな要求(笑)。

スマホで商品を検索するときも、私が「アディダスゴルフウエア」と検索するところ、音声で「今年はやりのカッコいいゴルフウエア」と、もはや検索ではなく、ほぼほぼ昭和の成り上がり社長が部下に買い物行かせるときのようなことを言います(笑)

 

どんどん小売業が消費者ニーズに応えれば応えるだけ、世の中”昭和の成り上がり社長”だらけになってしまうのは?

ということを懸念しているのは私だけでしょうか?

それでも日本のリアル店舗小売業が強いワケ

ここまで書くと、将来はみんなamazonのようなネットショップがサブスクやamazon定期便を充実させ、小売業を牛耳るように思えるかもしれません。

確かに米国では、amazonGOが増え、既存の小売ストアがamazonのダークストア(倉庫店舗)となり、ますますamazon顧客が増える可能性が高いと感じます。

しかし日本の小売業はそうはならないと思います。

なんせ国土が狭いうえ、都市集中ですから、買いに行った方が早い。

そして、日本には人と人とのつながりや信用第一という買い物文化があります。

実際ネットへの移行スピードは世界に比べて遅いし、多くの小売業がネットに参入していますが、ネットより実店舗の方が圧倒的に強いです。

 

よって、いつも申し上げますが、リアル店舗は決して価格勝負に出ないことだと思います。

激安にするために人を減らしたりすれば、リアル店舗の良い部分を失うことになり、消費者は、ますますネットで買うようになってしまいます。

 

激安にすれば原則売上は下がり、激安のための作業が増え、コストは上がります。売上UP、コストDOWNの真逆に向かってしまいます。

そうならないためにも、付加価値を上げる工夫をして新たなるサブスクリクションサービスを展開し売上をUPし、ITを使って、自社の内部コストも消費者の買い物にかかるコストにも着目し、それを知恵と工夫でコストDOWNを実現していければ、どこのも負けないリアル店舗小売業になると思います。

 

今回は、「 小売業のサブスクリプションサービス未来予想図 」というタイトルで、書かせていただきました。

時代はものすごいスピードで変化していきます。サブスクリクションサービスも次々と現れ消えていくでしょう。

小売業は変化対応業だと思っています。つまり、お客様の変化と技術や社会の変化に対応しなければなりません。

消費者の当たり前を受け入れ、その当たり前に対応し、お客様と約束したことに当たり前に応える。それが永遠に強い小売業ではないでしょうか。

 

本ブログを執筆したのは、名古屋に本社を置く流通業専門のシステムベンダー「株式会社テスク」です。

小売業向けの基幹システム「CHAINS Z」やバイヤーの商談を効率化するシステム「商談.net」、販促スマホアプリ「Safri」を提供しています。

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