これからを勝ち抜く小売業の新業態!対応方法と事例

これからを勝ち抜く小売業の新業態!対応方法と事例

これからを勝ち抜く小売業の姿は、いったいどんな姿なんでしょうか?

私が思い浮かぶ姿は・・

  •  お客様にどう選んでいただくか、どう価値を提供するかの工夫を重ねる小売業
  •  ITを徹底的に活用し、生産性を向上させ、人手不足に陥らない小売業
  •  成功事例の真似ではなく、お客様の変化に対応する工夫を重ねる小売業

 

これからを勝ち抜くポイントは、どれだけ多くのお客様に、たくさんの価値を提供できるかです。

その工夫を自ら考え、実践していく小売業がこれからを勝ち抜く小売業の姿であると私は考えます。

 

儲けだけを考えていては、勝ち残れませんし、お客様の不満を無くすだけの改革では競争にもはや勝てません。

今回は上記を掘り下げて、その方向性と対応を書き下ろしたいと思います。

お客様の変化の方向と対応

購入先としてどこを一番はじめに思い浮かべるか?

お客様の買い物の仕方は、どんどん変化しています。

その影響で2017年は、Amazon等のネットショップ系が躍進した一方で、世界中で小売チェーンの閉店や破綻が発生しました。

需要が大きく拡大しているわけではないので、どこかが伸びれば、どこかが落ちるのは自然なことですが、業界を動かす大きな変化ではないでしょうか。

 

では、その買い物の仕方はどう変化したのでしょうか?

躍進度合からみても、ネットショップでの買い物に流れたというのは明白ですが・・

買い物という行為自体は変わっていないため、どこで買うか?という思考のところで大きな変化が出たということになります。

 

お客様は、欲しいものが決まっていたら「どこで購入するか」という思考がまず働きます。

そのときにパッと思い浮かぶところでの購入確率が高いということになりますが、その位置にネットショップが大きく割り込んできたことが一番の買い物の仕方の変化であると私は考えます。

そして、仮に一番にパッとリアル店舗が浮かんでも、最終購入段階では、できる限り安く手に入れたいと思考が働き、ショールーミングが起こり、価格.com等で比較し、ネットショップで最終購入するという流れもあるため、さらにネット躍進の要因となっています。

 

この流れで変化の影響が大きい商材は、本やCD、家電、おもちゃ、雑貨等です。業態でいうと、書店、家電専門店、おもちゃ専門店、ホームセンター、ディスカウントストア、百貨店等が影響を受けやすい状況にあります。

また、現在影響が少ない商材が、食品、日用品、酒、衣料品等です。

業態でいうと、SM、Drgs、CVS、酒専門店、衣料品専門店等ですが、酒も衣料品もネットショップのシェアはどんどん広がっていますので、この流れは止められないでしょう。

流れのない川はよどんできますので、よどむ可能性のある川(業態)は、事前に対策が必要です。

 

ただし、SM系に関しては「今晩のおかずは何にしよう」と、大半のお客様が店に行ってから購入するものを決めるうえ、鮮度や特売を見て購入品を決めるため、リアル店舗が現在も圧倒的に強く、お客様がネットには流れにくい要因の一つとなっています。

SM以外のDrgs等の業態が食品を取り扱い、ネットショップが生鮮のリアル店舗を出店するのは、ここにその理由があるのでしょう。

パッと思い浮かぶ店になる戦略

このようなお客様の変化を、小売業側が自在にコントロールできるなら良いのですが、それはどう転んでも難しいため、小売業はこの流れに対応する方法を考え、行動するしかありません。

その証拠に、家電量販店が、家具やインテリア、リフォームまで扱う新業態をいち早く展開したり、百貨店がデベロッパー業へと変換する動きが始まっています。そして、各小売業が自社でのネットショップを展開してきています。

 

もちろん、この流れに合わせて業態を変化させることや別のビジネスドメインを立ち上げること、ネットショップを展開することも良いですが、私は上記に書いた「パッと思い浮かぶところ」になる戦略が最も効果的であると考えています。

 

すなわち、お客様が何かを欲しいと思った時に「パッと思い浮かぶ店」に、みなさんの店がなれるかです。

ちなみに以下は(私の個人的な意見ですが)、過去から現在のパッと思い浮かぶ店の推移表です。そうなってほしいですね(笑)

  • 筆者がパッと思い浮かぶ店の推移表

上記のように45年前は、ほとんどが近所のお店や商店街。35年前はGMSでほとんどのものを買う感じでした。

15年前は、専門店やSM、HC、Drgsが中心で、今では買回り品中心に徐々にネットに流れています。

個人差はあると思いますが、読者のみなさんも消費者の一人として変化されているのではないでしょうか?

 

ちなみにネットでの検索で、検索エンジンの1ページ目に出てこない場合、その企業での購入には、ほとんどつながらないと言われています。

では、ネット検索ではなく、人の頭の中に置き換えたらどうでしょうか?基本思い浮かぶベスト1になるか、せめて3位以内くらいにいないと、購入先企業の対象にならないでしょう。

 

そうは言っても、大手チェーン店がひしめく中、そんな簡単に1位になるのは難しいと考えるかもしれません。

しかし、絞り込んでいけばいくらでも戦略はあると思います。

例えば、お店から半径2km以内にお客様を絞れば可能なことがいくつもでてくるでしょうし、冷凍食品だけの専門店とか、レトルトだけの専門店とか、全品オーガニック商品とか、全品国産とか、飛び抜けたことをすれば簡単に1位になれます。

そして今でもみなさんのお店では、お客様が1位で思い浮かぶ何かを持っていると思います。

 

持っていなければ今の時代お客様は来てくれませんので、必ずあるはずです。そこを極端に強化する等、いくらでも手はあります。

ただ仕入れて、利益をのせて販売するだけの商売のやり方は、今後は成り立ちません。

これからは独自化やサービス、品質・品揃えで差別化を図り、特に買回り品を商材とされる業態は、パッと思い浮かぶ店になる工夫が、重要な戦略の方向性であると思います。

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小売業 生産性向上の方向と対応

生産性を高め、人が少なくても回るしくみ作り

このところの人手不足は、小売業のみなさまも頭を抱える悩みではないでしょうか?人手不足倒産という言葉が出てきたくらい問題は深刻です。

中でも小売業は人手不足倒産が懸念される業種のひとつになっているようで、あまりにも多忙なイメージと、慢性的な人手不足の印象が、就職・転職希望者にはあるようです。

 

さらに、有効求人倍率は、首都圏や一部地域でも2倍を超える状態です。そんな中で人を採用するには、採用コストも維持コストも、負担がどんどん大きくなりますので、深刻な問題となっています。

しかし、「人が取れない取れない」と言っていても何の解決にもなりませんので、手を打っていかなければなりません。

効率よく採用するのか、時給を他社より上げて確保するのか、やめないように手を打つのか?どの手も尽くすのがいいとは思いますが、私は、なるべく人手をかけずに生産性を向上させるという、現在政府が推奨する「働き方改革」の本質である”生産性向上”が一番の人手不足対策であると思っています。

 

そう、人を確保するのではなく、”人が少なくても回るしくみづくり” です。

そのためには、人にしかできないことだけを人間に任せ、その他機械やITでできることは、徹底的にITを活用して生産性を高めるのです。

 

生産人口がどんどん減り、AI・ロボットの時代になる今後は、間違いなくこの方向で人手不足を解消することになると思います。

働く人が少なくなるのですから、生産性の高い企業しか生き残れないのは明白で、無人化店舗等、究極の高生産性店舗の出現も、そんなに遠い将来ではない気がします。

個々の生産性を上げ、辞めないしくみ

では、人そのものの個々の生産性を高めるにはどうしたら良いでしょうか?

それは ”一緒に働きたいと思う店” を構築することです。

一緒に働きたい店になれば、「忙しいのに給料が安い」という賃金への不満や「休みが少ない、とれない」等の不満も激減します。

なぜなら、やりがいのある仕事を求める人が自ずと集まってくるように変化するからです。

 

人が取れないからといって、時給を他社より高くしたり、辞めないように大事に扱ったり、福利厚生を充実させたりするから、その条件に匂いを嗅ぎつける人が集まり、自社より条件のいいところを見つけては不満をいい、退職してしまうのです。

では、一緒に働きたい店にするには、どうしたら良いのでしょうか?

 

私は理念を浸透させることと、やりがい教育であると思っています。

どの企業にも店にも、お客様に価値を提供する旨の理念があるはずです。それを社員に浸透させるのです。

自分の生活のためだけ、給料のためだけに働くから、辛く文句も出るのであって、世のため人のため(お客様のためが浸透すれば)には、人は頑張れるのです。

 

これは、子供の弁当をつくるために母親が毎日早起きして、栄養も考えた可愛いお弁当をつくり続けることができるのに、自分の1人の食事は適当にインスタントやあまりものにするというのが典型的な例です。(世の旦那様もそんな食事が奥さんから出てるかもしれませんが・・(笑)) 

 

そう、人は自分のためだけには頑張れず、他人のためなら頑張れるのです。

社員が理念に共感し、やりがいを求めて働くようになれば、生産性は俄然上がることは間違いありません。

小売業 システム化の方向と対応

ロボットが、品出し棚を整理する時代

システム化の方向性は、前述した通り、人にしかできないこと以外は、徹底的にIT化する方向に向くと考えられます。生産性を向上させ、競争力を強化する上ではITの利用は欠かせません。

人手不足を解消するという意味でも、生産性を向上させるIT化は必須で、生産性が上がれば企業収益は改善し、働く人の給与や待遇の改善にも繋がります。

 

セルフレジやセミセルフレジの導入が進むのもその方向の現れだと思います。

さらに、ICチップ(RFID)での一括決済システムや、店舗で一番工数のかかっている品切れチェックや品出し陳列といった作業も、ロボット化の流れは近い将来必ず来ます。

 

技術的には、棚の状況をカメラで読み取り、品切れや陳列の乱れ、価格間違い等を見つけ出し、お客様の迷惑にならないようにロボットが棚を整理することは今でも可能です。

もし、そのロボットが、人件費よりはるかに安価に導入ができるようになれば、システムとの連携でロス情報も瞬時に取れ、爆発的に導入が進むことも簡単に想像できます。

これは品出し・陳列作業に限ったことではありません。

マルチベンダーを聞かなくなった理由

このようなロボット化やAI化が進めば、ベースとなる基幹系データ(価格・棚割・発注・売上・在庫等々)との連携が重要な位置を占めることになり、より一層基幹データの正確性が要求されます。

以前は、マルチベンダーとう言葉がもてはやされ、いろいろなメーカーの製品やソフトウエアを組合せ、システム構築そのものを安価にする企業も多かったですが、最近ではマルチベンダーという言葉をあまり耳にしなくなりました。

 

これは、システム化の方向性が全体最適化に向かっており、セキュリティも、自動化も、分析も、全てインフラに組み込む必要があると判断したからではないか?と私は思っています。

現在、ロボット化・AI化に向け、分散されているデータの整備、基幹システム再構築を急いでいる企業も多いと思います。

 

何しろ、ロボット化、AI化に無くてはならないのが、正確な一元管理された基幹データですから!

スピードアップの方向と対応

真似るは思考やプロセス

何度もこのメルマガで書きましたが、これまで米国や他社の真似をすることで、もの凄いスピードで成長をしてきた日本の小売業ですが、今後は他社の真似をしていたら、スピードアップどころか、大きな痛手を食うことになると私は思っています。

なぜなら、真似をすることは、それを試行錯誤考え歩んできた考案者の道のりを短縮することに繋がり、スピードは上がりますが、決してその想いがお客様に伝わることがないからです。

 

以前は、先進事例をお客様にご紹介し、事例見学によく行きました。そのときは私もその事例そのものを真似いただこうとしていましたので、真似ができればそれで効果が上がり、その環境や状況がない場合は、「業態が違うからできない」「そんな広い荷受け場がないからできない」等のできない判断をしていました。

確かに以前はそれで十分良かったのです。

 

しかし、現在では単純に真似ができるかどうかではなく、それを試行錯誤考えた人の本質を見抜き、その思考やプロセスの方法を学び真似するべきであり、それらを参考に変化のスピードアップを図ることが重要であると考えています。

 

そして、自社のお客様の心をつかむ想像力を膨らませ、お客様の要望に応えられるサービスや商品を真似ではなく自ら考え出すことが、お客様へ思いが伝わる唯一の方法であると思います。

完璧を求めるからスピードが上がらない

変化するとき、新たなことをするときには、どうしてもリスクマネジメント思考が働き、なるべく痛手を食わないようにすることは仕方のないことですが、今の時代、新たなことをするときは、雑でもいいので、まず行動することが重要であると思います。

 

行動しながら考え、変化していけば圧倒的にスピードが上がり、お客様の変化にも対応できると考えます。考え過ぎて考え過ぎて完璧を求めるから、行動までに時間がかかり、行動を始めたころには世の中やお客様は変化してしまっていて、行動を止めてしまうのです。

以下は2歳の子供たちを見てふと感じたことです。

 

2歳の子供たちは、何にでも興味を持ち、何でも遠慮なくやってみようとするから、どんどん成長もするし、スピードも早いです。

リスクマネジメントの欠片もなく、体も目一杯動かすから、汗もかき、疲れます。だから、よく寝るし、よく食べます。あれなら成長が止まることもなければ、不眠に悩むことも、食欲不振になることもないと思いました。

 

これは、企業にとっても、私自身にとっても、ハッと思わされることでした。

大人は、何でもかんでも突き進んではいけませんが、完璧を求めると上手くいかないことも学びました。

 【まとめ】これからを勝ち抜く小売業の新業態!対応方法と事例

今回は『これからを勝ち抜く小売業の姿 』というテーマで書かせていただきました。

現代のビジネス環境の変化は非常に早く、過去のやり方や人の真似では、歯が立たなくなってきました。

 

これまでの小売業は・・

  •  メーカーが作ったものを、仕入れて利益をのせて販売する
  •  他社や海外の成功事例を真似る
  •  どこよりも安く売る努力(特売、バイイング)をする

 

ということで成長できました。これは、いわば ”習う、学ぶ、真似をする” という行為です。

しかし、そんな時代は終わりをつげ、これからの小売業は、”聞く、調べる、考える” という時代になってきたと思います。

そして、どれだけ工夫ができ、考え、自ら答えが出せるか、行動に移せるかが勝ち抜くポイントになるのではないでしょうか。

 

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