10年後の小売業環境を大胆予想

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まず、10年前と今ではどう変わったのかを考える・・・

■ 10年で店舗数は9%減、販売額は14%減、店舗面積は21%増、従業員数は15%減

あるチェーンストア統計によると、この10年間でチェーンストアと呼ばれる企業の数は10年前比で56.4%。(経済産業省企業統計では24%減)40%以上企業の数が減っています。店舗数も10年前比で91.1%と9%減となる一方、店舗面積は121.3%と大幅に増えています。チェーンストアを経営する会社が大幅に減って、店舗面積が大幅に増えていることから、大手企業に集中していることが傾向として判断できます。企業倒産やM&Aにより、この10年間はデフレ経済の中、体力のある大手チェーンストアが、価格戦略・新店戦略・大型化・従業員生産性向上を武器に中小小売業から市場を奪ってきた10年といえるのではないでしょうか。

ここ10年のチェーンストア系小売業で深刻な問題は販売額の落ち込みです。10年前比86.6%と14%も販売額そのものが落ち込んでいます。GMSではここ10年で1兆円の落ち込み。百貨店にいたっては、ここ5年で2兆円の落ち込みです。社会における消費支出も当然落ち込んでいますが、10年前比91%と9%減というデータから、5%分はチェーンストア消費から他の消費(通信費やネット通販と予想)に回ってしまっていると予想されます。

■ 消費が進まない、なかなか自店で買っていただけない厳しい環境

このように、過去10年間で消費・需要は減り、企業数・店舗数・従業員数も減り、店舗面積だけが増えているということから、企業は大手チェーンストアに集約され、店舗は大型化しました。しかし、デフレの影響やネット通販の驚異的な普及、また消費そのものが通信費に大幅に流れるなどの傾向から、小売業にとっては、努力なしでは自店で買っていただけない、厳しい環境にあったといえます。

今回のメルマガではこれをふまえ、これからの10年がどうなるかを考えていきたいと思います。

10年間で環境はこう変わる

■ 10年間で3つの変化がおきる

右の図のように、ここ10年間で大きく変化しそうな項目を8つあげてみました。少子化・高齢化、税制改革、景気状況という”世の中の変化”に、お客様そのもののライフスタイルや消費志向の変化という”お客様の変化”。そして、企業が努力する「コスト削減」 「競争力強化」 「サービスの先進化」といった”企業の変化”が考えられます。

企業は、この”世の中の変化” ”お客様の変化”に対応していかないと取り残されるため、変化に対応していくと思われます。強い企業はこの10年で「小売業」ではなく、完全なる「変化対応業」になっていくのではないでしょうか。

■ 10年後の小売業の姿は?

高齢化、少子化、人口減が進むため、消費支出はさらに落ち込む可能性が高いと思われます。さらに小売業のサービスと品揃えは、ファミリーからパーソナルユースへ、さらに共働き・独身ユースへ移行し、後期高齢者の方も過去最大数になるため、大きく方向転換していく必要があると思われます。

また、買物の仕方そのものが大きく変化すると思われます。現在のお年寄りはネットに慣れていないため、店舗での買物が大半ですが、10年先になると、ネットショッピングの比率は格段に上がると思われます。宅配料無料や当日配送・時間指定は当たり前となり、ますます無料の様々なサービスが増え、小売業のネット競争はさらに激化すると思われます。

「世の中の変化」とその対応

■ 少子高齢化社会で所得減少、そして物価・消費税アップ

 

上の図のように、2020年には、65歳以上の人口が増え、生産年齢の方や子供は、どんどん減っていき、人口そのものも減少します。
小売業にとっては、お客様の物理的減少となるわけですから、需要減は明白です。特に地方の人口減少は著しいと予想ができますので、地方であればあるほど問題は深刻です。また、後期高齢者が増えるということは、現在の状況を見ても分かる通り、社会全体の購入意欲は間違いなく減少します。そして、お年寄りの一人暮らし世帯が増大することも安易に想像できます。

こんな状況の中、物価・消費税はアップし、所得そのものも上がるかどうか分からないという環境で、さらにTPP問題まで・・ 小売業は今のままのビジネススタイル、ビジネスドメインでは生き残りが難しくなると思います。

■ 需要減は明白。ターゲットをしぼった営業戦略が必要・・

上記のように、小売業において10年後、需要減は明白です。こうなってくると、お年寄りからお子様までという営業戦略では、まったく通用しなくなります。ターゲットをしぼった営業戦略が必要となるため、小売業各社はコストがかかっても、様々な新サービスを実施していくと思われます。

例えば、お年寄り向けサービスでいえば・・

  • 宅配サービス
  • 移動販売
  • 買い物代行サービス
  • 買まわりしやすい小型店舗や売場づくり
  • 健康をテーマにした品揃えや売場づくり
  • 介護関連商品の充実
  • 分かりやすいPOP(色、大きさ、伝えたいメッセージ)
  • 年金支給日の販促企画や特売

この例のように、ターゲットを明確にした方向へシフトしていくと予想できます。

「お客様の変化」とその対応

■ もう米国のマネや成功企業のマネは通用しない

ここ10年でのお客様の変化を、右の図のように8つの項目に分けてみました。見ていただいて分かるように、かつて、この変化を体験した諸国も企業も皆無ではないでしょうか?これまで米国を手本に、成功企業を手本に成長してきた小売業は、もう手本となる例がなくなり、自らが課題を考え・対応しないと生き残れない時代に突入していくことが分かります。

■ お客様のネットショッピングへのシフトはさらに進む

以前のメルマガでも紹介したように、ネット通販市場は、年約10%ベースで成長を続けており、市場規模は百貨店業界を超え9兆円規模まで成長してきました。このペースはこの先、若干スローダウンするものの、10年間下落することはないと予想します。なぜなら、現在88%がネットショップを利用している50代が60代に。68%が利用している60代が70代になるわけですから、人口減に反して、ネットショップ利用者は増えるという現象になるからです。
また、これまでの買物スタイルは店舗ありきでしたが、近年のネットの発達と、スマートフォンやタブレットの普及により、電車の中や行列での待ち時間などの空き時間にネットにアクセスし、自分のパターンでお客様はショッピングを楽しむように増々なりますし、企業間の競争が増えることで、商品品質は上がり、価格は下がり、サービスは充実していくためネットショッピングへのシフトはさらに進むと思われます。

食品に関してのネット販売は、昨年22%の伸びを示していますが、今後も2ケタ成長を続けると予想します。ネットスーパーは採算が合わない時代から、利用者が増え、しくみも確立され、利益が出るようになってきたため、これまで店舗だけで勝負していた企業も、今後ネット販売という新たなビジネスドメインを立ち上げていくと思います。そのため競争は激化し、利用者にとっては店舗で買うよりも大きな価値を得るため、ネットショッピングへのシフトはさらに進むと思われます。

「企業の変化」の方向は?

今後10年間で予想される「世の中の変化」と「お客様の変化」に、企業も変化していかないと生き残りは難しいと思います。ではどのように変化していくのでしょうか?

■ 業態の壁を越え、牙城の奪い合い

これまでもビールが酒屋からDrgへ、雑誌が書店からCVSへとトップシェアが移行してきたように、今後も小売業がお客様のターゲットをしぼり、ライフスタイルを意識すれば、取扱い商品は業態の壁を越え、激しい競争が勃発することが予想できます。これまでの売る側理論の専門店から、高齢者が、単身者が、OLが、何を考え、何を求めているかを追求していく専門店になっていく業態が出てくると思います。

■ しぼる業態、広げる業態、どちらが勝つか?

ここ10年で売上を落としてきたGMSは、現在専門店化を進めています。某大手GMSも、自転車・スポーツ・お酒・カジュアル衣料と専門店スタイルの集積タイプに移行しています。百貨店もファストファッション系の専門店が入り、専門店の集積化を進めています。

一方専門店で急速に業績を伸ばしている某大手家電量販店では、薬や食品、書籍の販売を進め、総合店スタイルの方向へ進んでいます。

10年後この両者がどうなるかの予想をすると、批判ととらわれる可能性があるので記載しませんが、しぼるが勝ちか?広げるが勝ちか?はたまた引き分けか?注目していきたいと思います。

■ 「価格・品質・品揃え」 に加え 「集客・サービス」

価格・品質・品揃え、この三種の神器がそろっていれば、これまでのl小売業は間違いなく繁盛しました。
これからもこの三種の神器は重要ですが、これに加えここ10年は、集客(メルマガバックナンバーで002号を参照してください)やサービスの拡充がポイントになってきます。集客や接遇、新たなるサービスや販促を行っていくことが重要となるため、新しい手法が生まれてくると思います。

■ 進化するIT化は、生産性向上とサービス拡充が効果を発揮

IT化の方向性は、コスト削減を支援するしくみとサービス強化のしくみが効果を発揮すると予想します。

【コスト削減支援】~食品スーパーの例

  • 企業間データ連携(企業間重複作業の払拭)~サプライチェーンマネジメント
  • 自動化(需要予測、自動補充、CPFR等)
  • 自動連動(例:売価を変えれば→関連(POP、棚札、売変、計量器、POS)全てが自動で変わる)
  • 物流システム(仕分け、保管作業の自動化・効率化)
  • ICチップによる一括読み取り(POS、廃棄、棚卸、棚割、売価チェック等)
  • スマホ等によるスタッフ店内指示の無線化
  • 自動ロボット化(陳列ロボット、惣菜製造ロボット、掃除ロボット)

【サービス強化拡充】~食品スーパーの例

  • ネットスーパー、宅配サービス
  • ICチップによる一括POS読み取り(価格検索、途中金額確認、電子マネー連動等)
  • 店内無線によるサービス(デジタルサイネージ連携、会員スマホ連携)
  • スマホサービス(来店時クーポン配信や特売品を使ったレシピ提案等)
  • デジタルサイネージによる情報提供や香りの提供

この他、PDCAを支援する分析システムや顧客管理システムも、かなりの詳細データまで分析できるように進化しますが、PDCAサイクルを確立できる企業は極めて少ないため、いつまでたっても効果のあがらないものになる気もします。

いずれにしろ、進化するITシステムも基盤となる基礎データが、早く正確に蓄積されなければ何も始まりません。基盤となるものがしっかりしていなければ、進化したITシステムを導入しても効果を最大限に出すことはできません。そのため各社基盤となる基幹システムを刷新したり、クラウド化の動きがここ10年で出てくると思われます。それは来るべき時に備えての準備となります。

 

 

今回は、10年後の小売業環境がどう変わるかを大胆予想してみました。

いずれにしろ、社会もお客様も企業も、恐るべきスピードで変化していくことは間違いありません。需要がないビジネスドメインは間違いなく縮小していくわけですから、各社新たなるビジネスドメインの立ち上げや、サービスを拡充していきます。時流に乗り遅れると苦しくなる一方です。勝ち残る企業は、変化に対応した、お客様に指示され、そっとお客様の背中を押してあげられる、そんな企業ではないでしょうか。

 2013/10/25