今後の基幹システムはオンプレミスかクラウドか?
企業経営の根幹ともいえる「基幹システム」において、今でもオンプレミスで構築されている企業が多いように感じます。
しかし、2006年にAmazon社が「Amazon Web Services」のサービスを開始して以降、2008年にGoogle社、2010年にMicrosoft社もクラウドサービスを提供開始して現在にいたるまで、クラウドによる業務システムを導入する企業も増えてきました。
今回のブログでは、今一度オンプレミスとクラウドの特長を再確認し、これから基幹システムの導入や刷新をご検討される際に抑えていただきたいポイントをわかりやすく解説いたします。
基幹システムの現状 オンプレミスとクラウド
基幹システムは、企業のビジネスの根幹となる業務を管理するものです。
そのような重要なシステムをオンプレミスとクラウド、どちらで構築するかは悩ましい問題かと思います。
企業によっては、一部ないしは基幹業務全体をクラウドに移行されているところもあると思いますが、基幹システムにおいてのオンプレミスとクラウドの導入状況について、現状はどうなっているのでしょうか。
総務省の令和3年版情報通信白書の調査によれば、「クラウドサービスを一部でも利用している企業の割合は68.7%であり、前年の64.7%から4.0ポイント上昇している」とありました。
(出典:総務省「令和3年版 情報通信白書」 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/pdf/n4200000.pdf)
また、同資料によれば、クラウドサービス市場は、「企業のクラウドサービスの活用の増加に伴い高成長を遂げて」おり、「2023年の市場規模は5,883億ドルに達すると予想されている」ことからも、今後クラウドへの移行を検討する企業が多くなってくることが予想されます。
(出典:総務省「令和3年版 情報通信白書」 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/pdf/01honpen.pdf)
このような現状において、今一度基幹システムでオンプレミスとクラウドのどちらが適しているか?を考えるうえの前提として、オンプレミスとクラウドのメリットとデメリットを次の章で改めて解説いたします。
オンプレミスとクラウドのメリット、デメリット
あらためて、オンプレミスとクラウドの概要と、それぞれのメリット、デメリットを見ていきましょう。
オンプレミス
オンプレミスとは自社内にサーバーやソフトウェアを設置・導入してシステム運用を行う形態です。
略して「オンプレ」とも言われます。メリットとデメリットは以下です。
【メリット】
〇セキュリティを向上させやすい
オンプレミスは社内にサーバーを設置するため、自社の管理下においてサーバーを守ることができます。また、セキュリティに関する機器やソフトウェアについても自社で選択して導入と構築ができるため、セキュリティを高めることが自社で可能です。
〇自社に合わせたカスタマイズができる
サーバーやソフトウェアが自社の資産であるため、サーバーのスペック拡張や、ソフトウェアのカスタマイズについても、資金面に制限がないと仮定すれば自由に行うことができます。
〇既存システムと連携がしやすい
自社でサーバーもソフトウェアも仕様が決められるため、既存システムと連携をとりやすいこともあげられます。
【デメリット】
〇障害時の対応やバックアップなど運用管理が大変
オンプレミスはハードウェアの故障などの障害が発生した際には、自社で対応する必要があります。
具体的には自社で障害を確認したら、自社で対応する、もしくは保守ベンダーに連絡をする必要があります。
ベンダー保守の際は障害対応の立会いなども必要です。バックアップなども定期的に自社で確認を取る必要もあります。このように、オンプレミスの運用管理は人手と時間を必要とします。
〇サーバー台数やスペックなどシステム変更がしにくい
お客様の事業形態の変化やデータ量の増加に伴いサーバー等のスペックを変更する際に、オンプレミスでは時間と手間がかかります。
具体的には設備の追加購入と納品までのリードタイムがかかることや、システム再構築の際も自社の業務を止めて対応する、などの手間もかかります。
〇初期コストが大きい
サーバーやネットワーク装置などのハードウェア、ソフトウェアと必要なミドルウェアの全てに初期購入費用が必要となります。
また、サーバーについては初期導入時からあらかじめ5年先などピーク時を想定したスペックで導入する必要がある(容易にスペック変更しづらい、またはサーバーによっては増設できない場合もあり)こともあり、初期コストが膨らむ傾向にあります。
クラウド
クラウドとはインターネットなどのネットワーク経由でサービスを利用するコンピューターの利用形態です。
サーバーやソフトウェアを自社で所有するのではなく、サービスとして利用します。メリットとデメリットは以下の通りです。
【メリット】
〇運用管理が不要になる
自社でサーバーを持たないため、障害時の対応やバックアップ管理も不要になります。
具体的には、24時間365日の稼働監視をクラウド事業者側で行っているため、万が一クラウド上のサーバーに障害が発生してもクラウド事業者側で対応を行いお客様には結果報告のみがなされます。
バックアップも自動実行されるため、自社で定期的に確認する必要もありません。
自社で運用管理する必要がなくなり、システム担当など専任ないし兼任で置く必要がなくなることが大きなメリットの一つです。
〇スペック変更しやすい
クラウドではサーバーの台数や容量を増やしたり減らしたり、などのスペック変更が容易です。
スペック変更が必要になった際にはクラウド事業者に依頼をすれば、指定の日時にリソース変更を行うだけで、サーバー台数やスペック変更が行えます。
自社でサーバーの手配や変更の対応を調整して実行する、という作業が一切ないため、業態変更やデータ増減に対してスペック変更しやすいのもクラウドのメリットです。
〇法令改正対応や機能アップが受けられる
ソフトウェアのクラウドサービスであれば、多くのサービスで法令改正対応や機能アップのバージョンアップがサービスに含まれます。
バージョンアップにはWindows変更対応やミドルウェア更新対応も含まれますが、クラウド事業者側で実施するため、自社でインストールや更新作業を行うことなく、最新の環境でシステムを利用できます。
※プライベートクラウド環境において、企業独自のカスタマイズを行っている場合は、カスタマイズの範囲についてはバージョンアップ対象外(カスタマイズ範囲は別途有償対応)とされるケースが多いです。
【デメリット】
〇セキュリティ面でベンダーに依存する面が大きい
クラウドではセキュリティ面でクラウド事業者に依存するため、オンプレミスと比較するとセキュリティ強化の自由度が高くありません。
しかし、大手のクラウド事業者は最初から強固なセキュリティ対策を行っています。
さらに、クラウドの中でも「プライベートクラウド」という方式であれば、自社の希望を取り入れたセキュリティシステム構築も可能なため、「プライベートクラウド」で基幹システムを構築される企業も増えてきています。
〇カスタマイズができない、または制限がある
クラウド、特に「パブリッククラウド」と呼ばれるクラウドサービスでは、原則カスタマイズはできません。
その分全社一律のバージョンアップが自動で適用されるというメリットがあります。
しかし、自社にとって重要な追加要望に対しカスタマイズが一切できない、ということになるとシステム運用において問題です。
この問題に対しては、先ほどのセキュリティ面のデメリットと同じで、「プライベートクラウド」にしてカスタマイズ対応を行う、といった解決策があります。この方式であればクラウドのメリットを享受しつつ、自社に合わせたカスタマイズも行えます。
〇ランニングコスト
クラウドは、初期コストではなく、ランニングコストにサーバーやデータセンターなどのインフラ利用料、ミドルウェア及びソフトウェアの利用料のほかに、稼働監視や保守サポート料金が含まれます。
よって、初期コストよりもランニングコストについては相応にかかってくることと、継続的な経費として見込む必要があります。
基幹システムで抑えておきたいポイント オンプレミスとクラウド
オンプレミスとクラウドのメリット、デメリットについてはご理解いただけたと思います。それでは、基幹システムを検討するうえで、オンプレミスとクラウドのどちらを採用するかを考えるうえで抑えたほうがよいポイントは何でしょうか?
弊社が考えるポイントは下記3点です。
- 自社で運用管理ができる体制があるか、ないか
- 事業形態や規模が変わる可能性があるか、ないか
- カスタマイズ性やバージョンアップをどこまで求めるか
以下、それぞれについてみていきましょう。
1. 自社で運用管理ができる体制があるか、ないか
企業内に情報システムを管理する専任部署(情報システム部門など)があれば、オンプレミスであっても自社で運用管理することも可能です。
中小企業など専任部署が配置できない企業ですと運用管理に負担のないクラウドを選択された方がメリットは大きいでしょう。
よって、運用管理といった側面で見るとクラウドに軍配が上がりますが、各企業の体制によって適したものをご選択いただくのがよいと思います。
2. 事業形態や規模が変わる可能性があるか、ないか
将来、新事業や事業再編などの事業形態が変わることや、取引量増に伴う事業規模の拡大などが見込まれる場合、スペック変更が容易なクラウドが適しています。
オンプレミスで構築する場合は、ある程度初期導入の時点で事業形態の変更も見越したスペックやシステム形態で導入する必要があります。
3. カスタマイズ性やバージョンアップをどこまで求めるか
カスタマイズを自由に行いたい、バージョンアップも必要な時に自社でインストールを行える企業であれば、オンプレミスがよいと思います。クラウドはパブリッククラウドであればカスタマイズはできません。
しかし、プライベートクラウドであればカスタマイズ対応は可能であるため、パブリッククラウドでカスタマイズも行えるようにする、といった選択もあります。
また、バージョンアップについてはクラウドであればクラウド事業者側で実施してもらえるため、上記1.同様に運用管理ができる体制がない企業であれば、バージョンアップ対応を含むクラウドサービスを利用していただくこともよいかと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか? オンプレミスもクラウドもメリット、デメリットがあり、各企業の人員体制や基幹システムに求める内容により選定する方式が変わってくることがお分かりいただけたかと思います。
弊社の提供する基幹システムの販売管理パッケージは小売業向け「CHAINSZ」、卸・メーカー向け「GROWBSⅢ」のいずれも、オンプレミスとクラウド両方に対応したシステムです。
さらに、クラウドはプライベートクラウドにも対応しており、クラウドのデメリットの一部を解消した基幹システムを実現できます。もし、ご関心をいただけましたら、資料ダウンロード、または当社までお問合せください。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。