スーパーマーケット24時間営業のメリットとデメリット
日本初のスーパーマーケット開店は1953年と1956年の説があります。その後、店舗数が増えた時も営業時間は10時開店18時閉店が多かったようです。
当時は、顧客の主体が専業主婦であり、家庭を持つ女性が家計を助けるために行う仕事は「内職」でした。内職は時間的な拘束が低いので、購買は昼食前の午前11時から12時、もしくは夕食前の午後4時から5時に済ませていました。
この様な顧客の購買行動に則した営業時間が10時開店18時閉店だったのです。
高度成長期や雇用機会均等法施行を経ると、女性の就業形態がパート・アルバイトの非正規雇用や社員などの正規雇用に変化し、10時から18時の間にスーパーマーケットで買い物ができなくなる方が増えました。そのようなニーズに合わせたコンビニがマーケットシェアを伸ばす中で、スーパーマーケットも営業時間を早朝や夜間に延長したのです。
その後に、米国のスーパーマーケットが24時間営業を行っていたのを真似て、日本でもスーパーマーケットは24時間営業を始めました。
しかし、24時間営業のスーパーマーケットが現在でも存在している反面、全てのスーパーマーケットが24時間営業ではないのは、各スーパーマーケットの経営者がメリットとデメリットを検討して経営判断した結果です。
とは言え、あらゆる分野で価格が上昇している昨今は、品揃えと価格の優位性を持つスーパーマーケットが24時間営業のメリットとデメリットを知り再検討すべき時です。
目次
スーパーマーケットの24時間営業メリット
スーパーマーケットの経営指標の中に「1時間当たり売上×営業時間」があり、営業時間が長ければ売上額も増加する意味です。
店舗営業のスーパーマーケットは、言うまでもなく来店客が商品を購買して売り上げができるのです。
ですので、来店できない時間帯つまり営業していない時間が短いほど売上が多くなる理屈です。
一方、顧客側からすれば自分の好都合な時に、豊富で低価格な品揃えのスーパーマーケットで買い物ができればとても便利なので、他に24時間営業のスーパーマーケットが無ければ独占的に集客ができ、独り勝ちも不可能ではありません。
また、雇用と就労の機会が減る早朝や深夜の時間帯に、働ける場所があれば雇う方も雇われる方も双方ともにメリットを感じられます。
つまり、雇用の創出に貢献して地域や社会の活性化にも貢献できるのです。
スーパーマーケットの24時間営業デメリット
売上や雇用の増加に寄与するスーパーマーケットの24時間営業ですが、メリットばかりであれば世のスーパーマーケットは全てが24時間営業になるのです。
そうならない実態を考えるとデメリットの存在も否定できません。
売上がプラスになるのは間違いないのですが、日中の1時間当たりの売上額に比べて、早朝や深夜の時間帯は単位時間当たりの来店客数が減少して、単位時間当たりの売上額は低くなり、したがって獲得できる利益が減少します。
反面、同じ経費率で実施できたとしても利益確保が難しい上に、早朝や深夜時間の賃金は割増しになり、単位時間当たりの経費率は上昇します。
平たく言えば、儲けが薄いか赤字になってしまう可能性が高いのです。
また、日中に比べて来店客数が下がれば、従事している従業員は少なくするので、サービス・レベルの低下が懸念されます。
さらに、深夜は睡魔等により重労働になりがちであり、作業効率に支障がでるのみならず、少人数での運営が故に犯罪にも注意しなければなりません。
つまり、肉体面だけでなく精神面での負担も重いので、管理者としても従業員へのケアが増加します。
24時間営業スーパーマーケットへの賛成根拠
功罪相半ばする24時間営業スーパーマーケットですが、米国における採用理由を探ると我が国との違う視点を窺い知ることができます。
我が国スーパーマーケットの多くが未だに売上拡大を最重要視しているのですが、米国では利益(荒利ではなく、経常利益か営業利益)目標の達成が最重要視されます。
そして、スーパーマーケットにおける24時間営業も利益拡大を目標にしているのです。
我が国スーパーマーケットでは、売り場面積当たり(坪当たり)売上額を店舗優劣の指標にすることが多いのですが、米国では売り場面積当たりの労働時間短縮を通じて人件費を引き下げ、労働生産性を向上した利益の高低を店舗優劣の指標にするのです。
時同じくして我が国スーパーマーケットで横行していた“人件費”生産性つまり、パート・アルバイト比率の上昇を通じた人件費の圧縮とは次元が違うのです。
そもそも、売上を増加するための営業時間延長ではなく、品出しや陳列、清掃業務を効率的に実施するためには深夜や早朝の時間帯の方が良いのです。
店内を煌々と明るくして作業しているのであれば、ついでに店を開けて商品を売るようにすれば、顧客サービスの向上につながると判断した結果なのです。
つまり、経費を抑えた上の売上なので、先のデメリットに記述した利益確保への懸念がないのです。
この発想が米国における24時間営業スーパーマーケットへの賛成根拠なのです。
24時間営業スーパーマーケットへの反対意見
我が国スーパーマーケットにおいては、店舗運営に要する労働生産性が未だに低いので、24時間営業スーパーマーケットが成立する立地は世帯数が多い都市部である場合が多いのです。
それは自ずと住宅の集まる地区に店舗を出すことになります。
単に営業しているだけでも来店客から発せられる「音」が『騒音問題』として近隣住民とのトラブルになるのみならず、商品の搬入を深夜や早朝に行えば、運送業者が十分に配慮してもご近所の理解を得るのは簡単ではありません。
近隣住民は店舗にとって最重要顧客です。最重要顧客とのトラブルは避けたいので、24時間営業スーパーマーケットへの反対意見として無視できないのです。
【まとめ】24時間営業スーパーマーケットは必要か
24時間営業スーパーマーケットの是非を解説しましたが、経営的な視点で見れば総合的な採算を見極めなければなりません。
我が国スーパーマーケットの労働生産性では、一部チェーンストアを除いて深夜や早朝の時間帯売上で成り立たせるのは困難なようです。
一方で、企業運営において「採算度外視」は現実的ではありませんが、地域社会への貢献に軸足を置いた経営判断をする場合には、社会インフラとして必要か否かも意識せざるを得ません。
よほどの過疎地域でない限り、深夜や早朝の食品や雑貨品に対するニーズはあるので、これを満たすためにはコンビニや自動販売機であれば事足りるといった意見があります。
ところが、コンビニの品揃えでは満たされない生鮮食品や学童用品、急な冠婚葬祭用品が深夜や早朝に必要になる時があります。
そのような時には少々遠くても買い物ができる場所の提供が必要だとする考えもあるでしょう。
日中に比べて生産性は落ちても、深夜営業が赤字を出さないような営業スタイルにすれば、24時間営業スーパーマーケットは成り立ちます。
24時間営業のスーパーマーケットは顧客にも労働者にも必要であり、労働生産性の向上と並行して進めれば良いのです。
株式会社テスクが提供する小売業向け基幹システム「CHAINS Z」は、24時間営業スーパーマーケットにおける稼働実績もあります。
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