思わず手にとる”売れる”POPの作り方・書き方
小売業にとって、POPは非常に大切なセールス手段の一つです。
営業がいない業界だからこそ、POPを工夫して売上を伸ばす施策を考えなければなりません。
今回は、小売業に精通した私が”売れる” POPの作り方・書き方をご紹介します。
目次
POPは”売れる”最強のセールスマン
■ 売れないのではなく、お客様の買う理由がない
お客様が商品を購入するまでの、あるひとつのプロセスを考えてみましょう。
- 注意 ・・ おや何だろう?
- 関心 ・・ 面白そう(美味しそう、体に良さそう、安い・・)
- 欲望 ・・ 欲しい(買いたい)
- 検討 ・・ この値段で買えるかな? 他に類似品・安いものはないか?
- 購買 ・・ よし、買っちゃお!
今は”売れない時代”とよく耳にしますが、それは売る側の論理です。買う側の論理からしたら、必要でもないものはいくら安くても買わないし、欲しくもないものは買わない、買う理由や買う動機がない時代だから買わない(=売れない)という論理になります。
多くの業種のセールスマンが、売れない理由は?と聞かれ、「ウチはよそより高いから」とか「商品がよくない」と言うように、小売業でもそのような声が聞かれます。
しかし、じゃあ安くしたら、商品を良くしたら売れるのか?という話になります。残念なことにこの2つの問題を解決したところで、今は売れる時代ではなくなってしまいました。
では、どうすればいいか?
どんなに不況でも、どんなにお金がなくても、上記の1~3(注意→関心→欲望)までの感情は発生します。
4の”検討”段階で、はじめて不況やお金がないことがネックとなり、購入をあきらめることになります。
100歩譲って、これは「売れない時代」のせいですね。しかし、1~3をきっちりできている企業は今でも業績を伸ばしています。
1~3でお客様を刺激することで、買う理由や買う動機づけをすることが大切ではないでしょうか?
■ POPはサイレントセールスマン
1~3を実施し、買う理由や動機づけを見事にしているのが、テレビショッピングです。あれはいわばマスメディアを利用した対面販売です。
衛星放送やケーブルテレビでは、1日中24時間放映しているテレビショッピングのチャンネルがいくつもあります。それでも採算が合うのですから、今の時代の売り方を反映している象徴でしょう。
では一方、量販店小売業に目を向けてみましょう。
当然セルフサービス前提ですので、対面販売などほとんど見かけませんし、モニターで商品説明を流してる程度(あんなのほとんどの人は見てません)。
POPはといえば、商品名と値段だけの大きなPOP。しかも、ちっとも安くない価格。ネット通販の方が全然安い。
1~3でお客様を刺激できていない、このようなやり方は残念ながら時代に合わなくなってきたと思えます。
POPをもっと上手く作成すれば、対面販売の販売員の代わりにお客様に声をかけてくれます。
POPがサイレントセールスマンと言われるのはそこからきています。今回は、そんな当たるPOPの作り方を考えていきたいと思います。
理想的な”売れる”POPの作り方・書き方とは?
では、理想的な売れるPOPの作り方とはどんなものでしょうか。
順にご紹介させていただきます。
■ キャッチコピーと価格が重要
さきほども書いたように、巷の量販店では、商品名と価格だけのPOPが多いこと多いこと、それは「POPじゃなくて、プライスカードや!」と私はいつも言うんですが、見る側の立場からすると、商品名を見て「この商品欲しい」とは、あまり思いません。
下の2つのPOP、どちらが売れると思いますか?
言うまでもあるりませんよね。本当におすすめする商品に、対面だったら語る内容を簡潔にPOPに書いてお伝えする。
すると、POPが黙ってお客様に動機づけや買う理由を与え、そっと背中を押してくれます。
■ どれくらいがPOPの適切な枚数・適切な情報量なのか?
では、どのくらいの商品に、どんな程度の情報量のPOPが適切なんでしょうか?
現在の世の中には情報があふれかえっています。そのせいかお客様は、じっくり情報を読むことをしなくなりました。
よって、POPの付け過ぎ、情報量の多すぎは完全に逆効果です。
また、見てくださる時間もほんの数秒。最初の2秒で興味があるかを判断し、興味があればその後15秒程度情報を得ようとする。こんな程度です。よって、POPの適切な枚数は・・
- 一つのゴンドラに 5~10枚 程度
が適切です。これ以上あるとお客様は情報を処理しきれなくなります。
また、POPに記載する内容も、
- 2秒 で気をひき、15秒以内 で読めるもの
が理想と考えます。情報が多すぎると、読む気がなくなるだけでなく、お客様の頭の中が混乱してしまいます。
せっかく興味を引いたものが台無しになってしまい、買い物をしにくくするだけです。
訴求したいものを絞り込み、インパクトのある、生き生きとしたPOPであることがとても重要です。
■ お客様目線でインパクトのある言葉を使う
インパクトを強く与えるキャッチコピーは、お客様から客観的な冷静な判断を奪います。例えば・・
「新鮮 ”本日入荷”」 「出来たて」 「採れたて」 「炊きたて」 「焼きたて」
これら冷静に考えてみれば、スーパーマーケットの商品の多くは、当日入荷であり、惣菜等は、その日に作っています。
みな新鮮だし、○○したては結構当たり前です。しかし、POPに目立つように書いてあると、その商品がやけに魅力的にうつり、購入のきっかけになってしまいます。
他にも・・
「極上の」 「特級の」 「こだわりの」 「最後の」 「ほやほや」 「豪華」 「贅沢」 「限定」
といったキャッチコピー句も同様の効果があります。
売上データをとって比較すると、あきらかに違いが結果として出ると思います。
お客様の心にストレートに飛び込むインパクトあるPOPは効果絶大です。
表現の仕方でこんなに違う!
表現の仕方で実は、こんなに違います!
■ ポジティブな表現が有効
POPのキャッチコピーで「動脈硬化を引き起こす」とか「高血圧は心筋梗塞に直結」等の脅し文句を見かけますが、あれはあまりおススメできません。
キャッチコピーは間違いなくポジティブな表現が有効です。
お客様の気持を良くさせますし、明るく、元気で幸せな気持ちになりますし、販売検証結果でもポジティブ表現の方が売上が上がる結果がでています。
例えば・・
「高血圧をほっとくと、脳梗塞や心筋梗塞の原因に!」
という表現よりは、お客様の声で・・
「このお茶で血圧が正常値、毎日元気で楽しい生活を送ってます!」
とした方が効果があがります。
「汚れた歯は不快感を与えます」 より 「白い歯は素敵な印象を与えます」の方が良くないですか?
■ 同じことを言っているのに
同じことを言っているのに、言い方や言葉の使い回しで印象は大きく変わります。
有名なのは、古本ショップの「買います」を改めて「お売りください」に変更した例。これで大きく買い取り需要が変わったといいます。
スーパーマーケットでも、「脂肪分10%含む」と「90%脂肪分なし」のキャッチコピーですと、あきらかに後者の「90%脂肪分なし」の方が売れる。
同じことを言っているのに、お客様の感じ方は大きく違う現れです。
スクランブル交差点のサポーターを落ち着かせ、話題を呼んだ”DJポリス”も同様ですよね。
そろそろ、売り手側の勝手な理論はやめて、お客様目線で考えてはいかがでしょうか?
薬局で昔良く見た、水虫の目を覆うような写真。最近見なくなったと思いませんか?
あれに匹敵するネガティブなPOPをまだまだ見かけますよ。
伝説の”わらびもち事件”
あのわらびもち事件を知ってますでしょうか?
■ 発注が10倍になり、真っ青
もう20年くらい前の話しになりますが、あるスーパーから発注ミス(入数間違いで10倍)で、わらびもちが大量に入荷されてしまったということがありました。
おまけに、その日から涼しくなってしまったため「こんな涼しい日にわらびもちは売れない、100個単位で買ってくれないか」というギャグのような私への連絡。
これは洒落にならないと、何とかしようと現場担当者と考えたのが、”わらびもちの美味しい食べ方”のお客様への提案でした。
「わらびもちの美味しい食べ方!知ってますか?一度水洗いをするとお店で食べるように ツルっとぷるぷる食べやすくなるって」 「黒蜜を先にかけても同様にOK」 「お風呂あがりにアイスと一緒に!」 「冷たいお茶とも相性抜群!」 といったPOPとトークで、当時なんとか売切ったことを今でも覚えています。
上司からは3つバンドルで半額で売ったらどうか等の案は出ましたが、いくら半値になっても欲しくないものは買わないので、その策では、きっと大量の廃棄が出てたと思います。
当時、担当者と大喜びして 、これなら「夏に鍋物」 「冬にざるそば」 でも売れるな!って大笑いしました。
お客様に買いたい気持ちになっていただく時代
今は時代の変化は速くなっています。
■ お客様にどう動機づけするか
今の時代にどう売上や荒利を伸ばしていけばいいのでしょうか?
そのひとつは、「この商品面白い!」「これ素敵!」「これ食べたい!」と、小売業からお客様に買いたい気持ちになっていただくためのアクションをすること。
すなわち、お客様に買う理由づけ、動機づけをすることです。お客様にどう動機づけするかが、これからの時代の商売の鉄則になると思います。
■ 最近私が動機づけされたキャッチコピー
液体はみがきのコマーシャルで・・
「災害時、水は貴重です。備えましょう液体歯磨き」
防災の日近辺でこれをやられたら、かなり多くの人が動機付けされたのではないでしょうか?
【まとめ】思わず手にとる”売れる”POPの作り方・書き方
今回は、『思わず手にとる”売れる”POPの作り方』というテーマで書かせていただきました。
最後に一言・・
POPは見てもらいたいターゲットで、内容が大きく変わると思います。
客観的部分と主観的部分をうまく使いわけ、絞り込んだターゲットに伝えることが必要です。
例えばワインは、量や産地、値段等は客観的部分ではっきりしていますが、味わいや深み、見た目・デザインの良さは主観的部分です。
男性は、論理的に客観的に判断しがちで、女性は主観的部分が強いです。ターゲットで訴求する内容は大きく違います。
このようにシンプルに、訴求したい内容を訴求したいお客様向けに絞っていくことがコツではないでしょうか?
では、さっそく思わず手に取るPOPを作って、売場に行ってください。
そして、必ずデータでその結果を検証し、上手くいけば継続してください(ワンパターンにならぬように)。
競争相手に差をつけられると思います。
今回このブログを執筆させていただいたのは、名古屋に本社置く、流通業専門のシステムベンダー「株式会社テスク」です。
小売業様向けに基幹システムやスマホアプリを提供してますので、システムや販促にお悩みのあるスーパーマーケット様はぜひご覧ください。