お客様のさらに一歩先を行く思考

KEYWORD :

売れ筋商品をつくる必要性

どの小売業においても、今後ビジネス成長を遂げるには、お客様の求める一歩先に価値を提供することが求められるのではないでしょうか。

なぜならば・・

これまでは、メーカーがお客様のニーズ/ウォンツをとらえ、商品を通して、その物理的価値を創造・提供しました。そして、小売業はその商品を陳列・販売するということでビジネスが成り立ってきました。しかし、この方式は、お客様からすると、価値が商品そのものとなるため、どこで買っても同じという思考が働き、自ずと判断基準は価格(安い方)にシフトします。よって、商品を通した価値だけに頼ると、価格競争に陥りがちとなり、ネットショップや激安店といった品揃え・価格優位の方に、お客様はどんどん流れてしまうからです。

これを回避するためにこれからの小売業は、品揃え、価格といった物理的な付加価値だけではなく、心理的付加価値、つまりお客様感情にどう訴え、どう提案し打ち出していくかが重要になってくると思います。

お客様に見え隠れする顕在化されていないニーズを素早くキャッチして、そのニーズを満たすような価値を提供すること、すなわちお客様の一歩先を行くことが、ビジネス成長するための必須条件ではないでしょうか?

今回は上記を意識して、お客様の見え隠れするニーズとその対応方法を思考してみたいと思います。

売れ筋商品は作り上げるもの

「売れ筋商品を見つけて強化する」

かつては王道であったこの手法は、今では利益には貢献しなくなりました。POSやHHT、HDDがまだ高額で単品管理が一部企業でしかできないころは、誰もが売れ筋商品を発見することができなかったので、この方法は有効な手段でした。しかし、現在では売れ筋把握をできない企業を見つける方が難しいくらいPOS・単品管理は普及しました。

ここまで誰もが売れ筋商品把握ができる状況にあると、品揃えという面での差別化ができなくなり、売れ筋商品が価格勝負に陥るのは当然です。これが売れ筋商品で利益をあげられなくなってしまった正体です。今やこれら売れ筋商品は、稼ぐ商品からフロントエンド商品(集客商品)になったともいえます。

今では誰もが知ることができるPOSの売れ筋データは、言ってみればあくまで過去のものです。先週の売れ筋商品は来週の死筋商品かもしれないのです。そして利益が上げられない商品群となってしまった今では、売れ筋商品ばかりを品揃えすることは、薄利であり、かなりリスキーな手法になったと言えます。

売れ筋商品はトレンドを見るものに

よって、現在では・・

「売れ筋商品は見つけてトレンドを知り、自ら作り上げるもの」 

になったと私は考えます。

そして、そのトレンドから売れ筋商品を自社で作り上げられれば、他社との差別化が可能となり、価格勝負に陥ることも無くなるため、今すぐにでもアクションすべき項目であると思います。

その具体的な方法は、過去のメルマガでいくつか紹介したように、例えば・・

  • 留意商品の育成(No.25 必見!利益が上がるバイヤーの仕事術)
  • ネットの口コミ利用(No.27 ”これは凄い”と思った小売業の事例を集めてみました)
  • 留型商品の育成
  • ランキングPOP等での商品訴求
  • 商品への想いや価値を訴求

等、他にも方法はいろいろありますが・・

過去の実績であるPOSデータでトレンドを図り、そこから、お客様の心理を考え、お客様の生活シーンや笑顔を思い浮かべ、お客様にとっての心理的付加価値が何かを考える。そして、本当におすすめする商品を開発し(SMで言えば留型や自家惣菜)、その理由をPOPに書いたり、接客で伝え、買っていただけるリピートするバックエンド商品(本命売れ筋商品)を作り上げる。このお客様心理の一歩先行く商品開発をメーカーに頼るのではなく、小売業が自らすることが必要になってきたと思います。

メーカーが開発した売れ筋商品は、基本どの店に陳列しても売れます。

しかし、お客様への想いを独自に商品化したものは、その店の「こだわり商品」となるため、その店でしか売れないと思います。他社が真似してもその想いがないため、きっと売れ筋商品にはなりません。むしろ真似した店では死筋商品になるのではないでしょうか?そうなってほしいですね(笑)

ネットで買ってくれと言ってるようなもの

他社との違いを答えられない!

小売業を取り巻く環境は、供給過多、物あふれ、ネットショップ急成長、そして完全に消費者思考となっており、お客様から自社を選んでいただけなければ、企業経営を継続することも難しい状況です。

では、お客様に選ばれるにはどうしたらいいのでしょうか?

それは、お客様にとって唯一無二の存在になること、すなわち独自化、差別化です。

それができなければ、淘汰されることは誰でも分かると思います。そのような状況下にあっても、バイヤーさんや店長さんに、他社との違いを聞いた際、それを答えられない人が実に多い。このような人に限って、寒いからとか、財布のひもが固いからとか、売れない理由を人のせいにして自分を正当化しようとします。差別化できないものが売れるわけがないのに、売れると思っていることに本当にビックリさせられます。

他社と差別化できないということは、結局のところ価格で勝負するしかなくなり、正面から価格勝負する気なら大丈夫ですが、そうでなければ「ネットで買ってください」と言ってるようなもの。ネットの絶好の餌食となってしまいます。

ネットの餌食になるくらいなら、私は突き抜けるぐらいの差別化をすればいいと思っています。

みなさんご存じでしょうが、店内全て国産無農薬とか、店内全てオーガニック商品という店があります。SMの店舗であれば、国産無農薬野菜やオーガニック商品くらいは扱ってる、言ってみれば別に普通の商品です。しかし、店内全てというように突き抜けると、それは立派な独自化になっており、決して商品は安くないですが、多くの人に指示され繁盛しているように見えます。このような店で他社との違いを店長に聞けば、当然「店内全て〇〇です」と、他社との違いをあっさり答えるでしょう。

突き抜ければ普通のことも差別化になります。

ネットショップの方が実は苦しい?

リアル店舗において、ネットショップは脅威と耳にしますが、ネットショップにおいてもリアル店舗は、脅威ではないでしょうか?店舗で商品を見て、散々説明を聞いて、ネットで購入する”ショールーミング”がありますが、逆にネットで散々商品を見て、評価を読んで、価格を調べて、実店舗で買う人もいます。これからは、ショールーミングに対応したショールームビジネスも生まれそうですから、ショールーミングを思い切って受け入れて、お客様をサポートしてしまうのも面白いかもしれません。

リアル店舗の一部では、ネットに負けまいと、価格を合わせたり、ネットの機能をリアル店舗に取り入れたりする傾向にあります。別に悪いとは思いませんが、私は「ネットで買ってくれ」と言ってるようなものだと思っています。例えば、最近出たお店で、他のユーザーの評価(口コミ)がネットのように店舗で見れるようになっていましたが、美術館でもあるまいし、そんなのじっと読むでしょうか? 自分のスマホや家のPCだから、ガンガン読むのであって、店舗で立ち止まってじっと読むとは思えないです。いずれにしろ店側は悪い評価は掲載しないと思いますし、それでは信頼感もありません。よって、ネットの強みをリアル店舗に入れるのではなく、”リアル店舗ならでは”を追求し、そこを強化した方が絶対効果があると私は思います。

ある意味ネットショップも、現在はリアル店舗に全く歯が立たない程度の売上規模です。自社サイトの特長もそうそうないため「うちが一番安い」と価格で勝負するしかない苦しい状態。しかもリアル店舗の良さを認めてるからこそ、amazonもオイシックスも楽天も、リアル店舗を展開しようとしてるのではないでしょうか?

儲けを考えるのではなく、感動を考える

儲けを考えるから売れない

バイヤーさんや店長さんの関心事は ”店舗や部門の売上/荒利”であることは言うまでもありません。しかし、 お客様の関心事は、安くていいものを快適に買いたい等(他にもいっぱいありますが・・)の自己要望であり ”店舗や部門の売上/荒利” に関心があるわけがありません。多くの小売業には、この店側とお客様との関心事のギャップがあり、もし店づくりがその方向だったり、店側が儲けだけを考えて商売をしていたら、今後その店は末永く繁盛することはないと断言できます。

そして、現在ではどこでお買いものをしても、一定水準以上のサービスが受けられ、価格も割安感があるため、この店は凄い!と思うことは、あまり無くなったのではないでしょうか?それを言い換えれば、お客様の関心事にフォーカスできていない、リピート促進や口コミ集客ができていないということにもなります。

現在小売業が置かれている立場は、お客様に選択される立場であることを強く意識すべきです。そして、選択されない場合は、淘汰されるということも合わせて意識すべきです。お客様にネットショップを含め、数ある小売業の店舗の中から自店をどう選んでいただくか?お客様の選択基準は何か?関心事は何か?それらを深く考え、自店をその基準に合った店舗に改革し、他社にはない独自の”強み”や”看板”を持ち、お客様にとって唯一無二の存在になることを考えなければいけません。

よって、舵先は、どう儲けるかではなく、どう選んでいただくか、どう価値を提供するかです。

儲けを考えるから売れないし、不満を無くす、ミスを無くすだけの改革では、競争に勝てなくなっています。

必要なのは、物理的付加価値だけではなく心理的付加価値、すなわちお客様に喜びや感動を提供することが重要となってきています。

選んでもらえれば・・ 感動してもらえれば・・

お客様に選んでいただき、感動を提供できれば、お客様は他に浮気せずリピートくださり、お客様をどんどん紹介してくださいますので、この先も安泰です。

まず、選んでいただくには、”強み”や”看板”が絶対条件となります。

例えば、「買い物中は、子供を見ててくれるから」 「お肉を買うなら絶対ココ」といったもの。お客様がこの心理状態になれば、商品やサービスの購入先を限定することになり、他社との差別化・独自化が完成します。これが完成すれば飛躍的にリピート率は上がります。これら”強み”や”看板”を意識的に構築し、向上させていくことが今目指すべき方向であると思います。

そして、心理的付加価値、「うれしい」「本当にありがとう」「こんなことまでしてくれるの」といった喜びや感動を感じていただくには、お客様個々人に向けた対応が今後重要になると思います。例えば、リピートのお客様に手厚くサービスを提供する店と、そうでない店ではリピート率や口コミの発生率は大きく異なります。

仮に普通のスーパーマーケットに行って、雨の日に幼い子供を抱え、重たい大きな荷物をもっている人が、車まで雨に濡れないように、荷物を運んでくれるサービスを受けたら、どう思うでしょうか?スーパーでそこまでしてくれるとは・・と想定外の出来事に感動するのではないでしょうか?潜在ニーズをみたされると人はすごく感動しますし、感動すると人は無性に人に自慢したくなるので、口コミの発生率も上がります。

このように“自分に対して目を向け対応してくれる”といった感動の提供を、できない、無理と考えずに、やれる店が今後勝ち上がるリアル店舗の姿ではないでしょうか。

想像力でこれから勝負する

想像力がないとピントもズレる

ここまで、お客様が求めている一歩先を行く商品、サービスをそろえる必要があると書いてきました。

例えば、セルフレジやポイントサービス等、本当にお客様が求めていることなのだろうか?と、ふと考えてしまうことがあります。もちろん生産性を高め、間接的には商品を安く手にしていただくためですが、それらが仮になくて、少し値段が高くても、お客様はみなさんのお店の本当の価値を感じていれば、離れないのではないでしょうか?では、そのお客様が求めている本当の価値とは何なのでしょうか?

「お客様が本当に何を求めているのか」を知るには、それを考える想像力が必要です。(一人ひとりに聞く行動力という人もいますが(苦笑))

分かりやすく例えるために、担当不在時の電話対応社員を例にします。

  • 想像力豊かな社員の例

 お客様 「〇〇さんいますか?」 

 社員  「明日まで出張しておりまして、明後日には出社します」

     「お急ぎであれば、〇〇に連絡をし、お電話させますので遠慮なくお申し付けください」

 お客様 「では本日何とか連絡いただけますでしょうか」

 社員  「かしこまりました。連絡とれ次第お電話するように伝えますので、お待ちくださいませ」

このように、お客様が求めている一歩先(連絡が急ぎで欲しい)を想像して、話をするのでスムーズです。

  • 一つひとつ質問に答える社員の例

 お客様 「〇〇さんいますか?」       社員 「外出しております」

 お客様 「今日は戻られますか?」      社員 「今日は戻りません」

 お客様 「明日はいらっしゃいますか?」   社員 「お待ちください。確認します」・・・「明日も出張です」

 お客様 「次はいつ出社されますか?」    社員 「お待ちください。確認します」・・・「明後日には出社します。」

 お客様 「急ぎ、今日連絡もらえますか?」  社員 「連絡はとってみますが・・」

イラっとするのは私だけではないと思います。しかし、このような短絡的なサービスを、ついついお客様にしてしまっている小売業は意外とあると思います。お客様が何を求めているか?そういう想像力を働かせることが必要です。

真似するところが間違っている

なぜ上記のようなピントのズレたことをしてしまうのか?

それは、これまで日本の小売業は、真似をすることで成功してきたということが起因していると思います。他社の成功事例や米国をそのまま真似るのではなく、真似をするならば、そういうことを考えた人の思考や行動の方を真似すべきです。

お客様の心をつかむ想像力・思考力をつけ、お客様の要望を想像し、その要望に応える現場の人の意見を聞く。それができて初めて自社のお客様が求めているものにヒットし、お客様の一歩先行く商品やサービスが提供できるのではないでしょうか。

 

 

今回は『お客様のさらに一歩先を行く思考 』というテーマで書かせていただきました。

これまでお客様が求めていたことは「不満を解消すること」であった気がします。しかし、どこへ行っても一定水準以上の商品品質やサービスが受けられるようになった現在では、お客様はそれ以上を求めるようになりました。このような状況の中では、お客様の潜在的欲求を満たし、感動や期待を提供することが課題であり、重要になってきたと思います。非常に大変なことではありますが、この現実は受け入れるしかありません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

2018/2/20