正解のない時代にやるべきこと

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やるべきこと、捨てるべきもの

■ 今の時代に一番やらなければいけないこと

ビジネスにおける戦略や課題解決に対して、「正解のない時代」 「答えのない時代」と言われて、もう何年も経ちます。小売業におけるビジネス環境も例外なく”正解のない時代”に突入しています。これまで日本の小売業は、米国のマネをすることが正解でした。しかし、現在ではそうではありません。むしろマネをすることで大きな痛手を食うことにもなりかねない状況です。

現在の小売業のビジネス環境は、売る側の思考ではお客様を簡単にはコントロールできないし、思い通りにはいかないことが多いことをまずは認識すべきだと思います。どんなにがんばっても無理なこともありますし、正解のないビジネス環境には、想定外の出来事や偶発的な出来事がつきものであり、それによって、ビジネスがいい方向にも悪い方向にも左右されるという事実を認識する必要があります。だから、他社が努力の結果成功したものをマネして、自社も同じように努力すれば同じ結果が出るとは限りません。むしろ、自社の思いがお客様に伝わるわけではないので、今後は他社のマネではうまくいかないことの方が多くなるでしょう。

小売業のビジネスの本質は、お客様に満足・感動をお届けすることだと私は思っています。そして、前号で書いたとおり、お客様は感情で来店され、感情で商品を買われますので、ターゲットとするお客様に対して、絶対的にしなければならないことがあります。それは、お客様が自社のお店に来る・・

”メリット” と ”必要性”

お客様がこの店に来るメリットは?なぜ他店ではなくこの店に来る必要性があるの?

これを考え考え抜いて、確実にお客様の感情にお伝えすることが、今の時代に最もやるべきことです。

■ もうやらなくてもいいことを見切る

私の大好きな言葉で、以下があります。

「貯蓄十両、商売百両、見切り千両、無欲万両、奉仕億両」

読んでの通りの意味で、お金を生むには貯蓄をしてもたかがしれていて、それなら商売をした方がいいけれども、商売で稼ごうとするよりも、無欲や奉仕の精神の方が何百倍もお金を生むという言葉です。そこで、今回注目したいのが、”見切り千両”です。見切る勇気や見切る能力があれば、商売に比べて10倍の効果があるというところ。

正解がない時代では、やってみないと分からないというのが本音なので、多くの戦略や課題がどんどん生まれてしまいます。そのため、どうしても「あれやれ」「これやれ」と言い過ぎます。これではスタッフの仕事がどんどん増えるだけです。「あれやれ」「これやれ」の前に、やらなくていいことや、今の時代に合わないと思うことを思い切って見切ることが、上記の言葉の通り実は重要なのです。

また、前述の「成功者のマネ」についても、上手くいったことをマネしても、残念ながらうまくいかないことが多いので、むしろ、成功にいたるまでの苦労や失敗話を聞き、やらなくていいことを”過去から学ぶ”という姿勢がいいと思います。そして、その得た情報の中から、自社に合ったものを取捨選択して、効率の良い道を進むことが、やることが多い今の時代にはマッチしているやり方だと思います。

そして、今一番見切らなければならないことがあります。それは”自分だけ”の・・

固定概念や価値観です。

この2つにこだわると頭が固くなり、やらなくていいものを見切ることもできません。そして、お客様の目線や価値観に近づくことが難しくなるので、この2つを思い切って見切りをつけ、頭をクリアにしてゼロベースで思考することがこれからの時代とても必要です。

正解は探すのではなく、作り出すもの

■ 「過去の成功」に「もはや正解はない」

以前は過去の成功にほとんどの正解があったため、経験と勘に頼れば、まずまずうまくいきました。しかし、現在では経験と勘に頼っての仕事の仕方では、もはやパフォーマンスを出せず、お客様にも社会にも貢献できない時代になってしまいました。前述の自分だけの固定概念や価値観を見切らなければいけない理由はここにあるのです。過去の成功や自分自身の経験や勘だけから正解を導き出すことは、今となっては、とても危険な行為になります。

過去の成功に頼れない正解のない時代のポイントは「自社の思考力」です。よって、自社で調査し、自社の考えで答えを導き出し、過去にない新しいものを試行錯誤しながら自社でつくりあげていくという時代なのです。以前であれば、先駆者たちが成功したことが正解であって、自社もそこにどう向かうを考えれば良かったのですが、今はその答えを思考し、構築するところからスタートする必要があります。

もし答えが見つからないとしても、正解なんて今の時代ないのですから、より正解に近いものを試行錯誤をして、失敗しながら、学びながら作り上げるしかありません。もちろん正解はないので、どうなるかは全く分かりません。やってみないと分からないから、あとはやってみるしかないのです。

■ 他社とは逆を行く発想

過去からの正解探しや、他社の鵜呑みのマネが今の時代に合わないとすれば、どうすればいいのか?

私のおすすめは、「他社の逆を行く」発想です。

例えば、広告宣伝費は売上の何パーセントまでとか言いますけど・・誰が決めたんでしょうね?そんなのきっと正しくありません。お客様の争奪合戦に時代が変わっているのに、そんな正しいかどうか分からない固定概念は絶対捨てた方がいいです。むしろ他社が、広告宣伝費をそこまでに抑えるなら、それ以上かければ、集客効果は他社以上になり、効果が出る可能性が高いと思います。

他にも、他社が「コスト削減」に必死になるのであれば、がんがんコストをかけるという方法も面白いと思います。徹底したお客様への接遇・サービス強化で人件費をバンバンかけるとかすれば、他社には絶対ない独自の店づくりができますので、競争力はかなり向上するでしょう。

そして、これからのAI・ロボットの時代に向け、ITコストは抑えるべきではないでしょう。ベースとなるビッグデータを正しく確実に集めるしくみを今から準備すべきです。

このような他社がする方向と逆の方向へ進むのはリスキーに思えるでしょう。なぜなら、人がやってないからです。日本人はどうしても他人と同じことをすることで安心を得る国民性があります。しかし、人と同じことや過去にしてきたことをしていても、これからはダメなことは誰もが分かっているはずです。今必要なのは、正解を過去や他社から探すことではなく、自社なりの最適な正解を作り出すことと、それを実行する決心と勇気に他なりません。

そんな教育方法で大丈夫なのか?

■ 教育の方向性は?

過去の経験や勘に頼れない、ビジネスに正解がないとなると、教育の考え方も変えないといけないはずです。しかし、現場を見ていると以前と変わらぬ教育方法が多いのではないでしょか?悪いとまでは言いませんが、これまでの・・ ”先輩が経験と勘をベースに教育する”のは、単なる業務の引継ぎにしか過ぎません。もし、そこで教育が終わっているとしたら、企業におかれてる環境がこれだけ変化しているのですから、業績や売り場が良くなることはほぼないと思えるのは私だけでしょうか?

必要なことは、お客様の立場にたって考えることであり「思考力」を教育していかなければいけないと思います。(AIの時代になれば、この思考力も必要なくなるかもしれませんが、今はとても重要なことです。)

「俺たちの時代はこんな風じゃなかった」とか「最近の若い奴らは・・」と言ってる方々が「正解」と信じて来たことが、今の時代本当に正解かどうかは分かりません。ひょっとしたら、不正解だったり、時代遅れだったりすることの方が多いかもしれません。だから、思考力を鍛えないこれまでの教育の仕方ですと、間違ったことを伝授したり、教えたり、時代遅れを押し付けている可能性すらあると私は思います。

■ 「正解探し」の癖から抜け出せ

一方、教育を受ける側のスタッフにも頭を抱える問題があります。これは日本の学校教育の問題が本質的にあるので、ある意味仕方ないのですが・・ それは「正解探し」をしてしまう癖から抜けられないということです。

これは、小さいころは親から、学生時代は先生から、会社に入ったら上司・先輩から、そこから言われた「答え」を鵜呑みにして、ただただ従って、意味も分からずに行動する癖がついていて、その答えが本当に正しいのか?他にもっといい方法はないのか?といった信憑性に疑問を持つことなく行動してしまうという現象です。

よって、自分が何のためにやっているのか?自分は何をどうしたらいいのか?といったことを自分なりに考えるのではなく、ただ指示を求めたり、他人がしていることから正解を探したりと・・ とにかくまず正解を探すことをしてしまうのです。

正解がない時代に、正解だけを探したって答えなど見つかりません。自分なりに考える必要性があるのです。思考力を鍛える、思考する癖をつける、そんな教育が正解のない時代には必須ではないでしょうか。

本質に基づく体制づくりとは?

■ 目標と組織が一致しているか?

どの企業も、何かを成し遂げるために存在しているはずです。その何かは時代とともに、企業の成長とともに変化していっても何の問題もないと私は思っています。

  • 「地域のお客様の笑顔のために」
  • 「地域のみなさまの豊な暮らしのために」
  • 「信頼と信用をモットーに安心・安全な暮らしをお届けする」

最近では、上記のようなお客様に必要とされるのために!といった形の存在意義や方向性を持つ企業が増えています。というかほとんどではないでしょうか?もし、心底これらの気持ちがお客様の感情に伝えることができれば、小売業の本質にマッチするため、その企業が繁栄することは間違いないと思います。

以前は「〇〇店舗、売上○○億円目指して」等の企業の成長を前面に打ち出すアグレッシブな企業も多かったですが、時代の流れとともに、企業が目指すところはお客様思考系に変化しています。

さて、各々の企業がその何かを成し遂げるためには、目標に向かい全社員一丸となって効果的に動くための仕組みや体制、仕掛けが必要となりますが、そこはどのような状況なのでしょうか?

■ 組織体制を見直す時期なのか?

小売業の組織の多くは、部門や商品、店舗が切り口になった組織が多いと思います。これは、売上・仕入・値入・荒利、ロス、在庫等を管理するには最適であり、管理をキッチリすれば、売上も利益も向上すると思います。売上や利益をつくることを成し遂げるためには最も良い組織であると思います。

では、上述したようなお客様に満足や感動を届けるという本質を考えるような組織に今なっているか?また、それを深く考え、考えたことを決心をもって実践できる組織になっているか?というと、これは疑問が残ります。

組織に関しても私は正解などないと思います。しかし、ことを成し遂げるための仕組みや仕掛けが、組織体制に連動していなければ、その思いを成し遂げることは難しいと思います。

旧態依然とした小売業の組織の形を、思い切って事業戦略の方向に変えてみることが、正解のない時代にやるべきひとつであると私は考えます。

 

今回は『正解のない時代にやるべきこと』というテーマで書かせていただきました。

いろいろ書きましたが、これからの時代に必要なものは、”深い思考力” と ”勇気と決心”だと思っています。そして、小売業の本質と自社の軸で、決して他社のマネではなく、自社で考え、自社で行動してみる。これが正解のない時代にやるべきことだと思います。うまくいくか?失敗に終わるか?それは誰にも分かりません。やってみるしかないし、やってみないと分からないのです。横並びや他社との比較に安心感を覚えるのはやめ、世間のレールから外れることを恐れない、そんな勇気を持って、前例のないことや新しいことにチャレンジすることが求められる時代ではないでしょうか。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

2017/6/20