スーパーマーケット”東京・大阪・名古屋”の違いとは?傾向を比較考察!

スーパーマーケット"東京・大阪・名古屋"の違いとは?傾向を比較考察!

今回取り上げる、東京・大阪・名古屋のスーパーマーケットは、いずれも年商が1,000億円を超えており、利益は黒字です。

店舗数も直営50以上ですので東京大阪名古屋地域にリージョナルチェーンとしてドミナントを形成していると理解しても良いでしょう。

 

筆者の見立てでは、本記事で東京大阪名古屋から選んだスーパーマーケットは、各地域の特性に合わせた経営スタイルで経営しており出店地域の特性をキャッチアップしているようです。

よって、これらのスーパーマーケットの考察から、東京・大阪・名古屋の各地域生活者がスーパーマーケットに要求する鮮度、価格、品揃え、サービスそれぞれの優先順も理解できると推察します。

 

本記事では東京・大阪・名古屋のスーパーマーケットに対する生活者の期待の違いを明らかしながら、傾向を比較して解説していきます。

 

東京・大阪・名古屋の代表的なスーパーマーケットとは

この解説目的を満たすために、東京大阪名古屋各都市のモデルとなるスーパーマーケットを選定して、経営効率指標の比較や経営方針を比較します。

そして、選定するにあたり3つの要件を設定しました。

 

1番目はスーパーマーケットの定義を満たさねばならないので、1958年に日本セルフ・サービス協会(現:一般社団法人全国スーパーマーケット協会)が「スーパーマーケットとは、単独経営のもとに、セルフ・サービス方式を採用している総合食料品小売店で、年商1 億円以上のものをいう」との定義を利用します。

2番目は比較する情報が取得可能でなければならないので、株式を公開すなわち上場企業を条件にしました。

3番目として、東京大阪名古屋を中心に店舗展開していて、地域の特色を比較的よく表していると筆者が理解した企業にしました。

 

これら3つの条件に適合すると判断したスーパーマーケット3社を比較しながら、一部筆者の主観を含めながら解説を進めます。

 

もちろん、東京大阪名古屋の各商圏内には、大小多くのスーパーマーケットがひしめいているので、選定した3社以外にも著名なスーパーマーケットはあります。

しかし3社は各地域を中心に出店し各地域の経済圏以外にはさほど出店していないのです。

つまり、地域に根差し地域のニーズを的確にキャッチアップした営業スタイルで東京・大阪・名古屋の各地域の生活者に支持されています。この営業スタイルを各社ごとに検証すれば、東京・大阪・名古屋のマーケットへのニーズが明らかになります。

 

東京のスーパー:安定した事業基盤を目指す

東京のSMの経営効率指標は突出して優秀な値を出していませんが、全体的に及第点を取得している「優等生」と言ってよいでしょう。経営効率指標の中で他2社より優位なのは総売上高総利益率平たく言えば荒利率です。

しかし、営業収入経常利益率は同じレベルなので販売費および一般管理費が高めであると言えます。比較的高いレベルのサービスと品質に重きを置いていますが、高コスト部分の見直しを十分に行わないので、価格競争には淡泊と言った傾向と課題が見受けられます。

 

また、有価証券報告書の【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】には長期的な安定経営との記述があります。高コスト体質の脱却を謳ってはいますが、成長し続けるためには、安定した事業基盤の確立が必要であり、生活者に安心と安全を届ける社会インフラの使命と位置付けています。

これらから読み取ると、スーパーマーケットの基本4テーマの位置づけは、品質・品揃え・サービス・価格になると考察します。

 

東京の生活者は大阪や名古屋の生活者と比べると、自身の生活レベルに適合するブランドや店舗を選定する条件として安心安全を重要視します。

行き付けの店舗を決め、浮気をしないと言った特徴があるのでしょう。つまり、安定した営業スタイルを希望しているので、価格に対しては必要以上に敏感にならないように思えます。

 

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大阪のスーパー:魅力ある価値提供を標榜する

大阪のSMは近年の資本関係変更で経営効率指標が上下しています。一昔前は大阪関西地区に限らず全国的なスーパーマーケットの理想型モデルとして有名でしたが、上場企業のリスクである希望しない買収に対抗するために他小売グループの傘下になりました。

敵対的買収を仕掛けた企業が大阪進出する際に魅力的に見えたのでしょう。それほど大阪地域に対する知名度や魅力度を長年維持して、大阪の生活者から高い支持を得ていた査証と言えます。

経営効率指標も上下しているとはいえバランスの良い数値になっています。業界の理想を維持発展しようとしていますが、文化や生い立ちが違う企業との合弁が良い方向に向ける施策の作成が傾向と課題の様です。

 

また、有価証券報告書の【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】には、生産性向上を中心としたコスト削減への取り組みが謳われていますが、「価格追及」との記述があるものの低価格を志向するとは書かれていません。

むしろ、付加価値の提供や品揃えを重視した店舗展開により、マーケットシェアの拡大と収益性の確保を目指すと記述しています。

 

このような状況からスーパーマーケットの基本4テーマの位置づけは、品揃え・価格・品質・サービスになると考察しました。

大阪の生活者は東京や名古屋の生活者と比べると、価格に敏感と見えますが、品揃えに軸足を置いている傾向が見て取れます。大阪のSMは商圏内の生活者が最適と受け取る選択肢を提供してマーケットシェアとマインドシェアを増加させようとしているのです。

 

百貨店のリーディングカンパニーが大阪に出店しても短期間で撤退したように、大阪の生活者は東京における高い支持を受けている商品やサービスに流されることが無く、自分に合った商品やサービスを支持するようです。

近年は関東のスーパーマーケットが大阪に店舗展開を図り成果をあげています。しかし大阪の生活者の中心を構成しているマーケットを簒奪しているのか、はたまた常態化できるのかは観察し続けなければならないと考えます。

 

名古屋のスーパー:地域密着型個店主義を強化する

名古屋のSMは名古屋を中心に愛知県に的を絞った店舗のドミナント化を強化しています。経営効率指標の総資本経常利益率と自己資本当期純利益率は高いのですが、営業収入経常利益率は標準的な数値ですので資本効率が良いと言えるでしょう。

出店地域を限定して商圏内シェアを高めるために低価格化を徹底しようとしていますが、PB化戦略等で規模の論理を振りかざしてくる巨大チェーンとの価格競争に勝ちうるかが傾向と課題と思います。

 

特筆すべきは総売上高総利益率(荒利率)が東京のSMに比べて10ポイント以上低い点にあります。

つまりは、ローコスト経営をベースにしたロープライス営業を徹底しているのです。ローコストロープライスに徹して同業他社に勝る競争力を維持しています。名古屋生活者所得レベルの多少を問わず、多くの層に支持されているのです。

 

また、有価証券報告書の【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】にはロープライスローコストが記述されていて、生鮮商品の強化と地域密着を標榜しています。

さらに、鮮度・品質・価格・品揃えへのこだわりとの記述から、スーパーマーケットの基本4テーマの位置づけは品質・価格・サービス・品揃えと推測する事もできますが、筆者としては全体的な記述から実質的には価格・品質・サービス・品揃えとしていると読み取ります。

言い換えれば、売れるモノを売れる時に安く売ると言った営業スタイルであり、ワンストップショッピングを多少犠牲にしても安さにこだわっているのです。安さへのこだわりが名古屋の生活者に受けが良く、東京・大阪・名古屋の生活者を比べると、名古屋の価格志向への強さが観察できます

 

おまけ

ところで、冒頭「東京の一段締め、大阪の二段締め、名古屋の三段締め」の意味をご存じでしょうか。

聞くところによれば、東京の商人は商談時に値引きを要請し、大阪の商人は商談時と納入時に勉強つまり値引きを依頼し、名古屋の商人は商談時と納入時に加えて支払い時にまけるつまり値引きを依頼するそうです。

現代社会では通用しないと思いますが、過去商習慣として知っていると役立つときがあるかもしれないですね。

 

本ブログを執筆させていただいたのは、名古屋に本社を置く流通業専門のシステムベンダー、株式会社テスクでございます。

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