思わず納得!小売業で役立つ法則集

やがて無能な上司ばかりになる法則

■ ピーターの法則とは?

どう考えても無能としか思えない人が上司にいることや、「どうしてしてあの人が出世できたのか?」と思うことは、職場ではよくある話です。なぜそう感じるのか?この問題に答えたのが、南カリフォルニア大学のピーター教授が発見した『ピーターの法則』です。

その法則とは、『階層社会において人は昇進を続けると、いつか能力の限界まで達して、最終的には無能のレベルに達する』というもの。

小売業を含め会社における階層社会では、その立場で有能と判断されると上のポストに昇進し、またそのポストで有能と判断されると、さらに昇進します。これをずっと繰り返していくと、必ず最終的には自分の能力の限界に達して、結果としてみな ”無能” のレベルに達するといいます。

■ やがて職責を果たせない無能な人で占められる

これを分かりやすくスーパーマーケットの事例で言うと・・

入社して、店の青果部門に配属されたAさんは、非常に高い能力を発揮して部門チーフになりました。そして、チーフとしても優秀な成績を残して副店長になり、やがて、青果バイヤーに出世した。しかし、そこがAさんの能力の限界で、バイヤーとして能力を発揮できず、Aさんの昇進はそこで止まった。

副店長時代優秀だったAさんを知らない部下は「なんで無能なAさんがバイヤーなんだ?」となるわけです。

このように能力の限界に達して、その上のポストに進めない人があふれ、やがてバイヤーとして無能なAさん、店長として無能なBさん、副店長として無能なCさんと、能力の限界に達した人ばかりになると、ピーター教授は言っています。また、実際に現場で仕事をしているのは、実は『無能レベルに達していない人達がやっている』ともピーター教授は言っています。

最近多くの会社では、ポストが多いとこのような現象になるため、主任・係長・課長といったポストを廃止し、部門長といった責任者だけにしているのは、真の有能な人だけが出世するようにしているひとつの表れなのです。

生産性が半減してしまう法則

■ 仕事を先に延ばすと2倍の労力が必要

エメットの法則』をご存じでしょうか?

この法則は『仕事を先延ばしにすると、すぐやるのに対して2倍の時間とエネルギーを要する』というもの。

この話はもっともで、時間が経てば経つほど、今の状態を思い出すのに時間がかかる上に、「やりたくない」 「面倒くさい」という心理が湧いて、どんどん先延ばしした他の仕事も溜まり、ますますやることが不快に思え、生産性も完成度も落ちるというパターン。みなさんも心当たりがあるのではないでしょうか?

例えば 報告書の場合、先延ばしすることで内容を忘れてしまい、もう一度思い出すのに結構な時間を使いますし、それがゆえ面倒くさいという心理も湧きます。先延ばしした仕事は、このように後手後手となることが多く、精神的不快を伴ったうえ、生産性は上がらないし、完成度も低くなり、あげくのはてには「忙しい、忙しい」というネガティブな発想になり、文字通り ”心を亡くす” ことになります。

当社の社内大学でも、講義当日にレポートを出す生徒は、継続的で内容も濃いですが、翌日以降に出す生徒の多くが脱落していくうえ、内容も薄くなっているのもエメットの法則でしょう。

■ すぐやる・ゴール設定習慣をつける

生産性を半減させないコツとしては、つまらない仕事ほど先にやる、会議や打合せがあった時は、その日のうちに報告書をまとめるとか、受信メールのうち不要なものはすぐ消す、返信が必要なものはすぐ返信する等。一度読んだメールを、後で返事するためにもう一度”未読”にしておくなど、典型的な2倍の労力を使うパターンです。

私が提唱している『すぐやる・ゴール設定習慣』は、受けた仕事はすぐにはじめ、いつまでにやるかを決めるというものですが、この方法が結果的に一番、生産性も完成度も高くなることは間違いありません。

極端な例ですが、スーパーマーケットにおける年末の発注ミスで品切れを起こしたら、その場で来年用に理想の発注数だった発注書をつくってしまえば、あっと言う間に精度の高い来年用の発注書ができますが、1年後に去年の発注を振り返って、発注書をつくったら、倍どころではない時間がかかるうえ、同じ発注ミスを犯す可能性が極めて高いと思います。1年前のことなど正確に思い出すことは誰でも難しいことですからね。

モチベーションが上がる法則

■ ピグマリオン効果

ご存じの方も多いと思いますが『ピグマリオン効果』という有名な法則があります。これは『無条件に信用されると人は良い成績を残す』というもので、期待することにより相手もまた期待に応えようとするという現象で、このことは多くの実験で証明されています。

ある学校での実験で、能力予測テストと称するものを実施し、担任教師に対してその結果として「今後成績が伸びる生徒」と「成績が伸びない生徒」のグループに生徒を分け、各々を伝えました。ところが、実はそのテストは何の意味もなく、「今後成績が伸びる生徒」と「成績が伸びない生徒」の区分けもデタラメなものでした。しかし、半年後には「今後成績が伸びる生徒」のグループは実際に成績が伸びたのに対し、「成績が伸びない生徒」のグループの方は、実際成績が伸びなかったという明らかな実験結果がでました。

■ 部下には期待をすることで、やる気も結果もでる

上記の実験では、生徒を見る担任教師の意識の中に「成績が伸びる(伸びない)生徒」という感覚が無意識にあり、担任教師が「自分のことをどう見ているのか」を生徒は敏感に感じています。期待をかけている生徒のグループへの接し方と、そうでない生徒への接し方が担任教師の中でも無意識で出てしまい、それを感じた生徒のモチベーションに大きな差が出たという結果になります。

よって、部下に対しても同じで「君には期待している」と心から信じている上司の元では、部下はやる気が出て結果を残しますが、逆に「君はどうせダメだ」と全く期待されなければ、やる気も結果もなかなかでないことになります。この差は大きいと思いますので、部下にはぜひ期待いただきたいものです。

ついつい手を抜いてしまう法則

■ 「社会的手抜き」という現象

先日、私の後輩に「”みんなでがんばろう”はNGワードですよ」。と言われました。

私は”みんなでがんばろう”なんて、素敵な言葉で何が悪いんだと思いましたが、くやしかったので一生懸命調べてみました。すると『社会的手抜き』という、思わず納得してしまう法則を見つけました。

これは、人々がグループで作業をするときに、一人で作業するときと比べて努力する量を減らすというもの。

そこには興味深い綱引きの実験データがあり、その実験によると、1人で綱引きをしたときに綱を引く力を100とすると、2人で綱を引いた時の一人当たりの力は93になり、3人で綱を引いた時は85、さらに8人になるとなんと一人当たり49にまで減少したという実験データでした。つまり、グループの人数が増えるほど、一人ひとりの心の中に「他の誰かが頑張るから、自分は力を抜いても大丈夫だろう」という心理が無意識のうちに働いて、手抜きが行われるということの表れです。

■ 「みんなでがんばろう」は手抜きの温床

職場においても、会議で誰も発言しないとか、電話が鳴っても誰もとらないといったことが『社会的手抜き』 にあたります。外線電話が鳴っても、みんなが電話に対して「誰かが出るだろう」と他の人を傍観してしまい、最終的にはイライラした誰かが「誰もとらんのかい」と電話をとります。

この問題を解決するには、ルールや役割を決めるか、上司が「Aさん電話に出てください」と名指しをすると良いです。そうすることで「誰かがでるだろう」という社会的手抜きが崩れるからです。

だから、「みんなでがんばろう」は、手抜きの温床となりやすいです。みんなが「誰かがやってくれるだろう」と思い込み、自分は少しくらい手を抜いても分からないと考える。やはり、役割分担と責任範囲を明確にしないと、悲しいかな、誰も動かないし誰も発言しないのでしょう。

信憑性・信頼性が増す法則

■ ウィンザー効果

人を褒める時に効果を倍増させる法則があります。それが『ウィンザー効果』です。

ウィンザー効果とは、同じ情報を直接本人から聞くよりも、第三者を介した情報の方が、その人に与える影響が大きくなり、信憑性・信頼性が増すという心理効果のことです。例えば・・

A.直接上司に 「私は君のことをいつも気にかけてるよ」

B.別の人から 「君の上司は、いつも君のことばかり話してるよ」

上記のAもBも同じ内容ですが、聞いた本人の印象は大きく違います。Aに比べ、Bの方がかなり嬉しい気持ちになりますし、上司に対しての信頼感がアップします。

■ ウィンザー効果で商品が売れる

ネットで商品を買われる人の85%以上の人が、口コミ情報を参考にするというのも、この「ウィンザー効果」です。販売元のセールスコピーは胡散臭いが、「お客様の声」「口コミ」は信頼性が高いと思ってしまいます。(実は口コミも本当のところは分からないんですがねぇ・・)

ネットに限らず、リアル店舗のお店でも、このような第三者の「お客様の声」や「口コミ」といった満足度を、POPで伝えることによって、この商品に満足している人が他にもたくさんいるのだろうという想像力が湧き、同時にその商品の購買意欲が間違いなく増します。やらない手はないですよね?

今回は『思わず納得!小売業で役立つ法則集』というテーマで書かせていただきました。

以前小冊子でお客様の心理を法則としてまとめた『お客様の不思議な法則』が好評だったので(必要な方は弊社営業まで)、今回は一般法則を小売業に当てはめ、まとめさせていただきました。いかがだったでしょうか?

まだまだ、法則は他にも山ほどありますので、また機会があれば『小売業で役立つ法則集2』を出したいと思っています。

 2015/7/31