小売業販売管理システムのリプレイスには何が必要か?

小売業販売管理システムは可能であれば使い続けたいと思うのが経営者のみならず、管理者や情報システム担当者の本音であると推察します。小売業販売管理システムは小売企業の中枢業務を担っているので、安定的に稼働しているシステムをリプレイスして稼働に支障が発生すると、企業活動の運営・管理に重大な影響を与え、なかには販売活動の停止に見舞われる場合もあるでしょう。このような事故を避け、現行の小売業販売管理システムを延命して使い続けることが賢明な選択肢なのでしょうか。その判断基準に経済産業省のDXレポートは、外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応して企業が生き残るための鍵は、第三のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ、ソーシャル)を利用したITを強力に生かせるかにかかっていると言っています。

小売業販売管理システムのリプレイスにおける次世代型機能

小売業販売管理システムを強力に生かすためには、既存の小売業販売管理システムが老朽化・複雑化・ブラックボックス化していなければ可能であるかもしれませんが、多くの事例ではクライアント・サーバーと言った第2のプラットフォームのままであったり、ひどい場合にはメインフレームと端末と言った第1のプラットフォームが継続利用されているケースであったりして、第3のプラットフォーム上のデジタルイノベーションプラットフォームの構築が可能になっておりません。

そのため、システムの利活用や連携が限定的になり、結果として効果も限定的になるので、多様なヒューマンデジタルインターフェースといったITを強力に生かせる状態には程遠い状態になっています。

したがって、破壊的な変化をしている外部エコシステムに対する経営戦略は、デジタル技術を活用してビジネスを変革するための小売業販売管理システムのリプレイスが不可欠と言わざるを得ません。そして、この次世代小売業販売管理システムのキーワードは、デジタル化と自動化であると推察します。次世代小売業販売管理システムのデジタル化の具体的な機能は、商談から始まる取引先様との連携にデジタル技術を使いデータ化することです。現状踏襲を専らとする古い意識は払拭し、将棋の世界でAIがトッププロに勝つ時代においては、小売業の業務においてコンピュータに移管できないことは無く、移管できない理由は業務に関して定義の曖昧な部分が残っているとの認識の下で、聖域なくあらゆる業務を自動化、つまりコンピュータに委ねることにチャレンジしなければなりません。とは言え、生鮮品の加工作業のように、費用対効果が合わない業務は後回しにして、発注と検品検収、支払確定や各種伝票起票作業の自動化にチャレンジします。

小売業販売管理システムのリプレイスは商談デジタル化

小売業販売管理システムは、発注・仕入・在庫・加工・販売の各業務入出力をシステム化し、業務の効率化に貢献してきましたが、未だに多くの業務がアナログ作業として残り、効率的業務の足枷になっています。

その中でも昨今のコロナ禍と相まって取引先様との商談等の接点をデジタル化し、効率化を図ることが重要と考えます。つまり、次世代小売業販売管理システムでは、商談がデジタル化される事を前提とした対応が必要なのです。デジタル化された商談は、小売側と取引先様側双方の効率が向上するので、お互いに疲労が軽減されて上質化するのみならず、取引先様の高レベル営業部員の商談件数が上昇するので、いままでは他社との商談に参加していた高レベル営業部員が商談をデジタル化した小売企業の提案に参加する可能性が高くなります。

さらに、遠隔地であることが障害になり商談に参加しなかった取引先様も、デジタル商談であれば近隣の取引先様と同じように商談を行うことができるので、新しい魅力的な商品の取り扱いや好条件での取引が可能になります。また、デジタル化された商談ではトップセールスの条件が大きく変化されると言われており、心理戦に長けた営業部員が評価され高い契約率を獲得する状態から、高い提案力を持つ営業部員がトップセールスになり他の営業部員の模範になるので、経験の薄いバイヤーがベテラン営業部員に取込まれると言った悪弊から、提案を客観的に評価して売場づくりに生かすと言った本格的な商談に変化するでしょう。

このように、今後の小売業における業務運営にはデジタル化された商談、つまりオンライン商談が欠かせないのですが、単なる面談のオンライン化ではメリットよりもデメリットが目立つので、商談前のコミュニケーションで利用するグループウェア機能、商談後の小売企業内稟議を円滑に行えるワークフロー機能、商談結果の取引先様投稿と小売業採用や却下を行ない、基幹システムと連携する機能、取引先様から受け取る各種文書を共有してセキュアかつタイムリーに利用できる文書管理機能、商談の結果として取り交わされる契約書を電子保管して人事異動等による散逸を防止する契約書管理機能が必要になります。このような機能を持つオンライン商談の留意点は、オンライン商談では通信環境の良し悪しが鍵を握るので、通信環境の良くない取引先様には改善を促します。

次に、商談の主旨を事前に共有して効率的な商談を目指します。

第三に、オンライン商談ではリアル商談と相違して臨機応変な対応が難しい場合があるので、事前にオンライン商談のシナリオを提示しておきます。

第四に、文書管理機能にも共通するのですが、事前の資料共有が徹底されないと、お互いの達成したい内容が食い違って商談が無駄になります。このようなオンライン商談が実現できればお互いの生産性と効果が劇的に向上して、小売業経営に貢献するでしょう。

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小売業販売管理システムのリプレイスの中の自動化対象

小売業販売管理システムは多くの業務を支援して小売企業経営の生産性向上に貢献してきましたが、昨今は効率を上げて生産性を向上するアプローチから業務そのものを削減して小売企業運営に必要な人的経費を削減し、経営効率を上げるというアプローチが増加しています。

この削減には3つの方法が有り、一つは不要な作業を見つけ出して実施を停止すると言う最もオーソドックスなものから開始し、二つ目は小売業における作業役割の分担を変更する、つまり店舗で実施していた業務を本部やセンターに集約して、店舗内業務の生産性を向上すると共にセンター集約により効率を向上させる事です。三つ目は、人間が実施していた作業を、ITを中心としたシステムに置き換える、つまり自動化する事で人的経費を削減して経営効率を向上させる方法です。

こちらでは、小売業販売管理システムにおける業務の自動化を解説して、次世代小売業販売管理システムのリプレイスに際してのあるべき姿を明らかにします。小売業における自動化と言うと、多くの読者はAmazon Goの様な自動化店舗を想像しますが、平たく言えばAmazon Goで自動化としてフォーカスされるのはチェックアウト、つまり会計業務であり、その他の多くは見えていません。店舗業務において負荷の大きい作業は発注です。したがって、発注を自動化する機能、言い換えれば自動発注システムが必要です。この自動発注システムでは、発注に基づく納品も自動化、言い換えれば自動検収もできれば、発注から納品、そして仕入の各計上が人的作業から解放されて処理が迅速化します。自動発注の留意点は、発注対象商品と発注量の確定方法が合理的かつ論理的に行う前提としての商品毎の正確な実績が遅滞なく収集・管理される機能がシステム化されていなければなりません。発注以外の自動化では、多くの小売企業が採用している売価還元法による在庫評価を行うに際して必要な売価管理に付随する作業として、商品の売価を上げたり下げたりした場合に必要な「売価変更伝票」の起票作業に多くの労力を要しています。したがって、これを削減すべく自動化、言い換えれば自動売価変更システムを採用することが望まれます。自動売価変更システムの留意点は、実際の売価とは異なる仕入売価の設定方法に対応していることが必要です。更なる自動化としては、意外に思うかもしれませんが、かなり多くの小売企業で分析資料の作成作業に多くの労力を割いており、これを自動化することも経営効率向上に貢献します。分析資料作成自動化の留意点は、前例にとらわれない他社の成功事例を取り入れたパッケージ・ソフトウェアを採用することです。

小売業販売管理システムのリプレイス-まとめ-

小売業販売管理システムをリプレイスするに際して何が必要かを解説しました。外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化は、コロナ禍により拍車がかかり企業淘汰の波が情け容赦なく襲ってきています。このような惨状において企業が生き残るためには、旧世代型小売業販売管理システムを放棄して次世代型販売管理システムにリプレイスする以外に選択肢は無いのです。そして、第3のプラットフォームを利用した次世代型小売業販売管理システムには商談のデジタル化と業務の自動化が不可欠であることを理解して頂けたと拝察します。そして、対応を完了するための時間的な猶予はほとんどないことも同時に理解して頂く必要があります。決して脅しではありません。

2020/12/23