棚卸差異の原因と対策について!棚卸減耗損と商品評価損
在庫を持って得意先と取引されている会社は、最低でも年1回又は複数回の在庫額を確認するために実地棚卸をされていると思います。
実地棚卸を行った時の帳簿在庫数と棚卸数の差異が頻発すると会社の利益を損ねてしまうだけでなく、会社の信用を失う可能性もあります。
また、在庫が不正確であることで出荷業務での品切れや欠品が多く発生する要因ともなり、お客様へのサービス率が低下してしまいます。
今回は、棚卸差異が発生する原因とその対策についてご紹介いたします。
棚卸差異 棚卸減耗損と商品評価損
実地棚卸を行った場合に帳簿在庫との差異が発生する内容には、下記の2つ差異があります。
[棚卸差異の項目]
NO |
項目 |
内容 |
1 |
数量差異 |
帳簿在庫数と実地棚卸数の数量差異の発生 |
2 |
評価差異 |
棚卸商品の評価単価が下がったための単価差異の発生 |
数量差異は、実地棚卸で数えた在庫数が帳簿在庫数と違った場合のことを言います。
紛失や破損など、何らかの理由で帳簿在庫商品の数よりも実地棚卸商品の数量が少なくなっている状態を減耗といいます。
棚卸で減耗損が生じたときは、消耗した分の商品金額を費用として棚卸減耗損で計上し資産である繰越商品を減少させる会計処理が必要です。
また数量差異では、上記とは反対に帳簿在庫数量よりも実地棚卸数量が多い場合があります。
この場合は、特に会計上の処理は必要ありません。
実地棚卸数量が多い場合は、簿上の記録間違いや商品納品数の間違いなど、なんらかの原因があるため再確認をして原因が特定できたら、帳簿や商品マスタなどを適切な数値に修正して対応します。
実地棚卸と帳簿在庫との数量差異が発生する以外に、実地棚卸した商品が在庫過多などの原因で長期に滞留して商品価値が低下する場合があります。
在庫数量の差異でなく在庫評価単価の差異でこれも在庫金額が違っている要因となります。
商品自体は存在するが、仕入時の商品価値よりも商品価値が低下した場合、その差額を商品評価損として会計処理する必要があります。
通常出荷するA級商品が何らかの理由で商品価値が下がったためB級品に評価替えする場合などは、商品評価損として会計処理をする必要がありますし、在庫管理上では別商品として管理する必要があります。
実地棚卸時に発生した数量差異の棚卸減耗損や商品評価が下がったための商品評価損は、どちらも在庫額の差異となります。
また、棚卸減耗損や商品評価損が多い場合は、在庫管理が適切に行われていない可能性があります。
在庫を正しく正確に管理する必要があります。
棚卸差異が発生することでの問題について
棚卸減耗損や商品評価損などの在庫差異が発生すると、下記のような問題となります。
- 営業利益・経常利益がわからない
在庫金額が正しくないために、売上原価金額が正しく計算できなくなり、粗利(売上総利益)が正確にわからない状況となります。
そのため、粗利の予測ができない、営業利益・経常利益がわからない、すなわち、会社として「利益がいくら出たのかがわからない」という経営的な問題が発生します。
- 在庫過多や欠品・品切れが頻発
帳簿在庫が正しくないことで、正しく在庫補充が行えず、そのため在庫不足により出荷時の在庫引当で欠品や品切れが頻発します。
また、逆に在庫過多となり長期滞留するデッドスットク発生して品質劣化を招く原因にもなります。
欠品や品切れ又は品質劣化等の発生は、得意先様への納品率・サービス率が低下してしまうので得意先との信頼関係も崩れてしまいます。
- 作業の不効率化や作業工数が増大
帳簿在庫が信用出来なくなると、現場運用では実際の在庫を確認する事となり、作業の効率が悪くなります。
また、在庫確認などの不要な作業が発生するため作業工数の増加の原因にもなります。
棚卸差異が発生すると管理上および業務上にもいろいろな弊害が多発いたします。
在庫を正確に管理することの重要性を認識して、在庫精度向上への改善に努めましょう。
棚卸差異の原因と対策
棚卸差異である棚卸減耗損や商品評価損は、どちらも現場業務の中で発生させないための対策をとることで減らすことができます。
コスト意識を持って対策を実施することで、売上アップや業務効率の向上に繋がります。
ここでは棚卸差異が発生する原因とその対策についてご紹介します。
[棚卸差異の原因]
NO |
棚卸差異の原因 |
棚卸差異原因の内容 |
1 |
在庫受払時のミス |
在庫差異が最も大きくなる要因は出荷ミスによるものです。 商品の出荷時に品番や数量や出荷単位を間違ってしまう場合や、または同梱物や発送先の間違いなど様々なミスのパターンがあります。 特に品番間違いは、元の品番と間違った品番の在庫の両方に影響しますので在庫差異が大きくなる傾向があります。 |
2 |
紛失や破損 |
商品管理がずさんで取り扱いが乱雑であったりする場合に発生します。 同一商品が複数場所に置いてある場合や通路にはみだして置いてあると入荷や出荷作業上で破損の原因となります。 |
3 |
期限切れ・品質低下 |
在庫が大量にあり長期滞留している場合などに商品の品質低下が発生します。 特に賞味期限や使用期限のある商品の場合は、先入れ先出しを行っていないと発生しやすくなります。 |
4 |
盗難や窃盗 |
盗難は外部的要因と内部での不正利用での2つの原因で発生します。 誰でも簡単に商品を持ち出すことが出来る場合や夜間での施錠や警備が不完全な状況の場合に発生します。 |
5 |
事務処理のミス |
在庫差異が発生する原因は、倉庫内での商品の受払の業務ミスだけでなく事務処理を誤っている場合にも発生します。 データの入力ミスや伝票の読み間違い、納品・返品などの処理漏れも在庫差異の大きな原因となります。 |
6 |
棚卸時のミス |
棚卸時のミスは、棚卸商品のカウント間違いやカウント漏れ又は棚卸データの登録間違いなどにより発生します。 棚卸商品の品番確認を目視で行っている場合は、品番を間違えて棚卸してしまう事が発生しやすくなります。 |
上記は、棚卸差異が発生する主な原因です。
棚卸差異の原因を究明してその原因に対する対策を実施することで在庫差異は削減できます。
次に在庫差異の原因に対する対策や改善点についてご紹介します。
[棚卸差異原因への対策と改善点]
NO |
棚卸差異の原因 |
棚卸差異原因への対策と改善点 |
1 |
在庫受払時のミス |
入荷時や出荷時の検品では、ハンディターミナルを利用したバーコードスキャンによる検品で品番間違いなどのミスが低減できます。また数量間違いは、入荷の場合は商品受入れ時と棚への格納時、出荷の場合は商品出荷時と積込み時の2重チェックを行って数量間違いを削減できることがあります。 |
2 |
紛失や破損 |
倉庫内の整理整頓を徹底し、どこに何があるか一目でわかるように整えましょう。 同一商品は同じ場所に置く、通路には物を置かない、重量のある物はリフトや人員を確保して運ぶなどの対策をしましょう。 |
3 |
期限切れ・品質低下 |
商品の出荷時は先入れ先出しの運用を徹底しましょう。 賞味期限や使用期限のある商品は、出荷期限の管理を行い、事前に出荷期限に近い商品の確認を行い、賞味期限切れや品質低下が起こさないように対応しましょう。 |
4 |
盗難や窃盗 |
倉庫の施錠を徹底し、必要であれば監視カメラの設置や入退室管理を行い、夜間の管理は警備会社に依頼するなどの対策を行いましょう。 盗難や窃盗が起こりにくい環境整備を整えることが重要です。 |
5 |
事務処理のミス |
データ入力時のチェックを徹底しましょう。 データ入力したチェックリストを発行し入力者以外の担当がチェックするなどの2重チェックでミスが低減できます。 |
6 |
棚卸時のミス |
棚卸は一人で棚卸商品のカウントや棚卸数の記入をするのではなく、二人体制で棚卸カウントと棚卸数の記入を分担して行いましょう。 その場合に帳簿在庫数を印字した棚卸記入表を利用して棚卸数との差異が分かるようにして棚卸の漏れや棚卸のカウント間違いを防ぎましょう。 またハンディターミナルのバーコードスキャンによる棚卸登録では、一人でも品番を間違うことなく棚卸が行える方法もあります。 棚卸数の登録後に棚卸数と帳簿在庫数の差異チェックリストを発行して、数量差異が発生している商品は、再度棚卸在庫の確認を行いましょう。 |
棚卸差異の原因は、主に商品管理に関わる人員のヒューマンエラーです。
ヒューマンエラーは必ず発生しますので、発生しない体制や環境作り又は発生した場合のチェック体制をしっかり取って棚卸差異を削減しましょう。
在庫精度をより高く保つためには
棚卸差異は、実地棚卸を行って初めて棚卸差異が発生している状況が確認できます。
また棚卸差異の原因は、前回の棚卸からのでの差異となりますので前回の棚卸が数か月前であると棚卸差異の原因の特定が難しくなり、対策を打つ事が出来ません。
そのため、棚卸差異の発生状況の確認と帳簿在庫を正しく修正するために、棚卸を頻度高く実施していただく必要があります。
ただ、今回の在庫精度をより高く保つための棚卸は、一般に行う倉庫の全商品を対象とした月末の在庫金額を確定する月次の棚卸ではなく、棚卸差異が多く出ている商品に限定して行う巡回棚卸のことを言います。
巡回棚卸は、倉庫の中のフロアーやゾーン又はロケーションなどを指定して一部の商品に限定して行う棚卸です。
巡回棚卸を行うタイミングも1日の出荷や入荷作業が完了した後で、商品を限定した数十から数百の商品を対象として行う棚卸なので棚卸に掛かる手間や時間は、大きく削減できます。
棚卸差異が大きく発生している商品や主力の商品などを対象として巡回棚卸していただくだけで、棚卸差異の原因分析が行え、原因が特定できることで対策も確実に実施していただくことができます。
まとめ
今回は、棚卸差異についての棚卸減耗損と商品評価損とはどのようなものか、また、発生する原因と対策などについてお話をしました。
今現在の在庫精度に問題がある場合は、巡回棚卸を実施して頂き、棚卸差異の原因追及と原因の対策を実施して頂くことで改善できると思います。
この機会に、棚卸差異の原因と対策を実施してみてはいかがでしょうか。
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著者:株式会社テスク
愛知県名古屋市に本社を構え、1974年から流通業向け業務システムの構築に特化してきたシステムベンダーです。小売業向け基幹システム「CHAINS」は400社以上、卸売業向け販売管理システムは200社以上の企業様に導入されており、これまでに蓄積したノウハウを活かして、流通業の業務改善や経営課題の解決を支援しています。