棚卸資産回転指標・期間をわかりやすく解説!在庫効率上げる活用方法
卸売業様の取引では、得意先様からの注文に対してスピーディーに商品をお届けするために、在庫を持って取引する場合が多いかと思います。
そのため、欠品せずに即納するための在庫は、過剰在庫になり長期滞留してしまうデッドストック(売れ残り品や長期間放置されていた在庫品)の問題が発生しやすくなります。
在庫を適正に効率的に運用できずに滞留して過剰在庫になってしまうことで、在庫商品がお金に変わらず、企業の業績が悪化してしまいます。
今回は、在庫管理に関する問題の解決策として、在庫状況を判別するための指標としての棚卸資産回転の指標・期間を活用した在庫の管理方法について解説致します。
目次
棚卸資産回転率・期間とは
棚卸資産回転の指標には、下記の2つの指標があります。
1 | 棚卸資産回転率 |
2 | 棚卸資産回転期間 |
1つ目の棚卸資産回転率は、財務諸表や管理会計で使われる用語で、商品や部品などの在庫がどのくらいの早さで使われたかを見る指標です。
販売管理などの現場で商品を管理する場合は、『在庫回転率』とも呼ばれ同じ意味となります。
在庫回転率を把握することで、在庫や商品の動きが簡単に確認することができるようになります。
在庫回転率の数字は、数字が高ければ高いほど良いと言われています。
在庫回転率が低い場合は、在庫が滞留してデッドストックになっています。在庫がお金に変わらず眠っている状態です。
在庫回転率を上げることで在庫がお金に代わるスピードが速くなり、キャッシュフローが改善されるので資金繰りも楽になります。
また、在庫効率が上がり在庫が削減できるので、運用面や管理面も効率化が図れます。
2つ目の棚卸資産回転期間は、財務諸表や管理会計で使われる用語で、商品や部品等の在庫を販売に対してどのくらいの期間持っているかの指標となります。
販売管理などの現場で商品を管理する場合は、『在庫回転日数』や『在庫消化日数』と呼ばれ同じ意味となります。
1つ目の在庫回転率は、在庫がどのくらいの早さで利用されたかを見る指標でした。ただ、在庫回転率(年)が12の場合は、1年間で12回在庫が回転したとのことで感覚的に理解しづらいと思います。
これを棚卸資産回転期間(在庫消化日数)で見ると在庫消化日数は1か月となります。つまりは、1か月で在庫が無くなるという意味になります。又は1か月で在庫を消化する、1か月分の在庫を持っているとの意味になります。
在庫消化日数の数字は、数字が小さいほど在庫の滞留している期間が短く在庫が短い期間でお金に変わっていることを表します。
棚卸資産回転の計算式・求め方
棚卸資産回転率(在庫回転率)の計算式
在庫回転率は、次の計算式で求められます。
在庫回転率 = 売上原価 ÷ 平均在庫金額
売上原価の計算式は、 売上原価 = 期首在庫金額 + 仕入金額 - 期末在庫金額
売上原価は、一定期間で利用した在庫金額(出荷金額)です。
平均在庫金額の計算式は、 平均在庫金額 = (期首在庫金額 + 期末在庫金額) ÷ 2
売上原価は、売上するために出荷した在庫金額です。
在庫回転率を求める期間が1年間の場合は、在庫金額は年初の期首在庫と期末在庫となり、1か月間の期間で求める場合の在庫金額は、月初在庫と月末在庫より計算します。
求める期間の設定は、1年間である必要はなく自由に設定することができます。
一般的な計算式は、決算書を利用した場合が多いので1年間での計算式となっています。
1年間の計算では、実際の実務利用では現実的でないので、最低でも1か月間の在庫回転率を利用して管理しましょう。
また、金額でなく数量で在庫回転率を計算することができます。
数量の計算式は、在庫回転率 = 出庫数 ÷ 平均在庫数
平均在庫数の計算式は、平均在庫数 = (期首在庫数 + 期末在庫数) ÷ 2
金額を数量に置き換えて計算することができます。
金額計算と数量計算での違いは、
・金額で計算する場合は、会社全体や決算書を利用する場合などの合計値で計算する場合に利用します。
・数量で計算する場合は、商品毎に求める場合に利用します。商品の価格が変動する場合などは数量で求めた方が正確な数字となります。
棚卸資産回転期間(在庫消化日数)の計算式
在庫消化日数は、下記の計算式で求められます。
在庫消化日数 = 期間日数 ÷ 在庫回転率
例えば、期間が1年間の場合であれば期間日数は365日です。
在庫回転率が12回転であれば在庫消化日数は、 在庫消化日数 = 365 ÷ 12 ≒ 30.4
在庫消化日数は、30日(約1か月)で在庫が回転することになります。
また、在庫消化日数も数量で計算することができます。
数量の計算式は、 在庫消化日数 = 平均在庫数 ÷ 1日平均出荷数
平均在庫数の計算式は、平均在庫数 = (期首在庫数 + 期末在庫数) ÷ 2
1日平均出荷数の計算式は、 1日平均出荷数 = 期間出荷数 ÷ 期間日数
数量の計算は、単純に1日出荷数を算出して在庫を何日で消化するかを計算しています。
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棚卸資産回転の業種別(製造・卸売・小売)目安
今までご説明した在庫回転率と在庫消化日数については、ご理解いただけましたでしょうか。
自社の在庫状況を在庫回転率や在庫消化日数を利用して把握することで在庫の状態が管理できます。
ただ、自社の在庫状況が把握できたとしてどのような数字を目標とすべきかが必要となりますので、業種別の目安となる数字についてご紹介いたします。
下記の数字は、『政府の統計窓口』サイトから【業種別棚卸資産回転日数】で検索した内容を記載しています。
上記の左側の数字は、政府の統計窓口サイトから2021年9月1日に掲載された2018年から2020年度の3年間の業種別の月間の棚卸資産回転期間の数字です。(数字は、月数で表しています。)
右側の数字は、左側の棚卸資産回転期間より在庫消化日数と在庫回転率を算出して記載しています。
(日数に変換して表示しています。)
上記の表から業種別の在庫消化日数は、製造業は40~45日 卸売業は、20~23日 小売業は、25~29日となっています。
自社の在庫状況と比較して上記の数字を目安に在庫削減活動に取り組んで見てはいかがでしょうか。
棚卸資産回転を高めるポイント(在庫保有を長期化しない)
ここからは、在庫回転率をアップさせたいと考えている方に向けて、まずは在庫を適正化して在庫削減する手順についてご紹介します。
1.在庫商品を売上額の大きい順からABC分析して在庫商品を区分けします。
・在庫の商品アイテム数は、数百から数千アイテムにわたり多大な商品数となりますので、まずはABC分析してAランク商品を重点に在庫状況を把握します。
・パレート法則では、売上上位20%の商品で全体の80%の売上を占めると言われています。
2.Aランク商品の在庫回転率を計算します。
・Aランク商品の在庫を対象として在庫回転率・在庫消化日数を計算します。
3.自社の在庫回転率・在庫消化日数の改善目標値を決めて、それより悪い商品を特定します。
・Aランク商品は、売上上位の商品なので売上数や出荷頻度等が大きい数字となります。
そのため在庫回転率や在庫消化日数は、B・Cランク商品と比べて目標は高めに設定して、目標値より悪い商品を特定しましょう。
4.目標値より悪い商品を対象として下記の改善を行います。
・リードタイム日数の削減、発注量削減、発注頻度を上げる、不要在庫を廃却する等の対策を実施して在庫の削減を行います。具体的な内容についてお話します。
・リードタイム日数は、仕入先へ発注してから入荷するまでの日数の期間の事です。
リードタイム日数が削減できればリードタイム期間に対応する在庫数も削減できるので改善できます。
・発注量は、仕入先との契約で1回に発注する最低の発注数量が条件により制約がある場合があります。
ただ1回の発注量が削減できれば在庫数が減少して発注頻度が上がり在庫目標値の改善ができます。
・リードタイム日数や発注量に関しては、仕入先との商談で改善する余地があれば改善しましょう。
・不要在庫の廃棄は、過剰に持っている在庫への対応となります。
在庫削減するためには、仕入先への返品や廃棄などを行って在庫を削減しましょう。
5.B・Cランク商品につては、余り手を掛けずに下記の対策を行います。
・B・Cランク商品は、商品アイテム数が多いので余り手間をかけずに削減するテーマを決めて対象となる商品についてのみ改善対策を行いましょう。
・異常な在庫消化日数の商品に限定して在庫削減の改善対策を行いましょう。
(例えば、在庫消化日数の目標数値が20日の場合は、異常値はその2倍以上の商品を対象とする。)
・最終出荷日や入荷日が古いものを対象として改善しましょう。
(過去1月間以上の期間で商品の荷動きが無い商品など)
・売上数量や売上頻度が極端に低い商品は、在庫を持った運用でなく、受発注品の運用や直送品としての対応に変更しましょう。在庫として持たない運用にすることで在庫削減が行えます。
【まとめ】棚卸資産回転指標・期間をわかりやすく解説!在庫効率上げる活用方法
今回は、「棚卸資産回転指標・期間をわかりやすく解説!在庫効率上げる活用方法」というテーマで、回転率などの計算方法や目安、また在庫回転率を高めて在庫削減する方法などについてお話をしました。
在庫効率を上げるためには、難しい知識や数字は不要です。
主に『売上高』・『売上原価』・『在庫高』の数字があれば自社在庫の状況把握ができます。
それにより在庫削減するべき対象商品があぶりだされ、その商品を改善する事で在庫削減や在庫適正化が行えます。
この機会に、棚卸資産回転率や回転期間を使って在庫の見直しをしてみてはいかがでしょうか。
最後になりますが、株式会社テスクは、創業以来、流通業に特化し、消費財向け販売管理システムの導入支援・運用支援に関する豊富な実績と経験によって蓄積された十分なノウハウを持っています。
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最後までお読みいただきありがとうございました。