利益を上げるバイヤーの2015年の戦略

利益を上げる”兵法”はズバリこれだ!

■ 敵を知り、己を知れば百戦危うからず(孫子の兵法)

いきなりですが、バイヤーさんに質問です・・

「あなたの会社にとって敵とは?」 と聞かれたらどう答えますか?

ライバル企業、近隣の競合店・・ と思われますか?
孫子の兵法に『敵を知り、己を知れば百戦危うからず』という有名な言葉があります。また、

『敵を知らずして己れを知れば、一勝一負す』
『敵を知らず己れを知らざれば、戦うごとに必ずあやうし』

とも言っています。
これを小売業のビジネスに置換えた場合、”敵”と”己”は何をさすのでしょうか?賛否両論あると思いますが、私は今の時代においては、以下のように定義しています。

『敵を知り』    → 『お客様を知り』
『己を知れば』  → 『商品を知れば』

ピンときましたでしょうか?そう!今の時代、敵はライバル企業でもなければ、近隣の競合店でもなく、”お客様の変化”であり、世の中の変化・時流なんです。

■ お客様のこと知っている?知らなかった?実は知りようがなかった・・

では、その『お客様』と『商品』を、前線で戦うバイヤーさん達は知っているのでしょうか?

商品すなわち”己”に関しては、POSデータに基づき商品分析を詳細にできる環境が数十年前からありますので、半分はそれで知ることが可能ですし、優秀なバイヤーさんは商品開発した生産者やメーカーの商品への想いを商談等で理解していると思います。まぁ、それもできてない人もいっぱい見てきましたけど・・(汗)

では一方、お客様すなわち”敵”に関してはどうでしょうか?もちろん知ってますと自信満々にいうバイヤーさんもいるとは思いますが、本当でしょうか?思い出してください・・ POSデータで単品が初めて分析できるようになった時、ベストやAランクの商品に意外な商品を発見したり、知っていると自信満々のバイヤーさん達がことごとくベスト商品を当てられなかったことを・・

ここ最近やっとID-POS分析が可能になり、お客様の傾向の事実がやっと見え始めましたが、これまでは知っているようで、実は経験と勘に頼っていただけではないでしょうか?特にバイヤーさん達はお客様と直接触れ合うことも少なく、知りえる方法がなかったというのが本音のはず。これまでデータでは、商品しか知ることができず、お客様の声も拾えなかった。孫子の言う”一勝一負”でしたが、ID-POS分析の登場により、敵を知ることができ”百戦危うからず”の状態を作り上げることが可能になってきました。

儲かる商品は何か? それを理解し探せ!

■ 儲かる商品って?

またバイヤーさんに質問です。

「儲かる商品って何ですか?」 と聞かれたらなんと答えますか?

荒利率の高い商品、売れ筋商品、牛ヒレステーキ?(笑)
どれも間違いではありませんが、私の儲かる商品の定義は・・
”一度買ったお客様が末永くリピート購入し、その商品の良さを口コミで広げてくれる商品” です。

商品管理の基本中の基本に”売れ筋の強化”がありますが、必ずしも売れ筋商品が儲かるかというと、そうではありません。人気商品は元々売れる商品なので原価率が高いうえ、競合に負けない価格を設定しがちなので、どちらかと言えば儲からないことが多いです。
しかし、末永くリピートし口コミで広げてくれる商品は、チラシ等の広告宣伝費もかからないうえ、来店回数も上げてくれ、離脱も少ない。そして、併売による買上点数・客単価まで押し上げる効果があります。

■ トライアル率とリピート率

 では、どんな商品がリピートし口コミしてくれる商品なのか?
その1つは、リピート率が高いが、多くの人にまだ浸透していない”伸びしろのある商品”です。いわゆる、トライアル率(初めて買った人)が少なく、リピート率が高い商品。

ID-POSの時代だからこそ分析できるしくみですが、右の図でいうと①の象限の部分。すなわちその商品を手に取って買う人は少ないが、買った人のほとんどはリピートしているといった商品。

これらの①の商品で荒利の高い商品をアピールし、②の象限に持っていくマーケティングをしかけることは、有効な手段です。
また同時併売商品を調べ、関連販売することでさらに儲かる商品に仕上がっていきます。

■ 超一流の担当者は、どの商品をアピールするか?

①の象限の商品をアピールすることは有効な手段であるとお話ししましたが、実際店舗で単に「もっと商品をお客様にアピールしろ!」といったら、担当者はどんな行動をとるでしょうか?私の主観ですが、二流~超一流までの行動を経験上以下のように分けてみました。

  • 二流の担当者の行動 ・・・ 本日の目玉特売商品の値段をデカデカとアピール
  • 一流の担当者の行動 ・・・ 利益貢献する売れ筋商品をアピール
  • 超一流担当者の行動 ・・・ 本当におすすめする商品(お客様に貢献する)をその理由とともにアピール

お客様のことを考え、本当に心からおすすめできる人は超一流ですね。そういう商品はリピート率もきっと高く、お客様の信用・信頼も得られると思います。商品やサービスが多様化した現在では、どのように商品を売るかより、どのようにその商品をお客様にアピールし、手に取ってもらうかの方が重要です。

みなさんのお店では、商品名と価格だけのデカいPOPがやたら出てませんか?
時代は変化してますよ・・(苦笑)

儲からない仕事はやめさせろ!

■ 儲からない仕事は罪?

小売業は製造業と違い、ムダ・ムリ・ムラが圧倒的に多い業種です。しかたない部分は多々ありますが、利益を生まない労働や時間単価の低い長時間労働は無くしていかないといけません。労働時間が長く、収入が少ないということは、消費が進まないどころか、個人の睡眠時間や楽しく余暇を過ごす時間、家族との時間を減らし、生きていく上での満足度が下がってしまいます。ダラダラと無駄な労働をするのではなく、メリハリのついた労働で、みんなの収入が多く、時間があることは本当に社会にとっていいことです。
そうすれば少子化問題も解決すると思うのですが・・(苦笑)

■ 価値を生まない無駄を徹底排除

よって、お客様に価値を生まない無駄なコストやロスは徹底的に排除すべきと考えます。社内での重複作業や企業間での重複作業はまだまだ多く存在しますし、予防できるロスもいっぱいあります。(具体例は、テスク便り№004『小売業は無駄なコストのオンパレード』、№009『ロスを減らして利益を向上させる方法』を参照ください)
そして、これからの時代は、お客様の行動を分析し、何を基準に商品を購入されるのか等を真剣に考え、お客様の購入判断に関係ないところのコストを抑えていくという方向にいくべきと私は思います。

お客様を知り、大切なお客様を探せ!

■ 今がロイヤル顧客をつかむチャンス!


ご来店いただいているお客様ひとり一人が自社にとって、どのくらい利益貢献してくださっているかご存じでしょうか?意外と知らない(分からない)のではないでしょうか?ぜひ調査いただきたいと思います。

お客様が見えると手を打つことができます。右の図は、利益を縦軸、来店頻度を横軸にとった分析です。②の象限にあたる来店頻度も高く利益貢献もしてくださるお客様がロイヤルカスタマーとなります。戦略にももちろんよりますが、本当は②のお客様を増やしたいのではないでしょうか?
それなのに、安売り客を必死でつかみにいく小売業の多いこと・・(汗)

右の図でいう③の象限を必死で増やしている気がします。この象限のお客様は価格に敏感に反応し、他で安売りがあったりすると、すぐにそっちへ行ってしまいます。そのようなお客様ではなく①の象限のお客様を②の象限にもっていくことや、①のお客様を集めることに必死になるべきではないでしょうか?

他社が安売り客を必死でつかみにいってる今のうちに、ロイヤル顧客をつかみにいきましょう!他社がお客様のことが見えてない今がチャンスだと思います。

■ お客様に『愛』を!

象限①のお客様を象限②にするにはどうしたら良いのでしょうか?
それはお客様に『愛』を届けることだと私は思っています。
家族や親友に、儲かるからといって、廃棄寸前だからといって、そんな変な商品をすすめますか?本当に良い商品をすすめますよね?これが『愛』だと思います。
ある偉人は”愛”の反対を何と言ったでしょう?

”憎”?

答えは ”無関心” です。
お客様に対して ”愛がない”=”無関心” では、②の象限のお客様が生まれるわけがないですよね。

お客様が見えると打つ手が変わる

■ お客様をじっくりみるところから

お客様はどんどん豊かになり、わがままになってきたため、お客様を獲得・維持することは本当に難しい時代になってきました。しかし、今ではID-POSデータやビッグデータの出現で、お客様が見える時代になってきましたので、いくらでも打つ手があるのも事実です。ぜひ、お客様が何を購入されているか、じっくり見ていただきたいと思います。
思いもよらぬ発見がいっぱいあると思います。例えば、ロイヤル顧客ほど、売れ筋商品や特売品を買っておらず、死筋に近い商品を購入されているとか・・ ぜひ購入商品を構成比で分析して欲しいと思います。

■ お客様を理解しているかが鍵

いくらお客様に対する愛があっても、お客様を理解していなければ、打つ手がただのありがた迷惑であったり、ウザいだけの可能性があります。これまでバイヤーさんは、商品に関する豊富な知識と調達力、売る力と販売予測力といったこころにフォーカスしてきたと思います。しかし、2015年は、商品のマーチャンダイジングから、お客様に対するマーケッターにならなければ、結果を出せなくなってくると思います。
よって、バイヤー・MDとしての商品戦略だけではなく、マーケッターとしてお客様をいかに理解するかが鍵になると思います。理解できれば、次から次へと戦略がわいてくるはずです。具体的にどうしたらいいかは・・
正直やってみないと分からないということに尽きます。ですから、お客様という観点からじっくり分析し、PDCAをくり返すしかないのです。これをやれるバイヤーさんが2015年を必ずや制するでしょう。

 

今回は、『利益をあげるバイヤーの2015年の戦略』というテーマで書かせていただきました。

私はビッグデータやID-POSデータを、売場改善や販促企画のための革命を起こす武器だと言っています。これからの小売業の戦い方を変える武器、それは間違いのない事実だと思ってます。しかし、現場に行くと「どうやって全顧客情報を集めるのか?」とか「顧客データが正しいかどうか分からない」等のネガティブ発言が多く聞かれます。本当に残念で仕方ありません。どうして0から1に踏み出そうとしないのか?戦い方を変えるために情報を集めるわけですし、全顧客でなくても統計学上2000データそろえばかなり正確なデータになります。

あえてこの時期に2015年の戦略と書いたのも、これから半年で準備すれば十分戦えると思うし、商品視点だけの今の時代に合わない間違った手の打ち方がマンネリしてきたものを、顧客視点を新たに加えることで、売場改善や新たなる販促への挑戦といった行動にうつす(PDCAの)大きなきっかけになると思ったからです。

今からすぐにでも、我々の敵である『お客様の変化』に対応していきましょう!

 2014/8/5