成長企業に学ぶ、今後5年間のIT化の方向

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小売業 

ランキングで見る効果のあったIT化

■ これまで効果があがったのは、”IT化” というより ”OA化”

IT化(情報技術化)は、小売業にも歴史的に画期的革新、そして大きな効果をもたらしてきました。
私が小売業とIT業界に30年以上携わってきた中のIT化ソリューションで、本当に効果を発揮したと思うものを、貢献度別にランキングにしてみました。

効果の上がったIT化 歴代ベストランキング

何と言っても1位は「自社EOS化」です。当時何社も導入しましたが、1社たりとも効果が出ないケースはありません。投資もほとんどが2~3年で回収という優れたIT投資です。2位は、レジ生産に革命を起したPOSシステム。以降ご覧のように私の選んだIT投資のほとんどは、手作業を電子化した『生産性の向上』を実現するもの。IT化というよりかは情報技術を駆使していないので”OA化”といった方が正しいかもしれません。

生産性向上以外で、唯一5位に入れたのが『店・部門別管理』。当時未導入の企業に導入すれば、管理レベルが飛躍的に上がり、荒利率+2%、ロス率ー1%を実現することは楽にできると私は自負していました。

■ IT化で効果を発揮する方法とは?

EOS化やPOS化で効果を上げた企業が必ず次に実施したのが『商品分析』です。これは、導入すれば効果が上がる”OA化”とは違い、蓄積されたデータを多角的に分析して、商品選定や売場改善、価格・品質・品揃えを見直すという行動を起こす必要があったため、導入したはいいが効果の上がらない企業が続出でした。なので、私としては、歴代ランキングに ”分析系” を入れることはしませんでした。

90年代以降、情報分析系以外にも、棚管理やEOB等、多くのITソリューションが出てきましたが、なかなか投資対効果があがらない結果となりました。その原因となる共通点は・・

導入したが ”うまく活用できていない”

というものです。IT(情報技術)化は、OA化とは違います。OA化と同じように、導入したら結果が出るものではありませんので、いかに活用するかにかかっています。うまく活用した企業は例外なく効果が上がっています。

今回のメルマガでは、過去のIT化を振り返りながら、今後5年どんなIT化の方向性でいけば、効率の良いIT投資ができ、効果を上げることができるか? それを、時代背景とIT化で成長した企業から学び、考えていきたいと思います。

導入パターンでみる ”IT投資” の効果

■ 生産性向上の効果にも陰りが・・

私はこれまで数多くの”IT投資”を見てきました。今度は効果が上がった上がらないは関係なく、どのようなパターンでIT投資を実施したかという観点でみてみましょう。下の図のようにパターンで分類してみました。

パターン別IT投資一覧

多くの企業は『生産性強化型』で、コスト削減を目指してIT投資をしています。しかし、小売業も合理化は、かなり進んできたため、OA化だけでは、かつてほどの大きな効果は上げられなくなりました。

自動発注に代表されるように、コスト削減局面においても行動(PDCAサイクル)を起こさないと結果がでなくなっています。自動発注は自動だからといって、何でも自動でやってくれるかというと大間違いですよね?(意外やそう思っている人も少なくない・・)コーザル情報や時流に合わせ、発注数の調整をしていかないと売場はたちまちヒドイ状態になってしまいます。

■ 効率一辺倒の”守り” から ”攻め”の時代へ

上記のパターンを整理していたら、成長企業のIT化のパターンが浮き彫りになってきました。それは『競争力強化型』の企業で、強い目的意識をもって競争力をつけようとする企業です。生産性強化も継続的には実施していますが、IT化で競争力を強化しようというスタンスの企業に成長しているところが多いです。よって、IT投資の方向性は、効率一辺倒の”守り”から、”攻め”へとシフトしはじめています。

そして、論外なのが『追い込まれ型』。法改正や保守切れを目的にしてはいけません。それでは効果が上がるどころか、ただ無駄にお金を使っている『IT消費』にほかなりません。あくまで法改正や保守切れは、導入の”きっかけ”にして、導入目的を明確にしないといけません。限られた経営資源の中で日々の業務に追われ、結果追い込まれて・・というのが主な理由でしょうが、こんなことを続けていては生き残ることも難しくなるのではないでしょうか。でも・・というなら、今後は、システム選定の主眼を『効果的』『先進的』なものより、10年20年使える『継承性』を重視するシステムで検討して、トータル的なコスト(TCO)を抑えるべきです。

生産性向上は大手の戦略、中小の戦略は?

■ 生産性向上を強く言っている評論家は、中小のSMを無視しているのか?

日本の小売業の生産性は、国内の製造業や他の非製造業、米国と比較しても極端に低いと評論家は分析しています。また、今後ますます様々なコストの上昇が予想される中、労働生産性の向上が急務であるとも言っています。間違ってはいませんが、それは大手の話しであり、中小小売業が70%をしめる日本には、あまり多くはあてはまらないと思います。ましてや手間のかかる生鮮食品を扱って、お客様志向で対応している食品スーパーマーケットでは、生産性が低くなるのは当然のことですから。

だいたい生産性を向上させるには、製造業のように大企業に集約することが一番近道だし、米国のような広い土地で大量陳列ができれば、品出し回数も少なく簡単です。しかし、国土の狭い日本でできるのか?はたして日本の消費者がそれを望んでいるのか?疑問です。もちろんグローバルに海外で勝負する小売業は国際競争力をつけるためにも、M&Aをくり返し、生産性向上をどんどんはかってもらいたいですけど・・

■ 今の時代、生産性向上よりもっと大切なもの

ということで、製造業のように、とことん生産性を向上させるのは大手に任せて、中小はもっとお客様に目を向け、大手では対応ができない 『地域ならでは』 『その店ならでは』 の商品やサービスを充実させることが重要です。そして、ターゲットとするお客様ニーズを的確にとらえ、その対応力をつけることが一番求められています。

もちろん無駄はダメなので、無駄の排除はしつつ(メルマガ№4 無駄なコストのオンパレード参照)、お客様満足に直結しない業務は今後どんどん排除していくべきです。そして、業界全体での賞味期限の1/3ルールのような商習慣の改善や、流通BMSのような業界標準化への取組に積極的に協力していくべきです。

よって、中小小売業の戦略は、お客様を知ること、そして独自の商品やサービスを提供することにあります。これまでチェーンストア化や業務効率化にフォーカスして業務を組み立ててきたものを、今後は「お客様満足」一点にフォーカスして、全ての業務を見直すタイミングにきていると思います。

このように、中小小売業は目をむける方向を変えて、”攻め”に転じるべきと考えます。槍や刀の技をみがき、兵をとにかく多く集めて戦う戦法は、数の多い大きな大名が勝つように、小さな大名は戦法を変えなければ戦には勝てません。

これに気付いている成長企業は既に”攻め”にシフトしており、ID-POS分析等を駆使し商品開発や売場改善、そして独自の新たなるサービスを提供して、客数・客単価UPに成功しています。(メルマガに具体的内容を書きたかったのですが、聞いた方に「メルマガに書かないで」と言われてしまったので、ごめんなさい・・)

守りのITの時代は終わった

■ 経済産業省も ”攻めのIT経営” を推奨

現在ではIT関連のシステムやサービスがかなり充実しています。ITが経営革新にとって有益な役割を果たすことが期待されている中、日本企業のIT投資の目的は、社内の業務効率化・コスト削減を中心とした”守り”に主眼が置かれているのに対して、米国企業においては、ITの活用による企業の製品・サービス開発強化やITを活用したビジネスモデル変革を通じて、新たな価値の創出やそれを通じた競争力の強化を目指す、いわゆる”攻めのIT投資”を積極的に行っていると経済産業省は分析しています。

この現状をふまえ、経済産業省では”『攻めのIT経営』中小企業百選”を行い、ITの効果的な活用に積極的に取り組み成果を上げている企業を「攻めのIT経営」の観点から評価し公表しています。

■ 情報システム部門の役割りにも変化

この競争激化の中、小売業各社は、これからもお客様を獲得しなければなりません。その競争力強化の鍵を握っているのは”攻めのIT経営”であるというメッセージを経済産業省も出しています。そんな現状の中で、企業の情報システム部門は”守り”が担当業務と社内認識されているところが非常に多く感じます。情報システム部門も自ら積極的に”攻めのIT経営”に参画すべきですし、経営トップも情報システム部門の役割りを見直す必要があるかもしれません。
時代の流れで、今やコスト削減のための”守りのIT投資”よりも、売上拡大・利益向上のための”攻めのIT投資”の方が利益に対する貢献度は高いと思います。節約に頭を使う時間より、稼ぐことに頭を使う時間をどんどん増やした方が、断然結果もついてくるのではないでしょうか?

今回は『成長企業に学ぶ、今後5年間のIT化の方向』というテーマで書かせていただきました。

成長企業のIT化に対する共通の考え方は、『システムは仕事を変えるため道具』という認識をしており、導入することを決して目的にしていないことです。そして、それらの成長企業が次に目指しているのが、システムを『お客様に近づく、お客様を知るための道具』に使おうとしているところです。

そして、今後は生産性向上の一辺倒の”守りのIT投資”に加え、お客様に近づく”攻めのIT投資”が主流になってくると思います。これから5年間のIT投資の方向性は、チェーンストア化や業務効率化というところから、お客様満足度向上化へパラダイムシフトしていくべきです。ID-POSデータは、その実現のための大きな武器になるでしょう。

お客様を知り、お客様に近づくことができれば、これまでの商品系の専門店ではなく、ターゲットが明確になるターゲットのための専門店になり、そんな企業が間違いなく圧勝するのではないでしょうか?

 2015/1/8