逆転発想!品質管理で売上と利益を上げる方法

売上と利益をあげる品質管理

■ 世間を騒がせた異物混入事件

昨年末から年初にかけて、大手ファーストフード店の異物混入事件が世間を騒がせました。

ビニールや金属片、そして人の歯が発見されたりと、マスコミでガンガン連日報道されました。

 

その内容を聞いた消費者は、当然イメージも悪くなりますし、そんなイメージが脳裏をかすめては美味しく食べられるわけもなく、いつもいっぱいだったその店の駐車場はガラガラ、ショッピングセンターのフードコートでは、他の店に行列が出来ていても、その店の前は閑散としているという状況を目にしました。

 

飲食店でのお客様からのクレームの第1位は、この異物混入であり70%を占めるとのことです。

結果この大手ファーストフード店は大打撃をうけ、売上・利益を大幅に落とす結果となりました。

 

友人ともこの件については意見をぶつけ合いましたが・・

  • 食べるものに異物混入は絶対にあってはいけない
  • 食品製造において異物混入を完全になくすことは絶対に無理

 

と、両者ともに”絶対”をつけながら最もな意見になりましたが(汗)、最終的には「怖い時代だ」「品質管理というより、起きた時の顧客対応が重要なんじゃない?」ということで話は終わりました。

■ これはいい機会!と思いついた

品質管理と言えば、上記のような異物混入対策とか、食中毒対策や衛生管理が浮かぶと思いますが、それは基本ではあるものの”守り”の品質管理。やらないと信用を失うレベルの必須な品質管理であり、ただただコストが増えるというつらいものです。

 

そこで私は、この事件を機に、”攻め”の品質管理って何だろうと考えていました。今回はその考えた”攻め”の品質管理で売上や利益、評判(リピート率)を上げる方法についてお話したいと思います。

お客様と店側の感じ方はこんなに違う

■ 味が変わった、変えてないの違い

私の友人が、できたてパンのお店を経営しており、オープンした当初は国道が渋滞するぐらい看板商品が売れました。

しかし、今ではその看板商品の売れ行きはさほどでもない状況になっています。なぜか?その理由を経営者と、お客様数人に聞いてみました。

 

【経営者】

  • ブームが去った?
  • 同商品を扱う店舗が増え、商品の希少価値がなくなった?
  • お客様が味に飽きた?

 

【お客様】

  • 味が落ちた
  • 中に練り込んである材料を減らした?

といった意見でした。どうですか?この観点の違い・・

 

友人の経営者に「味が落ちた」とお客様から言われていることを伝えたら、返ってきた答えは「みんなそう言うけれども、一切味は変えてない、原材料の質も量もすべて同じ」という答えでした。

 

経営者の言うことはもちろん事実でしょう。

しかし、お客様が感じた意見も間違いのない事実です。

■ 味が変わったと感じる3つの仮説

どちらが正しいということはありませんが、どちらも事実です。味が落ちたと感じる理由を考えてみました。

 

  • 1.飽きてしまって味が変わったと感じた

全く同じ現象(創業以来味は変えてない)を、知人のつけ麺屋さんでも聞いたことがあります。

そこの店主が言っていたのは「飽きがくるのはお客様の性。味が変わったと感じてしまう」と結論づけてました。

 

他にも、大手のお菓子のメーカーさんで、ロングセラー商品でも微妙に味を変えているという話を聞いたことがあります。何のためか?

それは「絶対に味は変えてはいけないが、消費者にとって味が変わってないことが、変わったことになる」という神に近い深いお言葉で、微妙に味を変えることによって消費者の感覚を維持する。

「味の微調整は、リピートの命」くらいのことをおっしゃってました。

 

  • 2.製造段階でのつくり方の違い

パンなどは特にそうですが、季節によりイースト菌量が変わったり、人が生地にさわり過ぎると味が落ちます。

別の食品ですが、先日参加した巻き寿司の試作・試食会で、つくる人でこんなに味が変わるかという衝撃を受けました。

 

やはり極力商材に触らないスピード感のある作り方で、ふわっと巻いてある寿司は絶品で、触り倒した力いっぱい巻いた寿司は、全く同じ食材を使っているにもかかわらず、全然ダメで雲泥の差でした。
このパンのケースも、思いを込めて作っていた当初から、原材料や量は一緒でも、流れ作業やパンづくりがシステム的になったことによるつくり方の違いが原因かもしれません。

 

  • 3.鮮度・品質の問題

国道に行列ができてしまう頃は、回転が良いので当然出来たてを次々に販売するという循環になります。

そして購入されたお客様もやっと手にした商品をいち早く食べたいという欲望があり、家に帰ったらすぐに食べるので、出来上がりから食べるまでの時間がかなり短かったと思います。

 

しかし、お客様数が落ち着いてからは、出来上がってから店舗でそれなりの時間が経過し、お客様の期待感も小さいので、家に帰ってもすぐに食べない、ヘタをすると翌日に食べているかもれません。

いずれにしろ、「ウチは味を一切変えてない」と言い張ったところで、お客様は離れていくだけです。

 

お客様のお言葉を真摯に受け止め、微調整やつくり方、お客様が食べる時間を想定して美味しくいただいてもらう方法を考え続ければ、リピートも増え、評判も上がり、売上・利益も向上するということがまず見えてきました。

鮮度管理のレベルで失ってしまう利益

■ お客様の目も厳しくなっている

私が小売業に関わるようになった数十年前と比較すると、現在の生鮮食品を中心とする鮮度管理レベルは、比べものにならないほど良くなっています。

しかし、今でもお客様からのクレームで多いのが鮮度に関するものということを考えると、お客様の鮮度・品質に関する目はそれ以上に厳しくなっていることが分かります。

 

そして、私が感じるのは、企業(店舗)によって、この鮮度管理の技術レベルは相当な差があるということです。

仕入数量や製造パック数、そして店舗での品質管理レベル。この差が提供する商品の鮮度を大きく左右しています。

また、鮮度管理の技術レベルの低さや仕入・製造・在庫管理は、商品に対するコストを大きく押し上げてしまうことを強く認識しないと、結果利益を失ってしまうことになります。

■ 鮮度管理のレベル上げで攻める

鮮度管理の技術レベルの高い企業(店舗)は、生鮮及び惣菜系に関して、夕方前に賞味期限だけではなく、徹底して全ての商品をとても厳しく鮮度パトロールしています。

そして、鮮度基準に満たない商品は、見切り・廃棄・売切りの段取を即時にされます。

それを毎日毎日きっちりとすることによって、鮮度管理のレベルを上げ、お客様からの信頼を得ています。

 

しかし、はっきり言いますが、鮮度管理で常に完璧は難しいと思います。これだけのアイテムと低い荒利率で多くのコストがかけられないのも事実ですから、現場に対し完璧を求めるのは気の毒です。

ですから、せめて70点レベルを絶対に手を抜かず維持し、少しずつ少しずつレベルアップを図っていくことで、お客様の信頼を得ることが出きるのではないでしょうか。

 

このように鮮度管理を徹底して攻めれば、より美味しいものがお客様に提供できるので、リピート率が上がり、評判もあがります。

そして、在庫は適正値に近づきます。

 

適正在庫が維持できれば、現場作業の無駄がなくなり、効率化も図れ、生産性も向上します。

その効率化できた時間を販売や接客にあてたり、コストの削減を実施すれば、売上・利益が向上することは間違いありません。

究極のロス予防策とは?

■ 美味しいものをつくること

これまで過去のメルマガでも、ロスは発生してから対策するのではなく、予防することが重要であることを幾度か書かせていただきました。

今回のメルマガを、ここまで読まれた方は、お気づきかと思いますが、ロス予防の一番は・・

 

”美味しいものをつくること”

鉛筆なめなめ製造数を調整することでもなく、値引きのタイミングを早めるのでもなく、売切る力をつけるでもなく、一番の予防は美味しいものをつくる(提供する)ことです。

■ コストより美味しいものに重点

企業にとって利益を上げ続けることは命題であるため、コストを意識することは重要です。

しかし、美味しさを犠牲にしたら本末転倒な気がします。あるスーパーマーケットに入っているパン屋さん。

 

アルバイトの女の子がパンを1つ1つビニール袋に入れてくれました。

私が細かい小さい男なのかもしれませんが(汗)、パンは水分を出すため、ビニールに入れてはパンに水分が戻り、味が落ちるような気がします。

 

高級なパン屋さんでは、必ずと言っていいほど紙袋に入れるのはそのためです。

コストは全然違いますので理解できますが、より美味しいものを提供するという観点では???と思いました。

「出来立てをより美味しく提供してます」って、ビニールに入れて美味しいか?って思うのは、台湾料理の器くらい小さい私だけかもしれません(苦笑)

■ 行列のできるお店

仙台に行列のできる有名な”おはぎ”があります。私の勘で言っているので間違ってるかもしれませんが、糖度が極めて低く30%くらいではないかと思います。

あんこは普通糖度を40%以上にしないと日持ちしません。なのでなかなか低い糖度のものは商売上できないのですが、あれだけ回転よく売れるならばそれが可能であり、より美味しいものが提供できます。

 

別で、兵庫県の行列のできる”巻き寿司”も見に行ってきました。噂通りにとても美味しかったです。

もちろん商品はプラスチックのパックではなく、竹の皮に包んでありました。プラスチックより紙、紙より竹の皮ですね!コストよりも美味しさを追求していることをより強く感じました。

 

両店に共通していたのは、美味しさを追求していることと、システム的にはつくっていないこと。

ベテランとアルバイトでは、美味しさが全く違うできあがりになることや、季節や温度によって微妙に味が変わるため人間の感覚で微調整していること、そして、お客様がその商品を食べるタイミングを意識していることでした。

 

とてつもないリピート率・口コミ発生理由も両店ともうなずけますし、美味しいものを提供することで、ロスは一切でないという究極のロス予防もうなずけます。

品質管理で会社が傾く時代

■ 品質管理が専門部門に変わってきた

冒頭でもありましたように、超大手企業でも異物混入で大打撃をうけてしまう時代です。

過去には産地偽装や賞味期限改ざんという世間を騒がせた事件も発生しています。

 

このような事件で、品質管理の考え方も大きく変わり、それまでは工場(加工場)長や店舗の管轄で品質管理をしていましたが、管理部門が管理するように組織が変わった企業が多くなりました。

例えば賞味期限改ざん事件では、利益追求部門では「廃棄するにもコストがかかる」という発想になり、事件が発生してしまいますが、管理責任部門では「絶対に出荷させない」という発想になるので、事件が起こることもないでしょう。

■ 品質管理が結局美味しいものをつくる

大手のゴム会社で、免震ゴムの性能改ざん問題が発生しました。品質管理ひとつでとてつもない特別損失を計上することになってしまったことは記憶に新しいのではないでしょうか。

品質管理の影響の深刻さを感じる問題だったと思います。

 

小売業でもそれは同様ではないでしょうか?

スーパーマーケットでも品質管理がしっかりしているところが増えてきました。

 

そして、現場ではなく管理部門が管理するようになってきています。

現場を知り過ぎると、ぶっちゃけ管理できないという事実もあるからでしょう。

 

例えば、フライヤーとか油を変える頻度とか、酸化度が基準を超えるとNGとか、私が知っている範囲から考えたら、すごく厳しい基準だと思いますが、実践しているようです。

しかし、考えてみれば、品質管理を怠ると、どちらにしろ味が落ちるので大正解なのかもしれませんね。

【まとめ】逆転発想!品質管理で売上と利益を上げる方法

今回は『逆転発想!品質管理で売上と利益を上げる方法』というテーマで書かせていただきました。

異物混入対策とか食中毒対策や衛星管理をやらないと仕方ないと考えてしまうと、ただコストをかけてしまうだけかもしれませんし、その発想ですと品質管理を強めれば強めるほど、現場に必要以上に負荷をかけるために、ものづくりはダメになると私は思います。

 

しかし、この世の中の流れをプラスにとらえ、本文のように攻めの品質管理をすれば、美味しいものがつくれ、リピート率も評判も売上も利益もあがるのではないでしょうか?

また私事で・・

 

昨日お姉さま方のいる夜のお店に先輩と行きました。

先輩が「このウーロン茶、味がおかしい!まずい!」と言いだし、私も飲んでみましたが確かに美味しくなかったです。

 

今回のテーマ品質管理は最悪です。しかし、この店がお茶を飲む店なら品質管理は最悪ですが、きれいなお姉さん方が「ホントだ美味しくない。ごめんなさい。すぐ変えます」と対応してくれて、考えてみれば・・

この店の品質管理は”お姉さんの美貌と接遇”。 う・・ 完璧やないか!

 

この店の品質管理はぬかりなく、”美味しいもの”をきっちり提供してました(汗)
ゆえに、私はまたリピートするでしょう(笑)

 

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