小売業の考え方改革~独自で思考する時代の到来~

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これまで、日本の小売業のビジネス王道といえば、

  • 売れるものを見つけ、それを仕入れて並べて売る。
  • どこよりも安く仕入れて、どこよりも安く売る。
  • 他社の成功事例を真似て、売り場や販促を常に変化させる。

上記のようなやり方で、景気の影響や扱う商材によっては、今でもビジネスは十分成り立っていると思います。しかし、果たしてこの方法でどこまで行けるのか?と考えたときに、私はあと2~3年くらいではないかと予想します。

その根拠ですが、amazonや楽天等のネット販売業者は、小売業が本業でありながら、利益率は極めて低くとも、他のビジネスドメイン(例えばWebサービスや広告収入等)で稼げるわけですから、価格と品揃えでその気になればシェアを奪うことはあまり難しいことではなく、また、課題である物流や商流なども、これだけのパワーがあれば徹底的に効率化し、いずれは自社で全て対応してしまうことも可能であると思うからです。

このことから日本の小売業は、これまでのビジネス王道から、今まさに改革を実施する時期であり、集客から販売までのしくみ作りや、そのデザインを他社の真似ではなく、独自で考えなければならなくなった『考え方改革』の時代が到来したと思います。

今後独自で思考し、改革することができれば・・

  • 独自化、差別化ができ、お客様にとって唯一の存在になれる
  • 想いや情熱がベースとなるので、他社に真似されにくく、追随されにくい
  • 軸や根拠があるから、継続力があり続けられる
  • 変化が起きたときに適切に対応できる

という、ネット業者や競合他社に簡単には負けないメリットがあります。

これまでは、あまり深く考えなくとも、まわりの環境・景気等が良くなれば、ビジネスは何とかなってきたと思います。少なくとも多くのライバル企業もそうだと思います。しかし、小売業においても今後はあらゆる分野(戦略面、IT面、価格・品質・品揃え、集客、サービス面)で考え、独自で改革をおこさなければかなり厳しい状況に追い込まれると思います。

今回は私なりに、小売業ビジネスにおける今後の考え方改革案を書いていきたいと思います。

大手やネット企業に負けない考え方

小売業の生活習慣病!?

人には”生活習慣病”がありますが、日本の小売業も年を重ね、まさにその成人病が出てきたと感じています。

人の場合は、年齢とともに体を動かす量に対して、食べる量が多いというのが本質であると思いますが、小売業の場合は、世の中や消費者がこれだけ変化しているのに、ちゃんと自分で考えて変化に対応していないことが、本質ではないかと私は思っています。

そして、その病気で出てくる典型的症状と対処方法は以下・・

  • 客数減 : これが出ると、特売、チラシで価格を下げたり、イベントを実施する。
  • 客単価減 : これが出ると、バンドル販売や、他社の成功例を真似て品揃えを変えたりする。
  • 顧客満足度低下 : スタッフのせいにしはじめ、叱咤し、社員教育を始める。
  • 社員のモチベーション低下 : 今の若いやつは・・ と愚痴るだけで、対応がうまくできない。

上記全て、出た症状に対して深く考えず、場当たり的、短絡的な対応をする典型的な例です。私から言わせれば、血圧が高いから、「〇〇麦茶飲む」とか、「塩分を控える」とか・・ それと同じ行為です。そんなことで血圧はまず下がりません。なぜなら、人それぞれ原因があり、その原因にあった対症法(塩分が原因でないのに塩分を控えても改善しないうえ、別の問題が起こる)でなければ全く意味がないからです。

なぜこうなるか?

  • 世の中やお客様の変化に対して、自分自身で深く考えてない
  • 本質的な問題に取り組まず、場当たり的な対応が多い
  • 回復や手の打ち方が、過去の経験がベースのロジカルマーケティング一辺倒
  • 自責ではなく、他責(現場スタッフのせい)
  • 会社の理念(目指す方向)が社員に浸透していない

上記のような場当たり的対応を続けていたら、小売業における”生活習慣病”となり、いつまでもその症状は改善されず、考えない自己満足の対症療法を続けていることで、やがて大きな病気になってしまうと私は考えます。

自分で考えなければみな一緒になる

ちなみに、ネット販売業者は、もの凄く深く考えて様々なアクションを展開しています。世の中やお客様の変化を冷静に分析して、あらゆる手を打っています。例えば、ネットでは面と向かって会話ができないから、お客様の声を充実させた商品をアピールして信用を得るとか、ビッグデータを駆使して、ある商品を買った人が合わせて買う商品が何かを解析し、同時におススメ商品として表示する等。他にも、配送料の負担を少なくする工夫や、定期的に購入することで一定の割引をする等々。対面できず、感情に訴えることは難しいため、論理的にお客様の心理をついてのマーケティングは目を見張るものがあります。

しかし、成長著しいネット販売業者でも、不調や問題に対して、今後もし場当たり的な対応をしていたら、消えていくことになるでしょう。なぜなら、今後も競合は増え続け、必ず真似をしてくる業者が現れ、皆一緒で差がなくなります。するとお客様は、より安い方へ、より最大手へと流れていくのが明白だからです。

皆一緒と言えば・・

日本人は人と同じ、横並び、人並みというところに安心感を覚えると言われています。しかし、ビジネス社会でそれは今後致命傷となります。たしかに少し前までは、アメリカの真似や他社の成功事例の真似でビジネスは成り立っていたと思います。しかし、今後その方法は厳しいということは、このメルマガでも何度も書きました通り明白ですし、みなさんもすでに気づいているはずです。経験や勘に頼ってのビジネスの仕方では、もはや勝ち残れないと思います。

そして、誰が決めたか分かりませんが、これまでの業界の常識ややり方などの多くは、今では常識ではなくなっているはずです。過去の先入観や価値観は捨てた方がいいと思います。むしろ、常識のレールから外れた、他社と逆のことをする方が、今後の常識になるとも思えます。お客様から必要とされる、満足や感動が与えられる、そんな店・売り場・サービスづくりといった、お客様に提供する価値の独自化が重要であり、そこへの「深い思考力」「決断・勇気」を持っている企業が、生活習慣病にかからない、いつも元気で健康で長生きできる企業ではないでしょうか?

当たる戦略を見つける考え方

戦略が当たらない理由

そんなことを言っても、自分で考え独自化するのは難しいし、そう簡単には踏み込めないし、仮に戦略を立てても簡単には当たらない。そんな声をよく耳にします。それはなぜでしょうか?

私の考えた理由は以下の6つです。

  • 安心を得るために、どこかの真似をして戦略を立てようとするから
  • お客様目線ではなく、自分目線で考える癖があるから
  • そもそも戦略など、今の時代当たっても1/5くらいであるから
  • あるべき姿が分かっていないのに戦略を打つから
  • 真の小売業の姿を分かっていないから
  • 主体性や軸がないから

この中でも、今回は「あるべき姿」「真の小売業の姿」というところにフォーカスして書きおろします。

あるべき姿を考えなければ、忙しいだけ

美術品やブランド品の買取バイヤーに聞いた話ですが、超一流の鑑定士は、毎日毎日本物だけを徹底的に見続けるらしいです(偽物は見ない)。これは、本物だけを見ていれば、偽物を見た瞬間、どこが違うかを一瞬に見分けられ、どんな偽物が来ても対応できるからだそうです。ちなみに、二流の鑑定士は、新たな偽物が出るたびに、この偽物はここが違うというポイントを必死で覚えているらしいです。そんな覚え方をしていたらどれだけの偽物の種類を覚えなければいけないか分からないうえ、該当外(見たことのない)の偽物を目の前にしたときに、判断がつかず、誤った判断をしてしまうということでした。

私はこの話を聞いてピーンときました。(多くのことに共通しますが、今回は小売業の件で・・)

何がピーンと来たか?それは、前述した場当たり的な対応をして、なかなか業績が改善しないのも、戦略がなかなか自分で考えられないのも、実は自社が本来「あるべき姿」「真の小売業の姿」が分かってないからだ!ということ。すなわち、目指すべき方向(本物)へ舵をきり、突き進むのではなく、発生した問題を見つけては(偽物を見つけては)、そこを改善することを繰り返ししているから、なかなか前へは進まないということ。

数字が落ちた!やれ何しろとか、お客様からクレームがきた!やれ何しろとかいう目先の問題に場当たり的な対応をするといった戦略では、当たらないのは当然で、「あるべき姿」「真の小売業の姿」を知らずに発生都度対応していては、先ほどの忙しいだけの二流鑑定士と同じになってしまいます。少なくとも戦略を練る立場の役員や社員の方は、自社の「あるべき姿」を明快に描けて、どっしりそこに向かうための判断を、ことある毎に瞬時にしないといけないと思います。

ちなみに私の思う小売業の「あるべき姿」「真の小売業の姿」で恐縮ですが・・

「お客様の感情にお応えする愛を持って商売をする」

すなわち、お客様の関心事や期待を絶えず探究し知り、それに愛情をもってお応えすること。それが小売業の商売の本質であると思っています。

IT投資で費用対効果を出す考え方

道具であるITに振り回される理由

私は小売業の一部のみなさまは、目的を達成するための単なる道具であるはずのITに、振り回されてしまっていると感じています。それは、IT投資した金額や工数が結果(価値)に見合ってない、生産性向上につながっていないということを感じているからです。では、なぜ多くのお金と時間を使って結果がでない場合があるのでしょうか?

私の考えた理由は以下の4つです。

  1. 導入目的が「あるべき姿」とリンクしていない
  2. 今後のITの重要性を理解していない
  3. 導入ベンダーが小売業のことを知らなさすぎる
  4. IT業界の多重下請け構造による弊害

1と2は小売業側の問題です。1でよくあるのが、システムを買い替えるタイミングがきたから導入というもの。それは単にきっかけであり目的ではありません。POSレジや発注端末ならば、それでもいいかもしれませんが、基幹システムや分析システムでこれをしていて効果が上がるわけがありません。しかもベンダーに丸投げしているようなところは、時期がきたからまたお金と時間がかかると、ITにブンブン振り回されます。

振り回されないためには、最低でもIT投資を通じてどう「あるべき姿」に近づけるのか?どの課題を実現するのか?どの問題を解決したいのか?を徹底的に洗い出し、それを可視化し独自で、またはベンダーと一緒に考えることが必要です。また、現代ビジネスでITが生産性向上、人手不足解消、他社との差別化等で、どれだけ重要な位置にあたるかを、少なくとも決裁者に理解していただく必要があります。それがIT導入する小売業側の一番やるべきことと私は考えます。そして、目的が明確になればなるほど、開発コストも下がる可能性が十分あります。逆にこれができなければ、コスト高となり、今後もきっとITに振り回されてしまうでしょう。

IT投資を決して甘くみないことです。どこがゴールが分かってないのに結果が出せるわけがありません。

次に、上記理由の3と4はIT業者側の問題です。小売業を知らないIT業者にとっては、業界用語や言葉、商習慣もしくみも理解することは簡単ではありません。しかし、そのレベルの話から、IT業者にいちいち説明していては、人手不足が問題となっている状況の中で、本当に多大な工数となり、ITに振り回される一つの原因にもなります。また、全く小売業を理解していないピントのズレた発言や提案等が出てくることを経験されたことがあると思いますが、それもこれらお客様業務を知らないことが本質的な原因です。

多重下請構造による弊害とは?

システム構築プロジェクトにおいて、例えば一次請負先は、営業窓口とコンサルティングを担当、二次請負先は、プロジェクト管理と設計を担当、三次請負先は、プログラム開発とテスト、そして、その忙しい三次請負先は、海外や個人のプログラマーに外注、導入後の保守運用はまた別会社といった、多段階に仕事を分業していくことを「多重下請構造」と呼びます。

餅は餅屋の分業制で一見効率よく見えるかもしれませんが、これがITコストを高騰させている一つの原因でもあります。必ずしも多重下請構造が悪であるとも限りませんが、以下のような弊害は考えられます。

  • 各請負先企業での利益・バッファー確保
  • 導入先小売業に価値を生まない業者間コストの発生
  • 実際の開発する企業への伝言ゲームによる情報の劣化

これらにより、ITコストが高騰したり、ちゃんと伝えたのに目的を達成できない、出来上がってくるものが違う。という問題が発生し、本来道具として使う、ITに間接的に振り回されてしまう原因にもなります。

導入両者の考え方や理由によって、IT投資は効果が出ないこともあり得る大きな大きな投資です。IT導入目的をしっかり考え、軸を持って、IT業者の選定、接することが、ITに振り回されない重要なポイントとなります。

本業で生き抜くための考え方

本業全うに必要なスキルは?

冒頭で述べたように、amazonや楽天は、本業以外でも利益が確保できるため、利益度外視で、とにかく安く、品揃えを抱負にという戦略でシェアを奪い続けるでしょう。よって、価格や品揃えで勝負しても正直歯が立たないかもしれません。SPA業態であればまだ太刀打ちできると思いますが、仕入れて売るというビジネスモデルではかなり苦しいと思われます。

ゆえに、小売業という本業で今後生き抜くには、これまでの考えから脱皮しなければなりません。ここまでも独自化とか差別化とかいうことを必要以上に述べてきましたが、そこには重要なポイントがあります。

それは、

「独自化・差別化が自己満足でないこと」

すなわち、小売業側からの目線ではなく、お客様目線で考え、魅力的なことでなければなりません。このことを忘れて独自化や差別化をしても、決してウケることはありません。よって、お客様目線、相手目線を養うスキルが絶対的に必要となります。

また、今後どんなビジネスで売上を上げるにも、ネットでのマーケティング力は不可欠です。このスキルがない企業は、ビジネスでの苦戦が予想できますので、ネットマーケティングスキルはとても重要です。

エモーションなしくみ作りが重要

どこまでいっても小売業は、商品やサービスを売れるようにするスキルが必要です。全く同じ商品やサービスでも、見せ方や雰囲気、切り口、コンセプトで売れ方は大きく違ってくることは周知の事実です。この事実は、プロデューススキルとマーケティングスキルの実力の違いです。今後はそのスキルをさらに強化し、売上を最大化するための集客から販売までのしくみ作りが絶対に必要となります。

そして、そのベースとなるのは、これまでのお客様に論理的に分かりやすい値引きとか粗品とか明快なお得感を伝えるロジカルマーケティングではなく、お客様の感情に訴えかける「なんか楽しい」「なんか気分がいい」「なんか居心地がいい」といったエモーションマーケティングと考えます。

どちらが正しいとか、間違っているとか、そんなものはないですが、これからの時代を本業で生き抜くにはエモーションマーケティングが重要と私は考えます。なぜなら、ロジカルマーケティングは、誰でもできる、すぐマネされる、その上をいかれる、という体力勝負になるからです。エモーションマーケティングなら、他社には簡単にマネできない、戦略が外から見えにくいというメリットがあり、独自化・差別化が完成しやすくなります。

いずれにしろ、ただただ儲けるという自分本位のビジネス方法では、これからは通用しません。お客様にどう価値を与えるか、どう伝えるか、どう感じてもらうか、今後はそこにかかっていると思います。

 

 

今回は『 小売業の考え方改革』というテーマで書かせていただきました。

業界再編が進み、大手集約、ネット企業の台頭と、業界で1位をとること、目指すことは非常に困難になってきました。しかし、視点を業界”1位”から、商圏内で”唯一無二”に変えて、お客様目線で思考すれば、”1位”になれることはいくらでもあると思います。

本文で書いたとおり、これからは今までのやり方や常識、他社の真似では、簡単にビジネスは成り立たないと予想ができます。ましてや大手やネット企業の真似をしていたらアウトです。私は、独自で考える必要性を今回述べてきましたが、その思考力やスキルレベルが平均的では競合他社に勝てないことも、おそらくみなさん感じていただけたのではないでしょうか。

日本の小売業は、高度成長期の若さあふれる勢いで成長した青年期から、成熟期を過ぎ、熟年期に入ったと思います。今までのやり方は、生活習慣病を生み、やがて大きな病気になってしまう可能性がありますので、お客様や世の中の変化に合わせ、考え方改革を実施していくことが重要であり、ビジネスを今後も楽しめる方法ではないでしょうか?

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

2018/6/22