小売業も二極化!今こそ変化の方向を考える
二極化という言葉が世の中はびこっています。
二極化とは「両極端に分かれていく」という意味として私は認識しており、小売業においてもいろいろな意味で二極化は今後ますます進むと思います。
例えば、ネット通販とリアル店舗の二極化。融合するという動きも多いですが、今のところ、融合がうまくいってる例は、ほとんど聞いたことがありませんし、我が国では時期尚早感が強いです。
むしろ、二兎を追うもの一兎を得ずという言葉の方が現在は当てはまっている気がします。
消費者の買い物がネット通販にどんどん移行しているのは事実です。
しかし、まだ日本の小売業全体売上の7%に満たないというのが私の認識しているシェア感です。多くの評論家や専門家は、ネット通販がこのまま飛躍的にシェアを伸ばし、やがてリアル店舗の多くが淘汰されると予想していますが、私はそうは思いません。
なぜなら、それらは小売業界だけを見ての判断であり、世の中の変化や環境の変化、時代の変化や既得権益等の全体を考慮していない業界の流れだけの予想であるケースが多く、私は日本の小売業においてそう簡単にリアル店舗は淘汰されないと思っています。
むしろ、業態によってはネット通販の伸びは鈍化していくと思っています。
それが証拠に、現在ネット通販大手のamazonが、低価格スーパーマーケットの出店を計画しています。
これは何を意味するかの真意は分かりませんが、現段階においてのリアル店舗の優位さを明確に表しており、小売業の覇者になるためには、リアル店舗は欠かせない存在であるという見方もできるのではないでしょうか。
短絡的に見れば、ネット通販は入荷・出荷・在庫関連がコスト的に優れており、それに比べリアル店舗は、陳列作業や品出し等の高コスト構造が不利となっている状況。便利さやここまでの流れを見ると、ネット通販企業に軍配が上がるように思えるかもしれません
しかし、ネットで大きな課題となっている物流コストの動向や、自動運転技術、国や政府の方向性、SNSの動向、全体に流される大衆や消費者の動向、お財布事情、そして、全く進まないオムニチャネル化等々、勝敗はこれらによりどう左右されるか全く分からない状況です。
ということで、今回は今後どうなるか予想がつかないネットとリアル店舗の二極化とは別の二極化にも目を向けて、以下に書いていきたいと思います。
小売業も二極化の方向へ
では、まず市場についてご紹介します。
■ 低価格市場と高価格市場
多くの業種で起こっているのが、低価格路線と高価格路線を行く企業やお店の二極化です。
外食産業をはじめとして、サービス業の多くがこの傾向にあります。そして、さして安くもない、そんなに高くもない中間価格路線を行く企業やお店が、現在ではあきらかに苦戦をしている状況で、この傾向はしばらく続くと予想ができます。
これは日本だけで30年前に起こった、”一億総中流時代”が終わりを告げ、資本主義の問題である”格差社会”へ推移したことが大きな要因の1つであり、時代の流れに沿った、ごく自然な二極化現象であると私は思います。
当然、小売業においても徐々にその傾向は出ており、例えばスーパーマーケットにおいても、現在高級スーパーや低価格スーパーが、業界内でも存在感を増していることは周知の事実ではないでしょうか。
低価格市場は、最終的には圧倒的有利な市場でいつも激戦区ですが、必ずこの市場には多くの安定した需要があります。反対の高価格市場の方は、二極化や景気の影響で富裕層の消費が増しており、価格よりも品質やサービスを重視した感覚の需要も高まっています。
このような現象から、時代の流れと共に少なくなっていく中間層を背景に、中間価格路線を行く企業やお店が苦戦しているのではないでしょうか。
今後の日本は人口減少に加え、さらなる高齢化が進みます。そして、ますます富裕層と低所得者の二極化が進む可能性が極めて高いです。
その状況下において、ターゲットを明確に絞らない、特化型でもない、中間狙いのマーケティングは、致命的になりかねるかもしれません。
■ 中間価格市場
では、中間価格路線は絶対ダメか?というとそうではないと思っています。
ある意味二極化に分かれていく業界の中で、そこをニッチに狙っていくという戦略もあります。やり方次第でいくらでもその存在感を増すことはできると私は思います。
これまでは価格・品質・品揃えが、市場の勝敗を左右するケースが多かったと思います。中間価格路線で行くならば、間違いなく、価格・品質・品揃え以外の”何か”で勝負する必要があるでしょう。
それは何か?
それは、お客様に寄り添い、徹底的にお客様の価値を追求することだと私は思います。ターゲットとするお客様が何を求め、何に困り、何に満足し、何に感動するか?その半歩先に必要な商品を見出し、場合によってはその商品やサービスを開発すること。
そして、お客様が喜び、面白いと思える、過去に縛られない施策を打ち出し、そのサービスをどう提供するかという ”完全お客様思考” の 知恵や工夫がキー となります。
そこで、ひとつだけ注意したいのが、完全お客様思考を勘違いしないことです。
お客様が求めている方向や時代の流れを読むことは大切ですが、ただ言うことを聞く”御用聞き”になってはいけないということ。それをすると、必ずや価格体力勝負になり、気づくと低価格路線の戦いにどっぷりハマってしまいます。
過去のやり方や真似は通用しない!
過去にとらわれず、工夫をすることが大切になります。
■ 考え工夫することで大きな武器に
これまで散々メルマガで書いてきたように、もう売れる時代は終焉したため、過去の成功や栄光、過去のやり方にこだわったり、米国の真似や他社の真似をしてうまくいくことはないと思います。
なぜなら、他社が努力の結果成功したものを真似したところで、競争の激しい時代にそんな目先の対応にお客様が振り向くわけはないし、まして、その真似には自社の思いなど何もないので、お客様に自社の思いが伝わることがないからです。
これは企業レベルに限ったことではないです。
バイヤーも店長も、部門担当者といった社員個人レベルでも同じこと。
ベンダーから聞いた情報を鵜呑みにしたり、ただネットで調べて真似をするような、自分で何も考えない人は、この先この業界で結果を出すことは難しいでしょう。
ではどうすればいいか? 答えは簡単・・
真似はやめて ”自分たちで考える” です。
お客様の価値を考え、自分たちがどんな価値を提供できるか、そこを考えて考えて考え抜くんです。
これからの時代、人に流されたり、他人の意見や話を鵜呑みにして、確かめもせずに信じるのはやめた方がいいです。
私はここ何十年か人と同じことをして成功した人や企業を見たことがありません。
成功したように見えてる人もいるかもしれませんが、彼らは得た情報や他社の事例を参考に、自社のコンセプトに合った部分をきちんと考え、必ず少しずつ違うことをするように知恵を絞り工夫をしています。
自分たちで考え、自分たちで実施しなければ、その施策が長くないのは目に見えています。
逆に、自分たちで考え知恵を絞った工夫は、生涯応用可能で簡単に真似をされない自分たちの大きな武器となります。
■ 他社と逆行く戦略は意外とリスキーでない
では、どんな工夫をすればいいのか?
私が以前からおススメしているのは、他社の逆を行く戦略です。
ネット通販ECサイトをみんながやり始めるなら、アナログ感たっぷりの、ふれあいや居心地の良さを追求したリアル店舗だったり、他社が「コスト削減」に重きをおくのであれば、徹底的にコストをかける戦略。
例えば、徹底的IT強化をして、データを集め、分析に労力をかけて、顧客満足度を徹底追求するという方法も面白いと思います。これら他社と逆を行けば独自性が生まれます。そして、それは自社の強い武器となるでしょう。
ところが、これら人と違うこと、むしろ逆を行くことは、日本人が最も苦手とします。
そしてとてつもないリスクがあるように思えてしまいます。しかし、人と同じことや過去にしてきたことをしていても、前述したように苦しいだけなのは誰もが分かっているはずです。
今必要なのは、リスクの無い安全策を過去や他社事例から探すことではなく、自分たちなりの最適な方法を作り出すことと、それを実施する勇気と実行力ではないでしょうか?
私は今後を俯瞰すれば、他社の真似をすることや、やらないことの方が、よっぽどリスクが高いと思っています。
今後の方向性はこう出す
では、今後どのようにすればよいでしょうか。
■ 軸がないと方向性など出るはずもない
では、自分たちで考えるにしても、今後どの方向に舵をきればいいのか?
それは、企業理念をベースに、2つの軸で考え判別すると分かりやすいと思います。
1つは、自分達ができること(何ができるかの判別)
もう1つは、どの流れに乗るか(世の中の流れの判別)
まず、ベースとなる企業理念は、言うまでもなく大きな軸となります。いわば向かうべき方向です。
そして、1つ目に必要な軸は、自分達が何ができるか?何が得意か?の軸。
真似や過去にこだわっていると、この軸を考えようともしません。
たとえば、販管比率がとても少なく荒利を低くおさえることができる企業もあるでしょう。
大量仕入れで原価を抑えられる企業もある。地域に密着して、お客様の顔と名前が一致し、他社にない接客ができる企業だってあると思います。
自分達が何が得意か?どんな価値が提供できるか?を考えずに、他社が成功したから当社もと真似をしても、自分たちにできないことを無理してやったら、うまくいかないだけではなく、後から相当な痛手を食らうことは誰にでも分かると思います。
しかし、こういう企業や人が実に多い・・
私から見れば、イケメンでもない男が、壁ドンや頭ポンポンを女子にやって気持ち悪がられているのと同じに見えます(笑)。
イケメンにはイケメンの、優しい人には優しい人なりにできることがあるはずです。それが何かを考えなければモテるはずもないですよね?
そして、真似やノウハウだけを欲しがる人の典型的口癖は「ウチではそれはできない」等のできない理由を並べること。自分たちで考える人からは決して出ない言葉です。
自分たちで考える人は、できないなどと発想せず、やれる方法を一生懸命考え、他社がやってることに対し「ウチにはそれはいらない」という発想をします。
■ 世の中の流れと自社の周りの流れを読む
もう一つの、どの流れに乗るかも、方向性を出す上では大切な軸です。
時代に合わないことや、時期尚早のことをしても、お客様の価値に合わないことをすることになりかねません。
世の中は絶えず流れていますし、その流れは時代とともにあきらかに早くなっています。
そして、いろんな方向に流れています。そのうちのどの流れに乗るかを、先ほどの自分達ができることの軸をベースに考え、決断することができると、どこに舵を切ればいいかが、パッと晴れたようにクッキリと見えてきます。
この流れの読みも、冒頭に述べたように単純に評論家(私を含めた笑)や、人の言うことを鵜呑みにせず、また、ごく目先の自分達の業界だけ見て判断せず、できる限り全体を俯瞰的に見て自分達で考えると、読み間違いが減ると思います。
少子高齢化、人口減少という世の中の大きな流れに対して、自社の商圏の現象や流れはどうなるのか?
環境問題や健康志向の方向性、ECサイトや物流関係など、自分たちで考え、どの流れに乗るかを自分たちで決断することができればしめたものです。
このように今後の方向性は、2つの軸をベースに自分で考えることが重要です。
これも企業に限ったことではなく、責任ある店長も、バイヤーも、担当者も、情報システムの担当者でも同じことです。
理想の未来の扉を開く方法
理想の未来に近づくには、何が必要でしょうか。
■ お客様に対する価値を高めること
ここまで読んでいただいて、みなさんやみなさんの企業やお店は、自らの未来のために何をしたらいいと考えましたでしょうか?
企業理念をベースに、自分たちができること、どの流れに乗るかを軸に考えることが方向性を決めると述べましたが、それ以外にも大切なことがあります。
それは、”自社(自分)の価値を高めること”をやり続けることです。
- 他社(他の人)と同じようなことしかできない
- どこにでもある(誰でもできる)価値しか提供できない
という状態にこの先自社(自分)がいると、今後は相当苦しい状態に追い込まれると思います。
よって、これからの時代を生き抜くには、他社(他人)との違いを明確にして”自社(自分)の価値を高める”ということが絶対に必要です。
■ 未来の扉を開くには?
ちなみに、みなさんやみなさんの企業やお店は・・
- 自社(自分)の価値を上げようと思っていますか?
- 自社(自分)の価値を高める行動を起していますか?
されていれば、ぜひ続けていただきたいと思いますし、もしされていなければ、ぜひしていただきたいと思います。
お客様に対し、他社とは違う、必要とされる価値を提供することができれば、お客様から必要とされる企業やお店に間違いなくなります。
そうなれば自社が理想とする未来への扉がパッと開くと思います。
しかし、その価値を提供することができなければ、逆に世の中の流れに振り回され、激しい価格競争等の大きな嵐に巻き込まれると思います。
そうならないためにも、自社(自分)の価値を高めることを継続的に実施されると、どこにも負けない強い企業(人)になると思います。
【まとめ】小売業も二極化!今こそ変化の方向を考える
今回は『小売業も二極化!今こそ変化の方向を考える』というテーマで書かせていただきました。
企業も人も、大衆という波にのり、その流れに流されていればいいという時代は終わりました。
うまくいっている事例を真似すれば、なんとかなるという時代もとっくに終わりました。今は企業も働く社員やスタッフも自分の頭で考え、工夫をし、自分の価値を高めなければ、今後生き残ることが難しい時代に直面してきたと思います。
とはいえ、それができない企業や人が多くを占めると思います。
ゆえに、できれば独壇場です。
自分で考え、未来を想像し、工夫を重ねる企業(人)と、それをしない企業(人)に分かれる。
企業も働く人も、大きな方向で、そのような二極化が今後は起こるという予想が私の考え方です。
そして、それをやるかやらないか、知恵をしぼって工夫するか、しないかで、どんどん差がついていくのは明白であると私は思います。
業界の二極化の始まりの今こそ、自社がどこに舵を切るか?選択をする絶好のチャンスではないでしょうか。
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