2019年の小売業界を振り返る

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2019年もあと少しとなりました。ちょっとだけ早い・・。いや、書いてる今が10月末なので・・誰よりも早く(笑)
2019年の小売業界を振り返ってみたいと思います。

2019年は10月に消費増税・軽減税率の導入を筆頭に、いろいろなことがありましたが、緩やかに景気が後退している雰囲気の中、業界内の競争はさらに激化し、軽減税率の導入で、コスト面や収益確保においても、ビジネス競争面においても若干厳しい1年になったのではないでしょうか。

量販店小売業全般においても、駆け込み需要があった9月現在も上昇感はなく、業態別では、百貨店、SM、HCの売上実績が前年割れ。一方、Drgs、CVS、DSの売上実績は前年増という結果のようです。

また、AI・ロボット化で多くの仕事が奪われ、仕事が無くなる等の懸念が嘘のように、人手不足が深刻化する1年でもありました。その象徴のように、無人化店舗の実験導入が日本でも何例か始まるという動きもありました。そして、政府の補助金やキャッシュレス決済ポイント還元制度が後押しとなり、キャッシュレスのインフラが中小小売業にまでかなり浸透しはじめた1年でした。

今回はこれらをの話を中心に、小売業界にとっての2019年はどんな年であったかを、独自目線で振り返ってみたいと思います。

軽減税率、ポイント還元制度で何が起こった?

軽減税率の導入で現場とお客様は?

なんと言っても2019年の小売業にとって最もインパクトがあったのは、消費増税・軽減税率導入ではないでしょうか?やはり導入後数日間は、8%、10%の操作による現場の混乱や、食品を10%で販売してしまうといったトラブルも若干あったようですが‥ 「テイクアウトで!」と言って、店内で飲食する”イートイン脱税”以外は、あまり大きな問題は起こらず、現在では落ち着き始めたように思います。

かく言う私も10月1日当日には、コンビニへ行って「これはイートインで!」と言って、ちゃんと10%と8%に分かれてレシートに印字されるか?また、おサイフ携帯で決済して、その場で2%還元されるかを試してみました(笑)

店員さんは少しあたふたして、クルクルと無駄な指の動きが目立ったものの、キチンとレシート印字やレジは対応していました。(本当に小売業のみなさま、IT業界のみなさま、振り回されたみなさま、ご対応お疲れさまでございましたm(_ _)m)

 

このようにコンビニに関しては、その場で2%の還元があるため、還元期間である来年6月末までの9か月間、おそらくキャッシュレス決済は、かなり増加すると思います。ちなみに私の知人の中には、この2%還元に留まらず、PayPayで決済してPayPayにもポイントがつき、PayPayにチャージする際にクレジットカードにポイントがつき、さらにレジにてTポイントカードの提示でポイントがつくという「何そのポイントマジック?」というようなことをするポイントテクニシャンがいます。(ホントに全部ポイントが付与されるかは事実かどうか知りませんので・・ あしからず)

キャッシュレス決済ポイント還元制度が引き起こすもの

キャッシュレス決済ポイント還元については、上記のようにコンビニ等のFCはその場で2%の還元。その他中小小売業に関しては、5%のポイント還元があるというものです。このポイントは政府が負担するということになりますので、いわば税金を使っての消費者への還元です。もちろんこれは景気冷え込み対策ではありますが、期間中は決済手数料も割り引くという力の入れようからすると、キャッシュレス化のインフラを広げようという政府の狙いは誰もが気づいていると思います。

この制度に対し、大手量販店小売業は何の恩恵もないため、理不尽さを感じるのは当然ではないでしょうか?しかし、コンビニは別として、中小の小売業は本当にメリットがあるのでしょうか?

私はそこに少し懸念があって、制度の期間中は良いとして、制度が終了したら決済手数料は上がるわけです。しかもポイント還元の5%分が無くなり、消費者からしたら値段が実質上がってしまうわけですから、ともすれば、客数減につながる可能性があります。それを防ごうと値段を下げて、キャッシュレスで買い物をされれば、値下げ分+決済手数料分=▲利益となり、それに追い打ちをかけるように、入金されるのが後日になるためキャッシュフローも悪くなるという三重苦。そもそも決済手数料の負担が重くて、これまでキャッシュレスを導入してこなかったはずの中小小売業が、目先の還元制度と補助金だけを見て導入し、全体像を俯瞰できていないと、後に自分で自分の首を絞めるような問題が起こる可能性があるので、ここは十分な対策が必要です。

決済手数料に関しても、今はキャッシュレス事業者各社、シェア確保に必死ですから、決済手数料の価格競争が勃発(一部業者は今は無料とか)していますが、皆さんご存知のように価格競争の結末は、”必ず何社かが消える”ということです(この現象は不変だと思います)。そうなったあとは決済手数料が下がることはほぼありません。過去に「コンパックショック」というPC価格の下落があり、多くの大手企業がPC事業から撤退し、その後PC価格が緩やかにジワジワ上昇した姿によく似ています。

■ 駆け込み需要がさほどでもなかった理由

今回の増税における駆け込み需要は、過去の増税時と比較すると金額的には小さいものでした。理由は以下のような政府の対策が功を奏したと思われます。

 

・増税率が2%と低かったことに加え、食品等軽減税率の対象商品があった
・キャッシュレス決済ポイント還元制度がある。
・自動車や住宅の10月以降の購入支援制度がある。

 

 

自動車や住宅といった大物商品や高額商品の駆け込み需要は少なかったものの、お酒や日用品、化粧品など量販店小売業で扱う増税対象品は、これまでと同様の駆け込み需要があったと報告されています。この大物商品の駆け込み需要が少なく、日用必需品系に駆け込み需要が集中したことに私は少々違和感を感じます。この現象は、ともすると消費そのものが冷え込んできているからではないか?と・・。冒頭でも述べたように、緩やかに景気が後退している雰囲気を感じるのはこういうことからかもしれません。

勃発した!食品シェアの争奪戦

成長が止まらないドラッグストア(Drgs)

好調が続くDrgsの出店攻勢は止まりません。毎年の店舗数の増加に伴い、売上額も毎年伸び続けています。その中でも食品の売上構成比が高くなっているDrgsチェーンが目立ちます。そもそも量販店小売業におけるDrgsの強みは、医薬品、化粧品、美容用品の荒利やリベートで利益確保が可能であることと、食品スーパーマーケットと比較し、圧倒的に少ない人員で店舗を運営できることです。(薬剤師の人件費は高額ですが‥)だから、食品や日用品で価格競争力を出すことが十分できます。

現在では生鮮3品に加え、惣菜を提供するDrgsもあり、もはやSMとの垣根がなくなってきています。

またSMの店舗数が全国で23,000店舗に対し、Drgsも20,000店舗を超え、SMの店舗数をいずれ超える勢いです。両業態を合わせると43,000店舗となり、国民2,800人あたりに1店舗、1,200世帯に1店舗あることになります。

今後はさらに人口減で、食品で満たす国民の胃袋の数は減り、ますます生活が便利になることで体を動かさなくなるため、国民の胃袋サイズもどんどん小さくなり、明快に国内の食品需要は縮小するわけですから、想像を絶する食品シェアの奪い合いが始まります。

2019年は、まさにその食品シェア争奪戦元年と言えるのではないでしょうか。
そんな中で、小商圏狙いのシェア拡大路線を行くDrgsの戦略は、ここ数年の未来を考えると欠かせない、賢い戦略なのかもかもしれません。

そこに割って入ってきたディスカウントストア(DS)

Drgsに対抗するかのように伸びてきているのがDSです。一昔前の小さな店舗で安く仕入られたものだけを販売するスタイルとは違い、現在のDSは大型で多品種、消費者の支持をかなり集めています。そして、M&Aで大手小売業を買収するほどの力で勢力の拡大を続けています。食品・日用品の売上の伸びはDrgs以上であり、これまでGMSやSMで購入していた顧客が、DSで買い物をするという傾向がはっきりと出てきています。


昔から景気が悪くなるとDSの業績が良くなるイメージがありますが、現在のDSは、消費者にとってそれ以上の魅力(品揃え抱負で買い物が楽しい)があるのではないでしょうか?そこに緩やかな景気後退と、消費税増税という節約感の後押しがあったため、2019年にDSが大きく伸びたと感じています。

 

このようにDrgsやDSは、食品や日用必需品カテゴリーを中心にGMSやSM、HCから顧客を新たに確保しています。この現象が冒頭に述べた、2019年の前年割れ業態、前年増業態の結果に明白に繋がっているため、2019年の前年割れ業態の企業にとっては、競争力強化に本腰を入れ、過去の正しさやあらゆる常識を捨て、この競争市場で新しいことへチャレンジをし、人手に頼らないシステムづくり等の対策を取る必要がでてきたことを気づかせてくれた、字のごとく“難”“有”った“有難い”1年であったのではないでしょうか。

人手不足の深刻化とその解決法は?

小売業の離職率は上位?

2019年は、小売業に限らず多くの業界において人手不足が深刻でした。特にIT業界や建設業界の人手不足が深刻化する中、次に来るのが小売業界という調査もあります。また離職率の問題に関しては、IT業界や建設業界よりも小売業の方が深刻化しています。求人倍率 × 離職率の相乗積で見たら、IT業や建設業を抜き、小売業はどの業界よりも人手不足の深刻感があります。それは、なぜでしょうか?

それは以下のような”事実ではない”イメージも強いようで・・

・土日祝、GWやお盆・年末年始が繁忙期で休めない
・休日が少なく、不定期
・立ち仕事が多い
・店舗に配属され、BtoCの仕事(クレーム等の顧客対応)
・営業時間が長いので、残業もあり、勤務時間も長いイメージ
・各シーズンの販売ノルマ(X’masケーキ、お節等)がきつい
・日常生活に近い職場で単純労働のイメージ
・給与水準も低く、キャリアアップに魅力がない

まあ~みんな‥ わがままで勝手なことを!という感じですが‥

私は大学3年生を相手にインターンシップも担当していることから、学生と話をする機会が多くあり、ちょくちょく小売業の印象をあえて聞いてみています。当社(IT企業)に来ている学生ということもありますが、小売業への関心は上記の理由からやはり薄いです。

しかし、これらもある意味事実ですから、受け入れるしかないかもしれませんが、時代の流れ、働き方改革の報道の影響もかなり強いと感じます。

■ 生産性を向上させ、人手不足を解決する方法とは?

上記のような状況の中、小売業としてはどう対策していけば良いのでしょうか?

それは、ずばり“生産性の向上”であると私は思っています。

簡単に言うと、これまで2人でしていた仕事を1人でこなせるようになれば、単純に生産性は2倍です。それを実現すれば人手不足問題は解決の方向に向かうということです。しかし、ここで間違えてはいけないのは、1人の人間に仕事を押し付けオーバーワークさせ生産性を上げようとすること。そして、ガミガミとスパルタ教育をすること。それらの方法では離職率がさらに高まり、本末転倒の結果となってしまいます。

では、どんな方法か?

それは、“投資の方向性の舵を少し切る”ということだと私は思います。

これまで小売業の多くの投資と言えば、店舗の拡大やシェアの拡大等であったと思います。しかし、生産性向上による人手不足解消が急務と考えれば、投資の方向性をシステムや教育に向けていく必要があると思います。

なぜなら、人の確保が難しい小売業は、人を確保するという考え方ではなく、“人が少なくても回るしくみづくり”をすべきだからです。そして、それらを最小限のコストで最大限の結果を生み出す手段が、ITの有効活用であり、生産性を向上させる強力な方法であるからです。

このように投資のプライオリティを生産性の向上 に向けることによって、長い目で見れば、店舗の拡大やシェア拡大投資にも匹敵する、大きな効果をもたらすと思います。

事例:我が国の無人店舗元年!

深夜無人営業のコンビニ

究極の人手不足解消と注目されるのが”無人店舗”です。

アマゾンゴーは、以前私のメルマガでも取り上げ、話題となりましたが、2019年は我が国においても、実験的に無人店舗がいくつか展開されました。

私もテレビ報道で見ただけで実際には体験していませんが、横浜のコンビニで、深夜営業時間帯の”無人店舗”が話題を呼んでいます。

  • 店外の様子
    -見た目はほとんど変わりませんが、”無人営業中”の看板が出ています
    -入口はロックされていて、会員証か会員アプリで、ロック解除・入店するシステムです
    -会員でない場合は、入口のカメラで顔認証をして入店することもできます
     
  • 店内の様子
    -通常のレジカウンターは、ビニールカーテンのようなもので覆われています
    -よって、たばこやおでん、唐揚げ、チケットサービス、宅配便等は対応していません
    -年齢確認が必要な酒類のコーナーは、シャッターが降りて閉鎖しています
    -防犯用に店内の監視カメラの数は、通常店舗に比べ3倍くらい設置されています
  • チェックアウトの方法
    -レジはセルフレジが2台設置してあります
    -ポイントカードにも対応しています
    -顧客は購入商品をハンドスキャナーでを読み取り、自分でチェッキングする形です
    -支払方法は、現金、電子マネー、クレジットカード、スマホ決済も対応しています
    -チェックアウトが終われば、ロックが解除され退店できるという形です
  • バックヤードの様子
    -1名の従業員がバックヤードに常駐しています
    -品出しや問い合わせ対応、トラブル時の対応などを行います

さすがに実験段階であるため、完全無人というわけにもいかず、店舗作業の多くの割合を占める、品出しや陳列作業はまだ人頼りで、客単価の高い酒・たばこの販売ができないとか、防犯対策にも問題がありますが、深夜の人手不足解消には大きな効果はありそうです。

■ その他、日本で始まった無人店舗

その他話題になっている、実験中の無人店舗をいくつかご紹介しましょう。

 

●ロボットコンビニ
ロボットの「ペッパーくん」が接客担当をしている無人の小さなコンビニというか売店といった感じです。商品をレジの上に置くと読み取り、金額を表示。現金支払いには対応しておらず、QRコード決済や仮想通貨で支払うスタイルです。

●大型スーパーの夜間無人営業
深夜の無人営業コンビニに似ていますが、大型のスーパーで実施しているところが九州にあります。ショッピングカートにタブレットPCがついた、レジカートが導入されており、夜間の無人営業を実現しています。

●AIを使った無人店舗
入店やチェックアウト等は、上記無人店舗と同じような運用ですが、顧客の動き購買動向等はAIが画像から解析し、集客や品揃え、価格帯決定に役立てることができるようになっています。

 

まだまだ各社実験段階であり、無人といえども、まだ大半の店舗作業(品出し、陳列、開閉店作業等)は人間が行っています。ロボットやAIの組合せで、いずれは完全無人店舗が登場するのは間違いないと思いますが、そのスタートを切ったのが2019年で、無人店舗元年だったのではないでしょうか。

 

今回は『2019年の小売業界を振り返る』というテーマで書かせていただきました。

本当にやるのかやらないのか?いつまで立ってもハッキリしなかった消費増税に軽減税率導入。2019年はこれらに振り回された1年であったと思います。そんな中、世の中は刻々と変化し、ますますの高齢化社会の進行と業態間での顧客争奪合戦、働き方改革の影響や若者の価値観による人手不足と離職率の上昇と‥

小売業にとって、これまでのやり方が通用しなくなったことが鮮明となってきた1年であったとも思います。

よって、これまで通用したやり方である、”店舗をどんどん出店し、シェアや売上を拡大していく”という方法から、ビジネス拡大路線を、”顧客動向や社会の変化データを戦略的に分析・駆使して、パフォーマンスの高い店舗づくりにシフトする方向に変えていく”ことが望ましいと感じました。

では、そんな中で今後を勝ち抜く企業は一体どんな企業か?

それは、自社の利益やズレた社会の価値観にとらわれず「そもそも誰のためのビジネスなのか?」という本質から決してズレない、お客様の感情にキチンとお応えできるビジネスを展開する小売業であると私は思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

2019/11/29