小売業の基幹システムをリプレースする際の留意点

小売業の基幹システムをリプレースする際の留意点

小売業の基幹システムは、本部・店舗は言うに及ばず経営層、経理や人事などの後方部門も絡む企業中枢システムです。

故にこれをリプレースする(古いシステムから新しいシステムに入れ替えること)となれば、プロジェクトは全社規模になり、費用も莫大な金額になります。

 

小売業基幹システムは小売企業経営を左右し、一旦導入すると長期間利用することになるので、プロジェクトの重要性は高く、成功が至上命題になります。

こちらでは、小売業基幹システムのリプレースに際しての留意点を解説します。

小売業基幹システムのリプレースではどのような点に留意しなければならないのか?

小売業基幹システムのリプレースを成功に導くのは、こちらで記述する4つの留意点です。

第1に、企業の中長期ビジョンに即した経営戦略をキャッチアップしていなければなりません。

リプレースとは言い換えれば全面再構築であり、現行業務の効率化程度の効果では投資する莫大な費用に値しないですし、全社規模の業務改革を成し得て5年、10年先の輝かしい企業成長につながる小売業基幹システムのリプレースでなければ全社的な動員に見合いません。

 

第2に、過去の小売業基幹システム構築は、必要に応じた機能の追加開発で対応した事例が多いのですが、この方法では分散型システムになる事が多く、部分的な最適化を追求するあまり全体的な最適化が疎かになっている例を散見します。

そのため小売業基幹システムのリプレースでは、統合すべきシステムを炙り出して設計に生かす必要があります。

 

第3に、小売業基幹システムのリプレースは、先にも記述した様にプロジェクト規模も費用も莫大になります。

故に相当のリスクを覚悟しなければなりませんが、失敗した時の影響が甚大なので、リスクを最小化する方策を予め立てておく必要があります。

 

第4に、小売業基幹システムのリプレースは全社規模になるので、全社的な動員が必要です。

だからこそ導入に際してはユーザーとの調整や関わり方が重要です。理解不足や不慣れに起因する誤操作や入力漏れなどの障害は極力排除する必要があります。社内調整は成功裏に稼働するための必要条件と言っても過言ではありません。

経営戦略のキャッチアップ ~小売業基幹システム リプレースの留意点 その1~

小売業の経営戦略は、企業規模の拡大を目指して5年から10年ごとに変更されます。

小売業の経営戦略の具体的な例は、品目数の削減や価格帯のカット、核売場の開発や欠品退治ですので、このための作業システム転換やセンター機能の拡大が要求されます。

これらを経営戦略とする場合の小売業基幹システムのリプレースで実現すべきは、現場の要望や現行システムの改善ではなく、ましてや現行業務の効率化でもありません。

5年、10年先の作業内容は現在の延長線上にはなく、現行業務自体を行う必要がなくなってしまうのです。過去において必要であった作業、例えば、本部における売上実績の入力やグロサリー部門の定番商品の発注などは、POSレジとの通信連携や自動発注で不要になっているので、システム化も不要です。

 

経営戦略をキャッチアップして、将来の企業ビジョンをシステム面で支援し、解決すべき課題に対応する小売業基幹システムでなければ、全社的な大規模投資に見合いません。

間違っても、現場の要望を聞いたりしてはいけません。現場の要望は利用しているシステムの改善であり、悪い事例では個人的な使い勝手の改善要望ですので、小売業基幹システムのリプレースに考慮すべき内容ではないのです。

したがって、現行業務の効率化を目指すのではなく、むしろ現行業務の削減を目標にすべきと心得るべきです。

 

統合すべきシステム ~小売業基幹システム リプレースの留意点 その2~

過去の小売業基幹システムには、元となる部分にアドオンしながら機能強化をしてきたシステムが多いので、機能が分散しており、場合によっては重複している部分が複数存在しています。

また、5年、10年前の業務に対応した小売業基幹システムですので、その事実を念頭に置いて設計することが必要です。例えば、数表や照会画面の設計は現行テクノロジーに合っていない場合が多く、ましてや5年、10年後には使い勝手の悪い小売業基幹システムになりかねません。

 

これらは使っていないものも多く存在している場合があったり、同類が多数作成されていたりするので、この際に統合する対象として検討しなければなりません。

また、物流も大きく変容することが想像できます。

つまり、ディストリビューション・センターやトランスファー・センター更にはプロセス・センターの自社運営は当たり前になるのみならず、発注から店舗への補充までの業務内容は、作業システムそのものが統合され、取引条件等を踏まえた内容に統合されることが予測できます。

この変革をIT面から支援する小売業基幹システムを構築することになります。

そして、商品改廃に伴う商品登録、棚割、初回発注、補充発注も独立したシステムで運用するのではなく、統合されたシステムで一連の業務として運用されることが必要です。

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リスクの最小化 ~小売業基幹システム リプレースの留意点 その3~

小売業基幹システムのリプレースのリスクは、システム対象からの抜け漏れが原因で、運用する事ができずに業務が停止することです。

また、機能としては装備されていても使い勝手が悪くて業務に大きな支障が発生するような場合も考えられます。

これらの多くは、小売業基幹システムの対象になる現行業務の理解不足によって、必要な機能をシステム化対象から漏らし、それが稼働時に発覚してしまったため、運用に致命的な欠陥が発生します。

このような問題を回避するには、システム業界用語でいう上流工程の要件定義に業務部門や運用部門を巻き込み、抜け漏れが無いようにドキュメント化することが重要です。

 

この時には、業務や運用が変わらない機能と変わる機能、更には無くなる機能や新たに発生する機能を明確にするのみならず、これら機能要件だけではなく、非機能要件も対象にした要件定義にすることが大切です。要件定義においては、業務部門や運用部門へヒアリングを行い、運用できないと業務が停止する機能を明確にしておき、稼働前には運用部門に運用の可否を判断してもらい、さらには、障害発生時の対応を発注者と受注者双方で検討しておかなければなりません。

発注者は容易にできると思わず、受注者は安易に請け負わない事が大切です。

 

社内調整  ~小売業基幹システム リプレースの留意点 その4~

小売業基幹システムをリプレースする場合には、経営トップから店舗の業務に従事しているパート・アルバイトに至るまで、あらゆる利害関係者に影響が及びます。特に小売業基幹システムのリプレースでは、システム部門とユーザー部門との調整の重要性は言うまでもありません。

小売業基幹システムのリプレースともなれば、比較的大規模なプロジェクト体制が組まれて、さまざまな関係者が参画することになりますが、必ずしも全員が協力的かつ積極的にプロジェクトへ参画し、スムーズに進行するとは限りません。

関連部署との調整や協議を必要に応じて実施できなければプロジェクトの進行に支障が出たり、見切り発車をしてしまったために稼働時に大事故が発生して、稼働の延期もしくは中止をせざるを得ないこともあります。

それを避けるためには、業務部門や運用部門のキーパーソンをプロジェクト専任にする、もしくは組織移動をしてもらうことを考えても良いでしょう。

 

こうすることで業務の抜け漏れ防止ができたり、他部署との協議がスムーズに行われるように調整役が期待できます。また、プロジェクトのリーダーには、各部署からの協力が得られやすいように経営トップもしくはこれに準じる経営層を配置してもらう必要があります。

そもそも5年、10年後の経営戦略を自分の言葉として発言できるプロジェクト・リーダーであれば、他部署の調整にも極めて有効であると言えます。

【まとめ】小売業基幹システム リプレースの留意点

小売業基幹システムのリプレースを成功に導く4つの留意点について解説しました。最も重要な点は経営戦略の意に沿った小売業基幹システムを作成すべくリプレースするのであり、現行システムの機能改善や現行業務の効率化ではありません。

故に運用や業務レベルの変更や廃止を厭わずに、可能な限り統合して無駄を排除しつつ、リスクを最小化するための諸施策を講じて準備し、全社的なプロジェクトとして社内調整をスムーズに行います。

 

無論のことですが、一つ一つが簡単なことではなく、相応の覚悟と知識と技術を要しますので、良質なシステム会社と協力し、自社にマッチしたパッケージ・ソフトを基盤とした開発を前提に取り組まれると良いでしょう。

 

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