小売業の販売管理システムを開発する時の注意点

小売業の販売管理システムを開発する時の注意点

小売業における販売管理システムは、他業態の販売管理システムと少々違います。Googleで検索してみると卸売や製造業と同じ機能を有する販売管理システムを小売業向けと称して紹介しています。

 

こちらでは、小売業の販売管理システムを開発するにあたり、世の中に出回っている小売業向け販売管理システムの必要な機能と不必要な機能とを選別して、

小売業が販売管理システムを開発することによって得られるメリットを最大限にし、デメリットを最小にする知見を紹介します。

小売業販売管理システムで開発する一般的な機能

販売管理システムとして必要な機能は大まかに、売上関連、仕入関連、在庫関連の3つを指します。売上関連は、受注、出荷、売上に分かれ、仕入関連は、発注、入荷、仕入、買掛、支払に分かれます。

また、在庫関連は商品の入庫と出庫の差引と欠減、棚卸入力と在庫一覧になります。

 

まず売上関連は、受注から出荷、そして売上確定と一連の流れで作業が進むようにすると共に、出荷から売上になったり、いきなり売上からスタートするケースを受け入れる必要があります。

小売業の販売管理システムの中には、受注から必ず開始しなければならず、意味の無い入力作業を要求する場合がありますが、小売業の販売管理システムを開発する場合にはこの点に注意します。

 

また、小売業では店舗にキャッシュ・レジスターを置いて処理していることが多いですし、キャッシュ・レジスターがPOSになってきているので、できればキャッシュレジスターと小売業販売管理システムを連携する様にした方が良いでしょう。

ここで売上関連に売掛、入金が無いと気付かれた方もいらっしゃると思いますが、筆者は敢えて外したのです。

わが国の小売業の発展は、江戸時代の日本橋に呉服店を開いた「越後屋」以来「現金掛け値なし」の上に成し遂げられています。

 

つまり、売掛を行うことは薄利多売をモットーとする小売業では御法度なのです。

厚利少売(コウリショウバイ)が可能な業態であれば売掛も結構ですが、貸倒や金利の負担が発生する売掛は薄利多売の小売業では採用してはならないのです。

また、現金で売り、掛けで買うと回転差資金が生まれ、出店等の投資が必要な時にこの資金が役立ちます。現金取引が困難であれば、クレジット等でお支払いいただき、少なくとも貸倒から免れていなければなりません。

ですから、小売業の販売管理システムを開発する場合は、売掛と入金の機能は不要なのです。

 

次に、仕入関連では発注から始まるのですが、発注に関しては流通BMS等のネットを利用した標準方式を利用します。

しかし、この流通BMSの開発には相当額の費用負担を要するので、開発しようとする小売業販売管理システムの予算規模を踏まえて発注のシステム化を考慮します。

 

軽量級の小売業販売管理システムの開発であれば、発注をシステム化せず入荷から仕入を計上し、買掛、支払と一連の流れで作業が進むようにすればよいでしょう。そして、入荷と出荷から在庫の管理を行います。

この際に、売上や仕入は在庫に関連しない取引を入力することもあるので、在庫と関連する入力は入出荷のみにしておくのが無難です。

 

つまり、入庫にせよ出庫にせよ、仕入や売上につながる入力と入出庫のみになる入力があるのです。

例えば、返品はマイナス出庫の入力でマイナス売上にしますが、廃棄やサンプル出荷は売上とは無関係です。

 

また、在庫管理では単に現在在庫を管理させるのみならず、未来日付の発注や受注を反映した在庫引当を行い、未来の在庫状況を確認可能にしておけば、現在在庫が無くても出荷ができる日を案内することができます。

小売業販売管理システムの開発メリットとデメリット

小売業の販売管理システムを開発する動機となるメリットは、手書や手計算、もしくはEXCEL等を利用した人力処理に比べて一連の入力が連携しているので、入力されたデータが複数回のチェックを経ることと再入力が無くなるのでミスが減少することです。

また、再入力や再計算が減少するので、処理時間がほとんど不要になります。

 

欲しい時に欲しい帳票や伝票が出力できますし、顧客からの問い合わせ等に対応するための在庫確認がリアルタイムに出来るようになります。

つまり、小売業の販売管理システムの開発とその利用は、事務作業の生産性を向上させるのみならず、ミスの減少による正確性の向上により、顧客やお取引先からの信用が増し、営業実態の把握も多角的な情報が即時に見える化できるので業績向上につながります。

 

では、万物には明暗があるように、小売業販売管理システムの開発と利用にもデメリットはあります。それは安くない費用が必要であることです。

規模や内容にも因りますが、数十万円から数億円(オンプレミスの場合の一時費用、クラウドの場合は5年間支払総額)まで様々であり、大抵は腹積もりより高額になりがちです。

 

特に独自仕様を作り込んだ場合には、非常に高くつくことが多いのです。したがって、このデメリットを最小限にするには、パッケージ・ソフトウェアを基にして極力カスタマイズすることなく、運用をパッケージ・ソフトウェアに合せる方法があります。

多くの導入実績を持つパッケージ・ソフトウェアは、業務の流れや運用は合理的に開発されているので、自社の運用に拘泥することなく使いこなすことが賢明です。

 

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小売業販売管理システムの開発を誰に任せるか

小売業販売管理システムを開発する際には、多くの企業ではシステムベンダーを利用します。

しかし、小売業に精通しているシステムベンダーの優秀なエンジニアでも、利用企業の業務や利用者に詳しい訳ではないので、利用企業の内部に小売業販売管理システム開発要員を任命することになります。こちらでは、システムベンダーのエンジニアと利用企業の開発要員に必要な能力を記述します。

 

まずは、システムベンダーのエンジニアですが、小売業の中でも利用企業の業種業態に対する豊富な導入実績と深い知見が必要です。

先に記述したように小売業販売管理システム開発時には、パッケージ・ソフトウェアを基に極力カスタマイズしないので、パッケージ・ソフトウェアの利用や操作の効果的な事例を利用者に教えることが要求されます。

 

単なる操作方法を示すのみならず、パッケージ・ソフトウェアが想定する操作方法や運用の意味まで説明し、業務が改善することを理解させる知識と見識が備わっていなければなりません。

さらに、小売業販売管理システムといえども、ITテクノロジーは高度になっているので、技術的な知識も要求されることは言うに及びません。

 

かたや、利用企業の開発要員はパッケージ・ソフトウェア選定に際して、利用企業の業務と利用者の能力に照らし合わせて良否を判断する経営者を補佐することが要求されます

そしてその後はシステムベンダーのエンジニアが説明するパッケージ・ソフトウェアの操作方法や運用を理解し、この運用に必要な技術を習得して、システムベンダーのエンジニアが操作指導から撤収した後の操作教育や利用者からの質問に答えることが出来る能力が要求されます。

小売業販売管理システム開発するときの注意点 まとめ

小売業販売管理システム開発について、一般的な機能とメリット・デメリットそしてシステムベンダーのエンジニアと利用企業の開発要員について解説しました。

小売業の販売管理システムは、基幹システムに比べて比較的軽装備なシステムをイメージさせますし、小売業の広範囲な業種業態に適用可能であると理解できます。

 

しかしながら、売掛や入金機能を不要としたように、小売業以外の業種業態向けに作成されたパッケージ・ソフトウェアを基に開発することを避けなければなりません。

この点に留意して生産性向上等を実現し、企業の発展に貢献する小売業販売管理システムを開発しましょう。

 

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