スマホアプリで店舗集客!Webマーケティングの成否を左右する4つのKFS

スマホアプリで店舗集客!Webマーケティングの成否を左右する4つのKFS

スマホアプリの選定過程では付属機能やサービスの内容、費用の多寡にどうしても意識が向きがちですが、アプリの選定はあくまでもスタートライン。導入後に思うように活用できず、手を打ちあぐねている会社も多く見られる中、どうすればスマホアプリをWebマーケティングに生かせるのでしょうか?

 

せっかく時間をかけて吟味し、多額の投資をしても、それを生かすことをプランニングしなければ、実にもったいない話です。

今回は、その前提をKFS(Key Factor for Success, 成功要因)として考えてみたいと思います。

 

Factor1.コンタクトポイントとしてスマホを考えているか?

老若男女がすでに手にしているスマートフォンは、お客様との重要なコンタクトポイントになっていますが、小売業様にとって一番重要なリーチメディアはリアル店舗であり、店員であり、折込みチラシも効果が下がってきたとはいえ否定する必要はありません。

大事なことは、ひとりの生活者が接触するメディアの配分比率とリーチ効率が大きく変わったことであって、それに応じた対応が必要だということです。少し具体的に見ていきましょう。

(出典:【博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 「メディア定点調査2020」】)

例えば、日本人のメディア接触時間は、平均で一日当たり411.7分です。テレビ(144.2分)+ラジオ(28.9分)+新聞(14.9分)+雑誌(11.2分)の4大メディアの合計は、199.2分(約3.32時間)。パソコン(64.9分)+タブレット(26.4分)+スマホ(121.2分)のデジタルメディアの合計が、212.5分(約3.54時間)で、すでにデジタルメディアが4大媒体の接触時間を上回っています。

特に新聞とスマホの接触時間を比較してみると、新聞は一日当たり14.9分、スマホは121.2分ですから、生活者はすでに新聞の8倍以上の時間をスマホと接触しています。しかも、これは新聞本体への接触時間であって、新聞折り込み広告への接触時間はこの数分の一と見て良いでしょう。もちろん、地域、男女、年齢によりメディア接触時間には差があることも確かです。しかし、日本人の情報リテラシーの傾向はほぼ全国均一と言って良く、トレンドはそれほど大きく変わりません。

例えば、60代男性のメディア接触率のデータを細かく見ると、テレビ(217.2分)に最も多い時間接触しているのに対し、次いでパソコン(76.2分)、携帯・スマホ(61.1分)となっており、ラジオ(51.7分)や新聞(33.7分)を大きく凌いでいます。コロナ禍の社会的影響が強まった今春以降は、デジタルメディアへの接触傾向が強まっていることは容易に想像できることです。

振り返ってみて、皆さんの会社では、いま「販促」として多くの労力と費用をかけられている折込みチラシ以上のものを、デジタルメディアの活用におかけになっているでしょうか?バランスが悪くはないでしょうか?

お客様にリーチするためのコンタクトポイントのひとつとして、そろそろデジタルメディアに適切なポジションを与えるべきではないでしょうか?

Factor2.スマホアプリは販促手段なのか?事業なのか?

スーパーマーケット向けアプリやネットスーパーなどのWebを使った施策に積極的に取り組み、試行錯誤を繰り返しながらも少しずつノウハウを蓄積されている小売業様がある一方で、どれもあまり成果が感じられず動きが停滞している小売業様もあります。この違いはどういうところから生まれてくるのでしょうか?

要因は様々ありますが、「チラシを見ていただくためのツールなのか?」「お店の魅力を伝え、ロイヤルカスタマーを形成する為の戦略なのか?」端的に言えば、「スマホアプリを単なる販促手段ととらえるのか?」「ひとつの事業ととらえるのか?」この考え方の違いから生まれてくるものだと思われます。

巷間でなぜDX(デジタル・トランスフォーメーション)が叫ばれているかといえば、ひとつには生活者とのコンタクトポイントのデジタル化という現実に速やかに対応しましょうという意図があるからですが、この対応にまず必要なのは、経営戦略のひとつに置き、ヒト・モノ・カネと体制(組織)・情報などの資源をデジタル化に振り向けることです。生活者のメディア接触時間ひとつ見ても、折込みチラシの制作製造に携わるヒトやコスト以上のものをデジタルメディア対応に振り向けなければならないのは明らかです。

「いや、まだ効果が見えないので・・・」というご意見をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。しかし、まず、中長期的に小売業経営にとって必要な事業とお考えいただき、目標を作り、経営資源を投下し、効果が図れる環境へと持っていくべきでしょう。

理想は、「専任」の部署・担当者を設置する。ここから始まります。部署は「営業企画」や「マーケティング」担当部門内にあっても構いませんが、担当者は専任であることが大事です。よく見られるのが、「販促担当」「チラシ制作担当」との兼任。「商品部バイヤー兼務」という肩書をお見受けしたこともあります。

なぜ兼任だといけないか?お分かりでしょうが、兼務となると、ただでさえ要員が削減傾向にある販促やチラシの制作進行業務が中心となり、デジタル化対応の業務(タスク、ワーク)がどうしても疎かになってしまうからです。専任者は、単に企業のスマホアプリ導入業務を遂行する役割を担うだけでなく、企業全体に活用の目的や意義、時にはシステム管理などの具体的な操作手順を教え広める「エバンジェリスト」(伝道師)の役割を担います。したがって、アプリを日常的に使いこなし、これに何の抵抗感もない方、また社内コミュニケーションを円滑に進められる方が専任者に望ましいと言えるでしょう。

 

Factor3.アプリ導入の目的は明確か?共有されているか?

「なぜ我が社はスマホアプリを導入し活用していかなければならないのか?」

この問いをきちんと整理し社内浸透させている会社が少ないことも気になります。

「そんなことはわかりきった話で、効果が低下している折込みチラシに代わる広告媒体が必要。若い人は新聞を読まず、テレビもリアルタイムで見なくなって、スマホばかり見ている。集客媒体としてスマホが有効だからじゃないか?」

アプリ導入の直接的な動機はそんなところでしょう。しかし、これらは導入目的には成りえません。企業が、なぜスマホアプリを導入しなければならないのかという点については、特に小売企業であるなら、すべての事業はお客様である生活者の便益に結びつかなければなりません。

皆さまの企業の社是とか経営理念には、たいていの場合、地域社会やそこに暮らす生活者の暮らしへの貢献が謳われているはずです。スマホアプリについても同じ文脈の中にとらえるべきで、小売業にとってのスマホアプリの導入には「お客様のお買い物の利便性を高めて、その生活の向上に寄与し」、最終的に「お客様からのお店・企業へのご支持をより強いものにしていく」目的があります。これをしっかり自覚していることと、整理がつかないまま話を進めていくことでは、目標の置き方、機能やコンテンツの拡充など、その後の動きが大きく変わってきます。お客様のための事業としての目的を明文化し、しっかり社内に周知浸透、共有させる必要があるのです。これはマネジメント層の大事なお仕事です。

 

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Factor4.アプリ会員化の目標設定とは?

スマホアプリを競争に打ち勝つためのロイヤルカスタマーを育成する事業という捉え方をする以上、明確な目標を設定する必要がありますが、意外にも、この目標設定をされていない企業が多いことも事実です。

まず、スマホアプリを何人の方に使っていただこうとするのか、会員化率(組織化率)という目標が欠かせません。商圏人口が5万人で、スマホアプリの会員が5万人なら会員化率が100%ということです。その商圏人口、実数がわかれば良いのですが、お店の対象商圏の世帯数がわかっているのなら、概算で商圏人口が算出できます。仮に商圏世帯数が3万世帯なら、厚生労働省発表の直近のデータ(2019年国民生活基礎調査)では、日本の平均世帯人員数が2.39人となっていますから、3万世帯×2.39人で7万1,700人の商圏人口を持つことになります。

では、7万1,700人のうち何人をアプリ会員とするのか?

「一世帯に一人ずつでもアプリ会員になって欲しい…」

このように考えるなら3万人が目標数値となります。もっと簡単な目標の組み立て方もあります。仮にそのお店の一次商圏でのチラシ配布枚数が現在のところ1万枚(世帯)なら1万人の会員化という目標数字を置くのも手でしょうし、いや、ウチの足下商圏世帯数は5,000世帯だから、という理由で目標を5,000人に置くことでも良いでしょう。既にポイントカード会員を集めておられるお店なら、その会員数(カード発行枚数)も目標数値の目安となるでしょう。いずれにせよ、業種業態や商圏の特性、広狭など、お店の持つ商圏に応じてアプリ会員化に向けての大きな目標を定め、全社で共有することが大切です。

そして、より大事なことは、いったんスマホにアプリをインストールしていただいた会員をいかにアクティブに維持していくか、稼働会員数(アクティブ会員数)の目標も設定することです。稼働会員数は、スマホアプリを日常的に訪れるアクティブユーザー数のことを示し、例えば一週間や一カ月間という一定の期間内に何人のユニークユーザー(UU)が訪れ利用したかを算定するものです。アプリやWebページの場合は、同じユーザーが何度も同じページを訪れ利用するわけですが、ユニークユーザー数とは、個々の訪問者を識別したうえで、同じ期間中に再訪しても同一人物によるアクセスと判別して1人とカウントする正味の会員数です。2,000人のアプリ会員のうち、一週間のアプリ利用者が正味で500人の会員だったのなら、アクティブ会員化率は500÷2,000の25%ということになります。これを毎週、毎月と定期的に追って推移や変化を確認・検証していくことが大切です。

Webマーケティングを左右する4つのKFS まとめ

今回は、スマホアプリというWebマーケティング施策の導入推進の考え方をいくつかにわたり見てきました。

どれもこれも当たり前の話だなあ、といった感想を持たれた方もいらっしゃるでしょう。しかし、これらを正しく実践されている小売業様は少ないと、私どもは事例を通じて実感をしています。

「当たり前のことを、馬鹿になって、ちゃんとやる」ビジネスの基本はこのABCと言われますが、これがWebマーケティングの巧拙にも関わってくるのです。今回のブログがスマホアプリの導入や活用推進に悩まれる小売業様のヒントになれば幸いです。

2020/12/08